◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2006/5/24 http://dndi.jp/

ダ・ヴィンチ・コードの「封印」

-第5回京都会議の視点・論点

DND事務局の出口です。漆黒のルーヴル美術館。数多くの名画が並ぶグラン ドギャラリーの通路で、深夜、静寂の帳を打ち破るように通路を仕切る鉄格子が すさまじい音を立てて落下し、警報が鳴り響く。その場から高名な館長の奇妙な 姿の他殺体が発見され、そこに不可解な暗号が残されていた〜。


 ご存じ、世界的ベストセラーの映画「ダ・ヴィンチ・コード」のプロローグは、 原作に忠実でした。世界各地で公開され、その話題に乗り遅れまいと昨日、東 京・錦糸町で観てきました。2時間32分、トイレに立つ時間も惜しいくらいの知 的スリルと興奮の連続でした。う〜む、キーワードは、「封印」。


 異端と見なされていたキリスト教の一派が浮上し、ローマン・カトリック教会 が封じ込んでいた様々な情報が世界に流布されてしまい、映画の全世界一斉の封 切りは、まさに封印を解いて、誰も彼もがある特定の情報を知ることとなる、そ の契機になったのでは〜とは、小説を原書で読んだユーザーの医学博士からの メールでした。


 「今度のメルマガのホットなテーマになるのでしょうか?」との予言めいたメ ッセージに「人を、そして時代をタイムリーに切り取る」というのが売りのDND メルマガですから、誘われるようについ乗ってしまいました。


 ダ・ヴィンチは、その微笑に何を仕組んだのか。ミステリヤスな小説のキャッ チに心を動かされて文庫も読んでいましたから、鮮やかに浮かび上がってくるの は、封印されたキリスト教の秘密、ダ・ヴィンチ絵画に隠された暗号、殺人事件 に関わる秘密結社の存在や、巨大な地下人脈を築く秘密組織の裏社会でした。


 これらは、ユダヤ教神秘学派のカバラやバラ十字騎士団などとも関係してくる ようですし、「奥深い氷山の一角を露見させた、あるいは封印を解いた本とも言 えるかもしれませんね」という解説を加える、親しい学者もいます。


 なるほど、ねぇ〜。キリスト教にやや縁の薄い日本の風土からは、これらの多 くがフィクションとして捉えられても、足元を揺るがすようなリアルな史実を突 きつけている、という教義の根本に立ち入るという問題として実感できるか、どうかは、疑問ですね、やはり。


 ただ、娯楽鑑賞の立場からすれば、例えば、聖杯、マグダラのマリア、子孫な ど、それら名前や言語、その文字ひとつひとつに著者ダン・ブラウン氏の仕掛け が見え隠れしているから、知的好奇心を働かせるとより一層面白くなるし、逆に しっかり意識を巡らせないと「鏡文字」の迷宮から永遠に戻れなくなって、闇に 浮かぶ青白い亡霊の正体を見破ることすらできないかもしれない。


 ウム、謎解きなら、札幌で観た映画・名探偵コナン「探偵たちの鎮魂歌」とい い勝負かもしれない。どんでん返しが連続するサスペンスと観てもいいし、知的 な自分探しの旅と読んでもいい。それぞれにちょっと感動シーンもあって、これ は近代映画史にそのタイトルを刻むことでしょう。歴史の波間に見え隠れする 虚々実々の物語中、誰が一体悪なのか、あるいは誰が騙されているのか、最も裏 切られたのは、そう、観ている側の客だった、ことは確かです。


 ただ、新聞を読み拾うと、バチカンのローマ法王の側近は、「信仰の核心への 根拠なき挑戦」と批判をし、「真実は幻想に勝る」と呼びかけているらしいし、 製作会社のソニー・ピクチャーズエンタテインメントは空前の興行収入で業績復 調の兆しの半面、製品の不買運動も気になるところです。しかし、この一連の動 きにもひょっとしたら、何か極秘の仕掛けがあるのかもしれない。あ〜、罪深い ことになんて疑心暗鬼なのでしょう。


 記憶をめぐると、19歳の夏、放浪の果てに行き着いたのがルーヴル美術館でし た。そのルネッサンス様式の石の宮殿は、なんとも圧倒的な重量感を持って迫っ てきました。そこで見たモナ・リザの絵が意外と小さかったことを思い出してい ました。


