◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2009/11/12 http://dndi.jp/

ECO先端事業交流会in宮崎

 ・驚異のLVD照明、イカ釣りの漁獲倍増
 ・ハイテクベンチャー横山高明社長の確信!
 ・第7回大学発バイオベンチャー総会の充実
 ・埼玉・久喜駅「クッキープラザ」オープン
 ・「職業能力大学校の事業仕分けに思う」

DNDメディア局の出口です。宮崎へ向けて羽田を飛び立ったJAL機は、順調に 西へ。が、前線の影響で室戸岬上空から雲行きが怪しくなり、「まもなく下降 を始めます」というアナウンスの途端、フワッと浮いて再びガクンと急降下し、 続けて小刻みにガタガタと音をたてながら今度は左右に揺れ、そのダッチロー ルのような激しい振動が機内に伝わってきました。鈍感なこの私ですら、一瞬、 怖い、と身をすくめるほどでした。JALは陸も空も、視界が悪そうです。さて、 初めての宮崎、その数日の滞在でいったいどこまで踏み込めるか、拙速な事業 仕分けじゃあるまいし…。が、この街が気に入るのにそれほどの時間はかかり ませんでした。


「祝!優勝、ジャイアンツ日本一」。空港内の吹き抜けのイベント広場の天 井から、こんな横断幕が垂れ下がっていました。そうか、ここはジャイアンツ のキャンプ地なんですね。宮崎といえば、マンゴー、フェニックス、地鶏、そ して東国原さん…でしょうか。そんな貧弱なイメージを引きずりながら、急い でタクシー乗り場へ。目指すは市役所そばの「宮崎市民プラザ」、そこでもう すぐ、地域の活性化をたのむ、環境関連の先端技術セミナーが開かれます。


運転手さんは、落ち着いた年配の方でした。まったり、というか、横顔をの ぞき込むと、どこかラクダのようなやさしい目をしている。すぐに宮崎が好き になったのは、この運転手さんの、穏やかで親しみのある風貌が、よかったの かもしれません。その車内で…。

いやあ、凄い雨ですね!。

前線が来ちょるからね。大阪からの便は引き返しよった、この雨ではしょうが ねぇなあ、はあ。いま知事さんが一緒じゃなかったと。

いやあ、気が付きませんでしたが、東国原知事人気は、もうピークを過ぎまし たかね。政権交代でテレビの露出も減りつつあるでしょ?。

いや、まだ支持は高いけよ、あん人になってもらって本当に良かったとよ。

いくら人気があっても地域の活性化につながらないと意味がないんじゃないの?

いやあ、県庁の脇の観光物産展があるとよ、日に大型バスが何台も横付けして 観光客が地元の物産品を買っていくとやがぁ。この夏は、1日に大型バスが15 台も来よった。その日だけで800万円売りよった、はあ。

800万円ですか?

800万円もよ。知事さんが就任する前は、年間でさえ500万円そこそこやった。 よく、がんばちょやる。じゃけんど、あんひと言は、余計じゃった。  

あれって、自民から国政にでる、総理候補に担ぐなら…っていう、あの発言ですか?

じゃとよ、あん発言で、タケシから叱られたっよ、こんだ民主政権じゃげな。せんでいと、はあ。


なんとも、やさしい響きの宮崎弁。その語尾の「はあ」も、いい感じなんで すね。それと少し鹿児島弁っぽいし、土佐風味もまざってちょる。ゆっくりと 謡うように語る、そんな味わい深いおしゃべりを楽しみながら、やや明るくな った車窓に目をやると、橋を渡る。「橘橋」という。川の名は?と聞く間もな く、橋の脇に大きく「大淀川」の看板が目に飛び込んできました。なぜ、「大 淀川」というのですか?大阪の淀川より大きいからねぇ、と、運転手さんは涼 しい顔でいいのけて、はやり語尾に「はあ」を付け足していました。


橋から、さらに東側の下流にはいくつもの橋が連なり、その流れの河口の先 が太平洋を望む日向灘です。残念ながら秋雨がすっかり視界をさえぎっていま した。


さて、宮崎市民プラザに到着すると、この日の「ECO先端技術事業交流会」 のプロデューサーで、わが国の先端技術で世界貢献を!を意図する「日本・ロ シア連邦チュバシ共和国友好協会」(田村文彦会長)の専務理事をつとめる、 ジャーナリスト仲間の柴田敏雄さんが出迎えてくれていました。お弁当とお茶 の用意もあり、その至れり尽くせりの対応には恐縮しっぱなしでした。


