◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2010/11/17 http://dndi.jp/

教育NO.1の誉れ、金沢工大の強さの秘訣

 ・「はやぶさ」の偉業:小さな粒の大金星
 ・企業連携型プロジェクト「夢考房」
 ・創立者・泉屋利吉氏の建学綱領の慧眼
 ・実験工房+モノづくり道場+世界への発信基地
 ・中島貴志さんと今井慎吾さんの晴れ舞台
 ・「課題日本の新しい現実」を問う!
 ・「はやぶさ」の偉業と「仕分け」の愚挙
〜連載〜
 橋本正洋氏「社会人博士の最新大学院リスト」
 山城宗久氏「柏キャンパスへ、ようこそ」
 石黒憲彦氏「はじめてのソウル:百聞は一見に如かず」
 塩沢文朗氏「中西準子先生の文化功労賞に思う」
 氏家豊氏「イノベーション・エコシステムの形成」

DNDメディア局の出口です。新しい一歩をふみ出しませんか。新しいことにトライするのですから、不安もリスクもついて回るし、うまくいく保証もない。が、重い心のドアをこじ開けてふみ込んでいくのなら、その道すがらやがてキラッと光る何かが見つかるに違いない。


失敗したら? プライドが許しませんか、また起き上がればいいだけさ。世間体が気になりますか? 風評なんて卑怯者の遠吠えみたいなもので、そもそもアテにならないのだから気にしちゃいけません。腹が決まりませんか、う〜む、それは困りました。しかし、悩む迷うほど人は強さを掴んでいく、ひとりの祈りが心をつないでいく、というのですから、夢追い人のささいな一歩でもいいではありませんか。それを新しい希望の一歩にしてみてください。さあ、もう幕は上がっているのですから。


◇            ◇           ◇


◇DNDスタッフ:「新しい希望の第一歩へ」


わが社の若いスタッフ3人が、DNDの運営の傍ら今月から新しいビジネスに挑戦し、お客さんと接しています。何が、売れるか、どうやって仕入れるか、各種届け出や許認可のルールを調べ、そしてコストと収益を考えながらシフトを敷いての奮闘が続いています。事業のプランが、スタート3日で大幅にくるってとん挫、一時、頭を抱えていた。が、予期せぬ"特需"もあってか、かれこれ2週間経ってギブアップするかとおもいきや、ますます意気軒昂です。


若さは、なにものにも代え難い財産なのかもしれません。少ししか眠らない。ご飯も満足に取らない。不眠不休という感じです。が、いっこうに疲れた様子はない。かえって、面白がっていきいきしている。私が、机上であれこれ言う、すでにそんな状況ではなくなりました。現場で掴んだ知恵が、日々蓄積していくらしい。きちっとメモしているところが、頼もしい。


往復200キロを超える移動距離、わずか1000円を惜しんで高速道路は使わない。車は、燃費のよい電気自動車か、ハイブリッドに変えようかと、いまのままの月額のガソリン代と、車購入の月のローンの支払い額をはじいて思案中という。朝が、苦手な彼らが、眠い目をこすりながら早朝4時すぎにはスタンバイしている。さて、これを起業といえるか、どうかは別にしてほんの小さな商いだが、新しい希望の一歩を踏み出したことは確かです。


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◇「はやぶさ」の偉業:小さな粒の大金星


京大卒の工学博士で大手ゼネコンの役員を務めた、私の個人的な相談相手の山岡礼三さんから深夜メールが入って、「明日のメルマガ執筆で、最後の追い込みでしょうか、本日のニュースで頑張りすぎないように…」との励ましのメッセージをいただいた。メルマガの熱心な一人で、有難いことに度々その感想やご意見を寄せてくれます。その本文の本日のニュースとは、探査機「はやぶさ」が持ち帰ったカプセル内の微粒子が1500個、これが「イトカワ」のものと断定した、というニュースのことです。「小さな粒の大金星」(朝日)の見出しは、傑作でした。まあ、熟達したメルマガの読者は、こちらの手の内をすっかり読んで、メルマガのテーマまで"先読み"されてしまうから、うっかりしていられない(笑)。


