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『亡国のインテリジェンス』に学べ

 ・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の教訓
 ・服部健一氏「日本人は目覚めるか」の期待
 ・仮野忠男氏の取材メモ「後藤田氏のウサギの耳」
〜連載〜
 ・橋本正洋氏の連載がGoogleランク1位
 ・山城宗久氏の「大いなるジェットストリーム」
 ・塩沢文朗氏「原点回帰の旅」が祝!70回

DNDメディア局の出口です。本日、ワシントン在住の米国特許弁護士でDNDの連載『米国特許最前線』で健筆をふるう服部健一氏が『泥沼化する尖閣問題―日本人は目が覚めるか』と題したタイムリーな原稿を送ってくれました。「ご自由にお使いください」とご本人の了解が得られましたので、その全文をメルマガとして転載します。私のメルマガは、この項の後に続きます。


◇              ◇              ◇


尖閣問題は、中国人船長の釈放で事態は収束するどころか、中国は「謝罪と賠償金」まで要求し始め、日本にとって益々泥沼化している。海外諸国は、日本は中国に屈した(韓国)、アジアの力関係は明確に変わった(米国)と報道し、現時点でさえ日本の敗退であるとレポートしている。これほどの国辱的展開はない。


それにしても、日本政府の国際感覚、政治感覚は目を覆いたくなるものがある。ある外交のトップは、「尖閣諸島は日本の領土で、我々は日本領土を守るために行った行動なのに、中国が何故あれほど強行になるのか理解できない。」というようなコメントを出していた。何という常識外れのコメントなのだろうか。


中国は、一貫して「尖閣諸島は中国古来からの領土」と主張している。その真実は別として、自国の領土内で日本の海上保安庁の船が中国漁船を拿捕すれば、中国からみればそれこそ違法行為であり、当然報復してくるのは明々白々である。


それを「日本の領土だから」と自分の立場のみで考えても何の意味もないことは、誰でも理解できることだろう。外交のプロがこのような国際感覚では話にならない。


それに中国は領海問題でアジアの多くの国と揉めている。ベトナムとは海軍同士が戦い、ベトナム漁船が拿捕されている。フィリピン軍艦艇は中国漁船を沈没させるし、9つの島を実効支配している。インドネシア海軍は、中国漁船を拿捕したが、中国艦艇が奪還した。韓国は中国漁船を拿捕し、船長開放に罰金1100万円を要求している。


つまり、中国にとって尖閣領海問題は、他の国との領海問題にも影響するので必死なのだ。これらのアジアの国々としては、リーダー格といえる日本にがんばってもらいたい期待があったが、日本の腰砕けで終わって、がっかりしているだろう。


菅内閣がそういう全体状況を考えたかは全く分からない。


とにかく、今の民主党のやることなすことは、全て素人の政策とほとんど変わらない感がある。


中国が尖閣問題にこれほど付けこんでいるのは、沖縄の米軍移転に大問題が生じ、日米安保にヒビが入っていることが一つの要因になっていることは明らかであるが、これも民主党が沖縄県民に「最低でも米軍を沖縄の外へ出す」という根拠のないマニュフェストを打ち上げ、沖縄国民にそれを鵜呑みさせたことから始まっている。


県外に出すことが実現可能かどうか、何が問題になるか、それに対してどう対応するか等の検証は、まるでないことは今になってみると火を見るより明らかである。


しかし、そういうリップサービスは、国民の期待になっていくので、解決できない問題へと発展し、収拾がつかない事態へと発展させる。できもしないマニュフェストを高々とかかげ、いざ施行しようとしてみたら、「やっぱり難しい」では、政治家として落第である。


勿論、最終的には、マニフェストの実行可能性を考えず、こういう民主党を選んだ国民の責任であるともいえるが。但し、これは民主党のみの責任という訳でもなく、国民を引っ張る魅力やビジョンもない自民党、その他の党にも責任はあろう。


それはともかくも、目に余るのは、日本のジャーナリズムの報道の酷さである。中国の報復措置を大々的に報道し、日本は明日にでも経済が破綻するニュースを流す。日本の弱みを重箱の隅を突付いて、わざわざ逐一暴き、日本国民を脅してさえおり、中国にとってはこれほどよい情報源はない。まるで、中国政府の片棒を担いでいるようだ。


