◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/6/14 http://dndi.jp/

第5回産学官連携のDND総括

〜イノベーションから財布騒動まで全9章の巻き〜

DND事務局の出口です。遠くの野鳥のさえずりが、ほら、こんなに耳元近く に聴こえます。緑陰、そして静寂な京都・宝ヶ池、しかし、ここ知の連携のメッ カは、そういう周辺の落ち着きとは裏腹に熱風が巻き上げていました。重厚な国 立京都国際会館のステージは、人と人を結び、次世代への強いメッセージを発信 し、そして新たにイノベーティブな歴史の扉をこじ開けて見せていました。


 「イノベーション加速に総力結集」と銘打った産学官連携推進会議、今回で数 えて5回目(6月10、11両日)。う〜む、折り返し点というか、いずれにしても、 次ぎへの取組みが求められる節目である、という共通認識は、充分に浸透してい ました。



 1「熱気に溢れた第5回産学官連携推進会議」


 もうそのスタートの第1回から参加している常連組の率直な印象は、いつもの 風景とちょっと違う。前夜開幕のワールドサッカーをテレビ観戦して少し重い目 をこすりながらも、皆さんの会場への出足は早く、開会前の9時半には、メーン の大会議室のテーブル席が、すでに満杯。大学や研究室のブースがひしめく展示 会場では、ざわざわと人、人、人で溢れて熱心なやり取りが終日、続いていまし た。お弁当なんかは、気がついたらあっという間に売り切れていました。


 産学官連携が新しいステージを迎えて、その舞台に参加された多くの人達も、 ワクワクするような高揚感というか、熱風に煽られるような勢いを感じ取ったに 違いない。京都会議は、質、量ともこれまでを圧倒していました。産学官連携の それも1500社を超える大学発ベンチャー創出の牽引者、アンジェスMG創業者で 大阪大学大学院教授の森下竜一さんは、「例年以上の熱気を私も感じました。お 陰で、懇親会では皆さんとお会いするのも大変困難でした」とその印象を語って おられました。残念ながら、森下さんや、近畿経済局の山城宗久さんらDND連 載の執筆者との遭遇はかないませんでした。


 ご存知のように、DNDサイト上で事前に、この京都会議の開催にむけて「集 中連載」を展開しました。内閣府はこの会議に何を仕組んだか?です。そして会 議終了に伴って、第5回の京都会議を総括する‐ということになっています。森 下さんは、現在、海外へ出張中でもうちょっと、東北大学教授の原山優子さんは、 「もうしばし、お時間を!」とのメールが入っていました。


 さっそく、その総括原稿を送ってくださったのは、「地域・中小企業における 産学官連携の新展開」をテーマにした分科会の座長で東京農工大学大学院教授の 古川勇二さんでした。そして、主催者で全体運営を指揮してきた内閣官房審議官、 塩沢文朗さんが続いてくださいました。



 2「古川教授と塩沢審議官の総括原稿をアップ」


 それぞれ、本日、その「集中連載」の続きにアップしましたから、会議の模様 や、参加者の発言、5つの分科会の総括、そして反省点や得られた成果、それに ちょっとした、恥ずかしいような面白エピソードなんかも詳細に綴られておりま す。第5回京都会議をこんなに丸ごと特集した例は、どこのマスコミにおいても DNDをおいて他にありません。


 顔と顔が笑い、名刺と名刺が飛び交う〜と交流会での参加者らの満足気な様子 は古川さんの原稿にスケッチされていました。臨場感があって、上手に表現する ものです。認め合って、称えあう楽しげな様がくっきり目に浮かんでくるようで す。


 文中では、産業クラスターの経済効果を具体的な数字を挙げて検証し、クラス ターに参加した企業は、全国の中小企業と比較して、利益率50%増、売上高10 %増、雇用10%増と軒並み好循環の域に達している、という古川さんの報告は、 会場の多くの参加者の注目を浴びていました。


 5つの分科会は、パラレルセッションでしたから、1箇所しか参加できません でした。その古川さんの分科会について少し、報告します。会場の最前列に陣取 って、メモしていました。もうぎっしり、800人を越えていたでしょうか。とも かくここでも汗をかくほどの熱気に包まれていました。


 前日、韓国でクラスターをテーマにしたシンポジウムを終えて京都入りしてい た、古川さん、そのグレーのシルクスーツの着こなしもダンディーで、疲れも見 せず、その差配は冴え渡っていました。たっぷり120分、そのコーディネートは 絶妙でした。


