■機能性香料“健康香料”
DGDSが現在ターゲットとしている物質は、植物2次代謝物質の植物性揮発成分テルペノイド。顕花植物に多く存在する物質だが、医療用としては未開の分野だ。顕花植物は、現在知られているだけでも世界に2万5000種以上。それぞれが特徴的な成分を複数持っているとすれば、ドラッグガスとして用いられるハーブ抽出成分は、事実上無数。化合物の種類の多さと、その生体機能の幅の広さは特筆に値する。 ただし、「いきなり医薬を開発しようと思っても、ベンチャー企業の経営体力では歯が立たない。まずは成分と機能の同定といったデータ収集と、それらが解明された成分を医薬品にならない程度の濃度で使った『健康香料』をつくることからスタートしています」(刈田貴久社長)。
現在、同社が製造販売している“健康香料”は、名刺サイズより少し小さなシートに植物から抽出したオイルを封入したパッチタイプシート。粘着テープがついており、これで衣服や皮膚に貼り、シートを肌に接触させる。するとDGDSによって、ほぼ24時間一定の濃度で揮発成分が蒸発し、経皮吸収によって直接体内に取り込まれる。製品ラインナップはいまのところ6種類。皮膚への安全性も高く、皮膚から離せば効果をすぐに止めることができるのも特徴のひとつだ。
また、これらの研究ノウハウを用い、大手食品メーカーなどへの香料コンサルテーション業務なども手掛けている。 |
■ シナジーを生んでこその企業
このDGDS技術を開発したのは、貴久社長の父、刈田毅氏(現・ネイチャーテクノロジー研究開発部顧問)である。 毅氏はこの技術を世に出そうと東京都内にベンチャー企業を設立、異業種に従事していた貴久氏も合流して製薬企業へのライセンス販売を目指し、営業活動を行った過去がある。しかし、ライセンス契約主体のベンチャー経営は営業活動のスパンが長く、キャッシュフローが確保できないという難点があった。
貴久氏は2000年に北海道へ移住し、現在のネイチャーテクノロジーを設立。いくら北海道が北方系ハーブの生産に適しており、地域の農業力が強いとは言え、原料作物としてのハーブ栽培は近年合成香料に押され気味で産業としては成立していない。いまのところ現地での原料調達は試験栽培から始め、不足分は世界中から調達している。とは言え、「当初から予想していました。当社も今始まったばかりのビジネスです。地元の取引先とも、お互いに高めあいながら、新しい産業構造が生まれてくれば良いわけですから、別に慌てる必要はありません。最終的に地元の体制も皆で整え、世界に打って出られればいいわけですから」と、貴久氏の視点はより遠くを見据える。
創業当時は試行錯誤を続けていた販売ルートも、現在では主要薬店薬局、ドラッグストアでの店頭販売のほか、企業との事業提携によるOEM供給、全国スポーツ店への展開や、物流会社とも販売契約を締結した。気体医薬を“普通の商品”にする歩みは、着実に前に進んでいる。 |