中国は、共産党が報道の全てを取り締まっているから、中国国民はそれのみが真実と信用して、「日本が勝手に侵犯している。日本は降参して船長を釈放した。対日戦勝利記念日だ!」と狂喜乱舞する。中国共産党にとって、国民の全ての視点が日本へ行き、これほど都合のよいことはない。


では、日本は本当に完敗しているのか。


私は、そうは思わない。


この尖閣問題で多少の収穫があったとすれば、それは、日本国民の中に国を守る、利益を守るという意識が戦後初めてといってよいほど台頭してきたことである。


大戦後、日本は、無抵抗主義の国になってきた。実際、「戦争が始まったらすぐに降参し、一切抵抗しない」と提案していた地方自体が数多くある。そんな脆弱では日本の崩壊につながりかねない事は、今回の事件で多少理解できるのではないか。


ともあれ、議員達は超党派で「国家主権」を守るために結束し、沖縄の漁民も漁業権を守るため、中国へ抗議したという。


沖縄県知事の仲井眞弘多氏(私の通産時代の直属の上司であり、飲み仲間であったという奇遇)は、「尖閣は昔から沖縄の県域なので視察に行く」と述べた。


やっと日本全体が動きつつある。


これで沖縄の米軍移転問題も沖縄県民を含む国民全体が国家安全保障という全体的視点から真剣に考え始めるのではないか。


日本は戦後、国を守ることは全て米国に任せて、経済発展のみに集中してきたが、そのツケが一気に来たといえる。


国を守る気概があまりにない理由の一つは、日本人が皆、日本を無資源、島国の小国で、誰も日本を攻めやしないと思い込んできたからだろう。


しかし、諸外国は日本を小国とは思っていない。特に中国、韓国、ロシアという日本にやられた国は、目の色を変えて日本に復讐する機会を狙っている。ロシアなぞ、つい最近になって日本に勝った「戦勝記念日」を創設した。


日本は、たとえ経済面とはいえ戦後奇跡の復興を遂げ、欧米と肩を並べる国になり、その気になれば核兵器でも空母でも戦闘機でも、明日にでも作れる実に恐るべき国である。だから隣国は戦々恐々でいなければならないわけだ。


しかし、中国は一方的勝利のためかどうか、勇み足をやりつつある。


その一つは、人民日報が、「日本は中国なしには発展できない。中国に対抗するならその代償に日本は耐えられない。」と報道したことだ。


これは中国が大国、日本は属国と表現したのと同じだ。これで怒らないほど日本人はアホではないだろう。


要するに日本は、中国以外のアジア諸国と組むことも、もっと真剣に考えなければならない。幸い、ベトナム、インドネシア等々の国は、中国が共通の敵になっており、今回の中国の姿勢を批判し始めている。これらの国の賃金は中国より安く、次の生産市場の基地といわれている。日本のアジア政策は大きく変わっていくだろう。


いずれにせよ、とりあえずは日本の安全確保が最優先となろうが、米国が一方的に日本を守ると考えていたら、これも大間違いである。ベトナムや中東で疲弊している米国も日本が真剣に戦わなければ絶対加担してこない。


日本もこれを機会に本当の防衛について、真剣に考え出す気配がようやく出始めたようだ。


三島由紀夫が「自衛隊よ立ち上がれ!」と40年前に割腹自殺したときに、日本の国民は「彼は狂人だ。日本の美意識に殺された。」と何の反省も反応もしなかった。


あれから約半世紀して、日本人は彼が訴えようとしたことをやっとまともに考え始めるかもしれない。(以上=服部健一氏の項)


◇             ◇            ◇


◇『亡国のインテリジェンス』に学ぶ
 DNDメディア局の出口です。第2部となります。服部氏に続いて尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件について―です。


列島に不穏な空気が淀んで、さらに危うい事態を招きかねないのではないか。いまや経済並びに軍事大国で、しかも統率と狡知に長けた外交の中国が相手なのですから、それなりの備えと構えが求められるのは当然です。が、9月7日の事件発生当初から、中国と日本の対応にプロとアマの差を見せつけられました。息を詰めて虎視眈々と獲物を狙う不気味なスナイパーのような中国の構えに対して、わが国の政府といえば、代表選挙に浮かれた"お祭り騒ぎ"で、外相交代劇のその一瞬の緩んだスキを狙われた格好です。日本の領土であることは事実で、中国の主張は無茶苦茶です。が、その領有権をめぐる紛争は、平和ボケした凡人の思いつきや浅知恵でどうにかなるレベルのものではないことを思い知らされたことは確かでしょう。