この協会は、わずか2年前の設立ですが、すでに多くの企業が参画し、産業 技術を持つこれらの企業を対象に、この協会の人的ネットワークを活用しなが ら国内外に事業化を進めていこう、という国際交流とビジネス支援を図るのを 目的としています。その活動の一環として、この事業交流会が宮崎からスター トし、今後11月20日に福岡でという流れで、今後各地で開催していく、と、柴 田さん。この交流会には、地元、宮崎の産業界やメディア関係がサポートして いました。


この日の事業交流会で紹介された技術や製品は、5社からざっと10点、優れ た省エネの照明器具や最新の電動バイク、健康づくりのマッサージ機器、安 心・安全な水質浄化剤、それに燃料費削減の各種装置など、革新的な事業モデ ルを普及させうる可能性を秘めた製品が目白押しで、提携や代理店、それにな んらかのアライアンスを期待する参加者の興味を引いていました。


その各種技術の展開にはやや企業戦略上、まだ公開できない内容のもの含ま れていましたが、そこのところをこっそり触れることにしましょうか。


まず、熊本大学「くまもと大学連携インキュベーション」に拠点を置く2007 年設立のベンチャー「オーシャンエナジーテクニカ」(社長・横山高明氏)。 驚きは「集魚灯向けのLVD」という省エネの照明器具で、白熱灯の「10分の1の 低消費電力と10万時間に及ぶ長寿命」を実現し、最新のLED照明を超える新し い概念の次世代照明の決定版として、内外から引き合いが相次いでいます。


LVDとは、横山さんの説明によると、「高周波を利用した無電極の蛍光灯」 で、発光管形状とガス圧を最適化し、新開発のインバーター回路を高効率化す るなどして低消費電力を実現、無電極機能を持ったLVD照明は、白熱灯や水銀 灯、蛍光灯、ハロゲン灯などの有電電極灯に比べて劣化の進行が遅いという結 果が証明されている。低発熱で目にやさしい。しかも、構造が簡素であるため、 ブームのLEDより製造コストが格段に安く仕上がる、というメリットが強調さ れていました。




横山さんは、初公開の新潟県の佐渡で行った実証実験のデータを紹介しなが ら、19トンのイカ釣り漁船に装着したLVDの集魚灯は、LED(概算で約6000万円) に比べて、格段の1000万円という低コストを実現し、燃料(重油)は、通常の イカ釣り船の2割程度で済む、という。この実験は、昨年の秋から今夏にかけ て、水産庁の補助事業で進められ、実施母体は東京の学者らで構成するNPO法 人でした。横山さんの製品に着目した大学教授がアプローチし、新潟県に持ち 込んでいたのです。泉田新潟県知事らが積極的に後押しし、佐渡の漁協関係者 らが協力しています。


今年夏に佐渡沖で実施された9日間の「実釣実証」結果によると、なんと凄 い朗報がもたらされた、という。省エネ効果は勿論のこと、横山さんの開発し たLVDの集魚灯を装着した漁船の、その漁獲量が、従来のハロメタ灯のイカ釣 り船と比べて、倍以上の漁獲を積み重ねたのです。その細かいデータをも開示 しました。


イカ釣り船は、昼も夜も漁をする。数字は、その合計で算出されていました。 それを夜間に限って比較すると、横山さんの製品を搭載した漁船が6キロ入り の発泡スチロールで200箱から300箱の豊漁だったのです。なんともこの驚愕の 数字に、関係者らは唖然とし、その影響を心配してあんまり多くを語ろうとし ません。地元の新聞にはいくつか紹介されているのですが、漁獲高のところは 伏せられているものもありました。


なぜ、LVD照明だけがこんなに豊漁なのか?
船べりに植物性プランクトンが異常発生して、そのプランクトンにイカが集ま ってくるらしい。が、では、プランクトンの異常な発生はなぜか。LVDによる 光合成じゃないか、という説もあるという。その謎がはっきりしていないまま、 この噂を聞いた各地の漁業関係者からひっきりなしに問い合わせが相次いでお り、VCやファンド関係者、それに海外からも引き合いが殺到している状況だと いう。


