◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/12/20 http://dndi.jp/

DNDグランプリ2006発表『新春合併号』

〜本年を総括して年末の所感〜

DND事務局の出口です。光陰矢の如し〜。年の瀬も押し詰まって本年も残す ところ10日余りですね。なんとも歳を重ねるごとに速い。人生って、こんな調子 で時間が加速し、あっという間に過ぎていくのでしょうか。少年老い易く学成り 難し〜。


さて、皆様にとって今年はどのような1年でしたか。まあ、いろいろありまし たね。なんともこれ以上申し上げませんが、といって書いてしまうところが僕ら しいのですけれど、年末の所感をひとくさり。


近所のJR駅で、電車内で男の子のお尻を触った、という容疑でNHK関連の30歳 の男性が捕まりましたが、なんとか放免してあげられないものですか、どこか具 合が悪かったのではないでしょうかね。


みなし公務員で阪大教授のある会長は、愛人を官舎に連れ込んだっていって、 集中砲火の非難を浴びていますが、悪いのは悪い。確かに問題だ。だけど、そん なに追い詰めちゃっていいのでしょうか。妻と離婚調停中なんていうことまで白 状しなくちゃならないんだなあ、遊びでなくて生涯のうんぬんっていうことでな らば、あるいは文学的でもある、って思うのはダメでしょうか〜。


と言っていたら、今飛び込んできたニュースは58歳の毎日新聞記者が酒に酔っ て、電車内に空き缶を捨てた事をと咎められて52歳の会社員の顔を平手で殴っ た、と言う。会社側は、厳正な処分をする、という。


いずれも、恥ずかしい話ですが、どこかやるせない気持ちにさせられてしまい ますね。いまの時代、少しのミスも許さない、そして牙を剥いて食いちぎるよう な加虐性がどんどん強まっている傾向があるのではないでしょうか。罪の軽重 の、その加減が分からない。それぞれのいい分や事情を考慮しない。どんなささいな ことでも一発退場というのは、どうなのでしょうか。


さてさて、人生七転び八起きですから、自戒を込めて言えば、嫌な事は早く忘 れて新年に捲土重来を期待しましょう。ともかく手洗いを励行して、感染のノロ ウイルスに要警戒です。吐いた物を喉に詰まらせるのが死因らしいですから、お 年寄りは、喉に注意ですよ。


さて、DNDメルマガは、この項が今年の締めくくりとなります。新設のDNDパー ソン・オブ・ザ・イヤー2006、それにDNDキーワードグランプリ大賞の、それぞ れの発表です。いずれもDNDメルマガを参考にして集計しました。


久々に読み返してみて、あの人この人の言葉や表情、あるいはあの場面その場 面が浮かんで懐かしい気分にさせられました。不意を衝かれたように、えっ!こ んな風に書いていたんだあ、という驚きもありました。ただ、一番伝わってくる のは、その文章の書き出しの緊張感でしたね。回顧はそのくらいにしてさっそく 発表します。



【DNDパーソン・オブ・ザ・イヤー2006】
 本年、1月11日配信の「届け、希望の言葉」(VOL.158号)から前回の「元 気を発信する若者力」(後半・VOL.205号)までのメルマガ47本を通して、最 もメルマガ出場回数が多かった人、パーソン・オブ・ザ・イヤー2006グランプリ は、ジャ〜ン、アンジェスMGの森下竜一さんに決まりました。5人は僅差でし た。上位( )は出場回数。


【第1位:DNDグランプリ】(14回)
 森下竜一さん。もう大学発ベンチャー、産学官連携のフィールドで森下さんの 名前を知らない人はいない。それほど活動は多岐で、大学発ベンチャーのフロン トランナーとして後に続く大学発バイオベンチャーを牽引し多くのベンチャーを 育成しています。大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授、大学発ベ ンチャー「アンジェスMG」取締役、そして創業者。2002年9月に東証マザーに上 場し、毎年37、38億円規模の研究開発投資を続けている企業は地方にそうは存在 しないでしょう。