 まあ、普通、ちょっと油断すると、パネラーが次々と順番に行う最初の発表を ひとり7分と決めても、なんだか5人もやれば、それぞれが延々とやるから発表 会になって、それで時間の大半を費やして、ついにはどん詰まり、というケース が見受けられます。まあ、司会の独壇場も困ったものですが、議論が希薄で盛り 上がりに欠けて、時間が押して会場からの質問に対応できなくなる、こともしば しば経験します。まあ、これは自らの反省として‥。しかし、古川さんの手腕は、 そんな心配を一気に払拭してくれました。


 さて、そのパネラーの顔ぶれは、京都の顔、堀場製作所最高顧問の堀場雅夫さ ん、福井県機械工業協同組合理事長の松浦正則さん、北海道からの大学発ベンチ ャー社長の土井尚人さん、東北エリアを代表して前東北大学大学院教授で、青森 県の八戸工専校長の井口泰孝さん、そして富山県から富山県新世紀産業機構参与 で知的クラスター創成事業のコーディネータの東保喜八郎さんでした。


 コメンテーターには、経済産業省から産業クラスター計画推進室長の加藤元彦 さん、文部科学省から地域科学技術振興室長の真先正人さん、まあ、加藤さんの 臆するところのない堂々とした発言には説得力がありましたし、紳士的でおだや かな真先さんの、思慮深い姿勢にも好感がもてました。いやあ、コメンテーター のお手本を見せていただいた感じです。明日開催の産学連携学会のシンポジウム で、その任を務めますから、要諦は、聞かれたら聞かれたことをのみ、しっかり 答える〜でしょうか。余計なことは、慎む〜。ウム。



 3「懐深い、ダンディーな堀場会長の存在感」 


 で、分科会。踏んだ場数の違いなのか、古川さん、手馴れたものでした。冒頭 のプレゼン時間はパネラー5人と座長の挨拶を入れて、それで正味33分、そして、 テーマを絞って、テンポよく、パネラーやコメンテーターから少なくても3回以 上、その発言の機会を用意し、さらに会場からは10人を超える意見や質問を引き 出していました。古川さん、座長に徹して自らの個人的な発言は、極力控えてい ました。それが座長のポイントなのでしょうか。


 人をプロデュースする、パネラーの意見をきちっと理解してひとりの洩れなく 最後のまとめに反映させてる、全体に目を配って司会をしながら、その発言要旨 をパソコンに打ち込んでいく〜これが仕事師・古川さんの座長の流儀なのかもし れません。


 印象に残ったやり取りは、東保さんがコーディネータ論に触れて、「いいシー ズがあれば、それをいい価値観に作り上げていく、そのためネットワーク、セン スが大事」と語り、ビジネスや技術のシーズやニーズのマッチングに加え、これ からは自らが創業できるクリエーターやプロデュサー的なコーディネータが必要 である、という発言でした。きっと普段、いい仕事をしていらっしゃるのでしょ う。人間存在の大きさが、コーディネータの力量に関係しているのかもしれませ ん。例えば、岩手県のSさん、Sさんを師匠と言ってはばからない大阪市のDさん、 九州大学のIさん、九州経済局のMさん‥。共通するのは、強い「Will」、そ れと本物とそうでない物を見分ける力、臭覚でしょうか。


 「仕事の価値は?」とやや抽象的な会場からの質問に堀場さん、大学人は初め エイリアンと思うくらい言葉が通じなかった、という体験を例に「自分の意志を 伝えるところから仕事が始まる。それは体力、産学連携は頭より体力、強い者が 勝つ」と言い、「自分のフィロソフィーが明確じゃなければ強くなれない。それ があればどんな強い相手でもかかっていける。自分の信念を持って、相手の言葉 を理解し、自分のいいたいことを明確に伝えることです」と断じていました。ふ わっと、会場から感嘆の声が洩れていました。


   それこそ、堀場さん、いつ聞いても痛快です。必要なモノや情報、施設などを 行政や関係機関に自ら働きかけて、全部作ってしまったことを「たぶらかした 〜」と照れ隠して見せていましたが、その功績は、京都発の全国モデルをいくつ も手がけていらっしゃることです。それで、ユーモラスで、わかりやすい。どん な質問でも、ちゃんと聞いて、懐深く、丁寧に、相手を包み込むように答えてい ましたね。どんな場所でも、人の心を鷲掴みにして飲み込んでしまうから、凄い。


