東京大学
前総長 小宮山 宏



 ベンチャー起業家へのメッセージ

 平成14年度、日本経済の活性化の提言プロジェクト、「動け!日本」、を実行しました。そこで提案したことは、

1. 産業競争力を追求する時代から、生活の質の追求をする時代に変え ましょう。生活の質を上げる新産業をイノベーションから創成しましょう。

2. 20世紀の日本の成功は、メイドインWesternの科学技術知識を、メイドインJapanの製品にするものつくりでしたが、21世紀はメイドインJapanの科学技術をメイドインJapanの製品・サービスにする時代にしよう。そのイノベーションの知は、大学にあります。

 でした。日米の差異は、科学技術水準の差でなく、創業数の差です。大学で産まれてきた最先端の科学技術を産業として行くためにはベンチャー企業が本質的に重要です。基礎技術と産業技術の間の壁は、ベンチャー企業というカプセルで通過するしかありません。大学発ベンチャー企業、大企業発ベンチャー企業も、そして個人のベンチャー企業も、イノベーションで日本を変える必須の機能です。今たりないのは科学技術ではなく、起業に挑戦するアントレプレー精神を持つ人財です。この挑戦には大学も全力で支援していきます。
 東京大学で、知の構造化を提案し、推進してきました。知識を構造化して知財と成し、その力で新産業を興す必要があると考えます。旧来の学問の境界を超えた知の構造化が独創性の高い科学技術を産むと信じます。大学の研究者はその意味では知のベンチャー企業です。民間のベンチャー企業と大学の知のベンチャー企業の連携こそが産学連携でないでしょうか。頑張って、日本を動かしましょう。


略歴:
昭和42年 3月 東京大学工学部化学工学科卒業
昭和44年 3月 東京大学大学院工学系研究科化学工学専門課程修士課程修了
昭和47年 3月  同 上  博士課程修了工学博士となる
昭和47年 4月 日本学術振興会奨励研究員として東京大学工学部化学工学科で研究に従事
昭和47年12月 東京大学工学部化学工学科助手
昭和52年 5月  同 上  講師
昭和54年 4月 昭和53年度 化学工学協会論文賞を受賞
昭和56年 1月 東京大学工学部化学工学科助教授
昭和63年 7月 東京大学工学部化学工学科教授となり、現在に至る

この間、昭和48年10月から1年間、カルフォルニア大学
(デービス)ポストドクトラルフェロウとして研究。

平成 5年 4月 平成4年度 化学工学会研究賞を受賞
平成12年 4月 〜平成14年4月 東京大学大学院工学系研究科長・工学部
平成15年 4月 東京大学副学長就任
平成17年 4月 東京大学大学総長就任