◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2003/12/17 http://dndi.jp

ラストサムライ考

DND事務局の出口です。不思議な一年でした。あらかじめ、何かが、約束されていたような、それでいて、ひょんなきっかけが、それもたまたまが、重なり遭っただけかもしれないのだけれども‥偶然と必然。振り返ると、その人生の妙に、驚き、考えさせられることが、いっぱい詰まった年でした。


明日18日。大安吉日。この日に的を定めて、東京・九段の法務局へ、会社設立の登記申請に向かいます。首尾よく、受理されるといいのですが、事前の相談をきっちり、愚息の一人が対応してくれていますので、心配はしていません。書類作成から、各種手続きの申請、資金調達などなど、知人、友人、関係者らに助言をいただきましたが、99%は自前でのトライでした。


定款に「大学発等ベンチャー」の文字を入れました。公証人役場では、「う〜ん」とうなって、「法務局へ相談してください。意見が違うと、面倒ですから」。法務局では、「よろしいですよ。時代の流れですから」というような解釈でOK。


いよいよ―という段になって、気が滅入り始めたのは、理由がありました。ビジネスですから、抱える社員らの給料を含め、多いに稼がねばなりません。が、ハタととまどったのは、自立への挑戦とはいうものの、「社会のために、それで何ができるんですか?」との自問が続いています。


20歳の成人の日。厳寒の根室市から、届いた一枚のハガキ。いつもやさしい父からのもので、小生の進学を機に、営む小さな運送業と青果商の跡取を自ら断念したらしく、「社会に役に立つ存在でいてください」のメッセージが、綴られていました。


社会に役に立つ。それが、どんなことなのかを今一度、思い知らされたのは、イラクで殉職の奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官お二人の外交官としての姿でした。言葉が続きません。親戚に、5年前、旧ソ連・タジキスタンで非業の死を遂げた秋野豊さん。彼が、最後のサムライ―のはずだったのに。何が、彼らをそうさせるのでしょうか?このメルマガでは、原則、政治や宗教はタブーと自戒しているのですが、このことは、どうしても書き留めておかなければならない。


NHKの「視点・論点」。なにげなく、みていたら、タイトルが「武士道」と日本人―でした。講師は、東京大学の船曳建夫教授でした。いま、公開中で、トム・クルーズ主演の映画「ラストサムライ」と、映画化された小説の「モヒカン族の最後」を題材に、二つの作品に共通する皮肉は「アメリカインディアンのモヒカン族、そしてサムライ、いずれも滅び行く素晴らしい人と称えている側が、実は、同時に、彼らを滅ぼしている側でもある」と指摘し、自身の近著「日本人論」再考(NHK出版)を例に、まさに論点の「日本人が日本論をなぜ、必要としたのか?」に言及していました。


「日本人論」とは、近代に生きる日本人のアイデンティティの不安を、日本人とは何かを説明することで取り除こうとする性格を持つ。不安をもつのは、日本が「近代」を生み出した西洋の地域的歴史に属さない社会であった、ということに由来する。このアイデンティティの不安が常に、新たな「不安」を生み、そのつど新たな「日本人論」がベストセラーとなるーとその本のなかで、喝破しています。


確かに。もう、ラストサムライは映画のなかでしか、存在しないはずなのに。主演格の迫力を見せた俳優・渡辺謙扮する勝元。ラストの台詞に「There are all perfect」。誇り、天命、愚直、信念。


「日本の技術と日本人」。先のテーマは偶然でした。雨天。280人を越える盛況。二人の学者、ひとりの官僚。使命に専心する姿は、見るものに感動を与えます。


次回12月25日のメルマガは、この一年のメルマガへの皆様からの、声をお届けします。寒くなりました。くれぐれも、ご自愛くださりますようお祈りいたします。


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