 余談ですが、その会場から通路にでたところで、堀場さんと目が合い、ご挨拶 しようと、「大学発ベンチャーのDN‥」と言いかけましたら、「よ〜く、知っ ています〜」と満面笑みで、手を取って激励してくださいました。素直に嬉しい。 めっちゃファンになるじゃないですかね。


 僕のそばに、古川先生の令夫人がご一緒していて、堀場さんにご紹介すると、 しっかり面識があるようで、丁寧に堀場さんに挨拶されていました。


 さて、堀場さん、このメルマガでは何度も登場しますが、それほどの面識はあ りません。ひょっとすると、あれれっ、これは近畿経済局の山城宗久部長から、 裏技での絶妙なアシストがあったからかも知れません。たぶん〜。



 4「イノベーション加速に総結集と松田大臣の確信と雄弁」


 さて、話を総括原稿に戻します。「産学官連携に新しい風を吹かせたい」とい う題名で寄稿してくださった塩沢文朗さん、本日の総括原稿で4本目になりまし た。本文では、昨年との比較や参加者の内訳がまとめられていました。


 総勢4500人、産業界からの参加が増え、展示ブースは226団体から373を数えた というから、これは京都会議プラス、イノベーションEXPO総結集の趣でのよ うです。


 塩沢さんは、総括にあたって、産学官連携がイノベーションを種から実へと育 て上げる重要な仕組みである、と前置きして今後は、国際化、地域、中小企業と いう3つの切り口から、1、量から質2、世界の変化に応じた改革の必要性3、 人材育成、それに国際的・長期的な視点に立った基盤の整備‐が重要である、と いう認識が、参加者間で共有されたことが、「ひとつの成果」と評価していまし た。


 いやあ、こんなテンポで書いていたら、終わらない。ちょっと急ぎましょうか。 10時開会、司会はクールビズ姿の塩沢さん、ゆったりとした甘い声でマイクから 開会を伝えていました。余裕がありましたね。総理始め、関係大臣の挨拶は配布 資料で簡略し、冒頭のメーンは、この4月からスタートした5年間の第3期科学技 術基本計画を策定した内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の松田岩夫さんの基 調講演でした。


 「イノベーション加速に総結集〜新しい日本の科学技術戦略〜」と題して、第 3期の基本理念や政策目標、それに戦略的重点を選定し、その要件にまで言及し ていました。まあ、澱みなく、そして野太く響く大音声、それは強い確信に満ち 溢れているようで、なんとも頼もしい限りでした。雄弁です。


 内容をかいつまんでみると、若手研究者に目を向けてながら、女性研究者の活 躍機会を25%と採用目標も明示、優れた外国人研究者を惹きつけ、それでシニ アも活用するーと大胆にしかも具体的に述べて、わが国の創造的地位をどうつく り出すか、智恵の根幹は科学技術にあり、それはひとえに人の活躍にかかってい る、とモノから人への理念を明確に打ち出していました。


 「明日への投資、25兆円」、この緊縮財政下にこめられた国民への期待になん としても応えたい‐と強調していました。さらに、世界のイノベーターを目指し、 経済成長の原動力とする、として「日本は再び、世界経済をリードするのもそう 遠くはないと確信する。それには一貫したイノベーション創出戦略が必要」と断 言し、解説を加えていました。


 世界のトップクラスとなる研究拠点を全国に30目標に創る、と言い切りつつ、 「ちょっと多いかなあ」と自問もしてみせて、「どこにどんな風に拠点をつくる か、いい智恵があったら、皆様のご意見を聞かせてください。総合科学技術会議 や大臣室へ殺到してください」と訴えていました。



 5「スタートした先端融合の15のプロジェクト」


 松田大臣の講演の中で、興味深いのは、今年度からスタートした先端融合領域 イノベーション創出拠点の形成の実施計画、その具体的なプロジェクトでした。 今後10年、次世代を担う研究者、技術者を育成し、新たな産業の芽となる先端技 術を確立するための研究体制、その選ばれたプロジェクトは全部で15件、そのう ち6つはフィジビリティ・スタディ。3年ごとに見直し、新規を採用したりプロ ジェクトの入れ替えも大胆に行う、というから、まだまだチャンスありですね。