大学発バイオベンチャー80社余りが所属する大学発バイオベンチャー協会の設 立発起人のひとりで副会長でもあり、阪大発ベンチャーを支援する青い銀杏の会 理事長などもこなしています。全国での講演回数も多く、超多忙ですね。素晴ら しい方です。DNDサイト上では、「大学発ベンチャー成功の方程式」を連載執筆 中、自らもブログを立ち上げて情報発信をしています。


例えば、DNDメルマガのVOL.202号「山川健次郎氏と黒川清氏のPhronesisの符 丁」で、森下さんは、こんな風に登場していました。


〜DND「イノベーション25戦略会議」の緊急提言で、そうそう、アンジェスM G 創業者で大阪大学大学院教授の、森下竜一さんの提言論文「オープン・イノ ベーション実現のための戦略とは?」でした。そこで、森下さんは、イノベーシ ョン25への提言を語る前に、まずは、黒川先生の内閣特別顧問への就任の意味を 考えたい、今回の内閣特別顧問就任は大きな意味を持っている−と前置きして、 中国やシンガポールでは首相や、主席自身がテクノクラート出身で、フランスで もアメリカでも、科学技術特別顧問が必ず任命され、トップに意見具申をしてい ます、いままで日本では内閣に科学技術担当顧問がいなかったから、その意味 で、やっと先進国の仲間入りです−と喝破していたんですね〜という具合です。


スタンフォード大学への留学経験やシンガポールや欧米を相手にしたビジネス 競争の最前線に身を置く立場での、常に知的で清新な見識を披瀝されています。 黒川清氏が、安倍新内閣のサイエンス・アドバイザーに就任した社会的意義に触 れた記述は、世界的科学雑誌の「Nature」と森下さんの論説が最も早く、そし て際立っていました。DND検索ナビで森下さんを検索すると、47件の記事にヒッ トします。森下さん、グランプリ、おめでとうございます。森下さんには、僕が 投資している会社から無農薬のお米を少しですが、お届けしますね。


研究、診察、授業、ビジネス、講演、執筆、ブログ、DND連載、それに家族 サービスと益々のご活躍を期待しています。



【第2位:DND準グランプリ】(13回)。
 石黒憲彦さん。経済産業省大臣官房審議官で、書いてよし、話してよしの論客 は、そうは見あたらない。DNDサイトで連載「志本主義のススメ」を執筆し、昨 年4月から取組んで毎週1回のペースをつい最近まで保ってきました。この夏ご ろから、少しペース配分を考え始めているらしく、ややスローダウン傾向にあり ます。しかし、本日アップの原稿でVOL.75の金字塔を打ち立てましたから、天晴 れです。僕の205回を猛追している風で、これは結構、手強い相手に違いない。 類稀な文章家の側面をも魅せてくれ、固定の読者が多い。


特に、ジャーナリステックな現場主義の視点が冴えて、生産工場のラインのル ポなどは、超一級の臨場感に溢れていますね。こういう現場が好きなのでしょう か、文章がイキイキしています。構成も確かで内容も濃く、最近のイノベーショ ン25戦略会議の緊急提言に伴う、イノベーションの「人々」、「地域」、「企 業」、そして「国家」の連続シリーズは出色で内外の評価はすこぶる高い。う〜 む、ちょっと褒めすぎですね〜。まあ、クリスマスも近いし、なんといっても無 償で75回も継続してくれていますから、敬意を表したいと思っています。謝礼を 出してもこんな回数は、難しいことですから‥。


まあ、考えてみれば、DNDプロジェクトの提案者で産みの親、大学発ベンチ ャー1000社構想の政策責任者のひとりですから、しょうがない。乗りかかった船 みたいなものでしょうか。が、来年度以降、DNDの独立、自立という新たなフ ェーズを控えて、個人的にはプロジェクト推進者という従来の呪縛を(苦笑)を 絶って、フリーな友人としてお付き合いできることを望んでいます。


DND検索ナビで「石黒憲彦」と名前検索すれば33件、「志本主義のススメ」 で検索すれば、それぞれ別の記事が89件表示されます。ということは、「石黒 憲彦」と「志本主義のススメ」は全く独立した言葉で存在し、これらに連関がな いーということに気がつきました。どちらを検索しても両方が表示される工夫を 急がねばなりません。さっそく、「石黒憲彦氏の志本主義のススメ」という風に タイトルを改めました。