さて、昨日の朝日の夕刊1面は、「イトカワの粒子と確認‐はやぶさ探査」との見出しで宇宙機構の発表を伝えていた。電子顕微鏡をあてると、そのX線の波長から、1500個すべてで「地球にある、かんらん石などと比率が異なっている」、「他の小惑星だったと考えられる隕石の成分とも一致した」、「はやぶさからの赤外線写真や地上の望遠鏡の観測で判明したイトカワ表面の成分と同じだった」という。つまり、月と彗星以外の岩石を世界で初めて持ち帰ったことを裏付けたわけです。今後、専門機関での詳細な分析に入り、これらによって、微粒子がどれだけの熱を受けたかで、小惑星のでき方や太陽系の成り立ち、さしずめ地球誕生のなぞの解明に迫る、と期待されているという。


やっぱり、凄いことだった。あらためて「はやぶさ」の偉業に驚きを禁じ得ません。この計画の総括を務める川口淳一郎教授は、「はやぶさが帰ってきただけでも夢のようなのに、夢を超えたものとはどう表現していいのか」とうれしさをこらえきれない様子でした。新聞は、川口さんの表現を切り取って、≪はやぶさ偉業「夢を超えた」≫−と見出しをとった。どう表現するか、って、これ以上の表現は、ちょいとそんなに見当たるものではないし、思いすら及びません。いまさら指摘するまでもなく、「はやぶさ」の快挙は、本年の重大ニュースの上位にランキングされるでしょうし、宇宙開発の世界史を塗り替える偉業になるかもしれません。


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◇金沢工業大学の「産学連携フォーラムin東京」


金沢工業大学大学院の東京の拠点となる虎ノ門キャンパスで、この12日に開催の「産学連携フォーラム・夢考房プロジェクト発表会in 東京」に参加し、前座で少しお話をしてきました。なにせ、学生本位のきめ細やかな教育で、大学ランキングNO.1の誉れ高いK.I.T(Kanazawa Institute of Technologyの略)ですから、手を抜いちゃ失礼とばかりに、勢いスティーブ・ジョブズの『驚異のプレゼン』にあやかって、画像や映像を多用し、文面は「なぜか、上海」など文字を極力絞り込んだシンプルな資料に仕上げたつもりでした。そして、声も枯れるほど繰り返しオーラルな練習もこなして臨みました。パワーポイントは枚数で36枚のボリュームは、さすがに時間オーバー気味でした。ジョブズさんは、何度も練習する、と教えるのだが、1時間ものスピーチを1回半程度、声を出して録音したら、へとへとでした。さて、その本番〜。


石川憲一学長を始め、参与の岩下信正氏、その当日まで誠実な対応をしてくださった常任理事で産学連携機構事務局長の村井好博氏、そして虎ノ門大学院の事務室長の泉屋利吉氏らから、心温まる出迎えをいただきました。会場は、大勢参加してくださっていました。



:産学連携フォーラムin東京の風景

お友達で講演のご紹介をいただいた赤羽良剛さん、後輩の赤羽広行さん、DND連載の氏家豊さん、上海にご一緒した張輝さん、DNDイノベーション・サロンの小谷野幸夫さん、小林学さんらの顔がありました。経済産業省から大学連携推進課長の進藤秀夫さんが、最前列に陣取っておられたから、「お役所の蔭口でのチクリ、と思ったが、進藤さんがこられたのでやれなくなった」と言ったら会場から少し笑いが漏れていました。進藤さんは、いつも折り目正しく熱心な方で感心いたします。


メインは、あくまでK.I.Tの一押しの「夢考房」プロジェクトの紹介と事例の発表でした。先般、このフォーラムに先立って金沢のキャンパスにお邪魔し、「夢考房」を見てきました。村井さんと、常任理事で産学連携推進部長の谷正史さん、そして副学長の山部昌さんらがご説明してくださいました。



:左から泉屋室長、石川学長、今井君、赤羽さん

これが、凄いんです。「夢考房」が、企業連携型のプロジェクトで、学生がこんなものを作りたい、というテクニカルな夢を形にする、という意味での「夢考房」なのですね。先輩学生から後輩へとノウハウが伝授され、あるいはNHKのロボットコンテストなど国内外の大会に出場するチャンスを生かし民間企業との連携で製品開発まで手掛けているのです。学部や学年の壁を取り払った横断的なプロジェクトは、いますぐ役に立つ実践的な取り組みに見えました。「人間形成、技術革新、産学協同」を掲げた創立者である先代の泉屋利吉氏の建学の精神が、キャンパスの隅々まで行き届いているようでした。


◇            ◇           ◇


◇自由な実験工房+モノづくり道場+グローバルな発信基地


率直に言えば、1993年の設立当初の狙い通り、学生の夢を形にする自由な実験工房であり、次世代のエンジニアを育てるモノづくり道場であり、そして、ロボットなど未来志向のコンテストに挑むグローバルな発信基地でもあるように感じましたね。


