◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/09/06 http://dndi.jp/

「世界級キャリアのつくり方」のすすめ


 DND事務局の出口です。6日午前8時27分、秋篠宮妃紀子さまは東京都内の 愛育病院で男児を無事ご出産になりました。皇室に男子のお子様が生まれるのは、 秋篠宮さま以来で、約41年ぶりの皇位継承資格者の誕生です。


術後の経過は順調で、医師団から「すこぶる、お健やかです」との報告があり、 紀子さまは、「気分は良好です」とお話されたそうです。良かったですね。おめ でとうございます。テレビから速報が流れ、街に号外が飛び、各メディアは、一 斉に臨時の特番を組んで、記者会見の模様や各地からのお慶びの声を紹介してい ました。


この吉報は、第16回国際顕微鏡学会の記念式典ご出席のため、北海道札幌市を 訪問中の天皇皇后両陛下に秋篠宮さまから直接電話で伝えられたようです。本当 に久々の明るいニュースです。9・6は記念日となりました。


が、次世代を担う子供らの将来を俯瞰すると、豊かな繁栄の陰で、山積する難 題、これらを放置したまま彼らに将来を託していい、と思う人は皆無だと思いま す。では、実際、どこから何をしなければならないか、それはもう明白になって おり、その処方も随分、議論され提言もされています。が、実際には少しも動か ない。具体的に動く気配も見られない。やや悲観的ですが、頑迷に既得権益にす がり、保身のために企業の社会的責任を放棄する、そんな姿が目に余ります。


そのような危機意識を持ったのは、グローバルな視点から時代を捉え、常に若者にエールを送り続ける日本学術会議の会長、黒川清さんの影響かもしれません。産学官連携推進会議や学術シンポの席上、いつも熱っぽく5分から10分程度の短めのメッセージを聞いたり、黒川さんのウェブを拝見してコラムを読んだりしながら、その主張の狙いや意図の断片を少しかじっていたんですが、この1日、日本プレスセンターでの日本を代表する科学ジャーナリストらを前にした記者会見では時間制限いっぱいの60分以上に及んで、周辺を黒川ワールドに引き込んでの、圧倒的なスピーチでした。もうじきの9・11で満70歳を迎えるのに、強く響く声テンポのいいリズム、丁寧な言葉使いでジョーク、時にはアイロニーも織り交ぜながら、そして圧巻は、夥しいほどのデータや数字の連射なんですね。それも ノー原稿でした。


学術の風、迸る知性、それに情熱、あるいは世界が突き当たる時代の壁、それ への杞憂、偶然、日本プレスセンターに同行するチャンスがあって、そばで聞い ていて、「痺れてきました」との感想もベテランのジャーナリストからあったよ うに、スピーチ後は、僕自身、心の中でスタンディング状態でした。


There are all perfect-これは、映画「ラストサムライ」のワンシーン、渡辺 謙さんの台詞でした。そんな感じでした。


で、肝心のスピーチ、少し紹介すると、2050年ごろを俯瞰的に見れば、地球人 口は90億に達する一方、先進国は人口減少、高齢化を迎え、環境劣化、食糧や水、 エネルギー資源と地球温暖化、南北格差と貧困‥科学技術の進歩によってもたら される数々の前向きなベクトルの可能性が指摘されるものの、自然災害や国際社 会の不安定化と人為的因子による大災害の可能性は、「実は、想像以上に大き い」と断じ、そのような時代における日本の課題何か、と問い、日本はこのまま で行けば、2050年には35%以上が65歳以上という超高齢化社会で、その時に還暦 を迎える人はすでに16歳、50歳を越える人は6歳、将来を担う世代がこれからの 10年間で受ける教育を考えれば、人材育成、大学改革は待ったなし、国家の根幹 は、『人つくり』であることは明白であろうーと訴え、30歳―40歳以上の人たち は10年先はたいしたことはないと思っているかも知れないが、今10歳、15歳の子 供たちの10年先を考えれば、今何をしなければならないか、その重大性、緊急性 に気付くはずである、という。


大学改革には、危機意識を持って語り、国際人材競争の時代、世界の一流大学 を例に、「世界の一流を目指す大学には、世界中の意欲ある若者が集まり、大学 の評価を上げ、優れた教師が集まり、大学がこういった好循環を形成することに なる」と述べ、一流大学は世界の人材ネットワークのハブとなり、それがグロー バル時代の国の安全保障の基盤も強化できるものである、として、日本にそんな 開放的な学部の国際大学があるだろうか、「あえて指摘すれば、学部学生の42% が留学生で、よく勉強する、学長はスリランカのCassim教授が務める大分県の立 命館のアジア太平洋大学(APU)ぐらいではないか!」と絶賛していました。 う〜む。黒川さんがここまでおっしゃるなら、是非、行ってみないといけません。


