◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2005/03/02 http://dndi.jp/

二人三脚の全国コーディネータネットワーク会議

DND事務局の出口です。いやぁ〜夢中なくらい懸命にひた走る、江原秀敏さん、 そして傍にいて伴走の上原健一さん。表の顔が江原さんなら、裏のその役割が上 原さんとなるのでしょうか?息がピタリあっていながら、程よい距離感を保って いらっしゃるから、べたついた感じがなく、バランスがいい。充分に、それぞれ の持ち味が発揮されていました。


全国コーディネータネットワーク会議、その記念すべき第1回の集まりが28 日、東京・船堀のコラボ産学官で開かれていました。ざっと400人近い参加は、 う〜む、凄い。同会議の世話人代表、大分大学ベンチャー・ビジネス・ラボラト リー施設長の瀧田祐作さんは、全国の産学官連携に携わるコーディネータらが、 省庁、機関を超えて集まり、「研究を産業に結びつける触媒の共通の役割を認識 し、確かなネットワークを広げて、優秀なコーディネータを輩出していく」との 趣旨を語っていました。


いやはや、コーディネータといっても分野は広く多岐にわたっています。参加 者名簿からいくつかを拾ってみると、(社)発明協会や都道府県の産業振興機構、 TLO機関、それに共催団体の(独)科学技術振興機構などに所属する「特許流通ア ドバイザー」、「技術移転プランナー」、中には単に「コーディネータ」ら70 数人、「科学技術コーディネータ」60人弱、産学連携の旗振り役を担っている 全国の大学の地域共同研究センターや知的財産本部、融合センターなどに所属す る「産学官連携コーディネータ」40数人、北海道から沖縄まで、特に地方から の参加が多く目立っていました。民間企業からは30から40人でしょか、もう 少し参加があってもいいかもしれません。


会議は、午前、午後の昼を挟んで4時間は、現場からのレポートと題して、1 4人が登壇していました。前半は、産学官連携コーディネータの三重大学の河野 廉さんら3人、文部科学省の知的クラスター創成事業、都市エリア産学官連携促 進事業、科学技術振興機構などに携わる科学技術コーディネータの東保喜八郎さ ん(富山・高岡クラスター)ら5人、後半は特許流通アドバイザーの浜辺隆文さん ら3人、(独)産業技術総合研究所の知的財産コーディネータの甲田壽男さん、電 気通信大学の小川俊也さん、どん尻が柔和な帯広畜産大学の田中一郎さんら産学 連携コーディネータの面々でした。田中さんについては後ほど触れますが、もう 地域に帰れば、評判の実力者ばかりで、その報告といっても飛びっきり上等の先 進的な成果を披瀝していました。全国で1000人規模といわれるコーディネー タ、そのひとりひとりの履歴を覗くと、そのキャリアの輝かしさは図抜けていま した。多士多彩、科学技術立国・日本の底力を感じます。


トップバッターの河野さん、三重大学生物資源学科研究科修了後、(株)ツムラ 入社、名古屋大学医学研究科を経てコロラド州立大学微生物学ポスドク、三重大 学医学部非常勤講師など歴任、平成14年には大学発ベンチャー「バイオコント ロール研究所」を設立し、代表取締役社長へ。


三重大学での産学連携活動は三重TLOとの共同研究の実施、コンソーシアムの 形成のほか、地元自治体や金融機関との社会連携活動も活発に進めているようで す。大学発ベンチャー支援も重要で、学内のインキュベータの立ち上げ、啓蒙、 設立支援、販売支援、そしてPRまで「ワンストップ支援を心がけています」とそ の活動の一端を紹介していました。


河野さんに続く、千葉大学の野崎努さんは、昨年4月から知的財産本部研究推 進部長、前職は川崎製鉄の役員でした。科学技術コーディネータのなかでもこの 人は、紹介しなくてはいけません、丹野和夫さん。(財)いわて産業振興センター 研究開発センター長で、代表科学技術コーディネータの立場ですが、大学の研究 成果を発掘し、育成し、実用化につなげていく先駆的な仕事に従事してきました。 東北大学卒後、旧通産省へ。通産省工業技術院東京工業試験所、日立製作所日立 研究所などを経て岩手大学工学部教授、同工学部長を歴任しており、「県内外の 官、大学、地方拠点のネットワーク構築を心がけており、相互のメリットになる よう運用してきました」と話していました。


人に歴史あり‥ですね。全部紹介できないのが残念です。圧倒されてしまいま した。大学から官僚、そして民間、さらに‥いろんな経験がその人の財産となり、 その人の表情に深みを加えていくのかもしれません。


