◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2011/03/09 http://dndi.jp/

一罰百戒の妄想

 ・京大カンニング事件、予備校生逮捕の余波
 ・脳科学者、茂木健一郎氏の見識に喝采!
 ・外相辞任で男をあげた前原誠司さんの評判
 ・焼き肉屋さんのご婦人が外国人の違和感
 ・罪の軽重、事の浅深の現実を切り分けよ!
 ・被害届を取り下げの同志社大学に続け。
〜一押しイベント〜
 ・ビジネスモデル学会の春季大会は26日開催
〜連載〜
 ・石黒憲彦氏「シリコンバレー再訪」
 ・塩沢文朗氏「再びOPCWの将来構想委員会へ」
 ・氏家豊氏「オープンイノベーションの傾向と対策」

 DNDメディア局の出口です。いっとき春めいてつい浮かれていると、にわか に真冬に逆戻り。これを掌(てのひら)返しという。陽気と寒さが交互にやっ てくるから、弥生三月は用心が必要です。気をつけていてもぶつかってしまう のが人の世の常とはいえ、この頃、なんだか気が重くてやりきれないのは猛威 をふるう花粉のせいばかりじゃないようです。


 大山鳴動の捕物劇を演じた京都大学受験の予備校生のカンニング事件は、い ったいなんの騒ぎだったのでしょうか。いまさらながらに人権を踏みにじるメ ディアスクラムの過剰報道に対する私の憤りはおさまりません。上着を頭から かぶせて連行される姿を京都の警察は、地元の記者クラブが談合して写真を撮 らせた疑いがある。いやらしい仕業と断ぜざるを得ない。まるで連続殺人の凶 悪犯扱いと同じだ。こんなこと許していいのであろうか。これが日本の良識あ るとされる新聞の危うい現実なのです。共犯もいないし、罪を悔いているのだ から、そそくさと予備校生を母親のもとに帰してあげてください。


 それもどうですか、サァーッと潮が引くように、何もなかったかのように泡 と消えました。高3の秋に父親が急死した。母親を安心させたかった。ヤフー 知恵袋で心療内科の事や睡眠薬の事も質問していた。まじめでバスケットの主 将をつとめた。新聞報道で周辺が騒がしくなって徐々に追い詰められていった …そんな悩み多い19歳の心情をきちんと検証すべきじゃないですか。本当に彼 を犯罪者扱いしていいのか、疑問が残ります。


 捜査はやり過ぎだが、一罰百戒の意味があると訳知り顔でテレビ解説する大 手新聞の大御所がいました。これを見せしめに将来二度とこのような犯罪がお きないようにキツーイお灸をすえた、という意味ですが、もう時代遅れの妄想 です。今後のために罪は小さいが百回の戒めを与えよ、なんて時代錯誤も甚だ しい。新聞人が納得してもそれが世間に通じるか、どうか次元の違う問題です。 メディアはいったいどこに軸足をおいているのですか。権威に屈せず大衆に迎 合しないーという社是はどこにいったのでしょう。


 行政が構わず、警察も取り合わない。が、そこに新聞記者が分けいって異常 な捜査に怯える19歳の未成年者を守るのが、新聞記者の使命ではないのですか。 ジャーナリズムは、どんな事情があろうとも常に卵の側に立つべきなのです。


 もっと教育的な対応ができなかったのか、警察に突き出すのは行き過ぎだっ たのではないか、腰縄に手錠、上着を頭からすっぽり被せて報道カメラが撮り やすい通路を引き回すやり方は配慮に欠ける、などといった今回の一連の事件 の取り扱いをめぐって各方面から批判の声が出始めてきました。


 脳学者の茂木健一郎さんは、やはりご自身の3月4日付のブログで、「今回の 京都大学をはじめとする入試における"カンニング事件"は、いろいろな意味で 心が痛む。京都大学が被害届けを出し、『偽計業務妨害罪』でカンニングをし た学生が逮捕されるに至ったことに強い違和感を覚える」と述べ、本来とるべ き大学の在り方について具体的に言及していました。この人の見識に喝采です。 おっしゃる通り、学者は自分の信念でモノを言いきっていくべきです。

http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/57893/55852/67333556


 無垢な予備校生を守ってあげられないものか、と前回のメルマガ(3月2日 付)で書いたら数人から賛同の声が寄せられた。やれやれ群れるメディアの問 題は、悩ましい。考えれば、みんなこぞって書き続けるから、競争原理が働い て気がついたら総力戦になっていた、という印象です。1社が、それにブレー キをかけることなんて無理な相談で、特ダネを追いかけてなだれ込むように勢 いづいていくものなのです。それを、朝日新聞は「耕論」の1ページを使って、 なぜこんなに「敏感」に反応したのか、と問う。なぜこんなに「過剰」に反応 したのか、の誤植かと思った。自分たちが煽って、それを他人の責任にする。 いやらしい。バカほど騒ぐといったら失礼だろうか。


