地域「新生」の夜明け−Japan2.0「小宮山宏 地域「新生」ビジョン」
4月6日、日本記者クラブで小宮山宏前東京大学総長をはじめとする学者達が、「日本の地域「新生」ビジョン」を菅直人総理に手交し説明したことについて会見しました。菅直人総理は、ご多忙の中、熱心に小宮山宏先生のお話をお聞きになったそうです。標題Japan2.0は会見に同席した筆者の恩師、松島克守東京大学名誉教授が、このビジョンの概念を一言で示したものです。松島克守先生らしいネーミングです。新生日本、という和訳ではイメージはわきませんね。
このビジョンの詳細、記者会見の様子はこちらです。ざっくり言えば、元々少子高齢化をはじめ課題先進国であった日本は、この大震災復興を期に、一気に他国のモデルとなるような国創りをすべきである。被災地の(復旧にとどまらず)復興を、日本の「新生」に転化していくのである。ということです。また、元々エネルギーシステム分析の大家である小宮山宏教授ですから、「20世紀は化石エネルギー、21世紀初頭は暫定的に原子力エネルギーが主役だったが、21世紀中後半は、再生可能エネルギーの世界であり、日本は世界に先立って新エネルギー世界を実現すべき」と元々からの持論を展開されています。
小宮山宏先生は自宅の新築に当たり、当時の入手可能な新エネ、省エネ技術を駆使して「小宮山ハウス」をお作りになり、見事に80%の省エネ(以前の家の2割しかエネルギーを消費していないということです。)を達成されており、菅さんを含め民主党閣僚の方々をこの家に招待されご自身で熱心にご説明されていました。筆者もNEDOのゼロエミッションハウスを洞爺湖サミットに造るに当たって、小宮山ハウスに勉強に行きましたが、実に快適なお宅です
「Japan2.0の意義」
このビジョンで示すものは、21世紀の新生日本、もといJapan2.0の有り様を示す骨格です。2050年頃から現在を逆に視て、時空的な俯瞰をしたもの、といえるかもしれません。これが実現できればこそ、ある意味で有史以来初めて日本が世界をリードする先進国になったと言えるでしょう。一方、こうした視点からですから、被災地の詳細な状況やニーズをもとに示したものではありません。しかし、これを「学者の空論」と片付けたり、いい放しのどこかの検討会報告書と同列に論じてはいけません。なぜなら、@こうしたときこそ、大きな、国民全体が納得する理念とビジョンを掲げることが必要だからであり、Aそれは、十分な最新の学術的必然性に裏付けされたものであるべきであり、B日本社会を「新生」させ、世界の新モデルになるべきであるからです。
このビジョンを元に、様々な各論が展開可能です。記者会見でも紹介がありましたが、日本の課題である、医療、健康、産業、雇用の課題が、地方の自律的な努力と、最近のIT技術の進展などで、解決されるモデルができつつあります。人間をより幸福にするライフスタイルへの視点も重要です。また、その地域で永年育ってきた被災者の方々の気持ちを、最大限いたわり、活かしていく心の優しさが最も重要かもしれません。いずれも、個別に考えていくとバランスが難しい課題です。
日本復興は、いまや今世紀の我々の最大事業、最大の目標となりました。戦後復興に匹敵するような困難さを伴うかもしれません。しかし、3月11日を契機に我々は否応なく、これに立ち向かい、勇気をふるわなければならない状況になりました。3月11日(*i)を、鎮魂の日とするとともに、日本復興、地域新生の記憶すべき新しい出発点「夜明け」になるよう、皆で議論を深め、活動していきたい、筆者はそう思います。
i. どうでもいいことですが、筆者の誕生日は3月11日です。来年以降、誕生日を迎えたときには、黙祷をしつつ、前向きな新たな気持ちを抱けるよう、個人的にも努力していこうと思います。