安倍政権の5年間の成果は


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◆時候のご挨拶◆
東京にも雪は降り、冬本番です。天気図を見ていると、東北と北海道は吹雪の日が少なくありません。世界中で気象は大荒れですが、シベリアのマイナス60度超えは驚きます。フィリピンの火山が噴火するのではないかと報道されています。トランプ大統領も噴火するのでしょうか。
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●トランプ大統領の1年
●歴史の転換点を再認識する
●シアトルのニューウェーブ
●ラスベガスのCESに行ってきました
●俯瞰のクッキング“栗原はるみ”
●俯瞰の書棚 “BCGが読む経営の論点 2018”
●俯瞰学のすすめ8“歴史で俯瞰”
●第50回記念俯瞰サロン(1月30日開催)
 第51回俯瞰サロン(2月16日開催予定)
●編集後記
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◆トランプ大統領の1年◆
トランプ大統領の就任から1年の節目で、いろいろな報道がされています。
女性蔑視が目立った発言から、女性団体が100万人の抗議のデモを呼びかけました。移民政策をめぐっては議会に深刻な対立があり、連邦予算は失効して、一部を除いて公務員は無給の自宅待機とは驚きます。メキシコ国境の壁の予算と、アメリカンドリーム呼ばれる不法移民の子供に対する特例処置の廃止が争点です。連邦予算を失効させた民主党は支持率を落とし、急遽妥協しました。

トランプ大統領は選挙公約ですから、不利な状況が伝えられる中間選挙に向かって強引に公約実現を推し進めているのでしょう。

公約の一つであった税制改革はなんとか実現し、これに対して経済界はすぐに反応しました。海外での節税に熱心だったアップルは、早速この税制を利用して海外に蓄えてあった現金を国内に戻して、2万人の雇用を生むと声明しました。これに続く企業も出てくるでしょう。アメリカの税制は欧州などに比べて遅れていたということですから、順当な政策であったのでしょう。ともあれ、世界的に税制がデジタル革命についていっていません。

トランプ政権の経済戦略は、かつてのレーガン大統領の政策を模しているのではないかという論調があります。レーガン大統領は減税と軍拡でアメリカ経済を活性化させ、経済力で軍拡についていけないソ連を屈服させて冷戦を終わらせ、アメリカを世界で唯一の超大国にしました。

これに倣って中国とロシアを仮想敵国とする国防戦略を発表して、冷戦を再現させようとしているのでしょうか。しかし中国は経済力がありますから、軍拡に対応していくでしょう。

この国防戦略もしっかりアメリカファーストでしょうから、日本も過度にアメリカに依存するわけにはいきません。これと憲法改正の議論が別物になっていますが、明治憲法に戻すという憲法改正は論外で、きちんとした安全保障体制を確立する事は、喫緊の課題です。さすがに自民党の保守派も、憲法改正と徴兵制を併せて議論する勇気は無いでしょう。

欧州ではロシアの軍拡に対抗して、スウェーデンはすでに徴兵制を復活させましたが、フランスも徴兵制を復活すると声明しました。イギリスも軍事力がロシアに対抗できないとして、軍事予算を増額するように求められています。たぶんドイツも欧州のリーダーとして軍事予算の増額を行い、ロシアに対する脅威に対抗することになるでしょう。これが現実です。

冷戦時代に作られたロシアに対する安全保障体制であるNATOは、トランプ政権の姿勢から弱体化しているのではないでしょうか。まだNATOの加盟国であるトルコは、勝手にシリア国内に侵攻してクルド人勢力を攻撃しています。むろん、これはプーチンの暗黙の了解の下でしょう。

アメリカファーストで世界各地から身を引くアメリカに対し、その空白をロシアと中国が積極的に埋めています。そして世界は統制を失い、各地で不安定な状況が生じます。

選挙公約を実現すべくエルサレムにアメリカ大使館を移籍すると声明したことにより、中東情勢も先行きが見えません。ノーベル平和賞のオスロ合意から反対方向に一変しました。

それにしても、トランプ大統領の支持率が低いといっても常に40%近くを維持している事は、アメリカ国民の3分の1はトランプ大統領のこの一年の言動を支持しているわけです。そして、この支持層にアメリカファーストを貫徹することで応えようとしているのでしょう。

