◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2009/09/10 http://dndi.jp/

鳩山新政権に見る "革命前夜"の断章

 ・日本バイオテク発足記念講演16日開催
 ・黒川清氏「グローバルな課題にどう貢献?」
 ・橋本正洋氏「イノベーションの産業政策」〜制度面の改革が重要〜
 ・塩沢文朗氏「萩の横丁が生んだ近代日本」

DNDメディア局の出口です。民主圧勝の衆院選から10日余り、政権移行への 流れは着実に進み、代表のクールな鳩山styleのパフォーマンスも徐々に浸透 し、忙中閑ありで、幸夫人を伴って人気アニメ映画の鑑賞にモスの店とは、な かなか趣味がいい。麻生さんの逆をやれば、ある意味、changeの印象が際立つ、 という戦略があるのでしょうか。この辺のやや芝居がかってみえるところが、 この人らしい。


また、政権交代の立役者の小沢一郎さんは、党務を仕切る幹事長に内定した ら、静かに舞台のそでから姿を消し、裏方に徹するのでしょうか。そのぶら下 がり記者会見で、来年の参院選挙の戦いを進める、と、鉄壁な鳩山政権の樹立 に向けた姿勢にいささかの迷いも感じさせませんでした。


自公を野に追いやって、ひと休みしているかと思えば、どんな場合でも常在 戦場の気構えなのだなあ、と感じ入りました。「政治は権力闘争」という小沢 さんの信条がにじみ出ているじゃありませんか。


さてこの16日、いよいよ新政権の誕生で、官僚政治主導の打破に切り込むこ とになります。何が、どう変わるのか‐。その先行きが不透明なこのドラステ ィックな政権交代が、未踏の"政治革命"だと理解すれば、合点がいくことが多 い。その見通しはどうあれ、強いリーダシップによって政治主導の改革が、ど んなシナリオで進んでいくか、期待と不安の船出というのが、偽らざる有権者 の心境ではないでしょうか。いくつかの課題を整理してみましょう。


不安材料のひとつは、やはり、財源問題。子ども手当の創設、高速道路無料 化、農家の個別所得補償…。2011年度からが本格化するとはいえ、ムダな歳出 削減で、果たして20兆円近くもの財源が湧いてくるものなのか。そもそも、ど こを削減するのか、そのしわ寄せへの対応は、うまくやれるのだろうかーとい う疑問は、誰もが思いつくところですね。


ざっと、これまで公表されている削減の対象は、八ツ場ダム(群馬)や川辺 川ダム(熊本)の建設中止し、メディア芸術センター(アニメの殿堂)の執行 停止、09年度の補正予算に盛り込んだ46基金事業の凍結、国家公務員の給料2 割カット、独立行政法人・公益法人の支出削減や不要な法人の廃止などで、各 省庁でも、新政権の動きを先読みして、予定していた入札を中止する動きも相 次いでいます。


まあ、ダムをめぐる議論は、もう要らないのではないか、という考えは世の 大勢を占めているのは事実です。が、昭和26年当時から政府の方針に翻弄され てきた、八ツ場ダム周辺の住民は、今度も政権交代による建設中止で困惑し、 一致結束して建設中止に反対運動を起こしていく構えです。訴訟騒ぎに発展す るのでしょうか。新政権の大胆な見直しや中止で、このような問題が噴出する 懸念があるのです。


また、予算を大胆にカットするのだから、行政組織の見直しや再編もでてく るでしょう。事業執行がなくなれば、人員も要らない。2010年度の予算案がま とまるのは、いつごろになるのか。従来の各省庁からの概算要求を改めたトッ プダウン方式で、どこまでやれるのか。財務省にどう指示するか、でしょうね。


もうひとつは、党内や連立与党との調整でしょうか。鳩山代表が先日の講演 で、日本の2020年までの温室効果ガスの削減目標について「1990年比25%削減 を目指す」と表明した内容は、衆院選での同党の政権公約通りだとしても、国 内外に大きなインパクトを与え、大きな反響を呼びました。強いリーダシップ とは、こういうことを言うのだなあ、と思いました。が、この公約には、経済 界から「省エネの進んだ日本には過大な負担。経済に悪影響を及ぼす」との反 発があり論議を呼びそうだ、と新聞は伝えていました。すると、間髪を入れず、 民主を支える連合傘下の電力総連から「実現の可能性には疑問」、自動車総連 からは、「雇用への影響や、国民負担の問題を含め、自動車労連の考え方に大 きな隔たりがある」と批判の声があがりました。ここは、内輪だけに踏ん張り どころですね。