 年間5億から10億円(当初の3年は2億から5億円)というスケールの大きい、イ ノベーション創出が期待できる研究内容に絞っていました。その選定委員のひと りで、(独)工業所有権情報・研修館理事長、清水勇さんが、松田大臣の講演を フォローする格好で、その概要について、とくに9つのプロジェクトについて詳 しく説明していました。


 う〜む、ここで全部説明したい〜。が、難しい。例えば、生体の巧みな「ゆら ぎ」、これを解明し、活用することで生体機能を模倣した知的センサを組み込ん だ人工心臓やロボットの開発に取組む「生体ゆらぎを学ぶ知的人工物と情報シス テム」は大阪大学、民間の協働機関がオムロン、日本電子、松下電器産業など6 社が参画していました。


 健康社会の実現に向けては、高解像度・高感度イメージング技術、それも光、 MRI、超音波、PETなどの統合で、眼や脳やがん、それに血管病疾患を早期 発見し、効率的な医療を実現する、というのは京都大学、民間はキャノン1社と の協働プロジェクトでした。


 少子高齢社会に対応するという、IT(情報通信技術)とRT(ロボット技 術)の融合によって社会・生活支援などのシステムを開発するのは東京大学、協 働の民間企業に、トヨタ自動車、オリンパス、セガ、凸版印刷、富士通研究所な ど大手7社が名を連ねていました。


 いずれも10年、15年後のイノベーションを期待していますが、ここ数年で現実 的に、もうすぐ動き出すような感じがしてきます。産学官連携といっても、分科 会1の東京工業大学学長の相澤益男さんのところで論議されていた、グローバル な産学官連携の新フェーズのモデルようでね。きっと、世界市場にブレークス ルーしていくものと期待いたします。



 6「グランプリは、東北大金属材料研が生んだ魔法の金属ガラス」


 特筆すべきは、今年で4回目の産学官連携功労賞の各表彰でした。グランプリ の内閣総理大臣賞は、「金属ガラス」を用いた産業用・高性能デバイスの開発を 手がけたグループで、世界最小のトランスミッションや高圧力センサーを実現し ていました。受賞者は、金属材料分野では定評の東北大学金属材料研究所所長で 教授の井上明久さん、並木精密宝石のマネージャー若菜和夫さん、長野計器(長 野県丸子町)のAMセンサ技術部次長の長坂宏さんでした。展示ブースに足を運 んで、その概要をお聞きしました。


 昨年11月号の科学雑誌「ニュートン」の特集「金属ガラスが新金属文明の幕を 開く〜プラスチック以来の夢の新材料が登場」が、冊子として配布されていまし た。それらによると、金属ガラスは液体状態で固体になる、という魔法の金属で 成型が容易という特性があり、携帯電話、ゴルフクラブ、車のエンジンは勿論、 世界最小のモーターや高性能の圧力センサーの開発が進んでいる、という。


 その場で、説明してくれたのは、長野計器の長坂さんの部下、係長の吉田直樹 さんでした。30歳ちょっとでしょうか。直径5ミリの圧力センサーから最近開発 したその半分の2.5ミリの圧力センサーを示しながら、強くてしなやか、錆び にくいから液体や薬品の中でも使えるし、事業が本格稼動すれば、画期的な商品 となる‐と額に汗しながら説明してくれました。井上教授が、受賞者を代表して プレゼンテーションに立っていました。これは、その時のメモですが、〜これま で年間4.5億円、これまで22.5億円を投資、2010年には1760億円の市場を創り、9 000人の雇用を創出する、というから、やはり凄い。


 産学官連携といっても科学技術の振興、その成果が溢れかえっていました。な んだかドキドキするのは、時代の産業を一変させてしまうような、劇的な技術の 誕生があっちこっちで、その種が生まれ芽をだしつつあるからかもしれません。 イノベーション創出戦略が、着実に動き出しているようです。



 7「吉川理事長からの国を挙げての緊急提言」


 最終日の大会議場、トリは、産総研の理事長、吉川弘之さんの「国を挙げてイ ノベーションシステムの構築を」と題した特別講演でした。圧倒的なスケールの 内容に参加者は感じ入った様子で、会場から万雷の拍手が湧いていたようです。 私は、別件があって聞き逃しましたが、吉川さん、産学連携の接点、それをつな ぐ役割の人材に言及し、近年最も叫ばれている、科学技術リテラシイに踏み込ん でいました。さらに科学技術知識をめぐる、供給者と使用者とつなぐ産業技術構 成者、いわば新しい専門家、アーキテクトの概念を新提案として披露していたよ うです。


