◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2008/06/18 http://dndi.jp/

第7回産学官連携推進会議

〜源氏物語千年紀・平安の都からの報告〜

DNDメディア局の出口です。梅雨の晴れ間、やや蒸し暑い京都は、ホテルの 九条周辺から地下鉄に乗ると、土曜の朝というのに平日の都会並みのラッシュ でした。みんな早くにどこへ?って、座席の空くのを期待していたのだけれど 途中下車する人の姿は少なく、その終着の国際会館駅周辺はその会場まで長い 列が続いていました。さて、その産学官連携のメッカ、京都・宝ヶ池、今年は どんなドラマを生んだのでしょう。その一部を紹介します。


第7回を迎えた内閣府などが主催する産学官連携推進会議は、先週の14日、1 5日の両日、いつも通り国立京都国際会館を会場に開催されました。ともかく、 凄い人でした。これを勢いというのでしょうか。


参加は今年で7回目の皆勤なのですが、メーンの大会議場にテーブル席を確 保しようと急いだのですが、午前8時半過ぎにはテーブルのある席はカバンや 資料が置かれてしまっていました。あっちこっちウロウロ…しょうがないから 2階席の録画用のカメラが設置されている付近に席を取りました。う〜む、こ れじゃ取材のメモが取れないなあ〜。いつもよりかなり早く会場入りしたのに この始末でした。


展示会場となっている北側のイベントホール、そこもぎっしり人、人、人、 ホールに続く廊下にもブースが軒を連ね、人が溢れ返っている。そして案の定、 昼は数か所あるお弁当売り場も長蛇の列、移動するにも人波をかき分けないと 進めない。ふ〜む、この盛況ぶりは、いったい、どういうことなのでしょうか。


内閣府の担当の参事官、久保真季さんに参加者などの集計数字をお聞きしま した。すると、一般参加者は4200人と過去最高で、この他、内閣府など主催機 関、登壇者ら380人は別カウントというから、受付などを含めると軽く4600人 を超えている。


過去最高は、展示ブースも同様で、出展は、390小間を数えていました。こ れに共催、受賞対象、若手研究者ら95小間を加えると、485小間になります。 展示は、DNDが(財)VECと一緒のひと小間というケースもあれば、展示する大 学が大学の研究室やセクションごとに出していたり、ひとつの研究室で複数の 小間を使用するなどもあり、小間数と出展団体数は一致しないものの、ともか くこれも凄かった。ひと小間、例えば1分のペースで訪問したとすれば、その 所要時間は、連続8時間を超えることになる。内容も充実し、それぞれ足を止 めて質問する人、ビデオや資料、それに実演を交えて説明する人などの姿が途 切れませんでした。


数のことを言えば、全国から選ばれた産学官連携の功労者表彰は今年で6回 目で、これまでの7部門から増えて、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、国土 交通大臣賞、環境大臣賞が加わり合計11部門に、受賞者は昨年の倍近いの40人 (団体)を超えていました。


グランプリの内閣総理大臣賞は、研究開発3年で超高密度ハードディスク(H DD)の磁気ヘッドとして製品化され、現在のHDD大容量化を実現した(独)産 業技術総合研究所エレクトロニクス研究部門の湯浅新治グループ長、大阪大学 の鈴木義茂教授、そしてキヤノンアネルバ(株)のエレクトロンデバイス事業 本部のジャヤプラウィラ・ダビッド部長らで、これによってHDD製造装置産業 で日本が市場を占有し、新たに「スピントロニクス」と呼ぶ学術分野への確立 に寄与したとされています。


この他、近畿大学発ベンチャーでよく知られる(株)アーマリン近大が完全 養殖マグロの成功と事業化それの普及で、科学技術政策担当大臣賞を受賞しま した。受賞者は近畿大学理事で教授の熊井英水さん、アーマリン近大の大原司 社長でした。近年、重油の高騰で遠洋マグロ漁船の漁に赤信号が灯る中で、マ グロの稚魚の生産や天然マグロの資源保護などアーマリン近大のビジネスはま すます脚光を浴びることでしょう。ブースには、体長2m53pもある23年物の 特大のマグロの剥製が展示され人目をひいていました。それが、なんとも可愛 らしいからカメラにパチリ〜。