日米同盟による日本の安全保障について気になるのは、日本を守るアメリカの第7艦隊が問題を抱えていることです。 3度にわたるイージス艦の衝突事故、繰り返されるオスプレイやヘリコプターの墜落事故を見ると、最前線の現場で重大な問題が起きているのではないかと思います。加えてミサイル防衛システムも、どうも命中率は50%程度と見た方が良いようで、日本国民も真摯に中国、ロシア、北朝鮮にどのように対峙するか考えなければなりません。繰り返して言っていますが、私はナショナリストではありません。どちらかといえばリベラルですが。

トランプ大統領就任1年支持率 レーガン以来最低37%
https://mainichi.jp/articles/20180119/k00/00e/030/177000c
トランプ大統領就任から1年、全米各地で女性中心の抗議デモ
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-women-idJPKBN1FA05A
米政府機関、一部閉鎖へ 上院がつなぎ予算案の採決動議を否決で時間切れ
http://www.sankei.com/world/news/180120/wor1801200014-n1.html
米アップル、レパトリで380億ドルの税支払い予想?2万人新規雇用へ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-17/P2PQEI6KLVR501
トランプ流、強まる独断 1人きりでテレビ・ツイッター
https://www.asahi.com/articles/ASL1M3T3PL1MUHBI00X.html?ref=huffpostjp
トランプ政権、対テロより中ロ対抗を優先 初の国防戦略
https://www.asahi.com/articles/ASL1N269XL1NUHBI004.html?ref=huffpostjp
トランプはレーガンと似ている?1980年代のアメリカに学ぶ今後の見通し

https://www.ewarrant-sec.jp/article/
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イージス艦事故の黒幕は北朝鮮か? 最強の軍艦の思わぬ弱点
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8642.php
北朝鮮想定の弾道ミサイル迎撃実験に失敗 アメリカ軍が発表
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/23/ballistic-missile-intercept-test-fails_n_17265716.html


◆歴史の転換点を再認識する◆
世界が、世界経済が大きな歴史の転換点を超えたため、社会に、経済に大きな変化が起こったと思います。アメリカ経済も、この激変する世界に対処するために、トランプ大統領を結果として選択したとも考えられます。むろん新世界に取り残され、旧世界で格差に苦しむ国民が支持層です。

この歴史の転換点でデジタル革命の繁栄に乗った人、乗れなかった人という分断社会がアメリカに生まれ、同じ現象はこの日本にも生まれつつあります。ともかくアメリカ経済もApple、Google、Facebook、Microsoft、Amazonに代表されるデジタル革命の勝者が主役です。彼らの手持ち現金は約60兆円と言われ、日本政府の徴税額の50兆円を超えています。

その歴史の転換点はいつかと考えてみました。それは、1990年代の終わりから2000年の初めではないでしょうか。それに関連する事象を拾ってみました。あえてグローバル経済の転換点の事象として、国を超えて統合されたヨーロッパ、ユーロという共通通貨、そして日本を追い越して世界経済の成長を牽引した、北京オリンピック後の中国経済も年表に入れました。

1993  NII構想 情報スーパーハイウェイ
1994  EU成立 統合ヨーロッパ
1994 Amazon設立
1994  スティーブ・ジョブス Appleへ復帰
1995 Windows95 発売
1995  インターネットの商業化
1998 Google設立
2002  ユーロ流通 通貨同盟
2003  Tesla設立
2004  Facebook設立
2007  iPhone発売
2008  北京オリンピック GDP世界2位

デジタルエコノミーは、ネットワークの中で繁栄しました。そのネットワークは、クリントン政権のNII構想がきっかけだったと思います。全米の高速道路網がアメリカに繁栄をもたらしたように、全米に広がる高速通信ネットワークがアメリカに繁栄をもたらすというビジョンです。そして、このビジョンを共有するシリコンバレーのアントレプレナーが次々と事業を展開していきました。