【第3位】(12回)
 原山優子さん。東北大学総長特任補佐兼東北大学工学研究科教授、総合科学技 術会議議員。銀座生まれ、中学3年でパリ郊外のサンピエール学園に3年間留 学、22歳でバイオ研究者のご主人、重明氏とご結婚、その後、ご主人の仕事の都合 での赴任先のジュネーブ大学で経済学、教育学を学ぶ〜となんとも晴やかなキャ リアで、得意はお料理というからとても家庭的なんですね。


で、加えて、物腰や振る舞いが洗練されているうえ、ひとあたりがソフトで周 辺を明るくする魅力をお持ちですね。DNDとは、経済産業研究所でご一緒したの を縁に執筆を依頼し、ご専門の「産学連携講座〜現場からのレポート」を継続し て連載してくださっています。「イノベーション25戦略会議」緊急提言の企画 が動き出してからは、意欲的で目を見張るほどの出稿が多く、連載企画に彩を添 えてくださっております。


お目出度いことは連続するらしい。ファッション雑誌のVogue Nippon(新年 号)の「Women of the year2006」にもエントリーされており、ダブル授賞の栄 誉?!そこのトップページは荒川静香さんだという。良かったですね、原山さ ん。で、おめでとう〜の連絡を入れると、左右2ページの雑誌の記事を添付ファイル で送ってくれました。「母の写真です」とわずか数行のメールでした。ファイル をあけると、ムムムッ!原山さんの銀座生まれの謎が解けました。


雑誌は、料理天国の正月別冊号「Sweet天国」でした。「銀座コロンバン」創 業者で、大正時代にパリに渡り、日本初のフランス菓子をそっくり日本に持って きた門倉國輝氏はご祖父で、正装で威厳を讃えつつも柔和な表情を浮かべていま した。写真に写る美貌の女性が80歳を迎えてなお麗しく、その輝子さんが原山さ んのお母さんだという。文中に祖母のくらさんが登場していました。もう、絶世 の美女で、数々の逸話、数奇な物語、それにとっておきのエピソードがあるらし い。輝子さんが、くらさんの残した原稿を整理しつつその歴史をまとめている、 という。う〜む、これはNHKの朝ドラです。絶対に。いやあ、涙なくして読めな い、という。


原山さんの品位の確かさは、そんなルーツから醸し出されているんですね。銀 座のオープンは昭和4年、螺旋階段を上がると2階の喫茶室の天井を藤田嗣治さ んの大きな6枚の壁画が飾られていた、という。そのくらさん、その数年後、フ ランスへのマダム修行にシベリア鉄道経由で行くんですね。横浜から船で、それ で‥。僕も同じくシベリア鉄道でモスクワからウイーンに入りましたが、昭和初 期の時代ですから、凄い。原山さんが中学3年でパリに留学するのは、ご両親の DNAを引き継いでいらっしゃるんですね。


これは余談ですけれど、原山優子研究には不可欠の、とっておきのエピソード ですので、ご紹介しました。黒川清さんは、彼女の原稿を読みながら、「いや あ、哲学的で思想的なのは原山さんの受けた教育効果なのでしょうか」と感心してい たことがありました。なるほど〜いろいろ納得しました。こんどゆっくり原山さ んの銀座「コロンバン」物語をお聞きしたい、と思います。楽しみが増えまし た。次は、その黒川さんの登場です。



【第3位】(12回)
 黒川清さん。内閣特別顧問、前日本学術会議会長、東海大学総合科学技術研究 所教授、政策大学院教授で腎臓専門の医者。この9月までの学術会議会長時代に は、女性会員の増員や登用、会員の選出方法のなどの改革を進め、自ら定年制を 導入し任期半ばで降板し、後進に道を譲っていました。その名誉ある地位に連綿 としない潔さは、アメリカ仕込みのダンディズムかもしれません。


東京大学医学部卒後、米国で研修し、ペンシルベニア大医学部生化学助手を皮 切りに、UCLA医学部助教授など15年間臨床医と教鞭の経験を積んだ後、東京大 学、東海大学の教授を経験されていました。