今朝の読売新聞13面の国際面は、上海万博会場で中国の次代を担う習近平国家副主席とロシアのメドベージェフ大統領が握手を交わす写真が掲載されていた。記事は、中露の共同声明の要旨を紹介し内容は、そのターゲットが日本というから驚きです。「日本が中国に侵入後、ソ連は直ちに巨大な援助をし、中国国民もソ連軍の作戦に参加した。この両国民の戦闘での友情と助け合いで築いた輝かしい歴史の1章が、いまの戦略的パートナーシップの基礎を築いた」と。資源大国のロシアと中国の両巨頭が、国連安保理の常任理事国として戦争と衝突を防ぐため共に努力する。それは北方領土と尖閣諸島の"領土問題"で共闘する、というのだろうか。


その脇は、中国が巡視船増強へ、という見出しで、「中国海洋報」が伝えた国家海洋局の中期計画でした。「中国の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚管轄海域内を全面的にカバーする区域ごとのパトロールを行い、他国の海上侵犯事件に対する対処能力を高める」とし、装備増強だけでなく専用の航空・船舶吉を建設する方針という。この強力なパトロール隊は尖閣諸島周辺も念頭においているとみられる、と記事は結ぶ。


なんだか中国の意のままに中国の都合のいい情報が流れ込んできているように思えますね。服部氏が指摘している通りです。事件発生の翌日の9月8日の第一報から、次々と対抗措置を打ち出す中国政府の水面下の動きが垂れ流され、その大半が私たちの耳目を刺激してきました。与野党の政治家も大手メディアも他人事のように批判ばかりしていないで、そろそろ今回の事件を教訓に「国益」を守るという基本的なスタンスのあり様を言論の自由を合わせて捉え直すべき時期にあるのではないか。


ご存じでしょうか、政治ジャーナリストで元毎日新聞論説委員の仮野忠男氏が今年7月に表した警世の書『亡国のインテリジェンス―「武器なき戦争」と日本の未来 』(日本文芸社)が、にわかに注目を浴びています。発売当時、このタイトルはやや大げさかもしれない、と正直少し気になっていましたが、今回の衝突事件でその杞憂は吹っ飛んでしまいました。そして、この本がこの事件のさまざまな局面で多くの教訓を示唆していることに気づかされました。危機管理の要諦が随所にちりばめられているのです。


仮野氏が主宰する月1回の市民塾には与野党を問わず政治家ら多彩なゲストが毎回登場します。仮野氏の人脈からで、会はすでに100回を超えています。彼は、誰が相手でもへりくだらないし偉ぶらない。そんな人柄が気に入って私もちょこちょこ顔をださせていただいています。その仮野氏が、「このままでは日本は本当にダメになる!」と叫び、「武器なき戦争と日本の未来」を展望しながら、内外の論客19人とのインタヴューによって高度なインテリジェンス機関の必要性とその役割を提示しているのです。各国のインテリジェンス機関の特殊任務の実情と特徴を詳細に分析しているのも役立ちました。ここ数年、日本でのインテリジェンス論議は盛んで自民党時代から政府も法整備を含めて取組を初めているのですね。仮野氏が語る、時の官房長官、故・後藤田正晴氏との取材場面のやり取りは、圧巻でした。「『ウサギの耳』を持ちなさいということだな」というのが後藤田氏のご託宣でした。


さて、これを参考にすると、外交は戦略、戦術に基づいて行うべきもの。漁船の衝突事件に際してしばらくは日本政府の動きを冷静に分析しながら、ある絶好のタイミングをとらえて矢継ぎ早にダメージを与える中国の国家体制のインテリジェンスの恐ろしいほどの精度を垣間見た気がしました。中国は奇怪ながら強固な一枚岩だが、わが国はといえば、どうも表と裏がチグハグで腰の座りが悪い。せっかく外交、安全保障に精通した前原外相、岡田幹事長、老練の戦略家の仙谷官房長官らが政権の中枢を握っているのにどうしたことでしょう。インテリジェンスな情報戦においては今の段階ではこの勝負あったとみるべきかもしれない。諜報活動にどれほどカネを使い、人を潜入させているか。壁に耳あり、障子に目あり‐ですね。


