辻留料理教室に行ってきました


俯瞰工学研究所の松島克守のメルマガです。第7号を送らせていただきます。


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせていただいております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出をくださるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見をいただければ幸いです。


皆様

◆季節のご挨拶◆
大暑(7月23日〜8月7日)と盛夏の季節になりました。暑中見舞い申し上げます。節電の意識と行動で、東電管内はなんとか夏が越せるかと、思わせる位になりましたが、一転して西日本の電力が不確実なようです。この関連はあまりにも真実の情報がないので、議論しようがありません。一般人に、この議論に参加させないようにする関係者の高等な戦術とは、思いたくありませんが、このような状況、悪い状況では真っ直ぐ、そのままの情報開示、言動の方が、担当者のリスクを減らすと思います。それにしても声は全く聞こえてきませんが、福島の現場で作業されている方々にはどのような感謝の表現がいいのか思いつかないほどです。深甚の謝意を表します。また猛暑でも頭の中はクールに行きたいと思います。


◆地域イノベーションのモデル◆
このひと月は結果として地域のイノベーションのモデルの勉強に時間を割くことになりました。

改めて再認識したのは、イノベーションモデルのイノベーションが必要な事です。大学のシーズを育て、これを産学連携で企業に移転して、その産業化を支援するという,所謂「リニアモデル」が日本全国共通のモデルです。しかし、このリニアモデルでイノベーションが創発出来れば良いのですがそうは行きません。技術開発は進捗しますが、ビジネスイノベーションにはなかなかなりません。技術イノベーションはビジネスイノベーションの選択肢を増やすことです。ビジネスイノベーションは術を社会に届けるカプセルです。そして社会イノベーションはその選択です。

ですから、リニアモデルで技術イノベーションを継続的に推進しても、ビジネスイノベーションにはなりません。市場へ技術イノベーションを持ち込むビジネスイノベーションに、本質的なイノベーションが必要です。はやりのオープンイノベーションは何も答えはくれません。イノベーションのモデルを解明するには、社会が何を選択するかを見極めるマーケッティングが重要です。と言ってもイノベーティブなマーケッティングは真のイノベーターにしか出来ません。変化を続ける、人間の有機的な集合体である社会の理解がつくづく重要である事を思い知らされ、社会学の勉強に立ち還ってイノベーションのモデルを考えようと思います。


◆辻留料理教室に行ってきました◆
赤坂の懐石「辻留」の料理教室に行ってきました。「辻留」は、裏千家の指導をもとに京都・東山に開いた懐石料理店と云われています。「赤坂辻留」は東京で懐石料理では最も有名な名店です。かって、私も重要な会席を幾つかこの名店で持ちました。その結果は全て現在に繋がっています。

日本文化の真髄を理解するのは無理でも、何か感じる迄になりたいというささやかな意欲で参加させていただきました。店主の辻義一さんが、目の前で本日の献立を全て講義しながら作っていくのを、生徒は包丁さばきを凝視しながら、メモを取りながら、質問無しで、2時間集中して勉強して、その後1時間ほどでその献立を賞味するという教育コースです。素晴らしい3時間でした。

今回の献立は:

向付 コチ湯引き 青とさかのり むらめ、梅肉醤油

椀盛 小鯛そうめん むすび玉子 柚子 つるな

炊合 小芋 南京 車海老 おくら ふり柚子

炒物 合鴨ロースくわやき 万願寺とうがらし

冷物 ずんだ汁 白玉団子

御飯 はも皮ご飯 青しそ 針生姜 白ごま

香物 胡瓜 西瓜奈良漬

菓子 蓮根羹

薄茶 千代昔

これを、香物、薄茶以外の全て、目の前で料理していきます。詳しくブログ「頭の良くなるクッキング」http://www.proffukan.com/を読んで下さい。というだけでは申し訳ないので講義から一つ。

