大統領を“演じられない”トランプ氏


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◆時候のご挨拶◆
ほんの前、田植えが終わって田が緑一面になったと思いましたが、もう稲穂が出て黄色く変わりつつあります。今年の夏の天候では、モミの中にお米が入っているか心配ですが、成長を目の当たりにすると生きるという実感をもらえます。もうすぐ新米が売られます。専門家の意見は新米よりもある程度熟成した米の方が美味しいということです。
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・大統領を“演じられない”トランプ氏
・北朝鮮危機で日本の政治が静かになったが
・ヤフーのオフィスに行ってきました
・第46回俯瞰サロン(9月14日開催)
  “生命情報を読み解き、生き物の新たな可能性を創造する
「ゲノム×ものづくり」で世界をリードする レリクサの仲木竜さんに聞く”
・俯瞰の書棚 “ベストプレゼンテーション”
・俯瞰のクッキング“料理の構造”
・俯瞰は学のすすめ3 時系列による俯瞰
・編集後記


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◆世界はトランプ政権の自壊を待つのか◆
“トランプ政権の、”というか、トランプ大統領の混乱が止まりません。人種差別問題で、アメリカの混乱と分断が決定的な段階になったようです。バージニア州の衝突に対するコメントが、これに火をつけた感じです。トランプ大統領自身が白人至上主義者であることを率直に語るコメント、スタッフが用意したアメリカ大統領としてのコメント、そして、原稿がないと本心そのものを素直に語るコメントになります。

アメリカ大統領は、歴代アメリカ大統領を演じてきたと思います。ブッシュ大統領は就任直後に9.11に遭遇し、テロとの戦いの先頭に立つ最高司令官を演じると同時に、世界の警察官も演じてきました。

そしてアメリカ第一主義も、ネオコンとともに推進しました。イギリスのブレア首相を誘ってイラク侵攻をしました。現在のように、シェールガスで米国が産油国になるとわかっていたら、行かなかったかもしれません。イラクはロシアの利権が強い国だったのですが。そして、個人的にはカソリックの保守的な家庭生活を見せていました。

オバマ大統領は、リンカーンの奴隷解放、長く続く人種差別に対する公民権運動の歴史、そしてハーバード大学ロースクール出身の優秀な弁護士、これらを体現するリベラルな大統領演じてきました。核なき世界を提唱してノーベル平和賞を受賞しましたが、この間北朝鮮は着々と核開発を続けてきました。ともかくオバマ大統領はアメリカの伝統的なリベラルな大統領を演じていました。

政治経験がないトランプ大統領、たぶんトランプ系企業においても独裁的な経営を行ってきたのでしょう。どんな大統領を演じるかという発想もなく、更迭されたバノン氏などの極右の思想に感情的に動かされた言動で、今日の混乱を招いたと思います。

人種差別を、ダイバーシティを優先させることによって粘り強く解消してきた歴史を、“ちゃぶだい返し”することで決定的な分断をもたらしました。

当選前からメディアとは敵対関係にあり、司法当局とも対立関係にある中で、この人種差別問題で共和党の主流派もあからさまにトランプ大統領と対立する立場を明らかにし、トランプ政権の経済政策に理解を示していた東部大企業の経営者もトランプ政権を見限りました。ビジネスの世界では、不買運動という大きな脅威があります。すでにトランプ大統領の諮問会議のメンバーの企業は、Twitterによって不買運動の波を受けていたようです。ですから、トランプ大統領と距離を置かざるをえません。シリコンバレーの経営者は初めから反トランプ大統領です。シリコンバレーは、ダイバーシティで繁栄を築いてきましたから。

黒人系は当然ですが、ユダヤ系の経済人も反トランプ大統領を鮮明にしつつあります。ユダヤ系は、金融とメディアでは極めて大きな影響力を持っています。

白人至上主義者に理解を示し、選挙前から一貫してトランプ大統領を支持してきた、保守派のメディアである米複合メディア企業、21世紀フォックスのジェームズ・マードックCEOは、社員に送ったメールで「トランプ大統領の発言は、米国人にとって憂慮すべきものだ」と反旗を翻しました。

それでもトランプ大統領は、経済人に対して「代わりはいくらでもいる」と開き直り、「米国で最も無情な保安官」を自負し、長年、中南米系の住民を「ばか」などと呼んで、差別的な取り締まりで裁判所から不当な扱いをやめるよう命じられたたにもかかわらず、この命令に意図的に従わず、7月に法廷侮辱罪で有罪判決を宣告されていたアルパイオ氏に恩赦を与えました。 

