◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/12/13 http://dndi.jp/

元気を発信する若者力(前半)


DND事務局の出口です。表参道、六本木、お台場、それに丸の内界隈〜初冬の 都心の街路にイルミネーションが煌(またた)いて気がつけば、もう年の瀬です。 季節が早足に移っていきます。そこで、今朝のNHK教育TVの俳句番組から拾った、 こんな師走の点描は、いかがでしょうか。


年の足 はやくなりたる しぐれかな (渚男)
 しぐれけり 走り入りけり 晴れにけり(白雄)
 木枯らしや 目刺しに残る 海の色  (芥川龍之介)


う〜む、海の色ねぇ。五七五の世界に、刻々と移り変わる風景と対峙して、そ の物から心の内を表現する瞬間の極め技、その凄みを感じますね。


さて、皆様、この1年を振り返って、どのような感慨に浸っているでしょうか、 また何を強く実感されたでしょうか。


地方都市をめぐって特に目についたのは、清々しい若者の存在感でした。なん というか、元気を発信する「若者力」、地方再生のキーワードは、その若者力に あり、若者力が地方活性化の新たなバロメーターになるのではないか、という思 いを強くしました。


まあ、これはここ数年の感想ですが、今日の若者は遥かに今の大人より誠実な 生き方を思考していることは確かです。これも持論というか確信に近いのですが、 頻発する汚職や詐欺、それに談合などもっぱら社会に遍満する汚濁の元凶は、ど の世代でしょうか。それは団塊を含む還暦前後の世代、ひと時代を懸命に走って 築き上げたという自負はあっても、何か大事な物をどこかに置き忘れてしまった のですか、その多くの顔に表情が失せて、堅く険しいのは、疲れているからでし ょうか。


逆に、僕が接した多くの若者の息遣いは、生活が重くのしかかって、どこか苦 しい感じがするけれど、その目に力がみなぎっていました。この自立的で、なん としてもこの街をよくしたい、というベンチャラスな彼らをしっかり見守ってエ ンカレッジしていかなくてはならない、って強く感じてしまいました。で、その ためには、何ができるか。彼らにとって必要なものは何でしょうか。


まさか、いまの若者の起業家らから金儲けをしよう−って、それを企んでいた ら、その醜い腹の内はたちまち見透かされてしまいますぞ〜。そして、若者らは、 一般的なそれら大人に多くの期待をしていない−という事実を知らないといけな い。中には、大人に怯えている若者もいました。志を高く持て!失敗したらどう する?こんな言葉を誰に向って言うのでしょうか。


「どうせ、嫌われているから〜」って、そんな捨て台詞を若者に言わせてはな らない。いつの時代も奔放な若者は異端視されがちです。それを包み込む大人の 寛容さが問われている気がします。


夕張の破綻から、若者が街を捨てた理由を考えてみてください。65歳以上が 40%を占める、そうだ。毎月50人から100人単位で街を去っている、とい う。その教訓の裏返しは、若者力の蘇生ということになる気がします。が、利権 が横行する大人の街で、若者に投資するという考えが少しでもあったでしょうか。 自分の生まれ育った街、そこで踏ん張ろうとする、そういう尊い若者の存在をみ んなで大事にしないといけない−ということを警告しているように思います。


凍てついた豪雪の夕張は、僕の故郷です。連日の悲嘆の報道は、胸をえぐられ るくらい切ない。飛んで行って、何かしたい衝動に駆られます。だから、今住ん でいる埼玉県越谷を大事にしたいし、地方で僕が接した若者らに心からエールを 送りたい。踏ん張ってね!って。


「にんげんだもの」の相田みつをの詩にこんなのがありました。「花は枝に支 えられ、枝は幹に支えられ、幹は根っこに支えられるが、根っこは見えねんだ な」。そういえば、足利在住時代には、老齢の相田さんに新聞連載の題字を書い てもらうお願いに行った事がありました。


「菊づくりの名人」の譬えも根っこは、そうでしたね。「菊づくり菊見るとき は陰の人」(吉川英治)。青鬼さんの振舞に感動した「泣いた赤鬼」は、人を陰 で支えることを教える不滅の童話でしたね。陰徳陽報というのかしら〜。


札幌や松本や神戸、そして飯塚や鯖江〜。20後半から30代の若者らが仲間 と一緒に夢を追う姿が多く見受けられました。それは、それはとっても清々しい。 時代のステージに勢いよく飛び出し、冷静に自身を分析しながら、我慢強く、そ の目標に立ち向かっていく。何よりも偉ぶらず、気取らず、飾らないところに好 感が持てましたね。


共通して凄いのは、壇上に立って大勢の前で講演しブログを駆使してメッセー ジを発し、そして起業して社員に給料を払っている−という事実です。話しを聞 いて、本やブログを読んで、給料はもらうという受身一方の立場を逆転させてい る、そんな新しい若者のキャリア像が浮かび上がってきているんです。そこに、 元気を発信する若者力がしっかり根付いて、愉快なネットワークを広げていまし た。


さてさて、調子に乗って、ここからはいつもなら、具体的ないくつかのセッシ ョンのルポをあれこれ書き綴ってみるのですが、年の暮れですから、あまり長い とお叱りも受けますので、少し反省して、本日はこの辺でいったん締めて、この 続きはまた明日、配信することにします。


九州大学助教授の五十嵐伸吾さんが主催した12月11日の東京・丸の内は丸の内 ビル7F21c東京クラブでのシンポジウム、それに出水孝明さんがリーダーシッ プを取って開催した12月8日の福井県鯖江市での「鯖乃家IT座談会」、いずれ も主人公は、若者です。では、お楽しみに。


※いやあ、ご存知ですか、日本経済新聞文化面で連載の「私の履歴書」は、読売新聞社主の渡辺恒雄さん、毎回痛快な活劇を見ているようで、実に面白い。また無駄のない文章も実に上手い。これは回想録のお手本になりますね。


しかし、青年時代のスナップは、憂いを含んだ顔立ちにきりりとした眉、ナベ ツネ呼ばわりされる昨今の凄みからは、その美男は、ほとんど想定の範囲を超え るものでした。もうひとつ、朝のNHKドラマ「芋・たこ・なんきん」はビデオに とって見て、よく泣かされています。みんな大変な時代を快活にそして懸命に生 きてきたんですね。素晴らしいですね。


みんな、やはりそれぞれの記憶の中で生きていることを痛感させられました。 余談です。


記憶を記録に!DNDメディア塾
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