◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/11/01 http://dndi.jp/

だから、あなたも、さあ旅にでてみませんか・・・

DND事務局の出口です。少し風があって、ひんやり、こんな日は戸外がとても 気持ちいい。列島は、本日は晴れですが、沖縄は傘のマーク、北海道は最高気温 が9度と低く、初雪の便りも聞こえてきます。


「帰り花」。初冬の小春日和には、季節外れの花が咲く、という。それを俳句 の世界では、冬の季語で、帰り花、返り花ともいう、と新幹線の車内誌「ひとと き」の車窓歳時記で以前、評論家のひろさちやさんが、「帰り花」と呼べば美し いのですが、「狂い花」、「狂い咲」の呼称もあり、「帰り咲」、「二度咲」、 「忘れ咲」とも言います、と紹介し、やはり、「帰り花」の方が語感がいいです ね、って、その語り口がなんともやさしいので、短い文章なのですが、この季節 になると、ふと思い起こします。


「帰り花むかしの夢の寂(しず)かなる」(円地文子)。


ひろさちやさんは、宗教評論家で学者でもあり、そのエッセイは、ささやくよ うに自然で、静かな息遣いが伝わってくるようで、読むと、ほんと、読み始める うちから、凝った心の芯がほぐれてくることがあります。その車内誌の「ひとと きエッセイ」で、もう数年前に読んだ「常識」の殻を捨てる旅‐と題した一文も 手元に残っています。


 ―驢馬が旅にでかけたところで、馬になって帰ってくるわけではない―という のは、愚かな驢馬が旅に出て見聞を積んだところで、賢い馬になるわけではない、 という西洋のことわざなのですが、これをヒントにひろさんは、こんな私家版の ことわざをつくった、という。―カタツムリが旅に出て、ナメクジになって帰っ て来た―と。


私たちは、「常識」という殻を背負ったカタツムリです。さまざまな既成概念 にとらわれている、と指摘して、「ところが旅に出ると、その常識や既成概念が 崩れてなくなってしまいます。カタツムリの殻がとれると、ナメクジになるわけ です。だから‥」と続けて、旅というものは、旅先で何かを学ぶためではなしに、 わたしたちが持っている常識や生活の垢を捨てるためにするものですね。わたし はそう思います、という。そしてタイやインドでの旅先でのエピソードを披瀝し て、旅をすると、人間って親切なんだなあ‥と気づかされます、とくに田舎がそ うです‐と言い切っていました。


 いや、日本人だって親切ですよ〜と言って、人間ってもともと親切なんですね、 って念を押して、「みんな助け合って生きているのです。そのことがよくわかり ます。だから‥」ってまた続けて、「わたしは旅が好きです」、そして「だから ‥」って繰り返して「だから、あなたも、さあ旅にでませんか‥‥‥」という。 その最後の数行のフレーズが、心に響いてきます。どうですか、ご一緒に〜って、 そんな旅のお誘いをいただいたような気分です。


さて、教育現場は、なんだか教室の床が抜け落ちたような混乱が続いています。 学校が嫌になったら、無理して行かなければいい。そっと抜け出して、それこそ、 見知らぬ街、前日本学術会議会長の黒川清さんがおっしゃるように、アフリカへ でも飛べばいい。きっと、もっと元気になって帰ってくる、と思います。生徒も 先生も‥。


さて、もう11月、今年も残すところ60日ですね。DNDの産学官連携情報一覧を ご覧ください。みんな全速力で走っています。北へ南へあっちこっち行って、も うひとつの旅に出てみるのも一考かもしれません。



ざっと、イベントあれこれ!


日本ベンチャー学会の第9回全国大会は3日から仙台で開幕ですね。テーマは 「地域ノベーションとベンチャー企業」とタイムリーで大事な課題にフォーカス しています。2日は東京で大学発バイオベンチャー協会の総会が予定されていま す。僕も参加します。


秋葉原UDXビル2階「AKIBA SQUARE」では、東大先端研の特任教授で秋葉原産 学連携の新拠点・秋葉原クロスフィールドをプロデュースする妹尾堅一郎さんが、 今度は「アキバロボット運動会」(3日から5日)を企画、昨年関係者のドキモを 抜いた「世界初のロボット即売会」に続く、驚愕のロボット劇場の開幕です。参 加の優待券もサイトからゲットできますよ。お子さんと一緒に行って、遊んでみ てください。ああ、僕も行ってみたい。