あんまり大げさに書くと、騒ぎが大きくなるので控え目にしようか、と戸惑 う始末です。が、少し突っ込まないと、逆に信ぴょう性がぐらついてしまいか ねない懸念がある。環境の新技術が、雇用を、内需を促進する、というこんな 理想のモデルは、この春から好業績に支えられて株価が上昇傾向にある桧家住 宅(本社・久喜市、近藤昭社長)関連の日本アクア(本社・横浜市、中村文隆 社長)が、全国で一般住宅用に展開する安全なウレタンフォームの断熱技術と 同様で、きっと「90年比25%削減」の国際公約達成の一助となることでしょう ね。


聞くと、環境省の現職次官が、熊本大学まで足を運んでその成果を確認され ている。九州経産局なども応援に努めているようです。横山さんは、同協会の ネットワークや関連企業などの支援を頼りに、今後さらに大きな事業展開を意 図されていました。楽しみです。新規事業やイノベーションは、現実の社会の 中でしか、結実しないということであり、そのプレーヤーこそが第一に、大切 にされなければならない。


横山さんは、実は大変なアイディアマンでした。次に紹介したのが、8時間 の充電で80キロ走る電動バイクでした。ガソリンがいらない。排気ガスもゼロ、 登坂力抜群と、これが好評で、地方紙の新聞配達用に納入実績がある上、全国 紙の担当者、銀行や証券会社からも注文が殺到し、生産が間に合わない状況だ という。現在は月産250台で、これを1000台規模に持っていきたい、と熱弁を 振るっていました。この説明会の後、小降りの雨の中で、電動バイクの試乗会 行われました。説明役は、横山さんのご子息で横山義明さん、体格のいい明る いスポーツタイプの青年です。


 

私も、ハンドルを握ってみました。キーを入れ、スタンドを上げるとスイッ チオン、と簡単で、音もなく滑るように走る。が、生産体制は、若手社員の 技術向上のため、セル方式で行う。地元の高卒の熱心な人材を雇用していると いう。電動バイクの特徴は、よく言われているようにそのパーツが約1600から 1700前後とモーターバイクの5分の1で済む。いわば、多少指先が器用であれば、 わずかな期間の訓練と実習によって、電動バイクの生産技術をマスターできる、 という。ここにも地域活性化、雇用のチャンスが伺えますね。国からの補助金 が流れていないから、うまく行く。が、これからが事業拡大のターニングポイ ントになってきます。私も、同協会と同じスタンスでサポートしていかなけれ ばなりません。


ここでもまた、驚愕の事実に腰を抜かしそうになりました。さて、質問です。 このバイクのチューブレスのタイヤはひとついくらでしょうか。日本では3200 円くらいするらしいが、中国製でわずか200円ナリ。次に、それにライトのカ バーはいくらでしょうか。日本では1個240円のモノが、中国製でいくらと思い ますか。なんと、○円で5個だという。さて、この○どんな数字が入ると思い ますか。答えは、サイトにアップした時に、写真と
一緒に明らかにしたいと思 います。


なんだか、世界の工場・中国の実力とその底知れぬパワーの源泉は、人件費 の問題ばかりじゃなく生産方式やそのスケールの違いを見せつけられている気 がしてなりません。モノづくりの仕組み、そのものが違った世界を現出させて いるのではないか、そういうシグナルと捉え直さないといけないのかもしれま せん。我が国の製造業の危うさを今更ながらに感じました。


さて、横山さんの技術や最新の製品は、まだまだあります。ご興味がある方 は、11月20日午後13時から福岡市内の福岡ビジネス創造センターで「ECO先端 事業交流会in福岡」を開催します。この交流会に参加してください。定員枠が 限られていますので、私の方へ問い合わせいただければ、主催者の友好協会の 了解を得てご通知いたします。


さて、その他にも画期的な技術がありました。東京から参加の(株)「ひか りコーポレーショーション」(東京・銀座、宇都宮滋社長)の営業部長、黒野 憲男さんが、高齢化社会の健康づくりに実績のある流水マッサージ機の新製品 「元気くん」を紹介しました。全国のスポーツジムや介護やリハビリ施設用の 流水プールなどでの利用が期待されます。