まさに世界級キャリアのお手本で、最近、俄かに話題になっているのが、「大 学の大相撲ナイゼーション」です。これは後段のDND流行語大賞に入りましたの で、そちらでお読みください。


そして、この度は、タイミング良く誕生したばかりの安倍内閣の内閣特別顧問 に招かれ、看板政策の「イノベーション25戦略会議」の座長に就任。9月の会 長辞任は、自らの誕生日9・11直前で、安倍政権誕生と偶然重なっていたんで すね。


DNDには、「学術の風」の常設ページを開設し、イノベーション25戦略会議 への応援団ページ「緊急提言」でも忌憚のない意見を歓迎し、投稿の執筆者にそ れぞれコメントを伝える気配りをみせてくれています。


また自らのHPを駆使しては、特に若者へのエンカレッジを惜しまない。最近で はアフリカ、北京、インド、香港へと飛んでその模様をコラムで綴っていまし た。話題の「世界級キャリアのつくり方」(東洋経済新報社)は一橋大学大学院教授 の石倉洋子さんとの共著で、そこでも20代、30代の次代を担う若者のキャリ ア形成のための、熱いメッセージを発信し、具体的な処方をも伝えています。な んとか、これは、NHK教育の番組で取り上げて欲しい題材ですね。


個人的に何度もお会いしていますが、最初の印象から変りませんね。オープン でクール、そしてピュアなんですね。国内外に幅広い世界級キャリアのネット ワークを広げていらっしゃるが、なんとも気さくなので恐縮することがありま す。どうぞ、DNDサイトトップに設置した黒川さんの「学術の風」に吹かれてみてく ださい。きっと、新しい発見がありますよ。



【第3位】(12回)。
 古川勇二さん。東京農工大学大学院教授で、技術経営研究科長。リスクマネー ジメント、MOTをご専門とし、MOT協議会設立、MOT学会発起人として技術経営の 新しい骨格を創り上げた功績は大きい。東京農工大学の看板教授でもあり、経済 産業省の産業クラスター研究会座長、TAMA活性化協議会会長などその活動範囲は 広く、最近は、韓国政府からの招きでクラスター形成のミッションを持ち、アジ アと日本の信頼の絆を深めていらっしゃいます。驚いたのはDNDの8000人目の登 録ユーザーだったことでした。それが縁で、この4月からDNDサイトで「技術経営 立国への指標」を連載してくださっています。また、僕が東京農工大学大学院の 客員教授を務めることにもなりました。


古川さんは、技術経営系専門職大学院協議会に加盟の芝浦工大、早稲田大学、 東京理科大、東京工業大、日本工業大、山口大、九州大、長岡技術大、新潟大、 それに東京農工大の10大学のまとめ役になって、この18日東京・大手町の経団連 会館で第2回MOTシンポジウムを開催し、「MOT人材がもたらすイノベーション」 というタイムリーで時代の強い要請を先取りしたテーマで200人を超す参加者を 集めていました。詳細は、また別の機会に譲りますが、シンポジウムのモデレー タ役は、議論の題材の絞込みや、その発言の導き方、そして最後の総括などの差 配は、見事でした。聞きながら、しゃべりながら、持参のPCに要点を打ち込ん で、シンポの後半には、そのサマリーが見事に仕上がっている、という芸当を時々見 せて関係者をあっと言わせているようです。


という具合に、なんだかDND連載執筆者が上位を占めてしまいました。この上 の方にも僕が投資している会社から、無農薬のお米を送りたいと思います。


さて、この他には、近畿経済局の前地域経済部長で「もっと!関西」を連載し ていた山城宗久さん(現在、中小企業庁課長)が9回、前内閣官房審議官で産学 官連携推進会議を担当された塩沢文朗さん、前の大学連携推進課長の中西宏典さ ん、ソニー学園の湘北短期大学前学長で「役に立つ落語」の著者の山田敏之さん らが6回。