自作エンジンによる燃費リッター3000キロの実現や、小型電気自動車の2時間走行で走行距離80キロの実現を達成した「エコランプロジェクト」、また「ロボットコンテスト」では優勝常連校の一角で今年も国内で優勝し、カイロでの世界大会に出場、見事技術賞の栄冠を射止めました。この他、福祉機器、風力発電、小型無人飛行機、自律走行車など今日的な課題解決型のリアルなプロジェクトが目白押しでした。


民間企業からの連携や協力もしっかりしています。スズキからエンジンの提供、KDDIからは無線通信用携帯電話、各種モーターはマブチモーターから、サンリツオートメーションからレスコンボードなどに加え、それに丸栄製作所、古河電池、東レ、TAN-EI-SYA、北陸日本電気ソフトウエア、北陽電機などの社名が確認できました。この「夢考房」のプロジェクトは、また別の機会に紹介することにいたします。


◇中島貴志さんと今井慎吾さんの晴れ舞台



:左から石川学長、プレゼンの中島君、今井君らと

この日ステージで発表したのは、このロボットプロジェクトロボコン班リーダーで工学部ロボティクス学科4年の中島貴志さんと、F1を小さくした学生フォーミュラカーのプロジェクトの大学院修士課程の今井慎吾さんでした。ざっと20分弱、ノー原稿で堂々としたプレゼンでした。偉いですね。企業との連携で、やはり軽さを数グラム削るより、それを我慢してでも納期を守るー必要性を痛く感じた、と今井さん。お二人とも、次代のエンジニアとして活躍する日もそんなに遠くない、と思います。別部屋では、その他の技術開発を含んだ優れたプロジェクトのポスター展示が、同時に開催されていました。学生らが来場の企業関係者に説明していました。


◇            ◇           ◇


◇「課題日本の新しい現実」と問う


私のこの日のテーマは、『「課題日本」の新しい現実・産学連携の視座から問う』という内容でした。「新しい現実」は、経済学者、ガリブレイス氏の言葉でした。石川学長が、オープニングのスピーチで私の講演の要旨に触れてくださいました。


≪日本を取り巻く環境が激変し、日本が危ういのではないかーその「日本の課題」は、どこにあるのだろうか。これまで経験したことのない、「新しい現実」に目を向けよ。そして、この現実を産学連携の視座から俯瞰し、これからの日本と日本人のあるべき姿を捉えてみたい。いま必要なのは、リーダーの戦略と覚悟です。次世代を担う「若者」の情熱と、「統合」という視点である≫というような内容でした。


その資料の2枚目は、小惑星探査機「はやぶさ」の映像でした。7年ぶりに60億キロの旅から奇跡的に戻った映像は、何度見ても感動します。小惑星「イトカワ」で岩石を試採したカプセルを分離し、その最後の力をふりしぼるように大気圏に再突入しました。さて、どうでしょう、その瞬間、強い光の帯を幾筋も引きながら落下し、その光の先頭をカプセルに譲るように燃えて尽き、流線型の光の束が青白く中天を駆け抜けていきました。1分余りの映像をまず、お見せしたかった。が、なんと、映像は、いくらクリックしても動きませんでした。いや、失敗、これが心残りでした。随分、苦労して入手した映像なのに…。


K.I.Tの「夢考房」のような「連携」と「統合」を併せ持ち、ほとばしるような学生らの自主、自立のプロジェクトの延長線に、この「はやぶさ」のミッションの完遂があるのかもしれない、と感じていたのです。このはやぶさの計画で、日本は科学的成果だけでなく、新型エンジンの探査機が自ら考えて航行する技術も得られた。カプセルを大気圏に再突入させた耐熱カバーの技術は、国際宇宙ステーションから試料を持ち帰る補給船や、将来の有人飛行の開発につながると期待されるーと朝日(17日付朝刊1面)が、その系譜を書いていた通り、その分野のエキスパートを結集し、様々な先端技術や制御、材料開発などが複合的に融合した成果なくして果たし得なかったわけです。つまり、「統合の結晶」でした。


講演で示したかったのは、激動の世界の中で孤立し地位が揺らぐ日本、外から押し寄せる脅威より、中からメルトダウンしているのではないか。そこに中国、韓国、インドの台頭…。もはや「はやぶさ」の偉業とは真逆の、内向きに終始する日本型システムは限界という懸念の表明でした。今日の日本のあり様がグローバル時代の流れにそぐわないのではないか。それは、縦割りでセクショナリズムである、という組織上の問題に加え、リーダー不在で覚悟もなければ戦略もない。ぐずぐずし、おろおろして決められず先送りばかりでは、あらゆるチャンスを失わせている、という問題意識からでした。