既存のビジネスを破壊して止まないアマゾンの設立、天才スティーブ・ジョブスのアップル復帰、そしてすべての人の机の上にコンピューターと通信を可能にしたWindows 95 、そして同じ時期にインターネットが商業化されました。それまではアメリカ政府のNSFNET(National Science Foundation Network)がバックボーンを形成し、1995年に商用インターネット・サービスプロバイダのバックボーン群が代替するようになって、通信速度の通信帯域の急速な進歩が進み、インターネットが社会インフラになりました。そして、Googleの設立、 Teslaの設立、 Facebookの設立が続き、スティーブ・ジョブスがコンピューターと携帯電話を再発明してiPhoneを世に出しました。

こうしてみると、20世紀から21世紀へ移行した時期が、大きな歴史の転換点であったことがわかります。

それから10年、デジタルエコノミーは新しい世界を拓きました。その世界のリーダーは20世紀の初頭に設立されたGMやフォード、 GE、 AT&T、 IBMではなく、テック企業の五社です。この世界に中国のテック企業が加わり、新しい経済は急成長していきますが、それ以外の産業や企業は古い世界に止まったままで取り残されました。日本は全体として、これに取り残されています。日本の半導体、情報技術、ネットワークなどのテクノロジー企業は世界的にほとんど存在感がありません。日本では、まだ旧い世界の経団連が産業界のリーダーをしていること自体、時代錯誤かもしれません。最近頻発するデータ偽造の企業集団ですから、イノベーションや産業構造改革のリーダーは無理でしよう。

ともかくこの歴史の転換点を通過してしまった現在、そしてこれからどんな世界に行くのか、これを知る手がかりは、下記のURLにある人間と機械の融合する世界を理解することです。
情報技術やロボティクスを中心に世界のイノベーションを牽引してきたDARPAの局長を2017年1月に退任したアラティ・プラバカーが、「WIRED」に寄せた全人類へのメッセージです。

人間と機械の融合
https://wired.jp/special/2017/darpa/


◆シアトルのニューウェーブ◆
シアトルに企業の研修旅行の引率で行ってきました。私は何度も行っていますが、研修生は初めてなので、ギネスブックにあるボーイングのエバレット工場に行きました。飛行機の生産ラインという、とんでもない大きさを見るためです。航空機産業とは何かを改めて再認識できる場所です。

シアトル郊外にMicrosoftがあり、Amazonも本社を置いています。中心部にたくさんのビルを借りあげて数万人の社員が勤務しているわけです。街は活性化しています。

そしてスターバックスの創業の地です。一号店が海岸の近くにあります。そのスターバックスが新しいスタイルの店をシアトルに開店しました。店内に焙煎工場があり、こだわりにこだわったコーヒーを対面でサービスしています。たくさんの人で賑わっていました。店内の様子は下記のURLでご覧ください。

2016年の暮に来たときの無人店舗のAmazon Goの実験を始めた時でした。約1年後に来てみてまだベータテスト中でした。かなり技術的に難しいのでしょう。 Amazon社員だけが実証実験のように、店内で買い物をしていました。しかし帰国した22日、ついに一般公開されました。 130台のカメラを使って画像処理で完全無人店舗を完成させました。下記のURLに詳しいレポートがあります。無人店舗については日本でも実験をしています。

パナソニックはローソンと共同で完全自動セルフレジ機「レジロボ」の実証実験を行っています。パナソニックが開発した「レジロボ」は、コンビニエンスストアにおけるレジ業務の自動化です。レジロボでは、バーコードを電子タグのRFIDに置き換え、商品の向きなどに関わらず近距離無線通信で簡単に読み取れるようにし、これにより、カゴを置くだけで決済から袋詰めまで、ロボットがスムーズにこなしてくれます。自動で袋に入れてくれるというところが、メカに強い日本の特徴でしょうか。

Amazonの映像と人工知能で完全無人化という未来志向は感じませんが、手堅いです。しかしテノロジーはかなり遅れています。ハードウェアにこだわる日本、システム思考のアメリカ、いつもの日本の負けパターンですね。

中国でも無人店舗の実証実験が進んでいるようです。無人営業コンビニの「BingoBox」です。
商品の読み取りと支払いは携帯を使って手動で行う必要があるため、Amazon Go と比べるとこれも未来感に欠けます。支払いは WeChat か Alipay(支付宝)で行います。何か不具合が起きたり助けが必要だったりという場合は、リモートで待機するスタッフとビデオ通話を行うこともできるようです。