味について。味には、「辛」ピリっと辛い。「酸」柑橘の酢がいい。「鹹(かん)」塩味。かっての食卓塩は、表示が塩化ナトリウム99%以上とあり、塩ではないと表示していた。海の成分が有って塩。「苦」苦み、アクも苦味。「甘」さとう、みりん、素材の甘さ。砂糖については、魯山人曰く、「砂糖は劣食品を瞞着(まんちゃく)する」とご紹介ありました。(瞞着:ごまかすこと。だますこと、日本語は難しいですね。)

「赤坂辻留」は先代の辻嘉一さんが開設したお店です。中学生の頃、母が購読していた「暮らしの手帖一世紀」に辻嘉一さんのエッセイが連載されていて読んでいましたので辻留の名前は知っていましたが、まさか行けるとは思ってもいませんでした。縁有ってお店に行ったのは何十年も後で、現在の若女将と、パソコンのマーケッティングの仕事をご一緒した事がご縁です。先代の辻嘉一さんは料理の名人と呼ばれました。確か記憶に間違いなければ、東京に出店するに当たり東京にない「薄口醤油」を抱えて夜行列車で上京しますが、列車の中でそれが漏れてしまい、たいそう残念であっと、暮しの手帖に書かれていました。50年くらい前にたった一度読んだだけの文章ですが、今までも記憶に残っています。きっと日本語も名人だったのでしょう。そのような水準の日本語を何時になったら自分は書けるように成るのだろうかと、更なる日本語の、研鑽を決意しました。因みに、60歳になった時、あまりにも日本文化の素養が貧しいので、学生や後進に教養を磨けという手前、真髄はともかく後付でも少しでも日本文化を理解するべく、俳句、能面打ち、華道をやってみました。ほかに、フランス料理、ボイストレーニング・・修行の道は険しいです。


◆東北被災地に行く学生ボランティアの支援を◆
東北の被災地にボランティアで行きたい人は多いのですが、情報がない、ということで有料ツアーがありますが、学生にアルバイトしてこのツアー費用を稼いでからとは言えませんね。

支援する企業、ボランティアに行く人、下記のURLからお願いします。松島研究室のOBの石田祐樹さんが推進しています。投資銀行の5年の経験を踏まえ、手がけたソウシャルビジネスです。
http://ima-dekirukoto.jp/index.htm


◆本郷の俯瞰経営塾も今月で終わり◆
毎週木曜日13:00-16:00、2号館9階で「俯瞰経営学」やっています。今年も学生有志から、単位がなくても自主ゼミで同じ講義をして欲しい、という要望があり「俯瞰経営塾」を5月12日から本郷で開講したことは報告しましたが、残すは1回です。今年は、3.11を踏まえて「日本のSWOT」、その後「会計」、「マーケッティング」、企業価値」、「リーダーシップ」、「A級社員、B級社員、C級社員」、「オープンイノベーション」、「M&Aのケーススタディー」、「経営戦略 ポーターとバーニー」と進んでいます。残すは「実例:或る企業の経営戦略の評価」です頑張って抜けた学生はその後自分でブレークしていくのを見ていますので、「最後の決戦」に挑戦するように激励しました。Do your best!と。

この講義の目的は、知性を磨くことで、知性とは、課題を自分で発見する能力、それに関する情報を収集する能力、収集した情報を分析する能力、その分析結果を編集して行動の提案をする能力、そして、周囲や対象の人たちに「判った」と思わせる表現能力、と既に書きましたが、ヨーロッパの指導者教育の「修辞学」と相通ずるものです。


◆時代と同期する情報装備6◆
これはこのひと月進展なしです。現在3つのトラブルプロジェクトを抱えていますが、夏休みの宿題になりそうです。まず、マランツのネットプレーヤでNASのフォルダーが見えない。NAS以外は全て問題なし。一方パソンからはNASのフォルダー、ファイル再生問題なし??二番目はパナソニックの監視カメラですが、ローカルでは問題なし、インターネットでは接続できない、無論ダイナミックDNS働かない。三番目はUbuntu、古いwin2000のVAIOですが、win7ではCPUもメモリ弱いので、HDDを交換してLinuxマシーンにするべくUbuntuをインストールしましたが、エラーで起動できない?