:巨大マグロは23年物のはく製


経済産業大臣賞には、多くの起業家を輩出し新産業育成と雇用の創出に貢献 が著しい岡山リサーチパークインキュベーションセンターの松尾彰センター長、 (財)岡山県産業振興財団の中小企業支援センターの横田尚之センター長、そ して岡山県工業技術センターの窪田真一郎研究員らが受賞しました。この3団 体が連携して、これまで26社を育成しさらに現在23社が入居し、トータルの雇 用実績は157人、売上は7億円に達している、という。地方経済へのベンチ ャー育成のモデルという評価でしょうか。いま注目の岡山県ですね。


 これらを全部取り上げていたらきりがありませんが、文部科学省にはNEDOの 「精密高分子技術プロジェクト」の連携事業として、ナノスケールの三次元電 子顕微鏡(TEM)とコンピュータトモグラフィー(CT)を組み合わせて直接観 察できる電子顕微鏡を開発した、京都工芸繊維大学の陣内浩司準教授、それに 日本電子株式会社が受賞しました。これは新しい微細加工技術によって顕微鏡 の中で全方位回転を可能にし、0.5nmの世界最高の分解能を達成し、材料のナ ノ構造を三次元観察の道を開いたという。日本電子が販売を開始し、国内外の 研究機関などに70機ほど納入実績がある、という。


陣内さんは、ドイツの顕微鏡学会からエルンスト・ルスカ賞を日本人で初め て授与されていました。この賞の受賞で、日本の顕微鏡技術を世界にアピール することができた、という。まあ、やっぱ、戦略的なのはどちらかといえば、 技術が優れている日本より、その種の賞を制定し権威付けし標準化を意図する、 ドイツでしょうかねぇ、これは余談ですが、日本にはこのような表彰制度はな いのか、ご講演で野間口さんが指摘されていた点は、つまりこの標準化のカギ をどこの国が握るか、だったのではないか、と考えさせられました。


当日配布の資料には、受賞者、それに授賞理由、そして成果や波及効果など がカラーで写真や図を多用して説明しています。これらがイベントホールにつ ながる廊下などで展示されていました。全部解説できないのが残念ですが、と ても面白く拝見しました。


昨年のメルマガでは、この第6回の産学官連携推進会議を総括して、「今回 もいくつもの課題を残しながらも前向きにもう一歩突っ込んだ、建設的な議論 が随所で披瀝されてた。マンネリへの批判は、ざっくばらんで忌憚のない意見 交換の成果とみるべきでしょうか、あるいは繰り返す総論的な論議はもうこれ くらいにして、明日に繋げる実践的な個別具体の成功事例、課題解決のノウハ ウを求める機運が高まってきている」と報告しました。が、さて今年はどう総 括すべきでしょうか。


朝10時の開会の挨拶は、司会進行役の内閣府大臣官房審議官(科学技術政策 担当)の西川泰蔵さんで、落ち着いたスマートな語り口でした。旧通産省から フランスの日本大使館一等書記官を歴任されていらっしゃる。その光るセンス は、そういう仕込みなのでしょうか。


冒頭は、福田首相からのメッセージで、洞爺湖サミットを控えて「低炭素社 会」への転換が世界的な潮流とし、わが国が培ってきた世界レベルの省エネ、 環境技術を発展させ、それらの革新的技術を生み出す基盤の形成を強く要望し ていました。


最初に登壇した岸田大臣は、基調講演で科学技術の進歩なくして解決しない 課題が山積している、とその重要性と政府の取り組みを熱く語っていました。 続く、三菱電機会長の野間口有さんは、いくつもの顔を持っていらっしゃいま した。日本経済団体連合会の評議委員会副議長、日本知的財産協会の会長の要 職にもある。