研修旅行の移動はほとんどすべてUVERです。研修生の宿泊はAirBnBです。街中ではほとんどタクシーが見当たりません。運転手と直接会話をすることがないので、自動運転車に乗っているような雰囲気もあります。この街には「既に起きている未来」がありました。

スターバックス、希少コーヒー豆 『リザーブ』 の焙煎工場&テイスティング・ルーム
https://www.junglecity.com/coffee/starbucks-reserve-roastery-and-tasting-room-opening/
Amazon Goの仕組み 「カメラとマイク」で実現するレジなしスーパー
http://www.huffingtonpost.jp/tak-miyata/amazon-go_b_13521384.html
Amazonの、監視カメラだらけのレジ無しコンビニエンスストアにて
https://getpocket.com/a/read/2040891928
Amazon Goの上を行くパナソニックの秘蔵っ子「レジロボ」の勝算
https://news.mynavi.jp/article/20180118-panaregi/
中国で人気を集め始めた無人営業コンビニの「BingoBox」
http://thebridge.jp/2017/07/chinas-convenience-stores-no-longer-need-people-bingobox


◆ラスベガスのCESに行ってきました◆
前述の研修旅行で、一つのプログラムとしてラスベガスで開催されたCESに行ってきました。

CES(コンシューマー・エレクトロニクスショー)は4000を超える出展企業、150カ国以上の国から18万人以上の参加という世界最大規模の展示会で、スマート家電、自動運転、ロボティクス、IoT、AI、AR/VRなど、今後のビジネス環境に大きく影響を与えるテクノロジーを体感することができます。

スケジュールの関係で一日だけだったので、見た範囲は限定的でした。
大きなトピックは、無人運転、スマートホーム、ロボティクス、 5Gだと思います。Nvidiaのブースは意外とあっさりした展示で、無人運転のスーパーコンピューターで自動車業界のデファクトスタンダードになった余裕を見せていました。そのブースに隣接してトヨタ自動車がブースを出していました。大型の無人運転の自動車を使った無人運転システムのコンセプトの提案をしていました。朝晩は通勤の足となり昼間は無人の宅急便という、なかなか面白い提案です。大型の自動車は燃料電池で動かすとは言っていませんでしたが、その含みはありました。

このNvidia に対抗するインテルは、力のこもった展示でした。有名な人工知能の教授のセミナーもあり、量子コンピューターの半導体の展示もありました。先端技術の勉強になりました。

今回の主役はAmazonのスマートスピーカーです。トヨタも搭載を表明し、これに連携するたくさんの機器が展示されエコシステムを形成している感じです。

これに対抗するGoogle Homeはホテルと会場を結ぶモノレールの車体を全てHay Googleの文字で塗りつぶして存在をアッピールしていました。といってもAmazonに比べると、連携する機器が圧倒的に少なく劣勢は否めません。

日本のソニーやパナソニックも出展していましたが、存在感が薄く寂しい感じです。しかも会場の奥深く、探さないと判らないところにブースがあり、テクノロジーが拓く新しいビジネスに腰が引けている感じです。AppleやMicrosoftのブースを見つける事はできませんでした。

中国深センのベンチャー企業がたくさん出展していました。面白そうなものがたくさん展示されていましたが、時間がないので見て歩くことはできませんでした。

5Gは次世代の通信ですが、これとコネクティッドカーを掛け合わせると、今とは全く違うモビリティの世界が開けると思います。注目のテクノロジーです。日本がどれだけ速く5Gのインフラを普及させるかが、世界的な競争に生き残る要点だと思います。

韓国のサムスンやLGの展示も華やかで、かつて家電業界のリーダーシップを握っていた日本は極めて控えめな存在となってしまいました。

下記のURLでバーチャルにCESに参加できます。概要は電通の森直樹氏のレポート、会場の画像は大矢アキオ氏のレポート、そして詳しい技術的な解説は、長見晃氏のレポートです。この3つのレポートを見ればCESに参加した人と同じ情報が得られるでしょう。