パソコンやネットワークは要素の辛味が複雑、出来が悪いので、時間が取れるとき数時間集中的に処理しないと解が見つかりません。夏休みにそれぞれ一日ずつ時間を掛けましょうか。


◆書評◆
今月のご紹介は、「日本の食料が危ない」 中村靖彦 岩波新書 2011

早朝2時にレタス畑で働く中国の農業研修生?地震後にその姿が消えたシーンから本書は始まります。NHKにおいて長年現場取材してきたジャーナリストによる本ですのでよくも悪くもジャーナリスティックですが、食料に関する議論を聞いたり、議論したりするに必要な知識を得るにはいい本でしょう。要点を幾つか。

コメ、農地、稲作農家、政治家の思惑、が食糧問題、農業問題の議論を迷走させて本質的な構造改革が出来ていない事を改めて再認識します。食糧問題に議論が行き着けない。最近では民主党のバラマキがさらに混迷を深めていますね。

食料自給率の議論ありますが、まず食料自給率の定義が幾つかあって、これも議論を迷走させていることが書かれています。食料自給率の議論でよく使われるのは、カロリーベースで、これでは自給率は40%、実は金額ベースでは70%、量ベースでは大豆は6%。野菜は量ベースでは80%であるがカロリーは低いのでカロリーベースの数字に貢献しない?量ベースではでは、コメ、100%以上、小麦は14%、野菜は80%、魚は自給、鶏、豚、鶏卵はほぼ自給で来ていますが、飼料の輸入依存度が極めて高い。牛肉は半分程度自給ですが、国内飼育の飼料は輸入依存度が高い。

従って飼料の自給が重要課題であるあるように思えてきました。結論として、魚と野菜を主とする和食中心に移行することが個人的にも国家的にも食糧問題と、健康問題に対する、戦略でしょうか。

中国が世界の食糧をみんな持って行ってしまう?ジャーナリスティックですね。ただ凄まじいことは事実で、大豆では5000万トンが中国、残りの世界で5000万トンですから。

日本人は現場では頑張っています。親が駄目だと子供が頑張るのと同じで、中央政治は酷いのですが、現場で食糧問題をイノベーティブに改革する人たちはいます。例えば「エコフィード」です。賞味期限が切れただけの膨大な食品を加工して飼料にしています。残飯ではありません。家庭の残飯は混入物のリスクが高いので手が付いていいませんが、レストラン等の食べ残しは飼料に利用出来るようです。混迷する稲作の現場でも飼料用のコメの栽培で成果を上げています。試算では食糧米の栽培で余る農地で、輸入トウモロコシの全量を代替出来るともあります。これらは素晴らしい戦略と行動ですが、支援政策は例の「蓮舫仕分け」で予算カットだそうです。

最後はTPPですね。推進派は、GDPの僅か1.5%の農業の保護のために製造業が不利な競争を強いられていると言いますが、この数字で議論は乱暴です。先進国のこの数字は全て低いのです。韓国3.1%、オーストラリア2.7%フランス2.0%、米国1.1%、ドイツ0.9%。関税が下がればもっと北米やアジアに輸出が出来る?本当でしょうか。反対派はTPPが導入されれば農業は破壊される、コメは競争力がないので輸入米の前に全滅するといいます。以前、冷害で緊急輸入した輸入米の販売実績を見れば、値段だけで日本人は買う米は変えません。また、この地球的な食料危機の中、800万トンの日本米を供給するほど余力のある国は?

基礎的な知識ないまま評論家していてはいけないので、この本は勉強になります。


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◆俯瞰 MAIL 0007号(2011年7月15日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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