◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2005/05/18 http://dndi.jp/

秋葉原変貌、産学連携拠点に名乗り【街・人・技術をプロデュース】

DND事務局の出口です。あれよ、あれよという間にその姿を現したと思ってい たら、一気に全容を浮かび上がらせてしまっていました。完璧という言葉は、そ うめったなことでは使ってはいけないのですが、コンセプト通りの惚れ惚れする ような陣容が整っていました。


大きく変貌を遂げる、日本最大の電気街、東京・秋葉原を舞台に、街を、人を、 そして技術をプロデュースする手腕には、かねてから期待し、理解をもしていま したが、ここまでやれたら、あとは、自走式に回転するので時を待って、次の方 向を示していく、その継続的な段取りと、各フェーズごとのイメージが仕上がっ ているようで、その一端を聞くと、ワクワクしてきます。


妹尾堅一郎さん、姓は、せのお、と呼びます。東京大学先端科学技術研究セン ターの特任教授で、知財マネージメントやMOTのディレクターなど産学連携を中 心に数々のプロジェクトを手がけてきた実績から、今度は、ちょっと大き目の再 開発と産学連携がテーマのプロジェクトを推進してきて、ようやくスタート台に ついたところのようでした。


JR秋葉原駅の電気街口を出ると、見上げるよう高層ビルが突如、立ち上がって いました。地上31階、地下2階、延べ床面積が5万平方メートル、この3月31日に 開業した「秋葉原ダイビル」です。兼ねてからの約束通り、昨日17日夕刻、時間 ピタリにその1階のエレベーターホールに行きかけると、反対側から妹尾さんが、 「いやぁ〜」と片手を挙げて、あのいつものやさしい眼差しを向けてくれていま した。グッドタイミングでした。ほぼ、2年ぶりの再会でした。


その5階、12人から140人収容までの大小12室ある会議室ゾーンの一角に広々と した産学交流ゾーン、いわゆる入居者限定のサロンに案内されました。聞くと、 31階の入居は、16階から最上階までのフロアーに日立製作所が入り、以下6階か ら15階の10フロアーが、「秋葉原クロスフィールド」、妹尾さんが仕掛ける産学 連携機能の集積拠点となっていました。


産学官の連携のモデルを地域に根ざした形で、仕込んで、呼び込んで、展開す る‐という民間主導の試みは、頼もしい。地域活性化への起爆剤としての役割を 担って、なんとしても、その実を挙げられることを期待しています。そう、思っ ていたら、妹尾さん、ニヤッと笑みを浮かべて、「地域にはそれぞれ、その特色 がありますから、産学連携の地域への貢献といっても、その目指すものはさまざ まだと思います。しかし、ここでは、目指すコンセプト通りの参加者の賛同を得 られました」といい、その表情に自信を見せていました。


用意された「産学連携機能」のリーフレットを開き、秋葉原クロスフィールド への入居一覧を見ながら説明を受けました。最先端技術を創出する産業技術総合 研究所がさっそく、2フロアーに100人余りの研究者らを送り込んでおり、筑波 大学、東京大学、東京電気大学、徳島大学、明治大学、人間総合科学大学という 産学連携に動きのいい大学が参加していました。大学発ベンチャーの成果でも躍 進の筑波大学は、社会人向け法科大学院開設や産業界との連携を推進する拠点と して、東京大学は、大学院情報理工学系研究科の創造情報学専攻の新設による戦 略的情報技術の研究などを目指し、徳島大学は、IT分野や、シーズの芽が大きく 出始めているバイオ関連分野の技術移転を展開するサテライトとして、東京電気 大学は、大学発ベンチャーのオフィスの展開として、明治大学は、IT系の産学連 携や文理融合型の産学連携拠点として、人間総合科学大学は、IT技術と新たな科 学技術領域の開拓のためなどを意図して‥と、それぞれの入居の考えを読むと、 共通のテーマは、IT技術や先端技術という分野に集約されそうです。秋葉原の特 性にピッタリです。この辺が、プロデュサーの仕掛けの冴え、とでもいうのかも しれません。


極め付けは、最北端、稚内北星学園と公立はこだて未来大学の入居、それにデ ジハリこと「デジタルハリウッド大学」と飛びっきり、注目のスター学長がい る大学を揃えたところです。


情報メディア学部を日本で初めて設置した稚内北星学園の学長、丸山不二夫さ んは、ネットワーク論をベースにした「Java教育の第一人者」との評価が高く、 情報メディアを単なるツールとしてではなく、「魅力ある人間たちによって、最 先端の情報技術が担われ、その土台の上に平和で繁栄した社会を」と、その生き 方へのコミットをも教育の理念に掲げていて、その趣旨は、分かりやすく新鮮です。