これまでなら、経済界と調整し、補助金を餌にした「アメとムチ」対応で、 税金が使われるだけで実行が上がらない、という中途半端な施策に終始してい たのですから、増税で国民や経済界へのしわ寄せがあってもやむを得ない、と いう決断をしなければ、このような目標は表明できるものではありません。鳩 山新政権は、それをどこまで貫き通せるか、世界に通用するリーダーかどうか、 ここが試金石となるでしょう。しっかりウオッチしていかなければなりません。


それから、環境やバイオなどのグローバルな競争を勝ち抜く科学技術開発の 振興、経済の成長戦略やイノベーション戦略の実現、世界の市場に挑む特許な どの知財戦略、そして、大企業が儲からないからと触らないけれど、遺伝子治 療や再生医療、それに難病を克服する創薬の開発は、明日の社会を築く大事な テーマです。そのために大学や研究機関からの「知」の先端技術をベースにし たベンチャー企業の育成は、必要です。全国の大学から生まれた大学発ベンチ ャーは1800社を超え、上場企業が27社を数えています。が、その母体の大学と いえば、国からの交付金が毎年一律1%ずつ減額されて、その台所事情は苦し い状態を余儀なくされています。このままだと地方圏の国公立大学は財政難で まともな研究、教育ができなくなる恐れがある、と指摘されています。


余談ですが、タイミングが悪いことに、警視庁に摘発された独立行政法人 「理化学研究所」研究員による架空の物品購入の背任事件、千葉県で発覚した 総額30億円規模の巨額不正経理事件、農水省からの国庫補助金を扱う部署での 不正も指摘されました。理化学研究所は、理事長の野依良治さんが「痛恨の 極み」というお詫びコメントを出していました。ノーベル化学賞受賞者の沈痛 なメッセージでした。こういう事件は、氷山の一角を証明するように必ず連鎖 するものです。独立行政法人などの天下り根絶を急ぐ新政権にとっては、願っ てもない追い風になることでしょう。いずれにしても残念な不祥事です。


看板に掲げる天下りの根絶で、国家公務員の定年制の延長はどうなるのか、 定年後は、どうぞ、ご自身でお考えください、というわけにはいかない。高速 道路の無料化に伴う料金徴収などの従業員5000人は、解雇となるのか」どこか 配置転換がはかられるのか。


ダムだって、アニメの殿堂だって、その仕事をあてにしていた業者は気の毒 というか、今のところただ泣き寝入りするしかない。ふいに、こんな仕打ちを されたら、経営危機に追い込まれてしまう。地方からの出稼ぎの職人さんだっ ているし、物品を納入する業者とて、売上を見込んで銀行から借金していると ころもあるかもしれません。いやはや、このご時世に、なんの説明も斟酌も、 保証も、そして同情もされぬまま、即刻、契約が打ち切られる。"官製倒産"の 憂き目を見てしまいかねないのです。新政権下では、「無駄」のレッテルを貼 られたら、有無を言わさず切り捨て御免ということでしょうか、それはいくら なんでも納得がいかないでしょう。そんなことがないように、ちゃんとフォ ローをしてほしいものです。


なんでも壊して切り刻んで、ハイ、さようなら、という無慈悲な改革が横行 するのであれば、逆に長続きしないでしょう。この政権は"三日天下"で幕とな ることを危惧します。せめて、合法的な手続きを経た事業の扱いは、まずその 趣旨を尊重し、関係者に十分に説明を行うなどの細やかな対応をしなければな らない。公共事業に無駄が多いとはいえ、行政の継続が叶えられなければ、国 の事業なんか、やっていられない。地震や豪雨などの災害への対応を怠れば、 これも多くの犠牲を招く原因になってしまいます。新政権は、経済のフィール ドを下支えする建設や製造業をどう考えているのか、その辺もお聞きしたいも のです。


そして、日本郵政の西川善文社長の解任問題が再燃しています。鳩山兄弟に、 狙い撃ちされた感じです。このたびの連立協議で、郵政の民営化見直しに着手 し、日本郵政とゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の株式売却を凍結する法案とな どを早期に成立させる、ということで民主と社民、国民新が合意した、という。