福岡からは、環境事業でも「水質管理や浄化」を主に手掛ける創業3年目の(株 )「ワールド・リンク」の社長の 藤龍一さん、専務の塩部獅ウんがプレゼンに立ちました。その優れた技術は、 南九州の火山土壌と、天然シラスを原料とした水質浄化剤、その名も「きよま る君」。塗料の洗浄廃水や汚泥廃水に、この「きよまる君」を添加して攪拌す ると、あれっ!わずか20秒程度で器の中の汚泥が沈降し、廃水が透明な水に早 変わりする、というマジックのような実演をして見せていました。バイオエタ ノールや金属イオン・重金属廃水、オイル洗浄、コンプレッサードレン廃水な どの工業一般から、でんぷん廃水、食肉加工廃水、醸造工場廃水などの食品関 連、それに土木建築、ヘドロなどの自然環境までその用途は広い。凄いでしょ う、聴いているだけで圧倒されました。まだ地熱発電やら、電圧安定装置やら、 いろいろ紹介されました。が、この辺で留め置きます。昨日夕方、宮崎から戻 ったばかりで、やや疲れております(笑)。


 


宮崎では、素敵な地元の方々との交歓がありました。まず、もっともその人 物の魅力に惹かれたのが、UMK宮崎テレビの元専務で地元経済界の重鎮の甲斐 碩哉さんでした。友好協会の相談役でもあります。なんといっても系列のフジ テレビの経営幹部の方々との交流話を楽しく聞かせていただきました。同協会 幹部で、地元百貨店「壽屋」の元取締役の下野隆夫さんのご紹介なのですね。 人と人がつながっている、といえば、(株)文化コーポレーション副社長の長 友弘次さんの存在にも驚きました。


名刺交換すると、以前お会いしている、という。産経新聞の記者時代、長友 さんは、いまはJALに吸収されましたが当時JASの広報室長をされていました。 産経新聞の同僚の懐かしい名前が話題になりました。燃料の卸の老舗「日米商 会」から専務理事の野田和夫さん、統括部長の十川清志さんらの姿がありまし た。地元、宮崎日日新聞経済部記者の喜屋武恭子さんが熱心に取材をしていま した。昨日11日の経済面に写真入りで大きく掲載されました。若手では、きり っと凛々しい印象の宮崎綜合警備の取締役で総合企画部長の斉藤総一郎さん、 また甲斐さんのご子息で懐の深い、文化コーポレーション営業企画担当の甲斐 寿哉さん、さらに長身で事業家を目指す、システムインテグレーションの「ア ルパネット」代表の安達龍大さんらが、先輩らの先端技術の話に目を輝かせて いました。横山さんのご子息の義明さんを含め、この30代の若者が宮崎の未来 を担うことになるのですね。


私から何回か、お話をさせていただきました。いつもの地域力は発信力であ ること、加えて「知られていないことは存在しないこととの意味」という松下 幸之助さんの言葉です。一生懸命に、ね、パソコンに向かって情の厚い宮崎の 人を思い浮かべながら、発信のお手伝いをしているわけです。


さて、次なる楽しみは、その夜、宮崎の豊穣なる食文化に触れる、まあ、簡 単にいえば、うまいものを食うことです。その宴席は、街の中の郷土料理「か かし」に用意されました。まあ、専務の柴田さんが、食通ですから裏切ること はない。今回も確かでした。


太い梁をあつらえた和風の造りは、文化の香りがしました。居酒屋風なのに とても清潔で、床の隅々まで磨かれていました。のれんをくぐって右側におで んが湯気をくゆらすカウンターで、自家製のがんも、板こんにゃく、それに牛 スジがしっかり味がしみているようでした。吹き抜けの広い天井が気持ちを和 ませる。ワレモコウなどのドライフラワーや、色とりどりの草花が活けられて います。漬け込んだ地元宮崎のらっきょや、梅の瓶が壁際に何段にも重ねられ て壮観でした。塩らっきょは、毎年100キロを漬け込むというから、年季が入 っています。ひと粒つまむと、なんとつややかなことでしょう、歯触りも良く 熟成してまろやかな甘みがありました。それこれに、ご主人と、女将のこの店 への深い思いが感じ取れました。そして、もうひとつ、壁一面に掲げられた日 本画が各部屋に飾られていました。これが、壁にうまくはまっているんです。 いやあ、素晴らしい。女将さんは、城戸美代子さん、和服が似合う華奢な美人 です。


