◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2007/10/03 http://dndi.jp/

新聞業界再編・淘汰の五里霧中

   〜朝日・読売・日経の3全国紙の業務提携のホントの狙い〜

DND事務局の出口です。10月の異名は神無月という。神々が出雲に集って会 議を招集するというから、みんな浮き足だって世相の行方が定まらない〜。


「沖縄戦集団自決」における旧日本軍関与の記述修正などをめぐる文部科学省 の教科書検定問題、微妙な表現の是非論はあっても党派を超えた多くの沖縄県民 の感情はまず根本に尊重されなければならないでしょう。


思惑さざめく韓国大統領の訪朝の動向、本日午前と午後の2回予定されている 首脳会談で協議される統一問題はどういう方向の動くのでしょう。


官から民、小泉元首相の執念で結実した「民営郵政」、163年の歴史に幕を閉 じ新たなスタートをきりました。で、波乱含みのねじれ国会は、福田新総裁の 「背水の陣内閣」が与野党の初論戦に臨んでいます。いまラジオからヤジが激し く飛んでヒートしているようです。


●「お父さん、いい子になるから迎えに来て…」の悲痛
 「背水の陣」は大相撲の親方衆らも同様で、可哀そうに入門まもない17歳の力 士の"リンチ死"の発覚では、どうみても無気力相撲、鋭い突っ込みも押しも影を ひそめ、のらりくらりで世間の信頼を完全に失墜させた感じですね。それにして もあの親方らの憮然たる表情は、とても心技体を究めた顔ではないようです。急 死する前の日、「お父さん、いい子になるから迎えに来て」と電話で助けを求め てきた息子を守ってあげられなかった父親の無念の胸中は察してあまりあります。 ちょっと脱線して25年前の取材の記憶です。


〜台所で夕餉の支度をしていると、ふいに下駄の音が響いてピタリ止まった。 人が立っている気配があるのに声もなく、玄関の戸は開かない。


「辛いからまた逃げて帰ってきたんだなあ〜」と母親は思った。これで3度目 だ。16歳の息子を案じて心を鬼にして無視することにした。沈黙が流れた。 数十分後、息子は諦めたのか、帰って行った。その後姿を窓からこっそりのぞい てみると、なんども振り返りながらこちらを伺っている。「お母さん」と大声で 叫びたかったに違いない。堪らず、つい子供の名前が口をついて出たが、声にな らない。体を丸めてしょんぼり来た道を帰って行った。図体はでかいがまだ子供 だ。


「がんばって、ここを乗り越えて立派に成長して…」。母は仏壇に祈ったが涙 が止まらなかった〜。


●相撲部屋取材メモ「泣いた赤鬼」のよき時代
 これは、地方記者時代に書いた連載の一場面です。「泣いた赤鬼」というタイ トルは、その童話をもじって付けました。朝日山部屋に栃木県出身で、四股名が 赤鬼という力士がいました。青鬼もいました。親方は柔和ながら茶目っ気があっ て、「他の相撲部屋に桃太郎という力士が生まれたら、鬼退治になってしまうか ら」と思って先につけた、と話していました。


朝早くの取材で墨田区内の部屋をお邪魔し、親方や赤鬼さんに話を聞いて、そ してちゃんこもご馳走になりました。幕内力士は、十両にひとりいるだけの小所 帯でした。十両の特別メニューは大皿に野菜サラダがつくだけで、みんな区別が なく腹いっぱいの食事は保障されていたようです。


しかし、当時でも、部屋からの脱走はよくあったらしく、その主な理由は「里 心」でした。個室などは勿論なく、30畳敷きの大部屋での集団生活は、最初馴染 みにくく、中学を卒業したばかりの力士にはとても耐えられないくらい寂しいら しい。のんびりした兄弟子ら、ちばてつや原作の「のたり松太郎」のマンガに登 場する力士らの無垢な表情から、ビール瓶で殴って暴行を加えて死なせる〜そん な殺人まがいの非情は考えられませんでしたね。


苦しい稽古や寂しさを乗り越えて未来に羽ばたく、その陰に支えてくれる師匠 が、仲間が、そして両親がいる、そこ恩を見失ってはならない。そこを描くのが この連載企画の狙いで、統一テーマが「あしたはきっと天気」でした。これも僕 がマンガ本から拝借して付けたものでした。