そして、個人的に強く感動したのが、21世紀のグローバルの「フラットな時 代」では、国力は、組織人間や会社人間ではなく、「個人」の力なのである、ど れだけ個人力のある人たちを育成するか、そこが国力の根幹である、と結論付け ていました。


具体的な処方は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授で日本学術会議副会 長の石倉洋子さんと共著で新しい20代、30代からの「国際派プロフェッショナル のすすめ」と題した「世界級キャリアのつくり方」(東洋経済新報社刊)に詳し い。帯に、世界に通じる「プロ」になれ、グローバル型キャリアの新しい成功モ デル、をお二人の体験を通してリアルに綴っているところが斬新で、わかりやす い。読み進めていくうちに、なんだか、じっとしていられない気分になってしま います。もう一度、20代前半に戻って人生をやり直せたら、まず、アフリカに行 ってみたい。自分にしかできない何かがみつけられるような気がします。


19歳当時、1972年、5月、単身、横浜から未知のシベリア鉄道を経由してヨーロッパに入り自由に旅した3ケ月間は、それは新聞記者を志すきっかけになったことでもあるし、かけがえのない体験だったと思います。来年、どこか行こうかなあ〜。


その黒川さん、世界顕微鏡学会に共催する日本学術会議の会長として式典に出 席するため、今朝、札幌に飛びました。記念式典の会場は、きっと天皇皇后両陛 下にご祝福の盛んな拍手が湧きあがっているにことでしょうね。


グローバルな視点で、将来を見据えて、いま何をしなければならないか、若い 世代を育てていって、さらに前に前にと歩みを進めていく。常に、そこを肝に銘 じて行きたい。さて、今週末から来週にかけて、ビッグなイベントが目白押しで す。DNDの産学官連携情報をご欄ください。今年の9・13は、凄まじい。


東京で、大学の見本市といえば、イノベーション・ジャパン(13日から15日、 東京国際フォーラム)、「いまわが国で重要なのは、付加価値の高いイノベーシ ョンを絶え間なく産み続ける技術開発に取組むことである」と、日本経済の発展 を願う主催のNEDO技術開発機構の牧野力理事長です。「大学の研究成果が日 本の社会の活性化の原動力になる」として、「独創的な研究成果の発掘や実用化 に向けた企業とのマッチングを支援する」のは、やはり主催の科学技術振興機構 の沖村憲樹理事長、さて、グローバルトップワンを生み出すような、そんな技術 がでてくるか、どうか、今年で3年目、真価が問われますね。


DNDもブースを出しています。パネリストも務めます。13日午後は13時から ホールD5で、頑張るNEDOフェローによるワークショップ「産学連携人材の 育成」をテーマに開催します。奈良先端科学技術大学の教授で弁理士のベテラン、 久保浩三さんをモデレータに、弁理士の中島淳さん(太陽国際特許事務所長)、 リクルートの原豊さん(チーフアソシエイト)、(株)リバネス人材開発事業部 長の長谷川和宏さん、九州大知的財産本部の技術移転グループのアソシエイトで 頼りになる、平田徳宏さん、それに顔が大きい僕‥。


13日は水曜日で、メルマガの配信で開幕日だから、NEDOフェローOGで北 見工業大学の内島典子さんから依頼が舞い込んで、ダンマリを決め込んでいたら、 催促があってそして電気通信大学TLO、キャンパスクリエイトの吉田久美子さ ん、今回のワークショップを裏で支える東京農工大学TLOのアソシエイト、小 森啓安さんらの粘りに負けての登壇です。人材育成、いやあ、こうだよって、簡 単に答えを出してはつまんない。心に刻む、何か、ひとつ、黒川さんのようなイ ンパクトを与えられるようなメッセージを激励の言葉と一緒に伝えたい。これか らは、君たちの時代だよ、って。


注目は、はやり13日午前10時から12時半、千代田区霞ヶ関の霞ヶ関ビル33階に ある東海大学交友会館「阿蘇の間」で、「産学官連携による研究開発のイノベー ション」と題したパネルデッスカッションなのですが、なんと米国の頭脳が集積 する名実ともに世界最高の研究機関、いやあ、1943年、第2次世界大戦中のマン ハッタン計画を主なミッションとして創設された、その名もロスアラモス国立研 究所から、科学・技術・エンジニア部門の統括責任者で副所長のテリー・ウォー レスさん(といっても僕はよく知らない)が基調講演として出席し、同研究所の 事例を紹介し、パネルディスカッションにも参加する、ようです。規模は比較的 小さいが、内容は、必見です。DNDの産学連携情報から事前の申込が可能です。