続いて、前内閣特命担当大臣(科学技術担当)の松田岩夫さん、堀場製作所の 最高顧問で全国を回ってベンチャーの心得を伝授する堀場雅夫さん、日本知財学 会をハンドリングする東京大学国際・産学協同研究センター副センター長で教授 の渡部俊也さん、九州大学VBL助教授で起業をテーマにした情報交換ML「WINWI N」を主宰するVBのエキスパートの五十嵐伸吾さん、1000社計画スタート時 の大学連携推進課長をこなし、NEDO企画調整部長でDNDで「イノベーションとNED O戦略」を執筆する橋本正洋さん、アキバロボット運動会の秀逸な企画で話題を さらった秋葉原クロスフィールドのプロデュサーで東京大学先端科学技術研究セ ンター特任教授で、NPO産学連携推進機構理事長の妹尾堅一郎さん、一橋大学大 学院教授で前の項で黒川さんと共著「世界級キャリアのつくり方」を出した石倉 洋子さんらが5回。


政界からは、外務大臣の麻生太郎さん、財務大臣の尾身幸次さん、内閣特命担 当大臣(科学技術担当など)の高市早苗さんら3人、そして東大総長の小宮山宏 さん、科学技術振興機構(JST)の生駒俊明さん、日経BPのバイオセンター編集 長の宮田満さん、一橋大学大学院商学研究科教授で一貫して中小企業の後継者問 題やものづくりに視点をあてた地域活性化策を実践的に説く人気の関満博さん、 前内閣官房知的財産戦略推進事務局長の荒井寿光さん、圧倒的なマーケットの優 位性を技術で越えるスピンオフベンチャーの雄といえば、サイバーレザー社長の 関田仁志さん、東京大学教授の松島克守さんと共著「地域デザイン」がある東京 大学助教授の坂田一郎さん、東京大学TLO社長で闊達な山本貴史さん、ロシア大 使館勤務から大学連携推進課長に就いた雄弁の吉澤雅隆さん、『ウェブ進化論』 の著者で憧れの梅田望夫さん、DNDでは『シリコンバレー精神』の文庫化に絡ん でのメルマガにご登場いただきました。それはとてもヒットし、評判になりまし た。


そしてノーベル文学賞受賞に最も近い作家の村上春樹さん、科学技術振興機構 (JST)理事で見識の北澤宏一さん、そのJSTサイエンスポータル編集長で友人の 小岩井忠道さん、理化学研究所理事の武田健二さん、ワシントン在住の特許弁護 士でDNDサイトで「日米特許最前線」を担当する服部健一さん。


(独)経済産業研究所所長の吉冨勝さん、重粒子線治療施設の計画が動き出し た群馬大学学長でスマイルの鈴木守さん、法政大学学事顧問で前総長の清成忠男 さん、京都大学国際融合創造センター教授で、話題の京都大学の植物遺伝学&早 稲田大学のエジプト考古学の共同開発で実現した現代ビール「ホワイトナイル」 のプロモートを担う澤田芳郎さん、販売本数4万本を超え絶好調らしい。


元NEDOフェローで北見工大の内島典子さん、NEDOフェローの吉田久美子さん、 九州大学助教授で知的財産にキャリアを積む高田仁さん、NEDOフェロー出身で九 州大学知的財産本部アソシエイトの平田徳宏さん、INSの機動隊長格で花巻市活 性化支援センターの統括コーディネーター佐藤利雄さん、福井・鯖江で地域活性 化に動くLLC「鯖乃家」代表の出水孝明さん、近畿エリアを中心に幅広いネット ワークを維持するKNSの堂野知史さん、早稲田大学や東京大学教授でMOTがご専門 の山本尚利さん、福岡市の麻生グループ事務局長の馬場研二さん、北海道大学経 済学部教授で北海道TLO取締役を兼務し、大学発ベンチャー北海道フォーラム実 行委員長を務め、大学発ベンチャーに手厳しい論調の濱田康行さん、この7月就 任のVEC理事長で、DNDで「ベンチャービジネス支援の今昔」を執筆する濱田隆道 さん、文部科学省課長の真先正人さん、DNDユーザー登録8888人目の記念すべき メルマガ200号を飾った、シリコンバレー在住の弁護士、中町昭人さんら(まだ まだいらっしゃいますが〜)が複数以上の掲載者でした。この場を借りて皆様に 感謝申し上げます。