まず経団連の立場から、提言として産学官連携の成果を素早く活用すること の必要性とそれらを製品に反映させながら知的財産の経営戦略に生かすことが 大事で、そして国際標準化への対応と提案を力説していました。三菱電機の取 り組みは出色で、具体的な数字を明示しながら産学連携の牽引となっているこ とを印象づけていました。オープンイノベーションの戦略、グローバルな研究 体制、今回の会議のテーマの地域イノベーションの創出では、国のプロジェク トに参画したNEDOの「次世代量子ビーム利用ナノ加工プロセス技術開発」や地 域新生コンソーシアムの事例を紹介していました。


目を見張ったのは、三菱電機のOBの優秀な技術者らが全国の大学に教授とし て転籍している、という点でした。北から主に北大、岩手大、東北大、秋田大、 山形大、早稲田大、東大、東工大、慶応大、静大、名大、阪大、京大、金沢工 大、福井工大、滋賀大、神戸大、徳島大、鳥取大、高知工科大、大分大、九大、 長崎大、宮崎大などに在籍し、その数が総計367人、このうち現役が258人とい う。この中には、知財関連の連携部門への派遣も含まれていますが、凄い数で すね。いまや大学は産学連携を超えて、一体化の様相を色濃くしているのでは ないか、とさえ思えてきます。他のメーカーも同様なのでしょうか。


さて、もっぱらの評判はこの人、初登場の米倉誠一郎さんでした。もうご存 知でしょう、人気のある一橋大学の看板教授の一人で、この4月には一橋大学 のイノベーション研究センター長にご就任されました。どうも、若い人の心を ぐいっと掴む秘術があるようで、僕の周辺の若手はみんなイチコロでしたね。 すっかり魅了されて…やはり何かを持っていらっしゃる、カリスマ教授である ことは確かなようです。


野間口さんの丁寧なスピーチの後を受けて、う〜む、なんというか米倉ゼミ の延長線のような、語りかけるような、問題を与えて考えさせるような…その 米倉スタイルを堂々と、いや、少々緊張されていましたでしょうか、それでも 従来の思考をぶち壊すメッセージは十分に届いたのではないか、と思います。


笑いも起こり、関心も興味も引いて、「日本再考」のヒント、「キャリアの 形成」のポイント、そして「イノベーションの本質」をズバリ解いて、「日本 は問題解決の国、モノを売るのではなく問題解決型の、ソリューションビジネ スを世界に狙うべき」と話し、最後に「この言葉をかみしめて問題解決に取り 組み、地域の活性化に役立てて欲しい」と訴えていました。


それは、Sir Winston Churchillの以下のメッセージでした。


The pessimist sees difficulty in every opportunity.
 The optimist sees opportunity in every difficulty.


素晴らしい。この言葉を聞けただけでも参加した価値があるというものです。 これをDNDの社是にしようかしら。〜できないことの理由をいくら並べてもな んにもすすまない、というのに似ていて、これはいつも内閣特別顧問の黒川清 先生が厳しく指摘されていることです。


さて、午後からは、4つの分科会でした。その1は、東北大学教授の原山優 子さんが進行役を務めた「科学技術による地域イノベーション」、登壇者は 「ナカシマプロペラ」の中島基善社長、その磨きの技術から医療分野などに進 む、多元的なビジネス展開は鮮やかで目から鱗でした。いつもの座長からパネ ラーに移った東京農工大学大学院教授の古川勇二さんの大学を中心にした大連 携の事例は、新しい視点でした。


原山さんは、キーワードとしての「つなぎ力」、「つなぎの連携」のモデル を強調していました。中小企業庁長官の福水健文さん、中小企業基盤整備機構 理事の後藤芳一さんら「官」の側からの「ものづくり支援」、「コーディネー ト機能」のそれぞれの成果は、中小企業の育成や地域政策に不可欠な施策であ る、ということの例証でした。