急な会議が入って、午後からの途中参加という負い目もあって、気の弱いのも 手伝ってか、会場の隅で目立たないようにしていたんですが、後ろから横から、 肩をたたかれ、声をかけられ、名刺を差し出されて‥それほど懐かしく、親しい 人が大勢訪れていました。


そのコーディネータ会議をコーディネートした中心人物が、冒頭に書きまし た発起人の江原さんと上原さんでした。江原さんは、コラボ産学官の事務局長で 筑波研究学園都市エリアの科学技術コーディネータ、上原さんはつくばインキュ ベーションラボの取締役で、インキュベーション・マネージャーという立場にあ ります。


午後の目玉のパネルディスカッション「恒常的ネットワークづくりをどうする か?」の部では、江原さんが座長、上原さんが副座長としてマイクを握っていま した。


ぼんやり聞いていると、江原さんがこの会議の設立の経緯を語り出していまし た。江原さんの持ち時間は10分、いやあ、彼には酷でした。その深い思いは、 丸一日かかっても全部は語りきれないーということが痛いほどわかるからです。 各種コーディネータを全国に配置してはいるが、「質」、「量」とも不足してい て、各々の立場から成功と失敗の事例を学び、スキルアップの場が、「どうして も必要でした」と熱っぽい。


まず手がけたのが2003年10月14日開催の「コーディネータネットワー ク推進つくば会議」でした。江原さんとの出会いは、その夏でした。その会議へ の協力をデジタルニューディール事業の一環として要請をうけて快諾し、共催事 業という形式を取っていたのですが、まさか、その当日、江原さんからその辺の 経緯について紹介されるとは思いも寄らないことで、照れもし、驚きもし、正直 少々いい気分に浸っていました。


つくば会議の様子は、DNDメルマガVOL52「コーディネータの人間力」(2003年1 0月15号)に掲載していました。そして、江原さんは、翌年の5月、コラボ産学 官を電気通信大学TLOの(株)キャンパスクリエイトの安田耕平社長らと立ち上げ、 朝日信用金庫の塚原和郎理事長の善意でその会場を拠点として幅広く活用してい るようです。コラボ産学官の設立の経緯は、やはりDNDメルマガVOL80「つくば人 脈と青木塾」(2004年5月19日号)で取り上げました。


しかし、振り返れば、江原さんの歴史をDNDはきちっと抑えているんですね。 今度で3回目です。そして、あまり目立たないのですが、傍に付かず離れずの上 原さん、常に裏方で江原さんをサポートしているように感じました。


会場に任意の団体から昨年11月にNPO法人の認証をとり、この4月から本 格活動に入る産学連携学会会長で九州大学教授の湯本長伯さん、同理事で学会の 論客のひとりで京都大学教授の澤田芳郎さんらも顔を見せていました。


小生も同学会の理事の立場から、積極的なコラボ産学官との連携を関係のMLで 訴えましたら、流石は湯本会長です。その辺は抜け目がないようで、この5月2 6、27日は、徳島県で予定している第3回の産学連携学会大会の運営などの理 事会を19日にコラボ産学官の会場で開き、各種連携を意図しているようです。


同夜は先約があって交流会は失礼しましたが、ワシントンからワシントン・ス トラテジィ・グループ代表の今村勝征さんがオフィスに、3次元グラフィックス の(株)リアルタイム・グラフィックス社長、小泉幸一さん、大学の研究室の各種 解析ソフトを手がけるサイバネットシステム(株)取締役の今村達さんを伴ってき てくれていました。そして、最後になっちゃいましたが、そこに産学官連携コー ディネータとして最後に講演した田中一郎さんが、遅れて駆けつけてくれました。


田中さんは、帯広畜産大学第1号の大学発ベンチャー「ニュテックス株式会 社」を設立、コーディネータの傍ら、同社の創業メンバーで専務を兼ねていまし た。「ようやく、今期、目標の2300万円を突破しましたが、これからです」 と、話していました。「どうしょうか?」の相談を受けた際に、「まず、やって みて!」と背中を押した責任を感じていますので、この夏は、帯広での何かしら の企画を提案しましたら、同席の今村さんや小泉さんらは、「是非、ボランティ アでも動きますよ」と嬉しい協力を申し入れてくれていました。


大学発ベンチャー回り起業支援、創業サポートが一巡して、次に販売支援、人 材協力へと進んでいることは確かで、さらにネットワークといっても顔をあわせ て挨拶する友好的な交流関係から、もう一歩高い次元の連携が求められているよ うな気がしてなりません。 


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