 もうひとつ、前原誠司さんの件、私心を捨てて大局的に判断−はよし、と思 いました。外務大臣の職を辞しました。これまでの民主政権の中で、前原さん の辞職が、一番分かりやすかった。民意は、辞める必要はないという意見が6 割以上にのぼり、前原さんに同情的でした。舌鋒鋭い自民の西田昌二さんは事 実を調べて現職大臣を一発で仕留めたのですから、さすがというしかありませ ん。腕をあげました。反面、潔い前原さんは男を上げた、と言ってあげたい。 政権末期の泥船から逃げたという容赦ない論評もあるが、結果的にそうなった としても彼はそんな打算的な政治家とは私は思えません。


 まあ、なんだか中学生の頃から知る焼き肉屋のおばちゃんの気持ちがアダに なって悲しい。西田さんが、「どんな方ですか?」と前原さんに質したら、 「在日の方です」とつい口をついてでてしまった。焼肉のおばさんが在日の人 かどうか西田さんは詰め切れていなかったらしい。前原さんは人がいいだけに この辺の駆け引きは得意じゃないから、まんまと老獪な西田さんの術中にはま った。


 でもね、中学の時から世話になった在日のおばちゃんが、遠い国のイメージ の外国人ですか。年5万、合計25万円で引責ですか。法律って? なんだかわか らないが、どこかおかしくありませんか。


 事あるごとに六法を字面のみで断定して大ナタを振るうのは、乱暴ではない か、と思う。どう考えても賢い人の仕事ぶりじゃない。駐車違反と放火殺人事 件の性質が違うように、25万円の違法献金と12億円に及ぶ所得隠しの悪質性に も開きが大きい。その罪の軽さ、重さを見極めるべきです。事の浅い、深いと いう違いにも配慮が必要です。この軽重と浅深を現実に即して切り分けなけれ ばならないのは言うまでもありません。それが一律同じ事件として扱うといの は、人間の問題解決力が著しく欠如しているという証左であり、この危うい現 実を嘆かざるを得ません。


 入試問題をネットに投稿した予備校生の偽計業務妨害事件で、京大など4大 学のうち同志社大学は、警察に被害届を出さないことを決定しました。予備校 生が未成年者であること、それに単独犯であることを考慮した、という。同志 社大の熟慮の判断を歓迎したい。また、予備校生はネットの回答を丸写しはし ていなかったという。


 ※先日、取材で訪れた金沢工業大学の「夢考房プロジェクト発表会」の報告は、 こちらの事情で次週になりますことをご了承ください。


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 □【一押し情報】ビジネスモデル学会(松島克守会長)春季大会  大会プログラム概要が固まり、その速報をいち早くご紹介します。テーマは ビジネスモデル学会が初めて取り組む「企業倫理」です。大会実行委員長の中 谷幸俊氏によると、 特別講演の講演者は多彩で、「センサーの限りない可能 性について」を日立製作所の矢野和男氏、"トロン生みの親"の坂村健東京大学 教授からは「ユビキタス最新事情」を、「TVのビジネスモデル変遷と可能性」 を日本テレビの岩崎達也氏ら予定している、という。


  ◇【日時と場所】3月26日(土)10:00-18:00 交流会 18:00-19:30 慶応大学 三田キャンパス東館


<主な講演>
基調講演(1):「ビジネスモデルとETHICSの俯瞰図
」 松島 克守 氏(ビジネスモデル学会会長/俯瞰工学研究所長)
基調講演(2):「ビジネスモデルとETHICSの研究動向」
 露木 美幸 氏(拓殖大学講師)
特別講演(1):「ビジネス顕微鏡/人間情報が創るこれからの企業成長」
 矢野 和男 氏(日立製作所基礎研究所主管研究長/人間・情報システムラボ 長/IEEE Fellow)
特別講演(2):「ビジネス・モデル・イノベーション基盤としてのユビキタ
ス・コンピューティング」
 坂村 健 氏(YRPユビキタスネットワーキング研究所長/東京大学教授

特別講演(3):「地上波テレビ・ビジネスモデルの限界と可能性」
 岩崎 達也 氏(法政大学客員教授/日テレアックスオン映像事業センター 長)
特別講演(4): 「産学連携の最新モデル」(仮
 鈴木 康之(JST産学連携コーディネータ)

<参加費と申込方法>
大会参加:
(3/18までに事前申込みと振込みをされた方)
正会員5,000円 会員学生2,000円 非会員7,000円 学生3,000円
(当日申込みの方)
正会員6,000円 会員学生3,000円 非会員8,000円 学生4,000円
交流会:
(3/18までに事前申込みと振込みをされた方)
正会員・非会員・学生ともに3,000円
(当日申込みの方)
正会員・非会員・学生ともに3,500円
参加お申し込みはこちらのページからお願いします。
http://bit.ly/g8zyFO
お問い合わせは、学会HP「問い合わせ・各種申込」
http://bit.ly/dtHwUH
または下記メールアドレス宛にお願いします。
ホームページ:http://biz-model.org/
メールアドレス:sec@biz-model.info