:分科会1 座長席に原山教授


そこを途中で抜けて、その2の分科会「産学官連携のグローバル展開」は再 び米倉さんが座長で、パネラーは精鋭の4人、際立ったイノベーターをそろえ ていました。米倉さんの独自のアイデアなのでしょうか。


 ACCESS代表で軌道にのる荒川亨さん、サンブリッジ創業者・取締役で流暢な 日本語のアレン・マイナーさん、協同商事コエドブルワリーの朝霧重治さん、 そして筑波大学教授でロボットスーツの「サイバーダイン」の山海嘉之さん、 という面々でした。そのアネックスホールには大勢参加者が席を埋めていまし た。



:分科会2の米倉さんが座長の会場はぎっしり


論点が、途中からではよく掴めませんでしたが、日本でのベンチャー育成が 中途半端で、ベンチャーキャピタル投資が2000億円と低額で、さらにグローバ ルに展開しようとすれば、それを阻む勢力がキャピタルサイドに現われて、ま ず国内でのEXITを急げと強く指示される、というような貧しいこの現状をどう 打破するか、というところを少し記憶しています。ほんと深刻です。


そういえば、ちょっと話が違いますが、大学発ベンチャーの受難が続いてい ます。今度は、ついにというべきか、(株)オキシジェニクス(資本金22億 9599万円、本社・東京)がこの13日、東京地裁に自己破産の申請をしたと いうニュースが入っていました。2002年12月の設立で人工赤血球の実用化で内 外から注目されていましたが、2006年に2億2100万円の売上を計上したものの、 共同研究の提携会社が手を引き資金難に陥ったのがその理由と、専門の調査機 関が分析していました。いやあ、残念です。


その他の分科会は、その3が「国際競争力強化のための知財戦略」、関心の 的は、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合の代表で、ボラ ンティアで学生に生きた起業家教育を長年続けていらっしゃる村口和孝さんで したね。そこには、熱心な元科学技術政策担当大臣の松田岩夫さんがパネラー に、コメンティーターに総合科学技術会議議員の相澤益男さん、経済産業省の 大学連携推進課長の吉澤雅隆さん、文部科学省の研究環境・産業連携課長の田 口康さんらが参加していました。どのような展開だったのでしょう。ある意味 少々心配もするのですが…。その4は「科学技術施策の社会還元加速」という イノベーションに切り込んだテーマは、座長が、トヨタ自動車の技監、渡邉浩 之さんでした。ここは着実に「イノベーション25」で取りまとめられた社会 還元加速の事例などが紹介されたようです。


 初日の午後の部の後半は、DNDブースで店番に徹しました。いろんな方々が 訪ねてきました。通りがかった人を呼びとめる、というのもありました。今回 新しく事業としてスタートした営業支援の「ビジネスアライアンス」のPRのた めに、パートナー企業の「営業参謀」の赤羽広行さん、「セールスニーズ」の 野口尚武さんらと一緒に、DNDメディア塾塾生でモノづくりをベースに温度と 湿度の制御機器メーカー「ニッポー」の4代目社長、若槻憲一さんも急きょ加 わっての、チラシ配りでした。最初に顔を合わせたのは、ブースが近い弘前大 学の産学連携コーディネータで、この4月に弘前でお世話になった野呂治さん でした。いつ会っても気分がいい。ああ、また弘前にいきたい、と伝えました。 そこへ電通大のTLOキャンパスクリエイト社長、安田耕平さん、これからの厳 しいTLOあり方を真剣に模索しているようでした。


メインの会場では近くにダンディーな堀場雅夫さんの姿を見つけたのでご挨 拶しました。にこやかに手を差し出してくれていました。そばで誰かが、ベン チャーの神様だ、とつぶやいていました。確かに〜。JSTの理事長の北澤宏一 さんは大会議場の前のJSTのブース前で関係者に囲まれていました。