☆        ☆        ☆


●朝日、読売、日経の大同団結の衝撃度
 さて、出雲に集結する神々は、どちらに微笑むのでしょう。本日の本題は、新 聞業界の再編に絡む最新の話題です。


ライバルの虚を突く奇策か、生き残りへの知略なのか、その新聞界の強者連合 はいったい何を意味するのでしょう、そしてその真の狙いは何か、う〜む。


朝日と読売、それに日経…。その論調も違えば、読者層も違う。犬猿の仲とい えば失礼だが、まあ、政界で言えば、自民と民主が大同団結するようなものです。 きのう2日の新聞各紙は、この3紙の社長が顔を揃える共同記者会見の模様を大き く伝えていました。67社240人が集まったという。


その3社が合意した業務提携の内容は、主に以下の3つ。その1、「共同ニュー スサイトの運営」:インターネットやその他の電子媒体におけるニュース発信等 に関し、共同事業を行う。それぞれ数億円出資し年内に事業組合を設立する。サ イトは、3紙の紙面の記事や社説など主要記事の「読み比べ」が可能になるサー ビスや3社の記事を共同で配信するためのツールの提供を検討する。運用開始は 来年2008年初頭で、原則無料。それぞれ独自のサイトは従来通りだが、3社共同 のポータルサイトを運用することで、ネット利用者の確保と広告媒体としての魅 力を高めるのが狙いだ、という。


その2は、「新聞販売の共同事業」:過疎地の販売店などで3社による共同配 達に取り組む。過疎地で配達コストがかさむようになっても、読者が新聞を読み 続けられる体制を整え、戸別配達網を維持し強化する。朝日と読売はすでに北海 道の一部で共同配達を実施しているが、大阪市や鹿児島県の一部でも検討に入り、 その他、合意できる地域では朝日と読売の販売所が配達地域を分担し、複数の販 売所と取引のある日経は、場合に応じて協力を検討する、という。これも画期な ことですね。人口減に高齢化の地域は、それぞれ各社が少ない部数を競ってそれ ぞれが独自に配達する、という旧来形態では、販売コストが経営全般を圧迫しか ねませんからねぇ。


う〜む、さてさて、それは理想の姿ですが、どこまで公平にスムーズにやれる か、が課題です。割り当てられた地域でも一部でも自社の新聞を増やしたい、と 思う現場の販売員が意地悪して他紙を配達しない、とか切り替えを強く勧めるの が従来のやり方ですから、果たして大丈夫かといった疑問視する声もあるようで す。新聞の購読部数は年々減って、下げ止まらない。この現状に少しでも販売コ ストを削減しなければならない。販売政策の問題は、もう待ったなしのようです。 僕も新聞社の販売部長の経験がありますが、まあ、泥沼状態でした。その実態は 差し障りがあまりに大きくて書けません、ね。


そしてその3は、「地震や災害時の相互援助」:新聞制作上でシステム障害が 生じ、ある新聞社で紙面の編集や印刷ができなくなった際、被害を受けなかった 社が制作や輸送を肩代わりする、という。リスク管理の面で言えば、とてもグッ ドアイディアですね。


朝日、読売、日経の各紙は、読売グループの内山社長、日経の杉田社長、朝日 の秋山社長らが共同記者会見の席で握手する、ちょっと照れた様子の写真を掲載 していました。1面に要旨を伝える本記、社会面に記者との一問一答の関連記事、 そして率直な解説記事も見受けられました。


記者会見では、「提携により販売網が寡占化し多様性を損なうことにならない か?」、「ネット事業を共同でやることで新聞を維持する、という発言があった が合点がいかない!」、「ネットではすでに複数媒体の記事が読める。共同事業 のメリットは?」などとの突っ込んだ質問があったようです。朝日新聞に詳しく 書かれています。


所詮、浮いては消える日々のニュースがコアコンテンツとなれば、いくら3社 共同のネット事業といってもよほどの仕掛けや面白みがなければ、ヤフーを超え るような爆発的なページビューはちょっと期待薄でしょう。ニュースは携帯端末 でも入手できるし、産経は特ダネもネットに流すウェブ・ファーストの心意気で すからウェブの特性をよく理解しいらっしゃる、さて、3社の共同ポータルはそ れらを凌駕するどんなサービスを仕組んでくるのでしょう。