トランプ大統領の支持率は過去最低と言われてきましたが、見方を変えると約30%を推移していて、ある意味、底堅い状態です。それだけの堅固な支持層があるということです。

そして、極右のバノン氏更迭などがあっても、トランプ大統領の“快進撃”と“口撃”は続きます。「メキシコとの国境の壁は建設する。北米自由貿易協定(NAFTA)もどこかの時点で終わらせることになるだろう」と。メキシコ国境の壁については議会と対立し、予算の目途が立ちません。起こらないと思いますが、理論的にはアメリカ国債のデフォルトもありうる状態になりました。

今やトランプ大統領は、北朝鮮以上に世界のリスクとなりました。それでもトランプ大統領と最も親しい首脳は日本の安倍首相でしょうか。日米同盟は、我々、日本国民のジレンマとして、真摯に受け止める必要があります。

アリゾナ元保安官を恩赦=人種差別主義者と批判も?米大統領
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017082600389&g=int 
トランプ米大統領、2つの諮問会議を解散 企業幹部ら相次ぎ辞任
http://www.bbc.com/japanese/40957609 
トランプ大統領の「約束」
https://www.cnn.co.jp/special/interactive/35102680.html 
バノン抜きのトランプ政権はどこに向かう?
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2017/08/post-934_2.php 
米下院議長、「壁」建設予算で大統領牽制 政府機関閉鎖に異議
https://www.cnn.co.jp/usa/35106236.html 
米で反「白人主義」広がる=バージニア州衝突の余波?出会い系も「お断り」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017082600398&g=int 
トランプ氏支持率、33%に低下 米大学調査で過去最低
https://www.cnn.co.jp/usa/35105267.html 
米企業トランプに反旗 女性CEO乱を呼ぶ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO20372270V20C17A8X11000/?n_cid=MELMG002 



◆北朝鮮危機で日本の政治が静かになったが◆
北朝鮮危機で、小野寺防衛大臣と河野外務大臣が内閣の顔のようになり、そのためか安倍内閣の支持率も少し上がりました。夏休みということもあってか、安倍首相がメディアにでる回数もぐっと減りました。したがって日本の政治は少し静かになりました。

北朝鮮危機は、極めて深刻な状態になり、北朝鮮とアメリカの応酬は臨界点に近いような状態ですが、トランプ大統領と国務長官、国防長官の言動には、かなりの差異があります。トランプ大統領のバノン補佐官の「軍事的解決などない。忘れてしまえ。開戦30分でソウルの1000万人が通常兵器で死亡するという難題を一部でも解決しない限りは、意味不明だ」は、案外トランプ政権の本音ではないでしょうか。といって、外交的に決め手を欠き、アメリカも手詰まり感があります。

万が一、グアム島周辺にミサイルを打ち込めば、アメリカも何もしないというわけにはいかず、限定的な軍事作戦を起こす可能性もあるような気がしますから、日本も楽観はできません。しかし上空をミサイルが飛んで行っても、迎撃ミサイルがあっても、なにも出来ない日本です。ここに来て、揉めに揉めて成立した安保法が、日本の行動に関して、これまでにない状況を与えます。北朝鮮とアメリカの軍事衝突に、半自動的に巻き込まれる可能性が出てきました。

国内政治でいうと、衆院解散についてあれこれありますが、 この段階で安倍首相が解散に打って出るとは考えにくいです。民進党の新しい代表に前原氏が就任しましたが、野党側に自民党に対抗する勢力が形成されるにしても、時間がかかると思いますが。

文科省審議会は、加計学園の獣医学部新設認可答申を「教育環境に課題あり」として「保留」にしました。これに対し官邸がホッとしたという話がありましたが、色々指導して、その上で公正に判断したというシナリオで、この問題を収束させようと考えているのでしょう。

しかし、加計学園もいろいろきな臭い話が出てきています。建設費の水増しという森友学園と同じモデルです。加えて研究施設にバイオハザードのリスクという問題点も出てきました。地元の市民団体が活発に動いているようですから、これからも何か出てくる可能性もあります。

森友学園も森友夫妻を逮捕して補助金不正を追及していますが、捜査の本質は土地の払い下げ価格ですから、これからが本番です。

国にとってこのような議論に使う時間があれば、予算案編成で生活をどう変えていくのか、日本をどう変えていくのかという議論に時間を使うべきと思いますが、といって政治の闇を放っておくこともできません。まさにジレンマです。