ブースの隣は、筑波大学研究事業部産学連携課の佐藤俊彦さん、宮川武さん、 高野一さんら、向い側は福岡県商工部水素班の秋田道子さん。そして、突然ご 無沙汰です!とさわやかな笑顔をみせてくれたのは徳島大学知的財産本部の西 岡久子さん、産学連携学会徳島大会でお世話になりました。


立命館大学研究部は、藤澤知宏さんと斉藤富一さん、産総研時代にベンチ ャー設立で懇意にしていた渡辺純一さんは、ところを変えて早稲田総研イニシ アティブの社長、やはり早稲田大学教授で先端科学・健康医療融合研究機構の 川口竜二さん、琉球大学教授で温和な堤純一郎さん、前後して沖縄県産業振興 公社の佐藤英彦さん、山口大学は准教授で産学公連携・イノベーション機構の 藤井文武さん、さきほど副学長で見識の三木俊克さんに会いました、と告げる と、スティーブ・ジョブズですね、と笑っていました。前回のメルマガを読ん でくださっているのですね。


ブースひとつひとつを訪ね、資料を収集していらっしゃったのは、コラボ産学官の産みの親の前理事長、梶谷誠さんで、この春から電気通信大学学長に返り咲き、名前の通り誠実な人柄はファンが多い。


岡山県の津山工専の一押しはカーボン素材、そこの電子制御工学の奥山圭一 准教授、熱心に説明してくれました。宇部工専機械工学の准教授は岡正人さん、 そして久しぶりにお目にかかった、群馬工専教授で地域連携テクノセンター副 センター長の藤野正家さんでした。


「技術を社会へ」は産総研、そこの新しいプロジェクト、生命工学から農学、 医療とその分野のとてつもなく広く有用な、糖鎖医工学研究センター副セン ター長で糖鎖研究と産業の応用をリードするのは平林淳さんでした。平林さんの紹介は同センターの友田和美さんでした。ここは一 度しっかりウオッチしておく必要があるようです。


コーディネータは、工学博士の堀野祐治さん、山形大学の産学官連携コーデ ィネータは高橋正幸さん、岐阜薬科大学の知的財産アドバイザーは丞村宏さん、 廊下で小型のビークルを飛ばしていたのが、千葉大学大学院工学研究科の岩倉 大輔さん、中庭でコーヒーを飲んでいると学生3人が近寄ってきて、学生のビ ジネスプランコンテスト並びに大学発ベンチャー創出にがんばる、という健気 な慶応大学の中川貴雅さんら学生3人でした。僕より捉まえるなら、米倉さん や村口さんだよ、と指摘しました。


イベントホール正面の角で新規ビジネスの説明に汗を流していらっしゃるの は、東海大学教授で新たに(株)ブライトホープの代表に就任した尾身朝子さ んでした。スムースにページをめくるアーム、 本を110°に開き高速の一眼レ フでそれらのページを瞬時に撮影しデジタルデータとして簡単に処理する、そ の画期的な自動スキャナを販売する、あるいはサービスを手掛ける会社だとい う。全国の大学や研究機関に1台は欲しい製品ですね、そのビジネスのスタイ ルがとてもスマートです。


こんな風にお店番やブース回りをしていたので、総括講演となる元科学技術 政策担当大臣でこの産学官連携推進会議の生みの親である、尾身幸次さんのお 話や、相澤益男さんの各分科会の提言のまとめ報告などを聞くことができませ んでした。


さて、7回目の産学官連携推進会議。回を重ねて何が大きく変わったかとい えば、う〜む、その質でしょうか。運営の質、企画の質、栄えある受賞候補の 質、そして参加者の質などに微妙な変化が起きていることに気付かされました。 産学連携が産のニーズに学のシーズ、それらをマッチングするコーディネータ の役割といった一元的な初期の取り組みと、産学連携が進まない理由は何とい った議論は、今思えばもう遠い昔のようです。