社説など3社の見比べができる、というのをウリにしている風ですが、社説を 読んでそして見比べるという、そんな暇人は少ないと思うのですが…誤解があっ たらごめんなさい。


しかし、「検索を制するものウェブを制する」の言葉を3社の社長さんに贈り たい。まあ、社長だからしょうがないけれど、動き出す新しいウェブの共同事業 をどこまでイメージできているか、そこも疑問ですね。早く3社のウェブの編集 長が登場してそのサービスの内容を説明するのを待ちましょう。


意地悪なことを言えば、大手新聞の社長さん、グーグルで自分の名前を検索し て閲覧されたことがあるでしょうか、中にはひどい中傷、酷評、内部告発まがい の投稿で汚れているケースもあります。自らの発言や書いたものがウェブに載ら ないと、インターネット上に引っ掛かりませんね。誰も教えていないのか、知ろ うとしないのか、社長さんが自らブログを始めるといえば、少しはシンパシーが 湧いてくるということです。ウェブは生ものであることを皮膚感覚で捉えてほし いものですね。


●ジャーナリズム魂を見せつけた長井健司さんのビデオカメラを取り返せ!
 また脱線してしまいますが、巨大メディア3社が生き残りを理由に徒党を組む、 というこの構図は、なんだかミャンマーで反政府デモの取材中に数十センチ至近 距離から銃殺された、日本人ジャーナリストの長井健司さん(50)の生きざまとは、 まるで対極にあるように思えてなりません。


所属のAFP通信社代表の山路徹さんが、こんな話をされていました。「誰も行 かないところに、誰かが行かなくてはならない」というのが長井さんの口癖で、 戦乱の中の住民の苦しみをどう伝えるか、そういう決死の覚悟で常に最前線の現 場に飛んでいました、と。


銃で撃たれて路上に飛ばされ、あおむけに倒れながら右手でビデオカメラを回 し続けた最後を、いつまでも記憶に止めておかなくてはならないような気がして います。長井さんの遺作、命を賭けた緊迫の映像をなんとしても奪い返し、その 映像の公開を期待したい。長井さんは即死と伝えられていましたが、最新の映像 では、しばらくたって近寄る兵士に右手を差し出して起き上がろうとする姿が映 し出されていました。瀕死の重傷を負いながら生きる、これを伝えなくてはなら ないという強いジャーナリスト魂を感じました。この場を借りて、長井健司さん のご冥福をお祈りしたいと思います。明朝、長井さんの遺体が還ってくるそうで す。


●来年早々の共同サイトは、別名、ANY!
 さて、3社共同のサイトの愛称が、朝日のA、日経のN、読売のYをとって、ANY (エニー)と呼ぶらしい。これに毎日新聞が加わったら、Manyだなあ、と一部業界 関係者の間でささやかれているようです。


なんともこの10月1日は、全国紙のウェブ新時代の幕開けを告げる歴史的な日 となったようです。3社の事業提携発表に続いて、毎日はマイクロソフトと共同 運営してきたニュースサイトを閉鎖し、ヤフーが出資するサイト運営会社「オー ルアバウト」と連携して「毎日JP」を始めました。その一方で、ウェブ事業に熱 が入る産経新聞は、はやりこの1日からマイクロソフトと組んだニュースサイト 「MSN産経ニュース」を開設しました。


2日の産経一面では、その趣旨を「紙媒体は分量や時間的制約が多いが、ネッ トにはない。MSN産経は記事、写真、関連情報をふんだんに盛り込み、すべての 情報に触れられるウェブ・パーフェクトの実現を目指す、と鼻息が荒い。それに は理由があるんですね。昨年秋にデジタル関連の専門部署を統括して「株式会社 産経デジタル」を設立、本体から切り離していわばベンチャー的な経営に踏み切 った経緯があります。ここに来るまで15年〜。