大阪は豊中市の千里ライフサイエンスセンター5階では6日(月)、「バイオ ベンチャーの健全な成長を探る」をテーマにシンポ開催です。人柄の文部科学省 の地域科学振興室長の真先正人さん、科学医療ジャーナリストでバイオ界の第一 人者、宮田満さん(日経BP社バイオセンター長)、それに大阪大学医学部教授 でお馴染みの森下竜一さんらが講演、パネルに登壇します。ああ、参加申込みし たんだけれど、北海道から年老いた母がやってくる〜。


北海道は秋の陣、DNDのサイトトップでテロップまで流してPRする全国大 学発ベンチャー北海道フォーラム(10日から11日)は、10日夕刻から堀場製作所 最高顧問の堀場雅夫さんの講演で幕開けです。


先日、京都に堀場さんを訪ねてご挨拶し、ゲストルームで丁寧なもてなしをし てくれはりました。記念撮影もしてくれました。握手の手は、マシュマロのよう にやわやかでした。が、抹茶に羊羹、まず抹茶に口をつけると、堀場さんから 「あああっっつ!羊羹を先に口にしなきゃ〜苦いから‥」と躾えを乞いました。 壁に直筆の、「おもしろおかしく」の色紙。いやあ、身のこなしもおしゃべりも、 みんな魅力的で、どれもこれも面白い。


で、お聞きすると、8日から北海道です〜って。全国知的・産業クラスターセ ミナーIN北海道がホテルガーデンパレス2階「丹頂」で開催、冒頭、一橋大学 大学院国際企業戦略研究科教授で、黒川先生と話題の「世界級キャリアのすす め」の共著のある石倉洋子さんが「クラスター形成が地域経済に与える効果」と 題して講演されるんですね。そして、北海道東海大学の学長で親しくさせていた だいている西村弘行さんが講演、そして堀場さんが総括講演に登壇する、という からフル回転のようです。


「10日の午後も北大で研究会があるので、是非、見に来てください」とお誘い をうけました。僕は、VECの理事長、濱田隆道さんらと参加します。VECや DND関連で知人や民間企業などからも10人近くが北海道に乗り込むことになっ ています。


所変わって、九州は佐賀県鳥栖では本日1日から2日、全九州半導体技術国際フ ォーラムが開催し、九州経済産業局長の川口修局長らが挨拶、パネルでは九州大 学の谷川徹教授がモデレーターで「半導体グローバル市場における九州企業の発 展戦略とは」を議論する、もうそろそろ始まりますね。半導体市場で九州の発展 戦略を狙う、という意気込みはアジアの遠くまで届いてきているようですから、 頼もしい。ザインエレクロトニクス代表取締役社長の飯塚哲哉さんもパネラーで 参戦ですね。


そうそう、11月の後半は、第6回の産学官連携サミットが赤坂プリンスで、イ ノベーション25戦略会議発足のタイミングを、どうやってそのサミットに反映 させられるか、ここがポイントでしょうか。日本学術会議の新会長の金澤一郎さ んが挨拶し、高市早苗内閣特命担当大臣が「イノベーションで創る日本の未来」 と題して講演をし、元スタンフォード大学副学長のウィリアム・ミラー氏が「イ ノベーション政策と産学連携」をテーマに講演します。そして、パネルディスカ ッションでは、イノベーション25戦略会議座長の黒川清さんがモデレーターを務 める予定です。わーっと、もうイノベーション一色、イノベーション・フェスタ の趣きですね。先ほど、交流会も含めて参加も申し込みをしました。


また、北海道に続いて、全国知的・産業クラスターフォーラムは東京が29日、 東京ビッグサイトでも開催されます。昨年も好評でした。日本経済新聞社が主催 に名を連ねていますね。


基調講演は、黒川さんが、ザインエレクトロニクスの飯塚さんが、文部科学省 の真先さんが、そして総括講演では堀場さんが、ここでも登壇します。飯塚さん は、4日の同友会起業フォーラムでも講演が予定されています。タイトルは「激 動の時代はベンチャーが面白い」。対談形式で、お相手は、一橋大学イノベーシ ョン研究センター教授で人気の米倉誠一郎教授です。