GoogleがAmazonから主役の座を奪った?世界最大規模のテクノロジー祭典「CES2018」
https://www.advertimes.com/20180116/article264593/
多様な先進技術にビックリ!大矢アキオの「CES 2018」
http://www.webcg.net/articles/gallery/38089
垣根を越えて拡がる「CES」、Nvidiaはじめ自動運転、AI向け半導体
https://www.semiconportal.com/archive/blog/insiders/nagami/180115-pickup484.html



◆俯瞰のクッキング “栗原はるみ” ◆
話の本筋からは外れますが、日本が高度成長にスタートを切った東京オリンピックの年に、今のテレビ朝日で「木島則夫モーニングショー」という番組が始まりました。多分アメリカの番組をまねたスタイルだと思いますが、その新鮮さが受けて、大ヒット番組だったと思います。アメリカの目新しい商品の広告で、新しい文化を紹介する番組でもありました。私の記憶では、今では当たり前なティッシュペーパーのクリネックスの広告が思い出されます。そのモーニングショーのサブキャスターが栗原玲児というイケメンで、料理研究家の栗原はるみさんはその奥様です。

羽鳥慎一モーニングショーは、中断していたそのモーニングショーを22年ぶりに復活したとありますが、雰囲気が全く違いますね。あの木島則夫さんは真面目が服を着たようなイメージで、主婦を中心としたご婦人がたの圧倒的な視聴率を勝ち取りましたが、羽鳥慎一モーニングショーには、それだけの力はないでしょう。

栗原はるみさんは1992年に出版された「ごちそうさまが、ききたくて。ー家族の好きないつものごはん140選」で料理研究家としてデビューしたと思います。

その料理は、家庭料理とは何かということを改めて教えてくれたと思います。続編の「もう一度ごちそうさまがききたくて。ーちかごろ人気の、うちのごはん140選」と合わせて200万部以上という大ベストセラーです。多くの人が彼女の料理に共感したのでしょう。ひとつの文化を作ったと思います。 ベストセラーになった理由の一つは、紹介されているレシピの一つ一つに家族に対する深い愛情を感じさせる記述です。 「私の料理を夫や子供が喜んで食べてくれると、それがまた嬉しくて料理作りがどんどん楽しくなってきました」とあります。 そして料理上手の母親から受け継いだ日本の伝統的な家庭料理も、読む人に郷愁を感じさせたのでしょう。まさに、お袋の味です。

本の冒頭の料理が「鯖そぼろ」です。鯖の身をスプーンでかき出して、ほぐしてそぼろに仕上げます。これは出生地の下田という海岸の料理でしょう。鯖は日本中で食されていて、「鯖そぼろ」は、日本海の丹後地方でも晴れの日のちらし寿司になくてはならないもののようです。私は鯖缶を使って鯖そぼろを作りました。「鯖そぼろ」らしい味になりました。

有名な料理研究家の辰巳芳子さんの料理本にも紹介されていますから、日本の伝統的な料理なのでしょう。この辰巳芳子さんも日本の伝統の家庭料理を教えてくれます。

栗原はるみさんのこの本は、料理の入門書としてお勧めです。
鯖の料理がいくつか紹介されています。 「鯖のイタリア風パン粉焼き」も作ってみました。私はほとんど同じレシピでサンマやイワシを料理します。

続編の方では、栗原家のTOP10が紹介されています。 揚げ鶏のネギソース、ナスのドライカレー、カキのチリソース、バジルのスパゲッティ、鯖のトマトソース焼き、韓国ダレ風味の鶏の唐揚げ、豚肉のあんかけ麺、土鍋すき焼き、大根とタコサラダ、鯖の味噌煮です。やはり、かなり鯖がお好きなようです。鯖団子というレシピもあります。

栗原はるみさんの料理は、タレとソースを軸に展開されているのが特徴でしょうか。また積極的に電子レンジを使うところも家庭料理として作りやすいです。

木島則夫モーニングショー
https://www.youtube.com/watch?v=r3QfDYsOXAo
羽鳥慎一モーニングショー
http://www.tv-asahi.co.jp/m-show/
栗原 はるみ
https://www.amazon.co.jp/%E6%A0%97%E5%8E%9F-%E3%81%AF%E3%82%8B%E3%81%BF/e/B002PMF2Z4/ref=sr_tc_2_0?qid=1516943465&sr=8-2-ent
栗原 はるみ さん のレシピ一覧289品
https://www.kyounoryouri.jp/teacher/recipe/75
辰巳 芳子
http://www.tatsumiyoshiko.com/