 配布の資料によると、産業技術アーキテクト、情報アーキテクト、ロボット アーキテクト、エネルギーアーキテクト、それらは研究所の所員として産学連携 を推進するが、産業界からの出向も可能で、さらにそこで育ったアーキテクトは 独立して産業技術設計事務所を開設し、プロフェッションとしての活動がイメー ジされていました。もう、それは始まっているのでしょうか。現在の各種コーデ ィネータより、さらに分野を広げた専門的で実践的な印象を持ちました。


   その吉川さんの講演に痛く感激していたのが、司会の塩沢さんでした。科学技 術に精通した東海大学教授の尾身朝子さんとご一緒のところを自慢の800万画素 のデジカメでパチリ、そばから「出口さん、いつもスタンバイですね」とにこや かな科学技術振興機構(JST)理事で見識の北澤宏一さん、ではご一緒にと記念 撮影に興じていました。その会場入り口前は、スポンサーのJSTの展示ブース でした。初日から理事長の沖村憲樹さんが先頭に立って、先日ログインしたばか りの、科学技術ポータルサイト「科学技術ポータル」のPRに努めていました。 科学技術の今を伝える‐との触れ込みで、科学者、研究者、それに学生らが毎日 1回は立ち寄る、便利で役に立つサイトを目指す、という。サイトのデザインも 見やすく使い勝手がいい。コンテンツも日々充実し、東北大学の人気の脳科学者、 川島隆太さんの動画なども興味深い。



 8「沖村理事長、肝いりのサイエンス・ポータルサイト発進」


 沖村さん、東京工業大学学長の相澤益男さんや原山優子さんらをお誘いして説 明に立っていました。いくら発案者といっても常に熱心で、感心します。この ポータルサイトの企画委員会や編集には、この私も尾身さんと一緒に委員として 参画しています。


 これも余談ですが、その科学技術ポータルの委員長は、日本学術会議会長の黒 川清さん、黒川さんとの会議は、いつも笑が弾けていて楽しいんです。この京都 会議の〆の総括でも小気味いいテンポで、「めまぐるしく変化する世界の動きを どう受け止めなければならないか〜私はタリバンではありません、シュムペー ターです」と言う風に、時折りユーモアを交えながら、「世界の中の日本の役 割」について言及していました。


 サイエンス・ポータルのサイトについても、日本から世界に向けてどう発信す るか、その視点がなければ、必要はないーとまで言い切っていましたが、それは、 今後の克服しなければならないテーマで、実際、編集長に就任した共同通信記者 で元メディア局長の小岩井忠道さんの双肩にかかっているのですが、知らんふり はできません。これからの科学技術振興のために、大いにその手腕に期待してい るところです。まあ、科学技術をテーマにしたタイムリーなサイトの誕生である ことは、間違いありません。


 *サイエンス・ポータル
 >> http://scienceportal.jp/portal/



 9「財布紛失と祇園のうどん」


 最後に自戒を込めて、失態の顛末。大会議場で財布が入った藍染の巾着袋を置 き忘れて、その夜まで気がつかない、という失態を演じてしまいました。その経 緯は、塩沢さんの総括原稿にもちょっと暴露されていましたが、内閣府の運営事 務局の女性スタッフには、大変、ご迷惑をおかけしました。また、塩沢さんの機 転で、交流会の会場で塩沢さんが自らアナウンスしてくださって、それを聞いた 古川先生の令夫人から急いで連絡をうけた次第でした。


「出口さん、いまどちらにいらっしゃるの?お財布の件で、いま交流会でアナ ウンスが流れていましたよ。DNDの出口さん、至急来てくださいって〜」って言 う風で、そして古川さん夫妻に、申し訳ないことにそのお店まで届けてもらいま した。


 お店は、祇園にある小さなうどん屋です。その2階の座敷に陣取って、仲間数 人、それにDNDのスタッフらと、旬の京料理に舌鼓を打っていました。冷奴や生 のしば漬、それに万願寺唐辛子や加茂茄子など、みんなおいしい。のん気なもの です。〆は、ダシの効いた九条ネギたっぷりのネギうどんでした。怒られそうで すが、京都は人も食も、みんなええなあ〜と、しみじみ思いました。



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