また、日本の人工知能、そのユビキタスコンピューティングの先駆けといえば、 公立はこだて未来大学学長の中島秀之さん、スタイリストでクール、もう評判の 学長を慕って、何人もの教官があちこちから集まってきているーというのは、以 前から聞き及んでいました。HP上で、「これまで誰も思いつかなかったアッと驚 かれる応用により、地域産業の活性化を図りたい」という熱意のメッセージは、 その夜景に似て100万ドル以上の価値がありそうです。地元の人にどれほどの励 ましになることでしょう。


そして、ゲームソフト、DVD,アニメ、映画などのデジタルコンテンツ産業、い わゆる世界最強のコンテンツを支える人材教育の「デジタルハリウッド大学」、株 式会社による大学経営への参入で話題となっていました。独特の風貌で、やさし い人柄の杉山知之学長が有名です。今月29日は、ここの秋葉原メインキャンパス を開放して、杉山学長と学生のトークショー、卒業生の作品の一挙上映などのイ ベントが予定されています。


動いてきましたね。妹尾さんの、自前のネットワークと人脈をフル活動した勧 誘作戦が奏功したようです。もうひとり、忘れてはいけないのは、「まだ、入居 はOKでしょうか」と、妹尾さんのお誘いをうけて参加した、村口和孝さんです。


そうです、経済産業省の論客のひとりで、いま、ホットな燃料電池の普及、推 進に懸命な安藤晴彦さんから紹介いただいて、小生も入門経験のある村口道場主 宰(注:ベンチャーキャピタリスト養成セミナーの事で、安藤さんが名づけ親)で、 独立系ハンズ・オン型ベンチャーキャピタル「日本テクノロジーパートナーズ投 資事業有限会社」の代表です。徳島出身でしたから、今月26日、27日に開催される、産学連携学会の徳島大会での事前打ち合わせに、徳島大学にでかけると、村口さんの話題で持ちきりでした。


いやはや、さらに、日本弁理士会、 (株)サイコム・インターナショナル、施 工の鹿島建設、ぷらっとホーム(株)なども入居、多彩な陣容を誇っているようで す。目の付け所が違います。


どうです?と、念を押して、ひとつひとつの入居打診の経緯を説明しながら、 「秋葉原は、理工系の心の故郷ですから、ここ全体を先端技術のテーマパークに 進化しつつあります。産学連携機能の秋葉原クロスフィールドは、豊かで、多く の可能性を秘めていることが分かりますでしょう、とくに入居メンバーの顔ぶれ を見れば‥」というのは、説得力があります。第1は、それぞれのミッションを しっかり持って実践する、第2に町内会、お隣同士の連携で、そして、究極の狙 いは、街全体、電気街へのトータルな貢献‐ということになります、と近い将来 へのイメージをも語っていました。


もともとは、東京都の青果市場の跡地、その利用でしたから、それに引っ掛け て、妹尾さんは、筑波大学の、あるいは全国の大学や研究機関からの先端技術の 市場、「技術の産直」をやりたい、といい、9月下旬には、「ショーケースアキ バ2005」(仮称)の定期市を開く予定という。面白いなあ〜。


可能性が広がる秋葉原。来年3月には、隣接の「秋葉原UDX」が開業するなど順 次、2007年春までに10棟のビルが完成する予定です。見てください、と妹尾さん に促されてのぞくと、眼下に、拡幅工事中の神田明神下通りが東西に伸び、東は 昭和通りに抜け、西は文字通り神田明神、そして東大正門と続くらしい。その南 西は、神田川にかかる万世橋周辺、肉の万世発祥の地であり、神田やぶそばがあ り、漱石も通った洋食屋、松栄亭も近い。


下町風情の歴史と伝統、そして、周辺にざっと約600店の電気店が並び、若者、 外国人旅行客らがどっと押し寄せる、という特異な事情を抱えているエリアです が、今年8月24日には、つくばエクスプレスの開通が予定されています。筑波学 園都市と秋葉原が直通で結ばれ、その時間はわずか45分というから、また新たな 変化が加速しそうです。当分、目が離せません。


追伸:文藝春秋6月号で、作家C.Wニコルさんが、「マルタ島と日本海軍」というコラムを書いていましたが、2月のメルマガですでに読んでいたので、嬉しい気分でした‐と、RKB毎日放送の倉富清文さんから、知らせていただきました。2月のメルマガでは【続マルタ:駆逐艦「榊」の真実】を配信していました。合わせて、御覧ください。


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