◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2004/ 4/21 http://dndi.jp/

プロジェクトXからの教訓

DND事務局の出口です。TVに映し出された1枚のスナップ。平成4年9月、3人の幼いお子さんとご夫人が、7日間のシャトル飛行を無事終えた日本人初の宇宙飛行士、毛利衛さんを出迎えていました。その場面での田口トモロヲさんのナレーションには、胸を打たれました。


毛利さんが帰還してすぐ、夫人に手渡したのは、指輪でした。12年前には買えなかった結婚指輪。二人をつなぐその指輪が宇宙を飛行していたわけです。


NHKのプロジェクトX。昨日の放映は、「毛利飛行士 衝撃の危機脱出」〜技術者たちの総力戦〜。主題は、科学技術創造立国へ向かう日本の将来を託された毛利さんと地上の技術者らを襲った衝撃的な事態回避のドラマですが、総括プロデューサー、今井彰さん特有の、とでもいうのでしょうか、随所に「家族愛」が、それもとびきり上等の秘話が散りばめられていました。


今回のメルマガは、昨日まで別な原稿を準備していましたが、その番組一本でボツに。急きょ、思いつくまま、昨日の感動を引きずりながら、パソコンに向かっています。


宇宙飛行士の選抜試験。「あなたの夢でしょ、やりなさいよ」とポンと背中を押してくれた夫人、12人から3人に絞り込む最終選考での無重力テスト、目隠しして10分間の回転椅子−そうそう、NHK朝の連続テレビ小説「まんてん」で、タレントの藤井隆さんがその場面を好演していました。


椅子が回転しだすと、たちまち頭がぐらついて脈拍が通常の倍に跳ね上がるらしい。その時、毛利さんが即座にひらめいたのが、夫人の出産に立ち会った際の呼吸法、ラマーズ法。口をすぼめて数回息を吐き、そして息を吸う。気持ちがそれで楽になった―と述懐していました。


それは、トロンの坂村健さんと同様に、やはり旧ソ連の初の有人飛行を映し出すテレビ画面のそばで、毛利少年を写したモノクロ写真は、取材のネタ発掘としては、出色でした。その人の人生に関わる重要な歴史的ショットかもしれません。たぶん、生家の北海道余市の自宅でしょうか。


スタジオ風景。開発チームの責任者で、元石川島播磨重工業の技術者は、ビズ一本のコンマ単位の狂いも許されない精度を求められるとし、ひとりひとりが全力をつくす−ことの重要性を強調していました。その彼は、予算超過の指摘をうけてリーダーを解任されていました。毛利さん、番組中に、いまここで初めて知りました‐と話していました。


教訓1.壮大なプロジェクトに欠かせないチーム参加者のレベルとマインド、たったひとりの小さなミスでさえ、取り返しのつかない重大な事故につながりかねない。規模の大小は別として、プロジェクトの成否は、案外そんなところにあるのかもしれません。


教訓2.ないがしろにできない家庭、そして妻、いわゆる伴侶の存在。プロジェクトXにはこれまで随分と裏舞台で支える妻をさりげなく取り上げてきていますね。それらが強く心に響きます。


知人から最近、「男をやめる」(ワニブックス刊)が送られてきました。タイトルの意外性から、読み進めるうちに、著者の宗像恒次さん、筑波大学大学院教授で、ヘルスカウンセリング学会の会長らしく、本分中に「お父さんに必要なのは愛のチカラ」の項は、考えさせられました。


以下は、そこからの引用です。ガン細胞は、毎日、2000〜3000個つくられる、このガン細胞を破壊するのが、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)だ。NK細胞は外から侵入するウイルスや細菌を破壊すると同時に、体内で突然変異するガン細胞を破壊する役割がある。40歳を過ぎるところから、徐々に免疫力が低下し、NK細胞がガン細胞を破壊しきれない‐と言う状況が起きてくる‐と前置きして、宗像さんらの調査では、「自己イメージがいい人」、「自己価値観の高い人」、「自信がある人」ほど、NK細胞が活発になる傾向性がある、といい、「自分の家族関係は良好だ」と認知している人、つまり、家族を愛し、家族に愛されていると感じている人もN K細胞の活性が高い‐と指摘しています。


そうです。愛はガンをも克服する‐というわけです。


もう一冊。これは、すでに私にとって古典の部類になりますが、ずっとそばから離さない、困った時、理不尽な人事で眠られない時などの心のビタミンみたいな本です。城山三郎さんの「打たれ強く生きる」(日本経済新聞社刊)。


日米ビジネスマンの精神的破滅を数多く見てきたというニューヨークの精神科医、石塚幸雄さんの話を紹介して、破滅に至らぬためには「3本の柱」を太くしておく必要がある‐という。


ひとつは、「インティマシー」。家族とか、友人とか、親しい人々との付き合いであり、「親密な時間」を必要としているのは、子供だけではない。日本人はとくに夫婦関係が弱く、逆に会社での人間関係が濃密になってしまうから、人事に過度に敏感になり、これが危険な傾向だという。


二つ目は、「セルフ」。自分自身だけの世界、信仰とか読書とか思索とか、趣味の世界をいう。そして3本目は、「アチーブメント」。仕事とか、はっきりした目標や段階のある趣味の世界である‐と説明し、3本の柱がバランスよく太くなって、その上に乗っていれば、1本の柱になにか異常が起ころうと、あとの2本で支えてくくれる。打たれ強さも、そういうところからでてくるのではないか‐う〜む。


起業。新事務所。この4月から、そばに愚妻。家庭から職場、職場から家庭、24時間フルタイムの「連携」。NK細胞の活性化を節に祈りたい!


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