◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2010/08/25 http://dndi.jp/

好評連載!DND論客の伝える力

 ・「真夏の夜の夢、一ちゃん総理に」への期待
 ・週刊「アエラ」8月30日発売号の"先読み"
 ・黒川清氏、ソウルで「佐藤剛蔵氏と朱先生」秘話
 ・DNDの論客〜コラム・論文・論説・エッセー〜
〜石黒憲彦氏・橋本正洋氏・張輝氏・比嘉照夫氏
・服部健一氏・氏家豊氏・塩沢文朗氏・山城宗久氏〜

DNDメディア局の出口です。猛暑の夏、汗をいっぱい流した8月が、もうすぐ終わります。その連日の熱波は、灼熱とか、炎暑という表現をもってしてもその暑苦しさは十分に言い尽せないかもしれない。それほど今年は特別に暑かった。それが暦を数えてあと一週間もすると8月が去る、というだけで気分的にひと息つけそうです。


この数日、ここ柳橋周辺に風が出てきました。やがて秋風が吹く頃になると、夏の火照り逆に懐かしく感じられるのですね。お盆休みは、どう過ごされましたか、またご家族のいい思い出は残せましたでしょうか。


さ〜て、記録的な猛暑や、急速に進む円高など、この国を揺さぶる目前の困難などそっちのけで連日連夜、会合を開いては密談をし、主導権争いを繰り広げている‐と、揶揄されているのは、どのグループ?


小沢一郎氏が菅・仙石連合に突きつけた"最後通牒"−という政局絡みのインサイド記事は、今週発売の『週刊朝日』でした。民主党議員たちの目下の関心事は、9月1日告示、14日投開票の民主党の代表選の行方である、らしい。再選を目指す菅直人首相と、急浮上した"大本命"の小沢一郎氏、いずれが勝っても党内は分裂の危機で、その前途には崖っぷちの綱渡りが待っている、と記事は伝えていました。


いやはや、いつの時代も政治家の権力闘争のエネルギーは凄まじい。政権が変わってもやること一緒じゃん、と、そんな冷やかしみたいなことは言わない。が世の中、どんどん悪い方向に向かっていませんか。ちょっとどころか相当乱れてはいないか。


ここで最後の大勝負に打って出るとしたら、その乱世の政治家・小沢一郎氏に、どんな結末を期待しますか。いま強烈なオーラを撒き散らしていることは確かです。政治資金をめぐる拙い問題や疑義があったとしても、覚悟の小沢さんに期待するという動機は理解できます。こんな大事な時に今や軽井沢の人、鳩山さんが、仲介と称して要領よく立ちまわっているが、これも奇妙な構図に見えます。鳩山さんの側近中の側近が、小沢支持はない、と軽率にも明言するものだから、この時点で小沢さんの勝算がなくなった印象を与えました。余計なことを言うものですね。


ここは、どっちにしても"ねじれ国会"の呪縛を断ち切る術がないのなら、救国の大義に立って潔く大連立を組むという選択肢に躊躇はいらないのではないか。党内抗争を有利に導くために、解散なしの満期3年間の延命を説く菅さんでは、その任は重い。小沢さんなら、そこを大胆に紐解いていくに違いない、と踏んでいた。どうなることやら。


やっていることは国民生活から遠く離れた低次元の争いに過ぎないが、今回は小沢さんの本気度を測れば、これを政界の与太話として軽んじてはいけない。ひょっとして、昨年の政権交代以上の激変が起こる可能性を秘める、といわれているからです。政界劇場「真夏の夜の夢、一ちゃん総理になる」のプロローグの一場面として見るなら、これほどスリリングで、背筋が凍るドラマはない。


今回のメインは、DND連載企画の紹介です。自慢じゃないが、DND連載の質の高さには定評があり、アクセス数も飛びぬけて多い。それは、ひとえに執筆陣に凄腕の論客がそろっているからに他なりません。グローバル化の波間で、揺れ動く日本経済の舵取りの難しさを感じされる内容が目立ちます。わが国の現場から、世界の都市から、丹念に集めたデータや情報に分析を加えながら、次の一手を模索する真摯な姿勢が見えてきます。苦悩する論客、その知恵の一端を掴みとっていただけたら幸いです。夏休みが明けて、今回も珠玉のコラム、論文、エッセーがそろいました。


【コラム】は、黒川清氏の『学術の風』です。ご存じの通り、世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)の常連で、国内外にグローバルな知的ネットワークを広げる黒川氏のブログは、日々更新され英語版も充実しています。最近では、来日したバングラディシュのノーベル平和賞のユヌス氏とのやり取りや、黒川氏が後押しで実現した早稲田大学の学生二人がバングラディシュのグラミー銀行でスタートされた日本発のプロジェクトに触れています。