で、パネリストには、光触媒を日本発のエコマテリアル産業に発展させた実績 の東大先端研センター所長の橋本和仁さん、経済学博士で論客、経済産業研究所 長の吉冨勝さん、産総研のナノテクノロジー部門長でベンチャー起業もてがける 横山浩さん、シャープの常務でソーラーシステム事業本部長、そして太陽光発電 の生産で世界トップの実績を誇る富田孝司さん、という錚々たる顔ぶれです。モ デレータは、経済産業省資源エネルギー庁新エネルギー対策課長で、信頼の安藤 晴彦さん、さーて、どうしよう。朝一番で、国際フォーラムに顔を出し、その足 で安藤さんのところに行って、昼前に戻って、NEDOフェローのパネルの打ち 合わせに出て‥。参加できなかったら、その模様を安藤さんにルポしてもらおう かしら〜。


大阪は、13日から大阪国際会議場などを会場に、バイオジャパン2006〜ワール ドビジネスフォーラム(15日まで)。JETROのバイオリンクフォーラムも同 時開催です。世界の国々、バイオクラスターが一堂に会します。東京のイノベー ション・ジャパンもこれも、イベント運営に確かな日経新聞グループ、日経BP 社が担当しているようです。本日アップしたDNDの連載「大学発ベンチャー成 功の方程式」の筆者のアンジェスMG創業者で、大阪大学大学院教授の森下竜一 さんは、「13日はどこに?」と聞くと、「大阪組です」との返事が返ってきまし た。ズッと、借りがあるから、利子が膨らんで、ちょっと怖い(笑)。バイオ関 係のプロは、大阪に流れるのでしょうか。


13日は国際フォーラムでは京都大学が昨年4月発足の国際イノベーション機構 (IIO)、スーパー産学連携本部事業の採択等を機に、独自の京都大学の活動 を紹介する場を用意しています。尾池総長が挨拶に立ち、副学長でIIO機構長 の松重和美さんが取組み事例を紹介する予定です。若手研究者による大学発ベン チャーも紹介されます。いよいよ、京都大学も動いてきましたね。


岡山大学は産学官融合センターで、やはり13日午後15時から中小製造業の発展 のための新たな視点としてのMOTセミナーを開催します。


13日は、午前10時から夕刻まで、東京・全日空ホテルを会場に「科学技術と産 業」国際シンポジウム2006年―「科学技術の光と影‐影の克服に向けて」が開催 されます。オープニングスピーチは、ノーべル物理学賞受賞者で、前スタンフ ォード大学線形加速器施設(SLAC)所長のスタンフォード大学名誉教授、Bu rton Richter氏、米グーグル社副社長兼チーフインターネットエバンジェリス トで、インターネットの基本設計を手がけたのVinton G.Cerf氏、そして前の米 国国立衛生研究所(NIH)所長でノーベル生理学・医学賞受賞者で、メモリア ル・スローン・ケタリング癌センター所長兼CEO、Harold Varmus氏という豪 華な講演がセットされています。午後は、エネルギー問題と環境問題、食糧の安 全性(GM食品)と国際保健への展開、情報通信技術の将来などがそれぞれ議論 される、予定です。主催は、JETRO、それに日本学術会議で、全体の総括討 議を黒川清さんが受け持つことになっています。


いやはや、夕刻は、イノベーション・ジャパンの交流会だし、NEDOフェ ローワークショップの懇親会だし、黒川さんの顔も見たいし‥。


もうこの辺で〆ないと叱られそうです。黒川さんといえば、明日7日は、立命 館大学で「Gateway to India(グローバルイノベーションにおけるインドの可 能性)と題しての日本学術会議と立命館共催のシンポ。これも熱風、インドの最 新の動向、その躍動の背景などがうかがえるのでしょうか。開会の挨拶に黒川さ ん。インドの歴史学者やデリー大学の教授らが登壇します。北海道から帰って、 その足で京都に向かうのでしょうかねえ。続いて8日、9日は、国立京都国際会館 で、グローバル・イノベーション・エコシステム‐「持続可能な社会のための科 学と技術に関する国際会議2006、DND馴染みの原山優子さん、石倉洋子さんの 他、スタンフォード大学、英マンチェスター大学、シンガポール経済開発長の局 長、韓国・サムスンの研究所長、村田精機の村田純一会長、9日は理化学研究所 の理事の武田健二さん、JST開発戦略センター長の生駒俊明さん、ランチセッ ションには、松田岩夫科学技術政策担当大臣、尾池和夫京都大学総長らも‥ここ も国際色豊かでわが国を代表するビッグネームが名を連ねています。


大きな集まりは、東京の明治大学アケデミーコモンで、UNITT2006第3回 「産学連携実務者ネットワーク」の開催も目が離せません。大学技術移転協議会 が主催、明治大学、社会連携促進知財本部が共催、協賛に日本弁護士連合会、弁 理士知財ネットとしっかりした体制を組んで、充実してきました。参加費20000 円は、惜しみません。僕も参加します。


というわけで、ざっと駆け足で紹介しました。明日の日本、世界を見据えなが ら胸を張って、堂々と己の主義主張を言い切ってくれることを期待しています。


* 黒川清 WEBサイト http://www.kiyoshikurokawa.com/ 
* 産学連携情報 http://dndi.jp/dndinfo.html


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