◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2004/ 1/21 http://dndi.jp

産学連携花盛り

DND事務局の出口です。山の幸、海の幸そして人の幸…。舞台は九州・大分県。先週のメルマガの続きから、始めますね。


15日開催の「九州地域産学連携シンポジウム」は、大分市の大分全日空ホテルの会場にざっと500人。九州経済産業局長の鈴木正徳さん、大分大学長の山中巌さん、それに大分県知事の広瀬勝貞さんら主催の面々は、よほど手応えがあったのか、終始満面の笑顔で饒舌でした。


この日のメインは、業績著しいキヤノン(株)社長の御手洗冨士夫さん、地元出身とあって、講演に力が入っていました。


タイトルは「日本の産業競争力復活に向けて」。プロンプターを駆使しての70分、一気に話し続けてトーンを上げ「近世で日本が成功した改革は明治維新、維新の志士を輩出した九州人としての気骨をもって協調して九州が21世紀の日本のモデルになろうー」と締めくくっていました。小柄ながら骨太。存在感がありました。


交流会。旬の関サバ、関アジ、豊後牛のローストビーフ、名物のだんご汁、地場の麦焼酎などの食材が並ぶ。冒頭、知事の広瀬さん、「地元特産、心を込めて用意いたしました」と、ゆっくりとかみしめるような挨拶の後に、「本日、もう一つ、うれしいニュースがあるんです−」と紹介したのが、御手洗さんとの立地協定への調印式のことでした。


講演のあと、お二方はさっと会場を出られて、県庁へ。そこで調印、そして記者会見に臨んだらしい。キヤノンが大分市岡地区にデジタルカメラの新工場を建設し、世界のデジカメ市場の中心にする−と御手洗さんが、その日の会見で表明したから、広瀬さん、地元経済の浮揚や雇用、税収増などの効果に加え、「そうなれば、デジカメ関連や精密関連の企業や研究機関が、その輪を広げ、まさに産業クラスターの形成に役立つ。明日の大分の希望につながる」と小さく細い目を、さらに細くして、「これは春から縁起がいい」とカッカと大笑していました。知事就任早々の走者一掃の3塁打でした。


今回のシンポで、気になった点を書きますね。産学官の代表者6人によるパネルディスカッションで、唯一ベンチャーの立場で参加した大阪のバイオベンチャー・クラスターテクノロジー社長の安達稔さんの指摘は、考えさせられました。


産学共同研究の現場からの体験的な問題提起なのですが、大学側が、知らないうちに見積もり取らないで、言い値で発注してしまう。特許の取得する際は、共有制が大事になるが、管理、保護のガード意識が大学側に欠如していて、危ない−などと産学連携の狭間における大学側の姿勢について、警告を発していました。


う〜む。確かにね。翌16日の朝刊には、タイミングよく、大学ばかりを狙って盗みに入っていた大阪市の男の逮捕、送検の記事がでていました。供述の裏付けがとれている被害だけで、97年から6年間で37都府県、東大、徳島大、鹿児島大など約60大学で200件余り、被害額は3700万円にも及んでいました。ご用心。安達さんの指摘が、現実の問題として急浮上しております。


九州から東京へ。その夜は、五十嵐伸吾さん主宰のWINWINのワークショップ。東京・丸の内と札幌の2会場をストリーミングで結ぶ、同時2元中継のトライ。猛吹雪の後の札幌から、サッポロバレーの産みの親、北海道大学教授の青木由直さんらの足跡と成果の報告、そして今後の課題についてのセッションは、規模は小さいけれど意義は大きい。これも参考になりました。が、西に東に、吹雪とJASのトラブルの合間を縫っての移動は、ロードオブザリング状態、破天の海をくぐるホバークラフトも上に下への大揺れで、拷問でした。楽あれば苦あり。


さ〜て。本日21日は、DND運営会議を午後15時から開催します。70名程度の参加です。ベンチャー5社から報告してもらいます。残念なのは、同時刻には、日本科学機器団体連合会(中堅企業1300社余り)の副会長の下平武さんが発起人となった「産学連携研究会」の設立準備会。ゲストとして呼ばれていたのですが…。下平さんによると、産側が連合して組織をつくり、大学側に求める産側の技術ニーズのデーターベースをつくって確かなマッチングを進めたい−という。75歳の時代を睨んだ挑戦は、同業の堀場雅夫さんからの後押しらしい。28日は下平さんとじっくり連携の調整を行います。


それとですね。やはり、本日、筑波大学の学内のシーズと企業のニーズをマッチングさせる会員制クラブ「筑波大学産学連携会」が発足します。発起人に三菱マテリアル相談役の秋元勇巳さん、電力中央研究所理事長の佐藤太英さん、国際科学振興財団会長の大竹美喜さんらが名を連ねています。動いていますね。


明日22日は、知財戦略や産学連携を意図した東京工業大学が産学連携推進本部を発足させ、その記念の講演会を開催します。テーマは「大学の知財戦略―産業界からの期待にどう応えるかー」。


大学が走り、産が動く。そして、産が走って大学が動く。連携から協働。こうした各地の動向から目が離せません。


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