●インターネット夜明け前の電子新聞研究会設立
 振り返れば、もうインターネット夜明け前に、実は産経新聞総合企画室という 新聞経営の戦略の部署に配属になって間もなく、当時の羽佐間重彰社長からの 直々の指示があって、「今後のマルチメディア戦略を考えよ」という。オンライ ンサービスやCATVなどの電子媒体を活用したメディアの先進事例を米国に学び、 そこで立ち上げたのが東京、大阪の若手20人を集めた電子新聞研究会でした。イ ンターネットは、そのメンバーに入っていなかった当時大阪編集整理部のK君が、 膨大なインターネット関連の資料を送ってくれました。すぐに彼もメンバーに加 え、初耳だったインターネットの実験に入っていたわけです。研究会の具体的提 案は、その年の暮に行いました。電子メディア部の創設とインターネットでの情 報配信の実施、それに頓挫しましたが電子情報の携帯端末開発が着手されていま した。ご存知の通り、いやあ、それからのネットの展開は凄まじいものがありま した。


当時の問題は、ネックは電話回線を使ってインターネット接続するために接続 料金が高額だったことと、パソコンの普及が世帯の数%という実態に懐疑的な意 見が続出していました。新聞社では、もっと深刻なのが販売店からの理解が得ら れなかったという、「販売の壁」です。素直な疑問は、インターネットだかなん だか知らねぇが、ニュースを無料で流してしまうんじゃ、新聞が売れなくなる。 そんなものやめてもらいたい―という文句と不満でした。


いまだって、3社の共同記者会見をつぶさに読むと、「ウェブでも万単位で新 聞購読がある」といい、3社の業務提携はウェブの共同事業ばかりじゃなくて、 販売の共同事業もやるんですよーと強調しているように感じます。


●新聞経営のジレンマ
 新聞の経営戦略のジレンマ―なんとしても出遅れたウェブ事業を再構築すべく 3社の利害が一致して設立する「ウェブ共同事業」、しかし、やっぱり新聞を捨 てたのか―という批判は回避しなければならない。だから3つの共同事業のうち、 2つは販売に関する事業でしたね。どっちに本当の狙いがあると思いますか〜。 ここが意見の分かれているところです。


この3社の取り組みを皆さんはどのように受け止めたでしょう。いくつかの雑 誌で噂されていました。先週発売の「週刊文春」(10月4日号)の「読売・朝日・ 日経『3強』が販売店統合で動いた!」の独自ダネ記事、そして、「新聞没落」 のショッキングな見出しで特集を組んでいた「週刊ダイヤモンド」(9月22日号) では、朝日、日経、読売がヤフーに対抗した共同のポータルサイトを立ち上げ る!というスクープ記事が、その辺の動きを的確に伝えていましたが、いざ、蓋 を開けてみるとその両方の記事も正しかったことになります。どこかがリークし たのでしょう。業務提携のきっかけは、内部情報では、読売が朝日に呼びかけて、 そして嫌がる日経を引きこんだ〜というのだが、確証はない。


●新聞は必要としない世代〜情報入手はテレビ、パソコンが双璧
 周辺を眺めてみれば、果たして新聞の役割はなんでしょう。大学生のメディア 観は、新聞を読まない学生が36・8%にも達していました。社会の情報入手の手 段は、テレビ71・4%、パソコン69・2%と圧倒し、新聞は?26・2%に止まり携 帯の15%とそれほど変わらない。多くの若者は新聞を読まないというより、もう 新聞を必要としていないのではないか、と考えこんでしまいます。面白情報を満 載した携帯端末、多様化するネットビジネスや情報サービスの変容など若者を惹 きつける、これらインターネットなどによるメデイア環境の新しい風は、古い体 質の紙媒体を軸にした伝統的新聞経営を危機的状況に追い込んでいるように映り ます。


読売の解説はこの辺をこんな風に説明していました。「世界の新聞業界は現在、 インターネットの普及や若年層を中心とする「活字離れ」の影響などで、かつて ない厳しい経営環境にさらされている。すでに欧米の一部では、経営不振から記 者の削減に踏み切る動きなども起きており、新聞ジャーナリズムの根底が揺らぎ 始めている―と。この解説を裏付けるのは、「有力紙以外は消滅?」というショ ッキングな見出しの産経新聞ロサンゼルス特派員のレポートです。これはハー バード大学の調査チームが全米のニュースサイトのアクセス状況を分析した結果、 インターネットの影響で、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストといっ た「ブランド」以外の新聞は将来、存続が困難になるかもーといった予測を発表 した、という。


