◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2005/12/14 http://dndi.jp/

Good Job & Best Job

DND事務局の出口です。もう真冬。戸外にきりっと冷たい風。寒波続きの列 島は、耐震強度の偽装をめぐる国会の証人喚問中継に多くの耳目が集まっていま す。ラジオを聴いて苛立ちながらも、不気味に潜む全国の耐震偽装のあらゆる物 件の解明を早期に期待したい。


 さて、気分を変えて〜。暮れも押し詰まって、本年の掉尾を飾るにふさわしい シンポジウムがこの12日午後14時から、東京駅まん前の丸ビル7階丸ビルホール を会場に開催されました。


 九州大学助教授で全国的な知的ネットワーク「WINWIN」を主宰する五十 嵐伸吾さんのプロデュースですから、そのテーマが「起業立国: "ベンチャーハ ビタット"創生のための処方箋」とふるっていて、登壇するパネラーやゲストス ピーカーは、半端じゃない。それにしても九州大学は、凄い人をスカウトしたも んだ〜。


 メーンゲストは、日本でベンチャーがなぜ育たないかを解説し具体的な処方を 提言した「起業特区で日本経済の復活を!」(西岡幸一氏訳、日本経済新聞社) の著者でスタンフォード大学コンピューターサイエンス学科名誉教授のエドワー ド・A・ファイゲンバウムさん、その共著者のボストン・コンサルティング・グ ループ社員で京都府のベンチャー育成アドバイザーのディビッド・J・ブルナー さんでした。


 お二人が基調講演で交互に立って起業環境を問う「日本の課題」触れ、その処 方を巡って2つのシンポジウムを展開し、再びファイゲンバウムさんらが全体を 総括する‐というプログラムでした。いやあ、緻密な五十嵐さんらしく、事前の 準備が行き届いていて、段取りのよい進行でした。やや、時間の割には、超大物 を盛り込みすぎたかなあ〜。


 その五十嵐さん、大手銀行から九州大学に転籍し、8月には大学の承認を得て (株)トランスサイエンス上席執行役員をも兼務してその任に就いていましたか ら、大学とベンチャーの2足の草鞋です。そのほか、ざっといっぱい役割をにな っていらっしゃるから、「さぞ、お疲れかなあ」と思いきや、普段若い学生と接 しているせいか、溌剌として爽やかな印象すら与えていました。


 モデレーター役の五十嵐さんが2つのシンポでテーマとした課題は、その本が 浮き彫りにしていた課題をベースに全部で5つ。「シンポ処方箋1」では、「日 本の起業家の目標設定が低い」、「インマチュア(未成熟)なベンチャーキャピ タル」の2項目。


 講演に登壇したブルナーさん、そして元NEC研究員でスタンフォード大学理学 部招待研究員を経て米国CYMER社プロジェクトマネージャーの経験があるサ イバーレーザー(株)代表取締役の関田仁志さん、渋谷をベンチャーハビタット と名づけて有機的なパートナーシップベンチャー支援を展開し、NPO法人ET IC理事で数々の日本のベンチャー支援機関の委員を務める(株)サンブリッジ 社長兼グループCEOのアレン・マイナーさん、それにイエール経営大学院でM BA取得後、サンマイクロシステム米国本社に入り、11年ぶりに昨年帰国した 三菱UFJキャピタル(株)テクノロジーベンチャー投資担当執行役員の森徹也 さん。シリコンバレーをモデルに論を進めながらもシリコンバレー信仰一辺倒で はないところが見識で、日米両国にまたがる現場からの貴重な体験談は、参考に なりました。


 「シンポ処方箋2」では「新興企業の深刻な人材不足」、「大企業・自治体の ベンチャー調達」、「成功や失敗の場が少ない日本」の3つを、リクルートで管 理職、幹部人材担当のコンサルとして500人以上の紹介実績をもって独立したト ランスサイエンスキャリア(株)代表取締役の三井浩さん、日米複数のハイテク 系会社や各種団体のアドバイザーを務め、シリコンバレーに拠点を置く戦略コン サルティングのファースト・コンパス・グループLLCでゼネラルパートナー役 に就く外村仁さん。


 昨年日本初の株式会社「デジタルハリウッド大学院」を開学し、起業家育成に も力を入れるデジハリ学校長・デジタルハリウッド大学長・デジタルハリウッド 大学院学長の杉山知之さん、経済同友会副代表幹事で起業フォーラムの重鎮、19 89年11月フューチャーシステムコンサルティングを設立し代表取締役社長の金丸 恭文さん、そして、大学発ベンチャー1000社構想の政策責任者のひとりでベンチ ャービジネス振興に精通した経済産業省大臣官房総務課長の石黒憲彦さん、まあ、 ご存知の通りデジタルニューディール(DND)の提唱者で、好評のDND連載 企画「志本主義のススメ」の初回から第6回に渡って、主にシリコンバレーモデ ルの本質とされる、「ソフトな人的ネットワーク」に言及していますから、大変 参考になります。ここでちょっとDNDのCM、