そして料理は、どれも満足いくものでした。地鶏、その炭火の香ばしさと肉 質の味わいは、絶品でした。これに焼酎が合うんですね。ひとりで、パクパク 人目をはばからず一皿平らげてしまいました。隣に長友さん、すぐ目の前に、 横山さんが座り、その隣にやや遅れて甲斐さんがお見えになりました。


私から宮崎テレビで放映したある映像を話題にしました。紅葉に染まる日之 影町の鮮やかな棚田の風景でした。本当に美しい。地図で見ると、神話の里、 高千穂に近く、滝や渓谷が迫る山間地でした。こんなところに行ってみたい。 日本人の原点があるような気がしてきました。


すると、横山さんが、そんなに酔ってはいないのに、すくっと立ちあがって 唄を歌い出したのです。


庭のさんしゅうの木なる鈴かけて ヨーホイ。鈴のなるときゃでておじゃれ ヨー、鈴のなるときゃなんというてでましょ 駒に水くりょというてでましょ、 和様平家の公達流れ おどま追討の那須の末…


ご存じ、宮崎の、日之影町に近い椎葉村が発祥とされる民謡「ひえつき節」 という。陰々と平家の落人の悲しい恋の物語が響いてくるようです。語るよう に謡う横山さんの澄んだ声を聞いていると、この店が椎葉の民家に思えてくる じゃありませんか。お店の雰囲気によく似合うのですね。もう一回、もう一回 ともう繰り返し3回もリクエストしてしまいました。横山さんがスズキのエン ジニアだった頃、浜松で社会研修と称して謡いを習ったそうです。目を細めて 思い出すのは、若い頃の浜松か、故郷の高知か、どっちだったのでしょうか。 すると、別部屋の座敷から拍手がわいてきました。見渡すと、地元の若い男女 が、控え目ながらこちらを見ながら拍手していました。うれしいねぇ。


その脇で、重鎮の宮崎テレビOBの甲斐さん、背筋を伸ばし、右ひじを後ろに ゆっくり引くように「剣菱」の盃を口に含んでいました。酒にも作法があるの ですね。その仕草は天晴れでした。久方ぶりに、酒をたしなむ大人の流儀を見 た思いでした。


唄にしびれ、店に魅せられて、料理に唸り、人に酔う…まあ、おりゃ、焼酎 に酔うちょる暇はねかった。夜は、てげぇ更けちょった。はあ〜。


宮崎は、学生時代に同じ釜の飯を食べた、先輩の長尾良一さんの生まれ故郷 でした。北海道の私とは北と南、里の距離は遠いが、どこか身近に感じるのは なぜなのか。そんな感慨にふけりながら、盃を重ねるのですが、一向に酔いが 回ってきませんでした。



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■「第7回大学発バイオベンチャー協会総会」:この9日午後、東京・八重洲の サピアタワーで開催されました。際立ったのは、挨拶にたった会長で政策大学 院大学教授の黒川清さんのスピーチでした。

その冒頭から刺激的なメッセージを発していました。皆さんは、まず何をし たいのか、大学発ベンチャーって、このフレーズで何が世界に発信できると思 いますか、世界に行って日本を眺めると、ほとんど日本からのメッセージが聞 こえてきません!と言い切り、まず、先生って呼ぶのをやめようじゃありませ んか、みんな先生になってしまうが、誰も心では先生と思っていらっしゃらな いーというのが本音でしょう、とズバリ。いま世界の共通語を英語と思われて いるが、実際は英語じゃなくて、broken Englishです、どんどん話すことで すーと勇気づけてくれていました。いつもながら、クールでにこやかでした。