新聞業界をめぐる、その業界の問題や病理を掘り下げる出版が相次いで、もう 10数冊に及んでいます。最近よく売れているのは、『新聞社』〜破綻したビジネ スモデル〜(新潮新書)で、元毎日新聞常務取締役の河内孝さんによる渾身の告発 書で、「新聞の生き残る道はあるのか」を真摯に探りながら、その問題の根っこ を指摘して、「4割を超える異常な販売コスト」、30年前と同じ広告売上の実 態」、「消費税アップで利益が吹っ飛ぶ」、「IT急伸で四面楚歌」、「朝日と 読売しか残らない?」、「年間220万本の森林破壊」、そして「ネットビジネス で悪戦苦闘」などと、今日の3社業務提携発表を見透かしていたような将来の新 聞の姿を描いています。「あなたたちの真の敵は、テレビでもインターネットで もなく、破綻したビジネスモデルにとりすがる新聞界の守旧派なのですから〜」 というメッセージはパンチが効いていました。


河内さんは、そこで読売、朝日の巨大新聞に対抗するには、毎日、産経、それ に中日(東京新聞)の3社が業務提携を進め、それを全国に拡大すべきだ、と提言 していました。今回はその裏を突かれた感じですね。


●ジャーナリズムの本質的な役割は変わらない―の至言
 そして、「公称とかけ離れた実売部数」の章は、とても勇気のいる内容だと思 います。公称部数には、販売所に預ける「押し紙」という水増しが相当数含まれ ていて、実際に配達されている部数とに大きな隔たりがある、という。いやあ、 生々しい。また、読者のいない新聞が3割―というショッキングなデータを示し ているのは、黒藪哲哉さんの『新聞があぶない』(花伝社)でした。この辺は新聞 の暗部、タブーとなっているところです。新聞経営の根幹と信じて疑わない部数 至上主義の呪縛から、早く抜け出さないととんでもない事態になる、という警鐘 でしょうか。もう販売部数が広告料金に連動するというのは幻想のようですし、 その広告収入も激減しているんですね。


これは朝日新聞のOBで大学教授、現代メディア・フォーラム代表の柴山哲也 さん著の『日本型メディアシステムの興亡〜瓦版からブログまで』(ミネルヴァ 書房)ですが、どっしり重厚感のあるジャーナリズムの本質に迫る労作で、オン ライン・ジャーナルの可能性に言及しながらも「時代や技術の進歩によってメデ ィアの形態がどの様に変貌するにしても、人間社会がある限り、世の真実を伝え るジャーナリズムの本質的な役割は変化しない」と指摘していました。


ジャーナリズム機能の確立という原点に立ち戻るところに新聞産業の確かな道 筋があるのか、あるいはネット事業の先に起死回生の鉱脈を見つけ出せるものな のか、さて、さて。


以下は、河内さんの「新聞社」に掲載されたデータを基にしたものです。 業績好調の3社が連合を組む、実にここが極めて不穏なところで興味深いところ です。知人はこんな風に解説しています。


●朝日が毎日を食い、読売が産経を呑む―という虚言
 「読売、朝日は読者が競合しない。朝日が毎日を、読売が産経を呑み込むサバ イバルな再編・淘汰の新聞戦争のドラマが幕を開けた。虚言かもしれないが、こ れからは何でもありですよ」。ホントかウソか、消費税導入に伴って、部数減を 覚悟して新聞代金に上乗せするか、否か、ここの局面がひとつの岐路と見られて おり、どういう風に動いても3社連合のメリットは計り知れないことは事実のよ うです。


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全国紙は、部数の順で読売(1000万部)、朝日(800万部)、毎日(390万部)、日経 (300万部)、産経(200万部)で、05年決算の各社の総売上(経常利益)を比較すると、 読売4877億円(281億円)、朝日4023億円(157億円)、日経2326億円(255億円)、毎日1525億円(5億円)、産経1287億円(26億円)という具合です。



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