その飯塚さん、まさに東奔西走です。先日は、NHKの人気番組「プロフェッ ショナル」に登場していました。起業家の挑戦する姿、それは魅力的でエキサイ ティングでしたね。いま、全国からひっぱりダコです。本物の起業家は、ざっく ばらんで、飾らないんですね。


当日は、う〜む、ベンチャー学会と日程が重なって、困った。まだ悩んでいま す。同友会起業フォーラムには、大阪市立大教授の前田昇さんがモデレーターだ し、先日、500人規模の参加者を恵比寿ガーデンプレイスのホテルに集めてプラ イベートカンファレンスと展示会を開催し、勢いに乗るACCESS社長の荒川 亨さんもパネラーだし‥。いやはや、大変な月になりそう。


11月25日は、DNDサイトトップに告知の通り、第6回INS IN関西&第1 5回KNS定例会そして第5回神戸ベンチャー研究フォーラムの合同総会が神戸市 の産業振興センターで開催です。充実したプログラムが出来上がりました。


VECの濱田隆道理事長、一橋大学大学院教授の関満博氏が講演し、広がるI NS関係の全国からの報告が行われます。分科会も多彩で、産業クラスター分科 会では、僕も15分報告します。いやあ、KNSの堂野知史さんからの指示でした が‥。


で、その前日の24日は、福岡県の飯塚市でのe-ZUKAトライバレー産学官技 術交流会2006に参加します。人口13万人、研究者・学者・学生5000人の学研都市 への変貌著しい新生・飯塚のベンチャー創出、地域活性化への挑戦!全国が注目 するe-ZUKAトライバレーを語る〜っていう企画で、僕も報告をし、モデレー ターもやります。取材もし、写真も撮ります。


で、九州工業大学、近畿大学の誘致と市、県、経済産業局、それらの連携が実 にうまく動き始めているようです。苦節の筑豊、その炭鉱町が、ベンチャー創出 のトライバレーに変身しています。いやあ、望んで、八木山峠、「青春の門」の 筑豊編でよく登場する、町の外れの高台に立って、町を遠望してみました。その 様子は、近く、この「筑豊からの報告」としてメルマガで紹介します。


それにしても、飯塚の人は、お世辞はなく、普段着のままだが、それが実にい いです。涙がでそうなくらい、心がやさしい。人の心のぬくもりが欲しかったら、 是非、飯塚に行きなさい。メシも酒も旨い。


さてさて、また長くなってしまいました。最後に、昨日の午後は、「新たな産 学連携のための産・学それぞれの役割と具体的な取り組み」をテーマにしたワー クショップが経団連会館で開かれました。福岡から出張で帰って、その足で会場 に向って、すでに後半のパネルに入っていました。


産業界のニーズに応える大学とは?というこれまで繰り返し議論されてきた課 題を、さらに一歩進めて、東芝の理事の山下勝比拡さんが強調した「大学はサー ビス産業、顧客は誰?どうすれば顧客に最大のサービスを提供できるか?」の問 題提起を軸に、その考えに対する異論、反論、補足、同調と議論は多岐にわたっ ていました。そして、やはり大学の使命や役割に言及し、研究と教育の重要性か ら大学や教員の評価のあり方にも話しが及んでいました。


会場からの質問も活発でした。東北大学総長特任補佐で教授、総合科学技術会 議議員の原山優子さん、奈良先端科学技術大学院理事で副学長の山本平一さんら が貴重な提言をされていて、幅広い見識に対する、質問も多くありましたね。 モデレータ役で、終始議論をリードした経済産業省の大学連携推進課長の吉澤雅 隆さんは、産と学の抱える問題に対して鋭く切り込んでいました。


まあ、大学連携推進課長としてのデビューでしたが、どこまで産学連携を知っ ているか、何年やっているか、などということより、こういう議論の場は、その 人の見識、キャリア、それに場を読む力など、その人間力が最も試されるのかも しれません。吉澤さん、並み居る大物パネラーを前に度胸もすわって、声もよく 通っていましたから、いやはや、経済産業省の人材の豊富さを印象づけていまし たね。


最後には、パネラーや参加者の皆様へのお願いとして、それぞれの立場でしっ かり今後の産学官連携の役割を担っていただきたい、と強いメッセージをおくっ て、きちんと仕上げていました。


なんのためのシンポなのか、誰に向けてメッセージをおくっているのか、この ワークショップはそこが明解だったと思います。しかし、こんな大事なシンポ、 どこの新聞に載ったのか?ふ〜む。


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