今回ご紹介するのは、8月16日付の「ソウルから」。黒川氏は、13日からソウル入りし、14日にソウル大学(資料1)、医学部医学研究所 講堂で腎臓グループ30周年の記念講演会があり、特別講演にたっていました。今年は日韓併合100年の佳節、それをどう迎えるかが重要なのですが、黒川氏の解説によると、「14日は、65年前の8月15日の日本の降伏宣言を受けて『「独立、開放」への最後の日ということで、15日は『光復節』 』という節目でした。そこで黒川氏はどんなスピーチをされたか、ここがポイントです。数行の謝罪のコメントで終わらせない、ところが見識あるアカデミアのアカデミアたる、所以と感じ入りました。


そのひとつが佐藤剛蔵(資料1)に触れた事でした。近代韓国の医学教育への貢献を紹介し、私たち大学人の責任について、締め括った、という。その黒川氏の講演草稿とPowerPoint(part1, part 2)が、コラムの末尾に添付されていました。その英文の一部を紹介します。


Dr Sato was not known much in both Korea and Japan, but I was shown a copy of his short autobiography several years ago when I was in Seoul. Dr Sato was urged to write this autobiography on the occasion of his family celebration of his 60th birthday. A copy was shown to me by a very distinguished Korean scholar and medical doctor, Dr 朱, who was Dr Sato's students in Dr Sato's final years (thus he is now late 80s); he showed me this booklet as his very valuable treasure.


Upon my return to Tokyo, I tried to search for his family and finally find his grandson who lived his first 14 years in Seoul with his grandfather. We went back to Seoul two years ago and visited the Museum just across the main Hospital, the original medical college. Dr 朱 and his two classmates told us many, many stories of this great teacher with true admiration. Tears came to my eyes as I listened to their stories and fond memories of their teacher, 'Sensei,'


Apparently, Dr Sato was very much liked and respected by many in both countries during hard times, as a calm, gentle and thoughtful human being, but firm on 12 his principle on humanity, even against the then his superiors.


韓国の近代医学の発展に貢献した、佐藤剛蔵氏の存在とその子孫を探し、佐藤剛蔵氏が1907年から終戦の1945年にわたる38年間も韓国に留まって韓国学生に対する医学教育に専心した事実を浮かび上がらせた−のが黒川氏ご本人で、佐藤剛蔵校長の最後の教え子の一人が、韓国学術院副会長で高麗大学名誉教授、医学博士の朱軫淳先生そのひとでした。今年89歳で、頭脳明晰で物腰が柔らかなのが印象的でした。3年前、私もソウルに同行し、昨年は東京で開催したシンポでお会いしる機会を得ました。メルマガで紹介しました。書き出しはこうでした。


「痛ましいほどの時代の変遷に動じず、海を越えて韓国の近代医学の教育に38年間にも及ぶその半生を捧げた日本人医学者、佐藤剛蔵氏。今、その稀有な歴史的人物の足跡に日本、韓国の双方から光があてられ始めています。京都帝大医学部を卒業後、27歳の若さで単身、朝鮮半島の平壌にその一歩を刻んで今年はちょうど100年の節目だという」。ご関心がある方は、以下からどうぞ。


DNDメルマガ「韓国近代医学史に刻む佐藤剛蔵氏の足跡を訪ねて(後編)
−初ソウルは、100年の記憶の旅」―
http://dndi.jp/mailmaga/mm/mm071017.html


今回も黒川先生にご同行してその動向をウオッチするつもりが事情で行けなくなりました。すると、14日夜、日光にいた私の携帯にソウルの黒川先生から電話が入りました。「どう、元気?ちょっと、待って、ある人に替わるから…」そして、流暢な日本語で「ご無沙汰していました。いま黒川先生と一緒です。出口さんがソウルに来られなかったのはとても残念です。いつも原稿を書いて紹介してくださって、ありがとう。ほんとうに心から御礼を申し上げます」と丁寧にあいさつしてくださったのは、その朱先生でした。


いま日光?日光見ずして結構というなかれーですね、と、そんな風な言葉を添えて下さいました。89歳とは思えぬほど、しっかりされています。お元気なうちに、ぜひ、朱先生の回顧録を残しておかねばならない、というような気になり、黒川先生とその辺の準備を急いでいるところです。佐藤剛蔵、とその子孫、それに朱先生、近代医学の発展史…テーマは尽きません。