やれやれ、ゆうちょ銀とかんぽ生命は来年度にも上場させたうえで、株式売 却をする計画だったのです。これまで、その上場の準備にどれだけの専門家が 関わって、どんな苦労をしてきたことでしょう。また、小泉元首相の郵政解散 や構造改革の路線は、無残にもひっくり返される、という事態なのです。揺れ る政治に何もかもが翻弄されることの"象徴的事件"のように感じられます。あ れほど、多くの時間と議論を費やして、わが国の経済再生を図った施策も理念 も、あっさりゴミ箱行きです。小泉さんや、慶応大学教授の竹中平蔵さんらの 心中を思うと、なんだか虚しい。本当にこれでいいのかなあ、私には分かりま せん、ね。権力闘争における敗れた者の悲哀ということでしょうか。


さて、もう一方の晒し首状態は、なんといっても霞が関の官僚です。彼らは、 この新政権の動向をどうみているのか。その感触をはかりかねて右往左往して いる、と言われ、巧妙に新政権への対応を画策する、などという指摘もありま す。「逆らったらクビだ」と恫喝されて、すっかり萎縮しているのではないか。 いやいや、隠忍自重の日々らしい。


文部科学省の事務次官が、補正予算の執行凍結の指示に対して、「どのよう な政策も、それなりの理由があり、関係者が努力を積み上げてきたもの。その 点をしっかり説明し、判断いただきたい」と、正論を説いて、新政権に説明す ることを明らかにしましたが、これが物議をかもしているというから、気の毒 です。あるメディアは、これを官僚の抵抗と決めつける。ややこれには誇張が あるのかもしれませんが、新政権が、そんなことも問題にし、クビを獲る、と いうことになるなら、これは生贄の血祭りに等しい。


鬼退治じゃあるまいし、うっかり説明もままならないというのは異常です。 やはりこれも俗に「革命前夜」だとしたら、その万事が頷けるのです。近代国 家での革命は、いわば市民革命であり、自由な発言は保証されねばならない。 「革命」という名の下で、気に食わぬ人間に難癖をつけて葬り去る。また、そ こを上手に情報の中を節操無く泳ぎまわる、悪しき輩も蠢くるから警戒しない といけません。


「官僚たちの夏」は、城山三郎氏の小説の題名です。TBSでドラマ化して人気 があります。が、今は、秋を通り越して「官僚たちの冷たい冬」の風情です。 ここで官僚の肩をもっても意味がないのだけれど、また保身に走る輩も知らな いわけでない。が、こんなに官僚批判が繰り返し喧伝され、自公からも新政権 からも目の敵にされるというのも異常です。今度は給料が2割カットで、人事権 もままならない事態になるという。組織から人事権と昇格を奪ったら、組織の 機能は停止してしまいます。


これまで職務に忠実な官僚は多いけれど、公然と政党に弓を引いたり、政権 の批判を口にしたりする、そういう行儀の悪い官僚を、私は知らない。関係す る経済産業省の多くの彼らは、志高く、わが国の将来を真剣に考えながら、休 みなく長時間働いている猛者が多い。狭く暑苦しい職場で、その待遇や条件は 劣悪なのですから、少しはわかってあげないと、不公平です。あまりに気の毒 じゃないですか。


このメルマガをどんなスタンスで書くか、テーマが政治的なので苦慮したの ですが、飾らず、思いのまま、今の時点の感触と感想を綴ればいいのではない、 との思いに至り、つらつらとこのような走り書きなってしまったことをお許し ください。