◆俯瞰の書棚 “BCGが読む経営の論点 2018”◆
今回の紹介は「BCGが読む経営の論点 2018」 ボストン コンサルティング グループ編 日本経済新聞出版社です。

この本は前回紹介した“マッキンゼーが予測する未来”と似た本ですが、日本のボストンコンサルティングの編集で、マッキンゼーの本のように世界的な研究所の編集ではないので、一言で言うと、ボストンコンサルティングが日本企業で進めているコンサルティングの現場からの報告です。したがって、マッキンゼーの本がグローバルな視点からいろいろな洞察を与えるのに対し、日本企業特有の事情を踏まえた課題の解説になっています。併せて読むと、日本企業の経営の課題と改革の方向が見えてくると思います。目次を紹介しましょう。

第一章 デジタル化が変える競争戦略
この章では、企業のデジタルトランスフォーメーション、すなわち企業経営をデジタル時代にいかに適応させるかということです。日本企業はデジタルエコノミーに適応することが、商品、組織、スキルといった面で大きく遅れていますからこれをどのようにうまく進めるかということになります。人工知能もブロックチエーンも積極的に取り組んでいかないと、大変なことになるということです。

第二章 人手不足少子高齢化時代を生き残る
少子高齢化は、日本だけでなく一部地域を除くと世界共通の緊急課題です。日本にとっては、まさに働き方改革です。日本の企業は悲惨なほど生産性が低い働き方です。特にプロジェクトや企業変革のスピードが遅いです。これに対してボストンコンサルティングは、アジャイルという概念で、縦割りの組織に横串を指す手法を進めています。今日現在、大きな無駄がある日本企業は、発想を変えて働き方を変えれば少子化を克服できます。実際に思い切った働き方改革で、大幅な生産性の改善に成功した北国銀行の事例があります。少子化と高齢化は全く異なる課題ですが、これを“少子高齢化”とまとめて議論する人を私は信用しません。原因と対策が全く違いますから。

第三章 ディスラプト( 断絶)後の勝者の条件
この章ではグローバリゼーションが変質してきたと言う主張です。 私から見るとグローバリゼーションが変質する理由は二つあります。 一つはEV、自動運転、人工知能やブロックチエーンなどのテクノロジーが産業構造や経済、社会を急峻に変えていく流れ、もう一つは国際情勢が不透明でかつ分散化、分権化しているからです。巨大なアメリカ経済という実態も、すでに日本を除くアジアの経済規模に抜かれていきます。当然日本企業のグローバル化戦略も見直しが必要です。ですから、ボストンコンサルティングはそのお手伝いをしますよ、ということです。

この本は、見方を変えれば、ボストンコンサルティングのマーケティングマテリアルのようなものかもしれません。しかし読めば、企業改革の具体的な洞察が得られるでしょう


◆俯瞰学のすすめ8 歴史で俯瞰◆
「現代」が作られた時代
現在を深く認識し、今後を見透すためには歴史的な俯瞰が必要である。編集工学研究所の「情報の歴史」は政治、社会、科学、文化、芸術を歴史的に俯瞰することが出来る好書である。NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀」、「オリバーストーンが語るもう一つのアメリカ史」、「伝説の晩餐会にようこそ」は「現代」の歴史的俯瞰の素晴らしい資料で、YouTubeで見ることができる。

では、現在の地政学的な状況、国際経済、社会構造を理解するために 「現代」が作られた時代を歴史的に俯瞰してみよう。

19世紀の終わりは、ヨーロッパでは重商主義の強国が資源と市場を奪い合う帝国主義の時代であった。産業革命で先行した英国に対し、新興勢力のドイツが国力をつけ、これに割り込んで行った。

一方、新世界のアメリカも国力をつけていた。1900年には、すでにアメリカは工業生産では英国を凌駕しており、ドイツも英国には及ばないもののそれに近い工業生産をしていた。人口でもアメリカは英国をはるかに超え、ドイツも人口では英国を超えていた。