さて、訪米中の菅首相が「もっと早くできないのか」と声を荒げて、中国人船長の勾留期限となる29日の前に保釈を促がす発言をしていた、という28日付の朝日朝刊1面の記事は、「検察当局が総合的に考えた結果」としていたこれまでの菅首相や閣僚らの一連の発言を覆し、政治主導の関与を裏付けるという内容でした。まあ、誰もがいぶかっていたことだし、那覇地検の検事が独断できる政治問題ではないことは明々白々でした。


しかし、この記事で私が第一に関心を持ったのは、事件発生当時の中国の動きに関するものでした。中国が事件発生の9月7日から、地検が勾留延長を決めた19日までの12日間に、何をどのように手を打ったか。中国のしたたかな策略のシグナルも読み取れず、事件そっちのけで代表選挙や内閣改造に奔走していた現政権の軽さを危惧するわけです。岡田外相とその後任の前原氏、その交代劇の間隙を突いた形で事件が起きているのは偶然ではないでしょう。漁網を引き上げていたところに日本の巡視船が停止命令を発したという経緯や、武闘派とおぼしき船長の面構えをみるにつけ、これはある種の仕組まれた罠だったのではないか、とすら感じるのです。中国は、あたかも事件が起こるのを事前に知っていたかのような節がある。朝日の記事を読むと、その当初、中国の対応は極めて冷静でした。日本がどうでるか、その動きを屋根裏からのぞきこんでいるような印象です。朝日の記事はこうです。


〜中国政府は、丹羽宇一郎・中国大使を5回呼び出すなど反発を強めていた。が、当初は、中国側の反応も比較的穏やかだった。中国外務省の副報道局長は7日の談話で、「中国側は事態の発展を注視しており、さらなる行動の権利を留保する」として、そこに「抗議」という言葉はなかった。「留保」ですから様子を伺う、という姿勢ですね。翌8日の「人民日報」は事件の発生や申し入れに関する記事をいっさい掲載しなかった〜。


〜その後、中国側は丹羽大使への申し入れを繰り返したが、12日に外交を統括する副首相級の国務委員が丹羽氏を呼んだ際は「情勢の判断を誤らないように賢明な政治判断を求める」と語った。ここでも「抗議」はない。日本外交筋は「激しい表現はなく、落ち着いた調子だった」と受け止めた〜。


その後の中国の対抗措置の激しさを思うと、当初、中国が極めて冷静さを装っていたのも、船長の勾留延長を決めた19日以降さらなる強行措置をむき出しにしてきたのも、そして、昨日から中国の姿勢が軟化し始めたのも、その一部始終が筋書き通りの戦略的なシナリオだった、と見るべきかもしれない。


防諜、諜報に群を抜く中国の情報戦略、インテリジェンスな手綱さばきを十分に見せつけられました。さて、感心している場合じゃなく、今後どう手を打つか、自民党の森元首相が今朝の朝日の新聞のインタヴューで、「官僚を排除しているから、どうしたら問題解決に動き出すか知恵がない。国難にはオールジャパンで」と訴え、剛腕、小沢一郎氏の登場や虚心に自民議員の協力を求めるなど、あらゆる手段を講じていくべきと指摘していました。


外交と安全保障は、挙党一致を越えて挙国一致の体制をとらなければならない、と指摘していたのは、事件直前の9月7日付読売1面の阪大教授、坂元一哉の論壇でした。その見出し、「外交・安保のぶれ 危険」と警告していたわけです。

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◇橋本正洋氏の連載がグーグルランク1位に
 【連載】特許庁審査業務部長、橋本正洋氏の『イノベーション戦略と知財』第31回「社会人博士の取り方―実践編その2」は、やはりサイトの性格上、技術経営研究科など大学院に通う社会人が多いせいか、橋本さんが「社会人博士の取り方」を書き始めた時のランキングは、グーグルで60位でした。が、たちまち上位に上りつめていまや堂々の1位に君臨しています。以前は、「イノベーションの教科書」をテーマに扱ったら、まもなくこれも1位になった‐。橋本さんの連載は、そのテーマごとにグーグルの上位にランクされているのは、サイトの運営者としてとてもうれしい話です。


