◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2004/ 5/12 http://dndi.jp/

ウィン・ラスベガスに賭ける起業家マインド

DND事務局の出口です。日常に、わくわくするような対象があって、それにいくらかでもコミットしていれば、たとえ非日常的な困難に忙殺されようと、その日々の充実感が、実は、幸せというものなのかもしれません。「起業家」の周辺に、星の数ほどのわくわく感が飛び交って、ドキドキするほどの話題が多い。


今回は、悲しいくらいに俗っぽいあの「未納」の風聞に心を奪われずに、話の舞台を究極のエンターテインメントを演出する「ラスベガス」へトリップし、日米の起業家二人の夢実現へのビッグな挑戦をご紹介します。


GWの2日夜、フジTVの画面は、伝説の王者、モハメッド・アリ、マイク・タイソンの姿を大写しにしていました。格闘技・K1のラスベガス2004の特番。DNDと兄弟関係にあるドリームゲートプロジェクトの看板、あのボブ・サップも気炎を吐いていましたから、番組の90分は釘付け状態でした。


すごいなあ〜ラスベガスのそれも超一流のホテル・ベラッジオで、日本の番組が会場を超満員にするんだあ、と感心し、どんな仕掛けで、そのようなことが実現するんだろうか、フジTVの事業局長でエグゼクティブプロデューサーだったダン・吉田さんの顔が浮かんだりして‥。リング床の中央に、たぶんスポンサーなのでしょう、鳥が羽を広げて飛翔する「アルゼ」のロゴ。ヒントはそこにありました。


連休明けに、知り合いの「アルゼ」執行役員でスレンダーな及川麻子さんにメールをいれましたら、間髪をいれず返信があり、メールの後を追うように続いて、一冊の本が届きました。及川さんのその辺のベンチャラスで、素早い対応には、いつも頭が下がります。


「ラスベガス カジノホテル〜最も新しい挑戦」(集英社インターナショナル刊)。上之二郎さんの編集による、アルゼ株式会社の岡田和生氏とスティーブ・ウィン氏の対談をまとめたものでした。


一読して、ウム〜。この本には、これまでの自身の経験では捉えきれない、壮大で未知なるドラマが展開されていました。まさに、「最も新しい挑戦」なのかもしれません。そのスケールと散りばめられた極め技、徹底した顧客満足への研究とこだわり、後述しますが、参画する人材群、プロ集団といってもそれも半端じゃない。直感的に、「世界の話題を独占するのも時間の問題」と確信しました。NHKの人気番組・プロジェクトXの題材になるでしょうし、並みの小説より面白い。


さて、岡田氏は、25歳でアミューズメント・ゲーム機の製造販売会社を設立し、パチスロなどアミューズメント産業大手メーカーの社長であり、2000年の長者番付第1位の起業家ですーと、書くと、「お金があるんだ」と思い込む日本人の習性は、気をつけなければいけません(笑い)。数年前、新聞の取材でフジTVのアナウンサーと一緒に取材したことがありました。


その時は「まだ、話せませんが‥」と言って具体的な構想には触れませんでしたが、そこは記者の臭覚?で、「アメリカ進出、それと世界戦略、究極のエンターテインメントを追求し演出する?」とさぐりを入れると、一瞬、表情が緩み、「こいつ、なかなか鋭い」と思ったかどうかは分かりませんが、ズバリ、その全容がこの一冊に集約されていました。


ラスベガスのメインストリート。212エーカーの広大な敷地というから、ベガス最後の空間かも知れない。そこに約26億ドル(3120億円)の巨費を投じた世界NO・1のリゾートホテル&カジノを建設し、2005年4月28日にオープン予定。ホテル内に人造湖を作り、ゴルフ場を付設し、劇場は卵型で宙から降りて開くー詳細は、たぶん、今年の秋口あたりから、各メディア媒体でいっぱい露出されると思いますので控えます、というより、まだ厚いベールに包まれています。そのミステリヤスな扱いが、このプロジェクトの一連の演出なのかもしれません。ホテル名は、「ウィン・ラスベガス」。アルゼが出資しており、岡田氏がその経営に参画しています。


ホテルのコンセプトについて、「これまでにない、まったく新しい挑戦である」と触れているのは、そうです、岡田氏の対談相手を務めたウィン(Wynn)氏です。全米というより、世界的に有名な方で、ラスベガスが生んだ伝説の人物です。名のWynnは、Winに通じているのかもしれません。


3年前の6月に、当時の社長から「顧客第一主義を学べ」との宿題をもらって、ラスベガスにいきました。その時のレポートをいま、手元に置いて、その一部なぞると、ラスベガスは、砂漠のなかのオアシスの意。年間3381万人の訪問客、74%がリピーター、毎月5000人の人口増、ホテル稼働率92・1%―というから衝撃です。今日のベガスの発展に尽力した人物は3人、1964年にホテル・フラミンゴを建設したマフィアのボス、ベンジャミン・シーゲル、それらマフィアを追放した大富豪のハワード・ヒューズ、そして、エンターテインメント産業を具現化したホテル王、スティーブ・ウィン〜。そうです、そのウィン氏です。


K1の舞台となった「ベラッジオ」、「ミラージュ」、「トレージャー・アイランド」などのホテルを手がけるベガスの帝王、全米屈指の実業家で、1942年生れ、奇しくも岡田氏と同じ星の下に生れています。起業時期も25歳と奇遇です。本文中にウィン氏と岡田氏の親密な関係がたっぷりと語られています。


曰く。今は、お金も集められましたし、ホテルもオープンできます。ここまでくると簡単だったように見えますけれど、非常に困難な、敏感なプロセスがありました。資金調達よりも人材のところですーと述懐しています。


コンベンション担当、フード担当、ビバレッジ担当、ギャンブリング担当、人事担当、財務担当〜岡田氏が、ウィン氏について、「彼は優れた人材を集めるという点においても間違いなく天下一品の人間的な魅力を備えています。大変に率直で、裏表がない。人を裏切らない。これが超一流の人を惹きつけるんだと思います」といい、ウィン氏は岡田氏について「岡田さんの目とか、ソフトな表情、物腰とか、そうした彼のスタイルというものが私をすごく居心地よく、また安心させてくれました。信じられる存在ですし、実際、彼と一緒にいると安全だと感じます」とやはり、率直に語っています。


共感。夢。志。仲間〜成功する起業家の周辺には、いつもそんな言葉がついてきます。会社を中心に考えるのか、自分の夢を実現するために会社を育てるのか?この違いですーとの岡田氏のさりげないつぶやきに、深い人生の哲学を感じます。


記憶を記録に!DNDメディア塾
http://dndi.jp/media/index.html

このコラムへのご意見や、感想は以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。
DND(デジタル ニューディール事務局)メルマガ担当 dndmail@dndi.jp