そして19世紀末から20世紀初頭にかけて、現在も存続するグローバル企業が続々と設立されている。

ドイツでは19世紀の後半から20世紀に至る間に、電機のシーメンス、化学染料のヘキスト、アスピリンのバイエル、そして化学のBASFなどが設立された。鉄鋼と兵器のクルップはこれに以前に設立されている。自動車のダイムラーとベンツもこの時代に設立された。1871年に成立したドイツ帝国の日の出の勢いが感じられる。

アメリカではこの時期、GE、ダウケミカル、 AT&Tが設立されている。火薬製造のデュポンはもっと以前に設立されている。そして20世紀に入るとUSスチール、フォード、 GMが設立されている。ボーイングもこの時代の設立である。

実は日本の明治維新は1868年で、ドイツ帝国の成立より先んじている。アメリカそしてヨーロッパの先進国に追いつくために、 1871年に明治政府はアメリカとヨーロッパを視察する107名の岩倉使節団を派遣している。そして欧米に必死で追いつく政策を進める。1896年には八幡製鉄所の設立、そして日本勧業銀行、山一証券も設立された。明治政府の危機感と志が感じられる。「坂の上の雲の時代」である。日本は「現代」が作られた時代に間に合ったのだ。

この時代のイノベーションも目を見張るものがある。 20世紀の初頭は、ライト兄弟の飛行機、アンモニア合成法、アインシュタインの相対性理論、フォード大量生産システム、真空管の発明、そして豊田佐吉は自動織機を発明し、自動車へと繋げていく。

医学ではコッホが結核菌を発見し、北里柴三郎がペスト菌を発見し、志賀潔が赤痢菌を発見している。フランスのパスツール研究所を中心に細菌学が発達して近代医学が花開いた。

以上を俯瞰的に認識すれば、まさに現代の産業の基盤はこの時代に築かれたといえる。鉄鋼業、自動車産業、化学産業、航空機産業、通信産業が経済成長を牽引し、社会を変えていった。驚くことに、多くの企業が成長を重ね、今現在もグローバルな大企業として存在している。しかし今後の成長を牽引する企業では無い。今、成長を牽引するのはサイバー空間に事業を展開する企業である。

地政学的な視点で見ると、先に述べたようにヨーロッパの強国は資源と市場を求めて激しく競争していた。アメリカもこれに加わりスペインと米西戦争を戦い、キューバ、プエルトリコ、グアムを獲得し加えてフィリピンも植民地とした。ドイツは英国、フランス、ロシアに割り込みアフリカの分割にも加わった。ドイツは強引な行動を取り次第に英仏と対立することになる。そしてヨーロッパ列強の産業強国と軍事強国という帝国主義の競争は第一次世界大戦に突入することになった。そして人類史上最悪の結果となった。

日本は、1902年に日英同盟を結びロシアと対峙することになった。この年、清朝が倒れ中華民国が成立したが、その中国はこの「現代」についていける体制ではなかった。 日本は1904年に日露戦争に踏み出し、帝国主義の競争の中に入っていった。この時ロシアの兵站を担ったシベリア鉄道は1902年に開通していた。ヨーロッパとアジアは鉄道で結ばれたのだ。その兵站能力の為か、奉天会戦以降は、戦況は膠着した。

第一次世界大戦の終結で巨大な帝国が四つ崩壊した。敗戦したドイツではベルリン革命が起こり、ドイツ帝国はわずか45年で終焉した。同じく敗戦国であるオーストリア・ハンガリー帝国は解体し消滅した。 1917年にはロシア革命が起こりロマノフ王朝は終焉した。そしてかつては北アフリカから中東、バルカン半島、黒海南岸を領有したオスマン帝国も解体し終焉した。この結果、多くの国々が独立したが地政学的には均衡がとれたわけだけではなく、むしろ不安定な状態になっていった。とりわけ、英国、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国領分割のサイクス・ピコ秘密協定は今日の中東混乱の基層である。