◇8月30日発売の週刊「アエラ」で
※お知らせです。今月30日発売の週刊「アエラ」で、黒川清氏とマイケル・ジャクソン、そして城山三郎をめぐる黒川氏の追憶が紹介されます。どうぞ、ご興味がある方はお読みください。私が書いたものです。
 そのさわり、あんまり書くと編集部からお叱りを受けるので、こっそり、ちょっとだけ…。
〜日本学術会議の前会長で、東大名誉教授の黒川清氏が、30年以上封印していたマイケル・ジャクソンとの意外な関係を自身のブログで明かした。マイケルの急逝から1年目の、異色の追憶記。その舞台には作家の故・城山三郎も登場する〜。


さて、連載については、まず、経済産業省の商務情報政策局長、石黒憲彦さんが執筆する『志本主義のすすめ』は、148回を数え、まさにDND連載の草分け的存在で重鎮です。最新の原稿は「グローバル化の新たな節目」で、主な項目を小見出しから拾ってみると、「グローバルな日本の反攻始まる」、「グローバルに戦える人材の育成は足りているか」、「日本型経営とグローバル化の折り合いをどうつけるか」―となっています。


本文で、石黒さんは、「いたずらに日本品質をグローバル標準にして現地に押しつけるとオーバースペックになり、柔軟性や機動力に乏しくなる一方、分権化とグローバル化だけ進めると軸になる文化、会社への忠誠心、秘伝のたれともいうべき競争優位の源泉もまた希薄化します。全てはバランスのとり方なのですが、その支点の位置がこれまでとは全く異なるところが今時の経営の難しさです」と指摘し、その答えはとても難しいとしながら、その処方のいくつかを丁寧にまとめていらっしゃる。この辺は、さすがだと思います。


特許庁審査業務部長の橋本正洋さんからは、『イノベーション戦略と知財』の第27回「科学と技術とイノベーションその2−産業革新機構とルース駐日米国大使」と、その第28回「中国のイノベーション〜知財管理に見る中国の変化」の2本、いずれも内容の濃い原稿です。まず、第27回では、産業革新機構が発表した「国内初の知財ファンド設立」に関して、「いよいよ本格的に大学の知財にも関わりだした」ことを評価し、日経電子版からの引用でライフサイエンス以外の分野なら「太陽光発電やリチウムイン電池」もターゲットに入る、という内輪話を披瀝していました。アステラスの竹中登一会長の指摘から、製薬会社はイノベーションのシーズは作らない。オープンなリソースからイノベーティブな研究成果を持ち込んで企業の中で育成していくーという戦略を引用しながら、「そのオープンなリソースというのが、ベンチャーや大学の知財です」と明快でした。この科学と技術とイノベーションの相関を貫く成功の鍵が、メルティングポット、るつぼの存在で、それはクラスターそのものであり、ネットワークでもある、と持論を展開しています。おまけ、といっては失礼だが、最近、橋本さんの奥様が、人生50過ぎてこれからやりたいことは、と迫られてしみじみ思いいたったのが、「シリコンバレーを日本につくりたい」という夢だったそうです。その詳細は、本文をごらんください。


また28回の「中国のイノベーション」の項もとても参考になります。少し、引用しましょうか。
〜8月16日の週、官民合同の「第7回知財保護官民合同訪中団」の一員として、北京に出張してきました。同ミッションの報告は、日経新聞などにも報道されていますが、「協力」と「要請」のスローガンのもと、中国の知財に関係する5つの政府機関(商務部、国家工商行政管理総局、国家知識産権局、国家版権局、最高人民法院)に対して、模倣業者の再犯行為、商標の不正出願、インターネット上での知財侵害等について要請を行い、また中国と共同で取り組む様々な知財保護にかかる協力について提案を行いました。


この代表団は、歴代、官民の錚々たるメンバーが参加しています。今回は、産業界を代表して志賀俊之日産自動車株式会社最高執行責任者を団長に、林康夫JETRO理事長、日下一正三菱電機株式会社専務執行役、岩井恒彦資生堂執行役員ほか、官からは、近藤洋介経済産業大臣政務官を筆頭に、長尾正彦大臣官房審議官、三橋敏宏製造産業局模倣品対策・通商室長ほか、特許庁からは筆者が参加しましたー、という。詳細は、本文を。それにしても、よくこまめに書きますね。記憶を記録に!ですね。


