第1回 シッピングニュースゴッコのススメ



「純ちゃん、不定期でいいからDNDでエッセイ書いてよ」
埼玉にあるメニュ豊富なとある居酒屋で、DNDiの出口俊一事務局長に「まずは軽い気持ちで良いですから」と口上添えられ、おちょこをクイッと空けながら連載を頼まれたのは、木々の葉が力強い常緑になった頃でした。


出口俊一事務局長との出会いはかれこれ15年以上前に遡ります。

当時、僕はNCネットワーク(注1)というインターネット上で大田区や葛飾区など製造工場の得意分野と設備と技術情報のデータベースを持っている会社にいました。
そんな中、強く元気な中小製造業を紙面で紹介してもらおうと、産経新聞さんにお伺いしたところ、出口さんに初めてお会いしました。確か風貌は今とあまり変わらなかったと記憶しています。

その後、出口さんは産経新聞から霞が関にある経済産業研究所に出向しDNDiの前身であるDND(注2)で事務局長に就任されましたので、僕もたまに出口さんに呼ばれて当時、経済産業研究所が入っていた建物1階喫茶店で冷凍とは思えないピラフと珈琲を飲みに通いました。

出口さんが色々な方を呼ぶので、1階喫茶店にはそんなピラフと珈琲を食べに来る食客(注3)がひっきりなしでした。もっとも主君のために命は差し出さず、食べた皿と少々のネタを差し出すのが古との違いですが。


映画で始まるメディアネタ

DNDiに掲載している諸先生方のタイトルを見るに「〜の旅」とか「〜最前線」とか自身の身勝手な主張ではなく体験したことを提言としてまとめているものばかりです。
僕のタイトルだけ「ネットメディアの鬼才」というウヌボレ調子な枕詞が付いているのか疑問ですが、テーマが拡散しないようにとのお心遣いではと信じています。


ということで、メディアネタとして映画をつまみながらお話したいと思います。

シッピング・ニュース(注4)という米国映画があります。カナダ北東部に位置するニューファンドランド島で港湾情報(シッピングニュース)を配信する地方新聞が舞台の映画です。


シッピングニュース


今や、大ヒット中の米国政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」(注5)のフランク役といったほうが有名なケビン・スペイシーが新米記者役で出演しています。

その映画でベテラン記者にケビン・スペイシーがヘッドライン(記事の見出し)の書き方を教わる僕のお気に入りシーンがあります。

すっかり貫禄のついたケビン・スペイシー (Wikipediaより引用)


ヘッドラインとは、簡潔で、力強くドラマチックにと、先輩記者はヘッドラインの指導のをさせようとして尋ねます。以下、思い出しながら書いていますので超訳です。(注2)

「あの雲を見て、どんなヘッドラインをつける?」
「黒雲が水平線を覆う」
「いや、嵐が村に迫るだ」
「嵐が来なかったら?」
「村から嵐の恐怖去るだ!」
https://www.youtube.com/watch?v=8x1z8IK-L0U#t=1m4s

パンパカパーン!
神田明神のお祭りが、界隈の飲食店店主にとって大事な行事であるように、この映画を観てからシッピングニュースゴッコが、僕の人生においても同様な行事になったのです。


少しムカついたことがあると「官房長官、遺憾の意を表明」
給与日前の昼ご飯なら「シベリアの昼食、またもや日本上陸」
給与が振り込まれると「休日のテキサスステーキ」
映画館に向かう電車内では「各界の大物、続々とカンヌ入り」


シッピングニュースゴッコのルールは一つだけ。ヘッドラインとしての品質はともかく本物の紙面に載せられるようなトーンアンドマナーを守ること。誹謗中小や公序良俗に反するものやイジメも絶対ダメ!ですが、たまに夕刊フジ編やゲンダイ編でやるのはOKです。


頭の中にいるベテランデスクと、僕とのやり取りが起こる時、人生の物事は頭の中で事件となります。電車内時間つぶしにとても有効ですし、素晴らしいヘッドラインが生まれた時なんかは暗いですが一人クククッて笑えますのでオススメです。

出口さんにお会いしてから、本人は覚えていないと思いますが、何度かシッピングニュースゴッコにお付き合い頂くことがありました。稀に新聞記者の訓練された技に魅せられたものです。そうして僕のシッピングニュースゴッコは今でも続いています。

最後にシッピングニュースゴッコは、時事放談好きなオジサン同士や電車で一人腰を鍛える為にと両足を踏ん張るように脳内でやらず、恋人たちが、付き合い始めた頃の相手に遠慮しちがに言葉を選びケラケラ笑いながらやるほうがずっと楽しいんです。いや、これはホントです。

-- 純楽

パンパカパーン!次回は「都バスに乗ったシャーロック・ホームズたち」をお送りします。 ご要望やご意見、いつでも笑顔でお迎えいたします。いやー、これもホントです。

工藤純平(くどうじゅんぺい) 青森県八戸生まれ、人体の活動量で優しく見守りをするフリックケアというサービスを提供しています。http://flickcare.com


注釈
(1)NCネットワーク
(2)DNDとはのページってありませんでしたっけ・・
(3)中国の春秋時代、キングダムだけでなく昔から食客っていう言葉が好きでした。
(4)なんと英語版Wikipediaのheadline項目に超訳ではない原文が掲載されていました。
(5)ハウス・オブ・カード 野望の階段 下院議員がホワイトハウス入りを目指す米国のドラマ。今年秋に日本上陸を表明しているネット専業の配信会社、米国ネットフリックスが制作した政治ドラマ。現在シーズン3まで公開済みですが見始めると眠れなくなります。


フリックケア株式会社
http://flickcare.com



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