第一次世界大戦の終戦処理のヴェルサイユ条約は従前のスキームを踏襲し、敗戦国に過酷な賠償を請求することにし、結果としてドイツでナチスの台頭を作り出すことになった。理想主義者のアメリカのウィルソン大統領は、ヨーロッパ戦線に加わる決意をしたが、悲惨な世界大戦の結果を見て、戦争ではなく話し合いで国際問題を解決すべく、国際連盟という国際機関の創立を提案した。しかし、国内の内向的な政治勢力の反対に会い、自らは参加することがなく、彼の理想は実現できなかった。

そして1929年に世界大恐慌が始まり世界情勢は混沌とした状態となって、第二次世界大戦の勃発へと国際情勢は流れた。日本も国内の悲惨な経済状況を打破するために資源と市場を求めて満州事変を起こし、第二次世界大戦へと進み、1945年に悲劇的な結末を迎えることになる。

この時代に形成された地政学的な「現代」は、すでに存在しない。しかしこの時代に形成された「現代」は「現在」の基層となっているので、歴史的俯瞰として構造を認識しておく必要がある。ただし、以上はあくまで私個人の歴史的俯瞰であって、各位には、それぞれの歴史的な俯瞰があると思う。

1945年以降「新しい現代」が形成されることになる。次回は「新しい現代」の歴史的認識を俯瞰し、トランプ政権の成立以降の立ち位置を確認しその先を推論したい。

上記の記事は「産業新潮」に連載された記事を少し手直ししたものです。文体もメルマガとは異なります。

◆第50回記念俯瞰サロン◆
「テクノロジーとイノベーションの街 “品川”のポテンシャル再発明」
お蔭様で50回目を迎えることができました。
所長講演は、毎年1回行っていますが、今回は俯瞰研が活動の基盤としている“品川”にフォーカスして、松島所長の基調講演に加えてゲストスピーカーをお招きし、時間・会場を拡大して、地域が生み出すポテンシャルについて語り合います。ご期待ください。
開催が明後日となりますが、会場拡大に伴い、若干お席に余裕がございます。ご都合がつきましたら、ぜひ、お出かけください。
日時: 2018年1月30日(火)18時30分より(18時10分受付開始)
会場: 品川インターシティ会議室#1+2
東京都港区港南2-15-4 地下1階 (品川駅港南口)
参加費:講演会のみ 1,000円★(当日会場にて申し受けます)
定 員:90名程度
<プログラム>
基調講演:俯瞰工学研究所 所長・東京大学名誉教授 松島克守
講演? :「人・事・場所で人材交流・技術集積を図る『品川ブランド』構築に向けて」
     新日鉄興和不動産 金谷貴央様
講演? :「2020とその先に向けて 品川で推進するオープンイノベーション」
    ?電通国際情報サービス
      オープンイノベーションラボ(イノラボ)チーフプロデューサー 森田浩史様
<協賛>新日鉄興和不動産
<懇親会>講演終了後に懇親会を開催します。参加費用は、別途 3000円。
日程・内容は予告なく変更されることがありますのでご容赦ください。
<お申込み> https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/ から、お願いいたします。
★なお、第51回は、2月16日(金)18時30分より。元ソニー社長の安藤国威さんをお招きする予定です。ご案内は、2月2日以降となります。よろしくお願いいたします



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◆編集後記◆
● 相対的に弱体化するアメリカを守るために、アメリカファーストのトランプ大統領は白人から支持されているのかもしれませんね。
● 分断と格差は、金融資産で稼げる人と稼げない人の差がありますが、デジタル革命に乗り換えた人、乗れなかった人という格差ができました。
● すでに未来は起きていますから、未来予測をする必要はありません。それを直視することです。日本の製造業は技術で中国企業に間もなく抜かれることになると思います。中国の技術を侮ってはいけません。
● 日本の企業は、かなり思い切ったデジタルトランスフォーメーションをしないと生き残っていけないと思います。勝ち残るのはもう無理かもしれませんが。
● 家族のために料理を作る、最高の仕事です。
● 日本は奇跡的に欧米と一緒に近代化をして、先進国になりました。そして時代に乗り遅れて中進国になるのでしょうか。


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◆俯瞰 MAIL 0075号(2017年1月27日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人:   松島克守
編集長:   松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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