 本日は、石黒さんの連載32回目をアップしました。
 いやあ、やはりこう書き綴って、パネラーのキャリアを読み返してみても、み んなインターナショナルで、クールで、そしてなによりベンチャラスです。多く が40代というもの頼もしい。きっとこういう人財山脈が日本の新しい時代を築き 上げていくに違いない。


 壇上のやり取りは、関田さんがベンチャーキャピタルの属性に触れて、「モノ をいうキャピタル」、「まかせるキャピタル」、「ファンクションが高いキャピ タル」、「金を出すだけのキャピタル」と分類し、その是非を体験的に紹介して いました。「いま浦島」と自らを評した三菱UFJキャピタルの森さんは、投資 家の立場から見て「日本の環境の変化には驚きを禁じえません、いま素晴らしい チャンス」と語り、金丸さんは「起業環境は大きく変った。特にソフトウエアビ ジネスにもお金が入るようになった」と、35歳で起業した16、17年前の当時を思 い返していました。


 演目最後の総括でファイゲンバウムさんは、冒頭「こんなにたくさんノートを 取りました」と、まずシンポジウムの充実ぶりを伝えて、「日本の起業モデルが 生まれつつあり、変りつつある。日本のベンチャーキャピタルは財務サポートし かしていない‐という指摘もあり、疑問もあるが、そのトレンドは加速が必要で ある」と指摘し、「新興企業が重要で、新興企業の革新性が注目されるべきだが、 そうとは認識されていない」と注文をつけていました。


 ファイゲンバウムさんは、シリコンバレーの数多くのベンチャー企業を設立す る起業家であり、人工知能の第一人者。その博識と数々の功績はよく知られてい るところです。今月8日には大阪電気通信大学で講演し、6月にも来日していまし た。野太く響く声は、おだやかで、その眼差しは優しい。


 最も印象的な言葉は、ファイゲンバウムさんだったか、ブルナーさんでしたか、 基調講演の「Wealth Creation」のところで、「シリコンバレーで起業に成功 し、多くのリターンを得て大学にも援助しています、そういうけれど、決して起 業はお金儲けでやっているのではありません」と言って、次に出た言葉が、「B estJob」でした。楽しいから、面白いから仕事をするんです〜という起業家の マインドは、何かビジネスの初心、それを呼び起こさせてくれました。


 「起業立国」実現に向けた看板役者の揃い踏みは、壮観でした。音質もいい座 席もいい、主催の東京21Cクラブが用意した会場は快適でした。そして、何よ り、それを実現した五十嵐伸吾さんの、地道で確かな信頼のネットワーク「WI NWIN」に脱帽でした。お疲れ様〜。あれっ、やっぱ、う〜む。これに変る労 わりの言葉が、残念ながら見つからない。Good Job〜。


 さてさて。年末も残すところも2週間余り。動いて、聴いて、そして書き綴っ て、迷いのない気分のいい1年でした。皆様、毎度、長〜いメルマガに数々の感 想や励ましをお寄せいただきまして、心から御礼申し上げます。


 これもひとえに、私の努力の賜物?(笑い)、いえいえ、皆様の多くの励まし、 反響のお陰です。といっても、ご推察の通り、これもえらい作業でして面白がっ てやらないと続きません。


 ある時、原稿用紙に換算しましたら、10枚にもなって、ありゃ、こんなにいっ ぱい書いて、読む側の立場にならなきゃ、呆れ返られる、と肝を冷やした事が何 度もあった次第です。あれを取り上げて、これを端折れば、書かれなかった人は、 きっと悲しい気持ちになって身投げでもされたらたまらない‐とつい親心が芽生 えて、あれもこれもって考えあぐねるとなかなか始まらないし、加筆したり削っ たりしてみては、なかなか、終わらない。


 それで、毎回、時間が経つもの忘れて夢中で端末を打っていたら、いつの間に か右手の指のつけ根にシコリが育っていました。ペンだこならぬ、パソコンだこ のようです。触って、気にしてばかりいてもしょうがないんで、酢でしめて食っ てやろうかとも考えています(笑い)。


 次回。今年の締めは、メルマガで配信した産学連携情約270本から集計したセ ミナー、シンポジウムの登壇回数の多いスピーカーのランキング。名付けて、D ND限定ベスト・スピーカー・オブ・ザ・イヤーを発表します。また、DND大 学発ベンチャー10大ニュースも準備しています。どうぞ、ご期待ください。




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