さて、『中国のイノベーション』といえば、DND連載ではご存じの張輝氏が元祖、いや、本家的存在です。久々に張さんから『中国のイノベーション』の第34回「水幕映画、日中提携、BMA10周年記念大会」の投稿が届きました。それによると、「水幕映画」は、古都・西安の「大唐芙蓉園」にある、噴水が吹き上げる水の銀幕を言う。水のスクリーンに映画を投影するという仕掛けは世界一の技術であり、光と音と水と火の、一大スペクタクルを演出し観光客の度肝を抜いているに違いない。行ってみたいなあ〜。


一押し情報は、以前にも紹介したビジネスモデル学会の創立10周年記念大会のご案内です。10月2日、東京大学本郷キャンパスで開催です。申込等は、以下のURLから。 http://www.jctbf.org/C_BM/link.2.s10.1.htm


まだまだ続きます。
 EM技術の開発者で名桜大学教授の比嘉照夫氏の『甦れ!食と健康と地球環境』の第31回「EM技術による居住環境改善」です。
 その冒頭から、と強い主張を展開し、国の運営を危うくする医療費の増大について「生活習慣病などは本人に原因があるので健康保険を2−3倍に、過剰な投薬で薬剤依存症なった場合は、医師やメーカーの責任を問う必要がある」と手厳しい。が、その通り。加えて、食品添加物や農薬、化学肥料等、さらに氾濫する化学物質への規制や罰則適用も、と指摘する。現在、予防医学に徹しているキューバの例を挙げて、その医療革命が世界の注目の的となり、その遠因に旧ソ連からの大量の医薬品や化学肥料などの援助が途絶えたことだ、というから皮肉な話でもある。そのキューバがいま国策としてEM技術を導入し、社会主義型のEM活用モデルを実践している、というのは驚きでした。


そして、本題は、食の健康を突き詰めていくと、今度は、衣服や住居も化学物質にまみれている現状を憂いているのです。化学物質過敏症、シックハウス症候群、アトピー、花粉症、アレルギー、自己免疫疾患等への治療をEMでかなえようという試みが進められ、免疫のレベルを高めることが確認されている、という。また、EMの建築部門への応用や「健康になる家、癒す家」(EMXセラミックス建材)が出版などで話題になった。これらによるEM住宅の施工が進んでいる、という。凄いものですね。やはり、この詳細は、本文からご覧ください。


さてさて、シリコンバレーと東京を行き来するベンチャー専門の経営コンサルタントで、DNDの期待のニューフェイス、氏家豊氏の『大学発ベンチャーの底力』の第2回は「大学発ベンチャーのポジション」で、日本の新興市場を取り巻く環境の悪化と信用の失墜という事態に対しての所感を述べています。


「企業ガバナンスは、勿論、最低のルールです。米国でも一時、エンロン事件を経て、いわゆるSOX法として極端に締め付けた結果、株式公開規制に影響し、IPO時のその対応資金のみで数億円になり、新規公開市場が大きく落ち込んだ経緯がある」と米国の事情に触れています。が、しかし、このマーケットの問題は、日本の技術開発系の大学・研究所発ベンチャーとは次元が違いすぎる、と問題提起し、この「煽りを食っては大迷惑」と断じているのです。そこで氏家さんは、大学発ベンチャーを含む新興企業の資金調達ルールについて論じ、それを3つに分類しながら、VCの出口戦略(投資資金の回収ルート)にも言及しています。次の段落で書き込んでいる「大学発ベンチャーの事業展開力」での「大手企業との関係」についてのところは、私も賛同します。


さて、そしてこの連載紹介のトリは、塩沢文朗さんの『原点回帰の旅』の第68回は「今年のお盆」。信州、上田の別所温泉にある安楽寺が、塩沢さんの先祖の代々のお墓がある、という。お寺の写真、そこへいきつく境内の写真なども紹介されています。信州最古の禅寺で、有名な八角三重塔は国宝でした。というのは、私もここへ足を運んで感嘆の声を上げたほどです。信州の鎌倉と言われるが、その佇まいや木造彫刻の極めなどに加え、喧噪を飛び越えた環境からすれば、もはや鎌倉を越えているのではないか、とすら感じます。この連載の第6回「本籍地の危機」でも書いていますが、時代は北条義政が塩田平から鎌倉に居を移した建治3年(1277年)にまでさかのぼる、という。


川崎の自宅から車で3時間、お墓参りはいつもお盆を過ぎたころになる、という。そこで塩沢さんの原点回帰の追憶が始まります。個人的な事を恐縮されていますが、私はこういうエッセー風の文章も気にいっています。今度、ぜひ、私を安楽寺に連れていってください。


記憶を記録に!DNDメディア塾
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