産学連携の視座からは、DNDでスタートした連載『新興国の知財戦略』の筆者、東大教授の渡部俊也氏が、「日本型意思決定のシステムなどに関係する構造的なものであるように思われる」と慎重に言葉を選んで警告し、シリコンバレーで起業した外村仁氏は、先のビジネスモデル学会の基調講演で「ともかく日本人の物事の決定のスピードが遅い」と懸念をあらわにされているのです。9月号の「ネイチャー」では、アンジェスMG創業者の森下竜一さんが警告を発し、産学連携機構理事長で東大教授の妹尾堅一郎さんが『技術力で勝てる日本が、なぜ事業で負けるのか』の本で、急所技術、知財戦略、そして市場への普及という三位一体の経営を訴え、わが国の自動車産業、ロボット産業、また農業まで「危ない」と警告を発しているのは、ご存じの通りです。


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◇「はやぶさ」の偉業にみる、仕分けの愚挙


「はやぶさ」の存続すら危ぶまれた事業仕分けは、その融合、統合の新しい流れに急ブレーキをかけているように思えてならない。そして、組織を分けて分断しているのである。信じられませんね。驚きますね。文科省でやっているから総務省はやる必要がない‐と廃止の決定が通告された教育現場におけるフィーチャースクール普及推進事業の、ITC導入は、廃止。観光事業は、国土交通省の所管だから、総務省はやる必要がないから廃止。前総務大臣の原口一博さんじゃないが、ICT革新事業は、"スクールクラウド"という将来を見据えたものだ、という。新成長戦略を閣議決定し、政府を挙げて取り組もうとするものをわざわざ仕分けと称して、バラバラにする。政府の閣議決定を事業仕分けで覆す、というのだから「体制の中の反体制」の構図に見えます。トップの決断は、いったいどうなっているの?


医療ツーリズム元年、この事業推進だって国際的だから、外務省、観光だから国土交通省、医療は厚生労働省、医療ツーリズムは経済産業省も関係するのは当然で、新しいグローバルな要請は、省庁横断的なテーマが多い。「クールジャパン」の海外展開も外務省、経済省、国土交通省の三省がタッグを組んでいるではないですか。まあ、お役所がマンガ、アニメ、ゲーム、コスプレといったジャンルに関わるのは違和感があるが、お仕事だからしょうがない。ゲームといえば、中国でのオンラインゲームの加入者は、もはや4000万人という状況を生んでおり、わが国のゲームソフトメーカーの淘汰も否めない事態を危惧する、知人もいる。まあ、いずれグローバルに対応した組織再編は避けて通れないでしょう。とりあえず、少なくてもいまの状況では、各省庁がそれぞれ連携しながら一緒に取り組まないと、課題解決にならない。蓮ほうさんは、「省を見るより国民を見る」というから、まずます内向きになる。「省を見るより、世界をみる」という姿勢が求められるのではないでしょうか。


講演では、そんな問題意識で新興国の動きを分析しながら、日本の新しい現実をフォーカスし、そのため処方を示したつもりでした。さて、その最後のスライドに、日光東照宮の流鏑馬の的を射抜くシーンをこれまた映像で見せようとした。が、これも動きませんでした。いやあ、日光とかけて結構と解き、「結構」と「統合」を重ね合わせようと意図しました。「日光みずして結構というなかれ」というところの結構とは、建築美を誇る国宝・陽明門のことである、というのは、昔からよく知られていることです。


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◇橋本正洋氏の「社会人博士募集の最新大学院リスト」


【連載】特許庁審査業務部長、橋本正洋氏の『イノベーション戦略と知財』の第33回「社会人博士の取り方−その4 社会人博士課程を有する大学院リスト」です。これはニュースです。橋本さんがご推奨のMOT・知財経営系の社会人博士課程を有する大学院の紹介です。その一覧を表にしています。タイムリーで便利なデータですね。


 東北大学、山口大学、東京工業大学、東京農工大学、東京大学、金沢工業大学、早稲田大学、東京理科大学、一橋大学、大阪工業大学などで、【研究科・専攻】、【入試の概要】、【募集要項】などが整理されています。さすが、大学との接点がないとこんな芸当はできませんね。大学連携推進課長時代のネットワークが生きているのでしょうか。ただし、ご本人もご指摘のように、大学院(MOT・知財経営系)でも社会人博士課程を有していたり、実質上学生を受け入れていたりする大学院があり得ますので、ご注意を!