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 ◇石黒憲彦氏の「シリコンバレー再訪」 【連載】経済産業省商務情報政策局長、石黒憲彦氏『志本主義のススメ』は第 161回「シリコンバレー再訪」です。


 読み応えがある面白い原稿でした。石黒さんのノスタルジーを織り込みなが ら、ご自身の少しの失敗と大いなる自慢話しが楽しい。シリコンバレー再訪、 スタンフォード大学で開催された経済産業省、米国国務省、JETRO主催の「イ ノベーション・起業・雇用促進のための日米対話」と関連シンポジウムの報告 です。そのパネルで、石黒さんの率直な発言やコメントが光っていました。


 ここで何が議論され、どんな課題や可能性が浮かび上がったかーの詳細は本 文をお読みください。大変参考になります。


 ただ、私が着目した人物は、ダニエル・オキモト名誉教授の存在で、石黒さ んのかつての恩師であるダニエル・オキモト名誉教授がコメンテーターになっ ているため、石黒さんのスピーチの冒頭、「そのためナーバスになっている、 今日は低い採点しかもらえないのではないかと心配だ」と言って笑いをとった、 というエピソードを紹介しています。ダニエル・オキモト名誉教授の名前は、 先月、福岡へ飛んで九州大学の谷川徹教授からもお聞きした。谷川さんの恩師 といい、それはルース駐日大使との関係もダニエル・オキモト名誉教授が接点 だったと伺っていた。そして、石黒さんの今回のコラムでの全編、ダニエル・ オキモト名誉教授の存在がクローズアップしていました。


 さて、石黒さんのプレゼンやコメントは、ダニエル・オキモト名誉教授から どのような評価点を与えられたでしょうか。その答えは、本文の末尾に紹介さ れています。

 


 ◇塩沢文朗氏の「再びOPCW(化学兵器禁止機構)の将来構想委員会へ」 【連載】塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』は第75回「再びOPCW(化学兵器禁止機 構)の将来構想委員会へ」です。前に紹介の石黒さんがシリコンバレーなら、 塩沢さんはオランダ・ハーグ再訪ということでしょうか。


 OPCW(化学兵器禁止機関)。私のようなドメステックなローカルに蟄居して いる身からすると、OPCWに関する委員会ってどのような内容で、どんなふうに 議論が詰められていくか、まったく想像できません。それもそのはず、 「OP CW将来構想委員会」は、その存在とメンバーは公表されていますが、議論の内 容は非公開」とされているからですが、塩沢さんの原稿のお陰でこれまで何回 か、この連載で取り上げてくれています。塩沢さんの注釈にもそんな記述があ りました。


 ≪私が何回かOPCWのことを書きましたので、大よそどのようなことをやってい る国際機関であるかはご存知と思います。この際、もっとOPCWについて知りた いと思われたら、このコラムの第38回「国際機関をゼロからつくりあげたある 英国人の話」をご覧下さい。もちろん、OPCWのHP(http://www.opcw.org/)に も分かりやすい説明や活動の様子を示す統計数字などがあります≫ そして、今回のコラムでは、やや突っ込んだ形でOPCWの会議の模様にぎりぎり 触れられています。


 「1日に5セッション、計5時間ほど、一応、セッション毎のテーマを設定して 議論しますが、原則は自由討議です。一応、議長が求めに応じて発言者を指名 する形で議論は進みますが、少人数の会議ですから割り込みの発言や直前の発 言内容に関する質問などが時として飛び交います。このために時として議論は テーマから離れて別のテーマに飛んだり、議論がぐるぐる回りしたりします」 と。加えて、「OPCWが時代のニーズに即して本当に進化していけるかどうかは、 この委員会の提言の使い方にかかっていると思いますが、鍵は、どううまく提 言内容をOPCWの締約国会議の場に落とせるかでしょう」とこの委員会のポイン トを説明しています。


 塩沢さんのコラムを読みながら、やはりというか、塩沢さんはオランダが好 きなのでしょうね。街並みや都市計画、目を細める塩沢さんの姿が浮かんでく るようでした。お疲れ様でした。


 ◇氏家豊氏の「オープンなイノベーションの傾向と対策」 【連載】氏家豊氏の『大学発ベンチャーの底力』の第12回「オープンなイノ ベーションの傾向と対策」です。とても興味深いテーマです。前回に引き続い て、事業展開のスピードを上げるためには、オープンなイノベーションの処方 をふたつ指摘しています。


 つまり「技術シーズ、リソースの補充・補完」、そして「技術製品・事業コ ンセプトつくりの円滑化」を指摘し、本文ではこれらについて詳しく論述して おります。




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