 さて、もう一件の発表です。
【DNDキーワードグランプリ大賞2006】
第1位:「Phronesis」(フロネシス)。
第2位:「Belonger」(ビロンガー論」。
第3位:「イノベーション25」。
第3位:「大学の大相撲ナイゼーション」。


第1位:「Phronesis」(フロネシス)。
 黒川清さんが「学術の風」のコラムなどで、PHRONETIC(フロネティック) は、ギリシャ語のPhronesisを意味し、野中郁次郎氏がそれを「賢慮」との言葉をあ てて、本田宗一郎氏の経営スタイルをPHRONETIC leadershipと概念付けている、 と紹介していました。


東北大学教授の原山優子さんも11月21日号の「イノベーティブなひと、と は?」で、やはり野中さんのフロネシス(Phronesis)の意味について言及し、 聞き慣れない概念なので定義を引用すると、として個別具体的な場面のなかで、 全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力とな る、といい、「ここでキーとなるのが主観であり、その主観がよりどころとする価値 体系の構成要素である倫理観、歴史観、社会観、政治観、美的感覚なのです。科 学的知識と実践的知識を融合してアクションを取るイノベーティブなひとには規 範的な側面においても卓越していることが求められるのではないでしょうか」と 論じていました。さらに石黒さんが11月28日号の「イノベーティブな人々」で解 釈を加えていました。


これらの点を黒川さんは自身のコラムで「いい文章ですね。素晴らしい」と絶 賛し、「このような哲学、思想にこそ、社会の変化をもたらすイノベーションの マインドが無意識下に内在するのだと私は思います。イノベーションについてこ のような理解が広がると、本当に活気のある、素晴らしい社会変革が起こるでし ょう」と断じていました。DNDで、今、一番流行っているキーワードといえるで しょう。



第2位:「Belonger」(ビロンガー論)。
 山本尚利教授が指摘する「ビロンガー(belonger) 」論のことです。DNDメルマ ガVOL.198号「〜That's the way to go〜『文庫のための長いあとがき』の余 韻」で紹介しました。梅田望夫さんの著書の『シリコンバレー精神』の、それは 60ページに及ぶ、まさに『文庫のための長いあとがき』を引用し、梅田さんの シリコンバレー精神に触れていました。山本さんの論説もそれに近いものがあり ました。以下は、メルマガから引用です。


〜早稲田大学ビジネススクール教授で、元SRI(Stanford Research Institu te)グループ技術経営コンサルタントの山本尚利さんが、最近の産学連携ジャー ナルの座談会で、米国と日本の社内ベンチャー創出の違いに触れて、『ビロン ガー (belonger) 』という造語を紹介し、「要は組織に属する人のことですが、 (略) リスクを取らない。自分自身に自信を持てる人というのが圧倒的に少な い」と指摘して、就業者全体から見て、米国人の40%がビロンガーで、日本人 は、ひところに比べてやや減っていますが、それでも80%はいる、比率は「米 国の倍」と興味深いデータを示していました。


そこで、梅田さんの体験を裏付けるようなエピソードを例に、ビロンガーの属 性をこう説明していました。


〜例えば、日本のケースでは、ベンチャーの名刺を持って売り込みに歩くと、 「どこの馬の骨なのか」という風で、誰も相手にしてくれない。が、シリコンバ レーでは、それがまったく逆なことが起る。「社長」と名刺に刷り込んであって も社名は聞いたことがないから、だからみんな自分の名前だけの名刺で動く、個 人として自立しているからです。シリコンバレーの他、香港や中国でもそうで す。しかし、日本人は、名前より社名、そして肩書きで判断する傾向がある〜という ような意味の発言をされていました。なるほど、ねぇ。これはよく指摘されてい ることですけれど、少しはよくなっているのでしょうか?どうして、こうも違い があるのか?