◇山城宗久氏の「柏キャンパスへ、ようこそ」


【連載】東京大学産学連携本部副本部長、山城宗久氏の『一隅を照らすの記』は第31回「柏キャンパスへ、ようこそ―の巻」。先月末の東大の柏キャンパス一般公開に参加したご経験からのアドバイスのお話です。山城さんのおススメは、物性研究所のガイドツアーと、七宝焼き作りが楽しめる新領域創成科学研究科の基盤科学研究系柏図書館のメディアホールで上映されるビデオ、大気海洋研究所での鮫肌体験という。見どころ、というか、読みどころのツボは、後述の柏キャンパスに研究・留学等で来ている外国人向けの将棋講座で、山城さん、さて、有段者相手に先手で、「四間飛車に振って、高美濃囲いに固めました」−と解説は、手慣れた感じだが、その結末やいかに…。


◇石黒憲彦氏「はじめてのソウル:百聞は一見に如かず」


【連載】経済産業省商務情報政策局長、石黒憲彦氏の『志本主義のススメ』は、第154回「はじめてのソウル」。お仕事でご出張の合間をぬって、なんでも見てやろう−というその好奇心は逞しく感じられました。窓越しに、韓国の家庭料理のリーズナブルな店に飛びこむシーンは、目に浮かぶようでした。


さて、その出張は、韓国政府主催で行われた「日中韓IT局長OSS(オープンソースソフトウェア)推進会議」と三カ国の産業界が構成する「北東アジアOSS推進フォーラム」に出席するためでした。羽田から夜7時過ぎのフライトで飛び、翌日の午後には、三カ国のIT担当局長間で今後のオープンソースソフトウェアを巡る各国の状況、政策、クラウドコンピューティング、スマートグリッドなど最近の話題を取り上げ意見交換した、という。


ご本人もお認めになっていらっしゃる「百聞は一見に如かず」の通り、まあ、家電の価格、女子高生のスカート丈、伝統楽器を操る女性のグループら、ソウルの街を、人を、モノをウオッチされています。


◇塩沢文朗氏「中西準子先生の文化功労賞に思う」


【連載】塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』は第72回「中西準子先生の文化功労受章に思う」です。うれしいニュースは、中西先生の受賞である、として、現在、産総研の安全科学研究部門長の要職にある中西さんのキャリアに触れ、その功績の核心をつく。


≪「危険」、「安全」の二分法的な考え方に立って、「危険」となると極端な対応をしがちであった日本の有害物質の安全対策に、中西先生は科学的合理性を導入するさきがけとしての役割を果たしてこられました。「人の命は地球よりも重い」と科学的思考を止めるのではなく、「人の損失余命」という、それまではタブーとも思われていたようなことに科学合理性を導入して、リスクの大きさに応じた対策や対策間の優先順位の検討≫と。


そしてご自身とのかかわりにも言及しています。また中西さんがご自身のブログで受賞の感想を述べている点について、「この文章全体には、中西先生の少女のように純粋なお人柄が表れています」という。また中西さんが、野間口有理事長にご報告された時のやり取りも印象的です。素敵な文章で、気持ちが和んできました。


◇氏家豊氏の「イノベーション・エコシステムの形成」


【連載】氏家豊氏の『大学発ベンチャーの底力』は第7回「イノベーション・エコシステム形成へのアプローチ」です。引き続いて、大手・中堅企業と新興企業側のアライアンス戦略に言及し、「両者で、お互いを真に必要とする関係を産業社会にビルトインする」ことを前提に、新興企業側、いわゆるベンチャーの技術・製品の完成度がポイントという。またひいては企業発展スピードアップによる新興企業群全体の底上げが重要で、「この部分を市場に任せるのではなく、これは国家イノベーション戦略の領域」定めているのです。


そこでお得意のシリコンバレーのケースを例に日本の場合の政策のあり様を指摘しています。冒頭にあるように、要するに、イノベーション・エコシステムの形成が重要と繰り返し述べています。面白いデータは、産業クラスター内での新興企業の厚みが、大手企業の利益率が高いーという傾向を分析し、シリコンバレー、東海岸などエリア別の比較表は、説得力がありました。どうぞ、氏家氏の蘊蓄を堪能してみてはいかがですか。


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