□     □      □

【一押し情報】日本バイオテク協議会発足記念の講演会開催へ
再生医療や遺伝子治療など新しい領域や、難病の疾病患者のための新薬を創 るバイオベンチャーの経営者らが設立した「日本バイオテク協議会」は16日、 東京・千代田区の如水会館に、メディアや証券会社ら関係者を招いた発足初の 記念講演会を開催します。
バイオテク協議会に参加のバイオベンチャーは国内の20社。その半数が、上 場企業であり、わが国のバイオベンチャーを牽引する有力企業が名を連ねてい ます。名称は、バイオ関連のベンチャーを称して米国では「バイオテク」とい うのが一般的というところから名づけられたという。バイオベンチャーの団体 には、大学の研究者らが創業者となっている大学発バイオベンチャー協会(黒 川清氏会長、大学発ベンチャーなど80社余り参加)があるが、バイオテク協議 会は、経営の代表者で構成されています。
会長にアンジェスMG(大阪・茨木市)社長の山田英氏が就任し、理事にナノ キャリア(東京・中央区)社長の中冨一郎氏、クリングルファーマ(大阪・豊 中市)社長の岩谷邦夫氏、エムズサイエンス(神戸市)社長の嶋内明彦氏、 ノーベルファーマ(東京・中央区)社長の塩村仁氏ら4人、塩村氏の会社が事 務局を担い、事務局長に中野和夫氏。
当日は、講演が2題、東京女子医科大教授で先端生命医科学研究所所長の岡 野光夫氏が「日本のイノベーション:細胞シート再生医療の創出」、一柳アソ シエイト代表の一柳良雄氏が「日本のイノベーションと規制改革」(仮題)で、 質疑応答の後、交流会を予定しています。
同協議会では、参加企業間のインタラクティブな情報交換と、バイオベンチ ャーの成長のための、政治や行政、各種団体への提言や意見具申を行っていく、 という。特に、薬価の見直しは大きな柱という。治療法が確立していない疾患 に対する新薬や小児用医薬品に関しては、メーカー希望を取り入れた価格制度 を実現してほしい、と訴えているのです。
バイオベンチャーの存在意義は、オーファンドラッグと呼ぶ、難病などの希 少疾病用医薬品の分野と言われ、その社会的意義は大きいのですが、患者が少 ないためビジネスとしての市場性が薄く、また治療法が確立していない新領域 に踏みこむことです。そのため、その領域で新たな治療薬を創出しようとすれ ば、前例がないため規制が立ちはだかり、治療は確立しても利益につながらな い、とか制度がついていなかい、手続きに時間がかかるといった問題がネック になっているのです。各種規制やルール、それに審査料なども大手製薬会社に 基準をあわせているため、自ずと不利な状況を余儀なくされているわけです。 それらバイオテクのイノベーティブな技術を的確に評価し、その社会的意義を より広く理解してもらおう、という狙いがあります。
米国など世界を見渡すと、バイオベンチャーにおける創薬研究は不可欠で、 これまでバイオベンチャー発による新薬は50%を超え、現在開発中のもので70 %を超えている、と指摘されています。個別のベンチャーの取り組みを詳細に 紹介できないのが残念ですが、今後、DNDでは、その都度、バイオテク協議会 の会員の活動や、提言などをフォローしていきます。
バイオテク協議会の設立は、2年前から山田さん、中冨さん、岩谷さん、嶋 内さん、塩村さんら有志が、定期的に集まって意見交換していた「士(サムラ イ)会」が発端となっています。会場を提供していたのがジャフコでした。
その他、会長や理事以外に参加しているバイオベンチャーは、アキュメンバ イオファーマ(福岡市)社長の鍵本忠尚氏▼イーベック(札幌市)社長の土井 尚人氏▼オンコセラピー・サイエンス(川崎市)社長の冨田憲介氏▼オンコリ スバイオファーマ(東京・港区)社長の浦田泰生氏▼カイオム・バイオサイエ ンス(東京・文京区)社長の藤原正明氏▼カルナ・バイオサイエンス(神戸 市)社長の吉野公一郎氏▼セルシード(東京・新宿区)社長の長谷川幸雄氏▼ ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(愛知県・蒲郡市)社長の小澤洋介 氏▼ルーセル(広島市)社長の辻紘一郎氏▼日本ステントテクノロジー(岡山 市)社長の山下修蔵氏▼メディネット(横浜市)社長兼最高経営責任者の木村 佳司氏(同協議会監事)▼UMNファーマ(東京・渋谷区)社長の金指秀一氏▼ レグイミューン(東京・港区)代表取締役CEOの森田晴彦氏▼ロングライフ (静岡・掛川市)社長の米田博文氏(同協議会監事)▼ラクオリア創薬(愛 知・武豊町)社長兼CEOの長久厚氏‐です。