今回は、「イノベーション」をキーワードにグローバルに、そして地域にと いう複眼的な方向性が見えてきましたし、学ぶ、知るという側から伝える、見 せる側へと進化し、客観から主体へ、参加者の多くが産学官連携の中心的存在 にそのステージをアップさせたのは確かなようです。さて、皆さんはどのよう な感想をもたれたでしょうか。よろしければ、教えてください。


しかし、その恐ろしい一報は14日の午前8時50分過ぎ、ブースにいた時でした。東北で震度6強の地震、被害が出ている模様、というメールが家の者から入りました。テレビの速報を見ての連絡でした。すぐに弘前大学の野呂さんに伝え、周辺の知り合いに連絡しました。14日朝に発生した岩手宮城内陸地震、被害の大きかった栗原市にある旅館「駒の湯温泉」で行方が分からない3人の捜索活動が連日続いています。しかし、すさまじいほどの山の崩落でした。村の古老が、かつて、この荒れた山に入植し苦労の末に開墾した田畑が、一瞬にして泥に埋まった状況を目の前にして、「いままでの苦労は、なんにもなんねがった」と、うなだれていました。気の毒でしょうがありません。


岩手といえは、岩手大学を中心とする産学連携組織INSの世話役の一人、花 巻市の技術振興協会の佐藤利雄さんに電話しました。さっそく、佐藤さんから 御礼のメールが届いていました。


翌15日朝は再び、国際会館へ。若手研究者らがステージで発表し、展示は相 変わらずにぎわっていました。正午すぎ、いろんな思いを胸に収めながら、帰 りは一人、京都駅までバスに乗ることにしました。窓から京都の街並みが見え てきます。京都造形大学の正門の構えは、芸術的でした。車内のテープは、金 閣寺とか、東本願寺とかの名所をアナウンスしていました。窓の外をみれば、 祇園、夕べ遅くまで古川先生夫妻を交えて飲んだ、いつものうどん屋「萬屋」 はすぐそこだ。


目を閉じると、その夜の酔いが甦る。漆黒の小路、赤く揺れる提灯、その奥 ゆかしく風情の佇まいを今に残す祇園、なんといっても今年は、源氏物語が記 録に登場して1000年を迎えているのだ。いつしか、なまめかしい風が吹いて遠 くから僕の名を呼ぶ、女性の声のようだ。もっとゆっくりして行きなはれ、と 誘う。


紫式部が姿を変えて、そして恋の時空をも超えてひんぱんに出没するという。 お酒を飲んで酔って気を許してはならない。はっと我に返ると、まだバスが揺 れていました。もう1時間以上も乗っている。それなのに、京都駅はまだ遠い。 これはどこへ向かっているのだろうか、運転手が道を間違えるハズはないが、 次第に窓の外が暗くなってきている〜。


※           ※          ※


さて、来週は大分市のコンパルホールでNPO産学連携学会が26日、27日 に開かれます。参加する予定です。徳島大学教授で同会長の佐竹弘さんのデビ ューです。大分大学の教授で実行委員長の伊藤正実さんが頑張っているようで す。


そして下旬は、いよいよ洞爺湖サミット。その内外の報道陣に紹介する、NE DOとAIST共同の世界最高水準の省エネ、新エネ、そして環境の先端技術を装備 した「ゼロエミッションハウス」が話題を呼んでいるようです。場所は、国際 メディアセンターが置かれる北海道留寿都村のルスツ・リゾート敷地内で、政 府の環境技術を展示する「環境ショーケース」の一環として建設し、日本の優 れた環境技術の極め技術を広くPRしようという狙いがあるようです。


昨日昼前、NEDO企画調整部長でDND連載「イノベーション戦略とNEDO」を担 当する、橋本正洋さんが記者会見に臨んでその概略を説明し、記者の質問に丁 寧に答えていました。今月下旬に関係者が集まって現地で開所式が予定されて います。その詳細は、洞爺湖サミットと合わせて取材し、報告したいと思って おります。洞爺湖サミット開幕は7月7日です。乞う、ご期待!


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