事業報告や活動計画が示された関心を引いたのが、基調講演に立った日本製 薬工業協会の産学官連携部会長、川上善之さんのスピーチでした。大学発バイ オベンチャーと製薬協の関係は密接でなにより重要という認識をもちました。 報告3つ、がん治療薬の開発を手がける創薬ベンチャーで、9月に上場した (株)「キャンバス」の取締役CFOの加登住眞さん、細胞シート工学を用いた 再生医療医薬の(株)「セルシード」の取締役最高財務責任者、細野恭史さん、 セルシードといえば、10月30日にジャパン・テッシュ・エンジニアリング(小 澤洋介社長)と次世代再生医療製品の共同開発に向けて契約を結んだばかりで した。会場には小澤さんも姿を見せていました。


余談ですが、DNDサイトのトップのニュースのコーナーには、J-TECとセル シードの提携のような大学発ベンチャーのニュースが満載です。そのJ-TECは、 日本初の再生医療製品である自家培養表皮「ジェイス」を上市し、これに続い て現在は自家培養軟骨、そして自家培養角膜上皮の開発など新たな段階に入っ ているのですね。踏ん張りどころですね。


3つ目は、期待が高い、先端的がん治療を免疫細胞療法などのオーダーメイ ド医療を総合的に支援する(株)「メディネット」の代表取締役CEO、木村佳 司さんが最近の革新的な取組などを紹介していました。凄い世界に入ってきま したね。


なかでもキャンバスの加登住さんは、後に続く上場を目指すバイオベンチ ャーのために、上場審査の条件をご自身の体験からいくつか整理してお話され ていました。まあ、事業の選択と集中、海外での臨床経験、そして、やはり問 われるのがトップの人柄であり、人をつなぐ経営理念などを挙げておられまし た。そして、人の尊い命に関わる事業であり社会的責任を感じながら9月の上 場はゴールではなくむしろスターとであるとし、「原点に立ちかえってこの難 局を乗り越えてきたい」と述べておりました。心を打つスピーチでした。


会場を見渡すと、幹事長で東京CRO社長の西山利巳さんの元気な顔があり、 北海道から、ご活躍の北海道ベンチャーキャピタルの松田一敬さん、副会長で ナノキャリア社長の中富一郎さん、事務局長でバイオ・サイト・キャピタルの 谷正之さん、そばにLTTバイオファーマ会長で、初代会長の故・水島裕氏のご 子息で、熊本大学大学院教授の水島徹さん、またお声かけ頂いたのがJ-TEC社 長の小澤さんでした。


そこで、どうも似ているが、雰囲気がまるで違う、アンジェスMG創業者で協 会の会長代行を務める森下竜一さんの姿を見つけました。いやいや、見事にダ イエットされ、スリムで筋肉質の体形に変貌されていました。いやあ、ほほ辺 りがシュッとして一段と男前になった感じです。聞くと、15キロの減量という。 顔色もよく、ますますお元気そうでした。見習わないといけません。 私はといえば、同協会の幹事に就任いたしました。


■埼玉県・久喜駅前の新名所「クッキープラザ」が15日(日)にオープン: (株)「桧家住宅」(近藤昭社長)は、再開発が急がれていたJR久喜駅前の本 社ビル関連の複合商業施設「クッキープラザ」の工事が終わり、この15日から 準備オープンする、と発表しました。当日は地元市長や商工関係者らを招いて の記念式典を開催します。ビルは6階建てで2002年にダーエーが撤退してから 空きビルになっていました。地元から一日も早いリニュアルを期待されていま した。桧家住宅が昨年買収し、加須市から本社を移し、1階から4階、地下の飲 食街へのテナントを募集していました。「クッキープラザ」には、スーパー マーケット、書店、美容室、花屋、カラオケ店などの入居が予定されています。 地下1階の飲食店街は、27日にオープンします。

駅前でありながら、これまで廃墟同然のゴースト施設となっていました。が、 桧家住宅のお陰で見違えるようにきれいになり、地元駅前の活性化つながると 期待が寄せられています。ぜひ、皆様もお立ち寄りください。


■【連載】:いやあ、今回は、特別寄稿の北澤仁様に加え、弁護士の服部健一 さん、EM技術開発者で教授の比嘉照夫さん、「続90年比25%削減」の塩沢文朗 さん、浜松を題材にした大学連携推進課長の谷明人さん、モーツアルトの魔笛 に触れた山城宗久さん、コラムは、黒川清氏の「サンディエゴからアブダビ へ」などコラム3本と満載です。黒川氏は、自らが組織委員会の責任者として プロデュースした「Global Entrepreneur Week」が16日から始まります。