□     □      □

【学術の風】黒川清氏の最新のコラムは「民主党の衆院選圧勝、それから?」 です。その理由について、国民が「変化」をますます熱望するようになってい ること、「55体制」の強い絆で結ばれた「当局」や「関係者」(例えば官僚主 導省庁の閉ざされた強い権力、大企業、農家、土木関係、その他利益者集団な ど)から圧力を受ける自民党は「チェンジ」できないという認識の広がりの表 れではないでしょうか?と分析したうえで、「私のこのような見解は外国の知 日派の方々や日本国内で仕事をしてきた外国人の方々など、海外のオピニオン リーダーの見方と重なる」として、9月7日、New York Timesに村上龍氏のOp-E d 'Japan Comes of Age' 、9月5日版のEconomistなど他のメディアやプレス の評価を伝えてくれています。また以下の英文を引用し、その後に世界の中の 日本の役割についてコメントしています。大事なところなので、ご紹介します。
'It is a country, in other words, that is in desperate need of a cha nge of government, and the election of a party dedicated to repairing broken social services as well as shaking up the economy. No doubt as and when the DPJ wins power, it will bring disappointments and its own occasionally shambolic ministers. No matter. The important thing in a democracy is to punish those who have failed and to bring in a new cr owd capable of making new mistakes. Japan has waited far too long for that.'
わが国は依然として世界第二の経済大国であることをお忘れなく。したがっ て 'The Post-American World'においても日本は世界の諸問題に責任ある態度 を取らなければならないし、またそうすることを期待されてもいるのです。実 際、日本はグローバルな課題に貢献できる力を充分に持っているにも拘わらず その経済力に見合った積極的なアクションやコミットメントが充分ではありま せん。少なくとも私の目にはそう映りますねーと。
【連載】特許庁審査業務部長、橋本正洋氏の『イノベーション戦略と知財』 の第2回「休息編」は、そのタイトルの休息にしては、イノベーション戦略を 捉えるのに大変示唆に富んだ内容で、橋本さんが今一押しの研究者の青島矢一 一橋大学イノベーション研究センター准教授を紹介しています。「知る人ぞ知 るイノベーション経営学の気鋭の学者で、研究活動に専念するあまり、ずっと 助(准)教授でいたい、という研究好きの先生です」という。経産省でも何度 かMOTの講義をお願いしていますし、NEDOにもご足労いただき、研究開発マネ ジメントについてご助言をいただいたことがある、と続けて、青島先生が昨年 編著された『企業の錯誤/教育の迷走』(青島矢一編 東信社)をご紹介し、 書評を加えているのです。さっそく、私もネットで購入しました。確かに、お 薦めです。
 
ちょっと前に橋本さんから届いたのが、第3回「ナショナル・イノベーショ ン・システムと知財政策その2」でした。「構造改革的産業技術政策としての 知財政策」がテーマで、ナショナル・イノベーション・システムの確立への政 策、それは、言い換えれば政府の寄与についてということになり、前東京大学 教授で、現在公正取引委員会委員の後藤晃氏の論文を例に、それを3つの類型 に分類しています。その1が、政府主導の技術開発プログラム、2が究開発促進 のための財政的支援措置、3が、知的財産権政策―となり、産業技術政策の中 に知財政策を位置づけている、と分析し、日本のイノベーションシステムを構 造改革していくための、言い換えればイノベーション創成の環境整備としての 政策と捉えて、橋本さんは、「制度面の改革が重要な政策であり、知財政策を 筆頭として、大学改革や地域クラスター政策を含めた産学連携政策、イノベー ション人材育成政策、ベンチャー政策、ビークルの制度整備(LLPやLL C)をあげることができます。先般の産業革新機構の設立もそうした政策の一 環に位置付けられます」と述べ、これまでの産業技術政策をイノベーション政 策として改めて整理していくのです。続きは、本文をお読みください。
新しい部署で日々研鑚に余念がない橋本さんの前向きな姿勢が感じられます。
【連載】塩沢文朗氏の『原点回帰の旅』は第56回「「萩の横丁が生んだ近代日 本−オマケで『国際炭素市場』構想について」。山口県萩市、その旧武家屋敷 の街で思索をするのです。端正な城下町、重厚な街並み、白壁、広縁、涼しい 川風、青空に夏雲…幕末の志士を生んだ松下村塾に思いを馳せて、当時の日本 を覆う閉そく感と危機感、そこからくる変革への思いは、師、吉田松陰の高潔 な人格によるのではないか、という。吉田松陰をこれほど世に有名にしたのは、 英国の文豪、ステーブンスンの記述があったから、という「学術の風」の黒川 清氏のブログで書かれていたことを思い出し、そのエピソードも紹介している のでした。写真付きです。それに、オマケの「国際炭素市場」をめぐる論説は、 塩沢さんのご専門のところで、萩のゆるやかな筆致に比べると、国際炭素市場 は、まるで機関銃の連射のような勢いと迫力がありました。こちらもどうぞ、 お読みください。



記憶を記録に!DNDメディア塾
http://dndi.jp/media/index.html
このコラムへのご意見や、感想は以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
DND(デジタル ニューディール事務局)メルマガ担当 dndmail@dndi.jp