山本さんは、「メンタリティーが根本的に違う」と指摘していました。その、 That's the way to go!という流儀が、そもそも身についていないのかもしれ ません。鎖国、島国根性、組織主義、出る杭の譬‥。



第3位:「イノベーション25」
 これはもう説明はいらない。が、安倍内閣に黒川清さんを座長とする「イノ ベーション25戦略会議」が発足し、その10月26日の第1回の戦略会議発足と、 ほぼ同時にDNDサイト上で集中連載「イノベーション25戦略会議への緊急提 言」(DNDメルマガVOL.196「イノベーション25戦略会議」発足に寄せて〜を参 照)をスタートさせました。すでに12人の論客から30本近い提言がアップされて います。


それは、塩沢文朗さんが担当した今年6月の第5回産学官連携推進会議でも内閣 特命担当大臣の松田岩夫さんが「イノベーション加速に総結集」と訴えていまし た(DNDメルマガVOL.179)し、この秋の第6回産学官連携サミットは、イノベー ション一色でしたね。


「Japan's new premier chases innovation」〜「新首相のイノベーション旋 風」とでも訳すのでしょうか。こんな洒落た見出しは、英国の科学誌NATURE10月 19日号のNEWSでした。それにしても、にわかにイノベーションブーム、それは旋 風という表現がよく似合います。



第3位:「大学の大相撲ナイゼーション」
 黒川清さんのネーミング、昨年から繰り返し言い続けてきて、毎日新聞がコラ ムで、日経新聞が連載の一面の見出しにして、堂々の市民権を得たようです。


「大学の大相撲化」(大相撲ナイゼーション)に込められた黒川イズムの真髄 については、黒川さんの言葉を借りてもう少し補足します。大相撲といえば、国 技、バブルの絶頂期に小錦が大関になった時、外国人横綱はとんでもない!って 言っていませんでしたか?しかし、今はどうでしょう?って切り込んで、ざっと 相撲力士760人ほどのうち、外国人は60人(8%)、幕内では42人のうち13人(3 2 %)、三役以上は10人のうち4人(40%)で、横綱はご存知の通り1人中1人(1 00 %)と、あれから大相撲が一気にグローバル化した現状を解説しながら、続 いて次に黒川さんはこう訴えているんです。


何かマイナスになっているでしょうか?日本人のプライドを傷つけているでし ょうか?苦労はしても日本の文化、社会を好きになる、頑張る外国人に親しみを 感じ、むしろ、日本人も国技相撲に誇りを持っているのではないでしょうか、そ の外国人力士が、その母国で日本の評価を高めてくれているのではないでしょう か〜と、明解です。


「大学の大相撲化」。その意味、意図、意義、それで何を伝えようとしている のか、もうおわかりですね。学術は国境を越えた普遍的価値を提供する、ことを 前提として、世界の一流大学に押し寄せる新たな潮流を、21世紀のグローバルな 「フラットな時代」の到来と読んで、「大学の場をアジアや世界の若者へ開放」 し、「率先して品格のある国家の範を示す」べきである‐と指摘し、その閉塞状 況下の日本の大学の「鎖国マインド」を払拭しよう、と懸命なのです。(DND メルマガVOL.197参照)。


この1年、本当に数々の激励を賜り、御礼申し上げます。新年からも引き続 き、ご支援ください。そして皆様に幸多かれとお祈り申し上げます。少し早めのご挨 拶で恐縮ですが、どうぞ、よいお年をお迎えください。メルマガは新年1月10日 からスタートします。


また、本年、11月20日に大腸がんのために死去された前名古屋工業大学学長の 柳田博明さん(享年71歳)、柳田先生はDNDシンポを名古屋で開催した時に、基 調講演をしていただきました。ファインセラミックス研究の第一人でしたし、大 学改革に燃えていました。侍のような風情がありましたね。残念でなりません。 「イサム・ノグチの祈り」(2005・8・1のVOL.140号)に登場し、本年やはり がんの病に逝ったモエレ沼公園園長の山本仁さん、実は山本さんは、後日、家内 の近い親戚と判明し昨年暮れにお会いし、幼少のころ家々を行き来していた記憶 を懐かしんでいました。穏やかな人柄でした。心からご冥福をお祈りいたしま す。


記憶を記録に!DNDメディア塾
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