◆ DND大学発ベンチャー支援情報 ◆ 2003/ 6/04 http://dndi.jp

204対9

DND事務局の出口です。門外漢ながら、少々恐縮しつつも今回のテーマは大上段 に「科学の独創性」です。「204対9」。これは、いったい何を表した数字でしょ うか?


「204と9。この二つ数字は、ノーベル賞の自然科学部門(物理、化学、医学生理学)におけるアメリカと日本の受賞者の数である」。こんな書き出しで始まる産経新聞の連載(5月26日付け朝刊から)のさわりを紹介すると−アメリカと日本の比較、経済大国世界1位と2位。日本人にとってのノーベル賞の原風景にふれて、「昭和24年の湯川秀樹の物理学賞受賞だった。敗戦にうちひしがれた国民に希望を与えた−というのが通俗的に受け入れられた形容文句だ。以来、秋は、ストックホルムからの発表をかたずをのんで待つ」と解説する。ウムッ、言われれば、そうかもしれない。アメリカは昨年だけでも自然科学部門で4人受賞し、そして、そのニュースの扱いは、当たり前すぎて地味なのだそうだ。


一体なぜこれほどまでに日本人受賞者が少ないのか−と自問し、日本人ほど熱狂的にノーベル賞を切望しながら、その熱意の割に受賞に見放された国民も少ない−と続ける。


なんでだろう?との問いに、青色発光ダイオード(LED)を発明したカリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の中村修二さんの次のような興味深い談話を引用している。


「どんなに優れた仕事をしても、個人の業績は、認められないし、逆にほとんど仕事をしなくても同じ給料がもらえる。結局、日本で出世するのはお偉いさんのご機嫌を取る人でしょう。仕事の能力は関係ない」。


「科学技術創造立国」。平成13年に政府は「今後50年でのノーベル賞受賞者30人」を数字を出して、その実現に動き出しています。


その流れを受けて、この2日には「科学技術で日本を元気に−科学技術文明の将来」と題した緊急フォーラムが東京・大手町の経団連会館で開催され、足を運んでみた。学際研究と国際性を特色とした沖縄新大学院大学構想への期待とそのあり方が議題の中心でしたが、驚いたのは、アメリカからのゲスト4人、いずれもノーベル賞受賞学者でした。


ノーベル物理学賞受賞者で米MIT教授のジェローム・フリードマン氏は「米国の特許の73%(97年調査)が政府関係の資金によるもの。この40年間、MITは4千以上のベンチャーを立ち上げ、110万人の雇用を創出した。日本の大学の学術レベルは高いが、若い研究者、特に助教授らに独創性を発揮する場を十分に与えていない。失敗を恐れず、何かを達成しようとする冒険心を発揮できる環境づくりが重要」 と指摘した。


ノーベル生理学・医学賞受賞者で米フレッド・ハチンソン癌研究センター所長のリーランド・ハートウェル氏は、現在、ライフサイエンス分野においては生物学、科学、医学、数学などの協力がないと活躍できない−と前置きして「多くの大学で協力体制を組むとこが困難なうえ、大学の学部の壁が立ちはだかっている現状を打破しなくてはならない。例えば、生物学分野が必要とする数学を研究していても、数学者の標準では評価の対象にならないケースがあり、資金も助成もままならない。そのため、学際的研究のための確かな連携が必要になる」と日本の現状を愁う。


そのハートウェル氏はこの7日に京都市の国立京都国際会館を会場に開幕する第2回産学官連携推進会議で、7日午前11時35分から、東京大学副学長の小宮山宏氏、トヨタ自動車会長・日本経済団体連合会会長の奥田碩氏らに続いて登壇します。講演の演題は、「研究開発における産学協同」。大学関係者は必見かもしれません。それにしても、大学や研究機関のあり方に対して、ノーベル賞受賞者らの指摘を待つまでもなく、なぜ、すぐにでも改善ができないのでしょうか?先の大学発バイオベンチャー協会の発足の趣旨も、それらの改革の提言を活動の中心に据えていました。みんな解っているはずなのに!


「なんでだろう?」。あ〜もう、じれったい感じがぬぐいきれません。


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