 新しい玄関口となったネオモダンのガラスのピラミッドは、この映画で度々登 場し極めつけのラストシーンの謎解きのクライマックスにも利用されていました。 ウム、その設計者は、中国生まれのアメリカ人建築家、I.M.ペイ氏ですが、 以前、東京・明治記念館での世界文化賞の受賞式、その後のパーティーなどで、 建築家、丹下健三さんから紹介していただいたことがありました。黒いロイドの 丸メガネで愛嬌があり、終始笑顔でした。令夫人は、スリムなチャイナ服でペイ 氏の後ろに控えてにこやかな表情を浮かべていました。そのお二人の仲睦まじい 古風な印象から、その特異な逆さピラミッドの変容を理解するのは、容易じゃな い。批判者は、「黒板を引っかく爪」と評し、映画では、「パリの顔の傷」とこ き下ろす場面もありました。


 もうひとつの記憶は、聖地エルサレムを回想するシーンのロケの舞台となった 地中海に浮かぶ要塞、マルタ島、ハニーカラーの石の回廊を見て、ハッとしてし まいました。確か、あそこは、よく似ている、と思って解説本をめくって確認し ました。聖ヨハネ騎士団の拠点、マルタ島に行ったのは、昨年2月でした。こん な風に、歴史、絵画、彫刻、建築などいろいろ見せられると、ついまた行きたく なるじゃないですかね、これはきっと9・11同時テロで萎縮した旅行会社など の企みかもしれない。人を信じられない、というのは本当に悲しい、それは人生、 不幸の始まりですね。


 さて、DNDサイトにひとつの仕掛けを用意しました。これは疑いなく向き合 ってください。科学技術創造立国を意図して知を創造し、互いに連携するイノ ベーションの担い手が一堂に集う恒例の「産学官連携推進会議」がいよいよ6月1 0日(土)11日(日)の両日、産学官連携のメッカ・国立京都国際会館で開催さ れます。


 それに合わせて、「第5回産学官連携推進会議の視点・論点」の集中連載の特 別企画を本日アップしました。題して、「内閣府は、この会議に何を仕組んだ か」〜。この題字のイラストにご注目ください。趣旨を話すとデザイナーの杉山 期さんが微妙な笑いを浮かべていました。それで、届いたのがこのカットです。


 主催団体で運営責任者の内閣府大臣官房審議官の塩沢文朗さんから、DNDサ イトですでに連載企画を担当する、東京農工大学大学院教授で産業クラスター研 究会会長などの数多くの要職を歴任される古川勇二さん、東北大学教授で総合科 学技術会議議員に就任した産学連携一押しの論客・原山優子さん、大阪大学大学 院教授でアンジェスMG創業者、そして年々急増する日本の大学発バイオベンチ ャーを牽引する森下竜一さんらにDNDを通じて協力依頼がありました。皆さん、 それに対して快くお引き受けされていました。


 第5回の産学官連携推進会議の狙いや意義、あるいは各氏が担当する10日午後 開催の分科会のテーマ、課題などをそれぞれの立場から突っ込んだ議論をしても らう、そういうクロスオーバーの本質的な議論をDNDウェブ上で展開するーとい うものです。


 DND企画連載の執筆者と分科会の座長やゲストが上手に重なって実現した、企 画です。本来なら、他の分科会座長の方たちにもお声をかけた方が良かったかも しれません。


 この会議では、示唆に富む基調講演や特別講演もあります。分科会は5つ、そ れが同時刻に別々の会場でパラレルに進行しますので、当日参加しても全部見ら れない事情も考慮に入れ、あるいはウェブ上で議論を展開することで参加者の事 前の学習に役立つという狙いもあります。原山さんが本編で論じているように、 「産学連携の次ぎのステップのアイディアを出していただきたい。プレゼンはあ くまで論議の呼び水ですから、帽子をクロークに預けて‥」と語り、帽子、つま り肩書きというフィルターを外して、何がエッセンシャルで、それを自分はどう 考えるか?という社会人としての主観の重要性を強く訴えています。


 森下さんは、関西人が企画したら「産学官甲子園と命名したかも‥」といい、 産学官活動に携わる担い手は固定されてきていませんか?と問題提起し、本当は 大企業より中小企業の方が大学の技術や手助けを必要としているはずです‐と中 小企業の方々の多くの参加の重要性を綴っています。


 呼び掛け人、いや仕掛け人の、塩沢さんも参戦し、新たにDNDサイトに集中連 載のコーナーを設置しました。「産学官連携に新しい風を吹かせたい」という熱 い思いをこの会議に託していることがわかります。それに対して、原山さんは、 「新風を吹き込むには?」と呼応してくれています。


 どうぞ、6月10日の開会まで何回か原稿をアップし、その終了後も「会議を振 り返って」という内容で、次回以降のステップのための提言も用意したい、と考 えています。ご意見、ご要望がありましたら、お寄せください。これからの企画 の参考とさせていただきます。



記憶を記録に!DNDメディア塾
http://dndi.jp/media/index.html

このコラムへのご意見や、感想は以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
DND(デジタルニューディール事務局)メルマガ担当 dndmail@dndi.jp