初日の16日は300人のキャパに1000人を超える応募があったそうです。凄い ですね。今どき、これほどの動員力があるイベントも珍しい。私もお声かけい ただいたのですが、社外取締役の仕事と重なりやむなく欠席となります。20日 はまだ空席があるようです。開催趣旨をサイトから引用します。


「グローバル・アントレプレナーシップは、2004年にイギリス現首相Gordon Brownの提唱により発足し、2007年には米国で経済活動における起業家精神の 重要性を推進するカウフマン財団CEOカール・シュラム氏のリーダシップの下 「Entrepreneurship Week USA」として開催されました。


日本でも、「Innovation and Entrepreneurship」のテーマを推進する本田 財団が米国カウフマン財団よりグローバル・アントレプレナーシップ週間への 参加要請を受け、 GEW Japanのパートナーとして日本における関連諸団体の活 動をまとめる役割を担うことになり、11月16日〜23日までGEW Japanイベント が開催されました、と。


【コメント:事業仕分けに思う】
 事業仕分け初日で、国土・景観形成事業は「廃止」の烙印を押されました。 それはそれで何も言うことはありませんが、そのやり取りで、棚田などに訪れ てその良さを知ってどうするのか―などの議論を見せつけられて目眩がしそう でした。事業の見直しを迫られた財団の女性理事長は、私の話を遮らないでく ださい、と懇願に近い声を上げていました。

無駄は、あってはなりませんが、わずか短時間で、無駄、無駄、無駄の連呼 はどこか違和感を禁じえません。財務省主導の「公開処刑」という声もあがっ ていました。その現場のやり取りを見ていると、一方的にやりこめて面白がっ ている悪代官の雰囲気じゃないですか。


とくに、職業能力総合大学校に視察に行った国会議員らが、ここでも一方的 に質問攻めに徹していました。説明を聞きに行ったというより、連続して詰問 していました。報道を見ると、指導員は卒業生の3割の70人しかおらず、その うち30人は民間の認定企業への就職だ、として、そこに40億円もつぎ込んでい るのはおかしい、という。これも極論です。これだけ聞いていると、40人の指 導教官を育成するために40億円の無駄金が使われているような印象を受けてし まいます。


職業大学は、4年生の長期過程ばかりじゃなく、大学院課程の研究課程、 刻々と変化する技術に対応するため、指導教官の応用研究課程も必要ですし、 新規の専門分野を取得するための専門課程も用意されています。全国には国公 私立の職業訓練施設には4500人の指導員が活躍しており、その半数が職業大学 の卒業生であることを知らなければならない。技能をどう磨くか、その技能五 輪もここの所管ですね。このご時世ですから、業務の見直しは常に進めていく べきでしょう。これには、大学長の古川勇二氏も同意されているようです。が、 「70人の指導員養成に40億円」というレッテル貼りは、まともな政治家がやる ことじゃありませんし、やってはいけないことだと思います。


また、水戸黄門じゃありませんが、この古川氏をどなたと思っているのでし ょう。突然やってきて、説明も聞かずあれこれ責め立てるのは失礼ではないか。 我が国のモノづくり現場や、地域のクラスター形成、最近では技術経営(MO T)の認証試行の実施やMOT学会の設立など、一貫して「技術」にこだわってき たわが国の精密工学の看板教授なのです。技術で社会貢献を定め、それを自ら のライフワークとして、条件のよい私立大学の要請を断って、その行く末が危 うい職業大学に身を投じているのです。あえて、火中のクリを拾う、そんな志 の高い教授は、そんなにいないですよ。


然し、その甲斐なく「廃止」の裁定が下っています。モノづくり、技能向上 の現場のスキルの維持をどうするか、その辺も考え合わせないといけませんね。


宮崎へ行って、モノづくりベンチャーの地域にかける意気込みを胸にひしひ しと感じました。また、大学発バイオベンチャーの総会では、グローバルに挑 むバイオベンチャーの先端技術に感動させられました。地域に世界に、ベンチ ャーの息遣いが感じられるうちは、わが国に将来は希望がもてます。ですから、 自らの意思と熱い思いでチャレンジする、そういったかけがえのない起業の芽 をぜひ、踏みにじらないででください。


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