内容は、橋本さんも書いていらっしゃるように、社会人ドクターのハウツーものですから、難しい内容ではありません。小見出しに、「研究者としての生活開始」、「環境整備」、ここはご家族の協力が必要で、客間を書斎に衣替えして独占した顛末が書かれています。個人的には、奥様が登場するこういうエピソードが気に入っていて、この辺をもっと書き込んでくれませんか、奥様の感想も…と注文をつけたら、「客間を返してください」と言われたとか。「ハッハッ〜」、やぶ蛇でした。続いて、「おしりが悲鳴をあげた」、「論文執筆の正しい進め方」、「学位審査」、「学位授与」、そして、「社会人博士の評価と価値」と続きます。最後の行に「筆者の社会人博士号授与後日談や、社会人博士の価値や特典についてまとめようと思います」という。引き続き次回もご期待ください。休日での気分転換に楽しくお読みくださることを期待します。ご感想もお待ちしています。


◇山城宗久氏の郷愁「大いなるジェットストリーム」
【連載】東京大学産学連携本部副本部長の山城宗久氏『一隅を照らすの記』の第28回は「大いなるジェットストリーム」の巻きです。年代も近いためか、城達也といえば、ジェットストリームでした。イントロで聞かせる名セリフ、あの甘く渋い声が耳元に甦ってくるようです。ニニ・ロッソの夜空のトランペットなんかが流れて、「夜のしじまのなんと饒舌なことでしょう」とのナレーションが懐かしい。山城さんも「甘美な癒しを与えてもらった」と書いています。番組の提供は、日本航空でした。


これは余談で、本題は、中村尚東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻准教授の講義で、そのタイトルが"気候変動と日本列島〜グローバルな視点から〜"。


「気候変動という言葉は、英語ではclimate variabilityですが、これは主に自然変動によるもので、一方、気候変化という言葉は、英語ではclimate change。これは主に人為起源によるものを意味する。地球温暖化問題を議論するIPCCは、Intergovernmental Panel on Climate Change の略称ですが、日本語訳は、気候変動(変化のはずなのに)に関する政府間パネルとなっており、基本となっている条約も、気候変動枠組み条約と訳されています」と縷々説明し、中村准教授は、こうした言葉の誤りが、そもそも地球温暖化問題についての我が国における議論の混乱の根源になっていると、指摘していたという。


それから、気候変化について、次に今年の夏の猛暑についてのご高説を照会し、気の早い私なんぞ、さて、この話のオチを念頭にきょろきょろ段落を飛ばして落ちつかない。で、日本の気候に影響する大気循環変動パターンが3つある―というところで、ふ〜む、やっとジェットストリームに辿りつくわけですが、なんのことはないジェット気流の意味でした。


◇塩沢文朗氏「原点回帰の旅」が連載70回
【連載】塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』は第70回「物価から見える中国−吉林省を歩くその2」です。前回は、石黒憲彦さんが150回の節目で、いやいや塩沢さんも今回が記念の「70回」です。おめでとうございます。正式なタイトルが「塩沢文朗氏の流儀、原点回帰の旅」で、塩沢さんのスタイル、矜持、そして流儀というところが大事なのです。穏やかな人柄を反映してご先祖の墓所が ある信州、塩田平の名刹の散文はうるわしいほどの文体で、しかしご専門の産学官連携や環境問題でいい加減な数値を示すと容赦なく鋭い批判を展開します。 この辺は、私と少々似ている。同じ年代のせいもあるのかもしれません。


で、今回のコラムの冒頭は、こんな感じでした。


「沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件についての中国政府の対応を見ていると、まさに『「暴力団の縄張りと同じ」(石原東京都知事)と私も思いますし、さらには、これほどの対応をしなければならないような、よほど困った事情が中国側にあったのではないかと、逆に勘ぐりたくなるほどの異常さすら感じます。そんな雰囲気の中で、こんなコラムを書くことはいかにも能天気という気がしますが、まあ、こういった時ほど中国の人々の生活実態について知ることも良いのではないかと思い、今回も中国吉林省への訪問記を続けます」と。


本文は、中国人の暮らしをみながら、そこの物価を丹念に調べて紹介しています。求人広告が目にとまり、ホテルのフロントが1200元(16000円、1元13円の交換レート)、レストラン接客が900元で、都市労働者の平均年収が30000元(40万円)、ガソリンが1リッター6.17元(80円)と高い。タクシー初乗り5元(65円)、バス1元(13円)、麺類5−8元(60円から100円)などと詳細に調べ上げていました。


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