景気対策という掛け声で100兆円を超える予算編成をしていますが、本当に景気が悪いのか、改めて議論をする必要があります。景気でいえば、麻生財務大臣は「戦後最長の好景気の“いざなぎ景気”を超える好景気である」とも言っていますし、企業業績は上方修正が続いています。海外で、アベノミクスは成功ではないか、という論調もあります。
確かに数字では、実質賃金は下がっているようですが、下がっているというより上がっていないという感覚が、国民の実感ではないでしょうか。あくまで東京の街で暮らしていると。景気が良くない、賃金が上がらない、といったメディアを通じたエコノミストの解説が、国民の意識をネガティブにしているというのは、乱暴な意見でしょうか。

対北朝鮮、米「核の傘」提供=安保法で協力拡大?共同文書に明記・2プラス2
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017081800092&g=prk 
加計学園の獣医学部新設認可、答申「保留」 教育環境に課題 文科省審議会
http://www.sankei.com/life/news/170825/lif1708250026-n1.html 
加計・獣医学部 “建築費水増し”指摘
http://www.news24.jp/articles/2017/08/24/07370591.html 
加計学園 市民団体「研究施設にバイオハザードのリスク」
https://mainichi.jp/articles/20170824/k00/00m/040/136000c 
9・25解散なら10・22総選挙でモリ・カケ封じなるか!?
https://www.youtube.com/watch?v=pu5q8TCdoKc 
真夏の珍事? 景気も企業業績も絶好調なのに株価下落
https://japan.zdnet.com/article/35105764/ 
“アベノミクスは正しかった” 海外メディアが安倍首相の手腕を再評価
https://newsphere.jp/economy/20170520-1/ 


◆宇宙開発という既に起きた未来◆
人工衛星「みちびき」の打ち上げが成功しました。 あといくつか打ち上げると、現在10メートルくらいの位置情報の精度は、センチ単位になると言われています。これは異次元の世界です。大袈裟に考えると、スマートフォンが10年で世界を変えたように、 10年で世界を変えていくかもしれません。

「みちびき」という大型衛星とは別に、低コストの小型衛星が多数打ち上げられていきます。この新しい事業分野にベンチャー企業が多数参入しています。海外でも盛んですが、日本でも次々とベンチャー企業が参入しているのは心強いです。

大きな可能性がある新しい世界が若い日本人の前に広がっていて、それに向かって夢と人生をかけていく状態は、明るい日本の未来を想像させてくれます。

インターネットやスマートフォン、そして衛星の情報、これらを組み合わせて新しいビジネスを開く、これはまさにイノベーションです。すでに起きた未来です。

人工衛星「みちびき」、GPS誤差数センチを実現する「知られざる技術」
http://biz-journal.jp/2017/08/post_20158.html 
低コスト・短期開発の人工衛星公開 「アスナロ-2」
http://www.asahi.com/articles/ASK894Q0ZK89UBQU00L.html 
宇宙への挑戦続く=民間ロケット、小型衛星に商機
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017080201043&g=eco 
宇宙開発×ベンチャー企業一覧 日本編 2017
http://sorabatake.jp/space-news/gn_20170514 


◆ヤフーのオフィスに行ってきました◆
旧赤坂プリンスホテルの跡地に立った東京ガーデンテラス紀尾井町に、1年ほど前に移転したヤフー本社のオフィスに行ってきました。

目的は、今話題の働き方改革の勉強です。残業規制や休暇取得もありますが、オフィスが変わらなければ働き方は変わらない、オフィスを変えれば、働き方が変わると考えておりますから。

個人的にはオフィスの移転はいくつか経験してきました。六本木から箱崎に大移動した日本IBMの時も、大きくオフィスが変わりました。当時珍しかったフリーアドレスです。当時は携帯電話やスマートファンがありませんから、固定電話を設定する必要がありました。フリーアドレスといっても、毎日同じ席に座っている人が結構多かったですね。目の前のパーティションにポストイットなどを貼って、ある種のマーキングをしている人が結構いました。

恵比寿ガーデンプレイスのプライスウォーターハウスに移籍した時、ワンフロアでしたが、完全フリーアドレスでした。それでも結構、毎日同じところに同じ人がいましたが、経営者の色々な想いが込められていたオフィスでした。そして年間1万人以上の見学者がありました。

この間、何度もアメリカの西海岸や、IBMのオフィスに行きました。オフィスの形がIBMとマイクロソフトでは全く違いました。 IBMは山の中でも高層ビルです。エレベーターでフロアを移動するわけです。リッチモンドのマイクロソフトの本社に行ったときにIBMとマイクロソフトとの違いに愕然としました。

マイクロソフトはキャンバスという作り方で、低層の建物が広い林の中に点在していました。中心部に大きな食堂があって、そこに集まることで、社内の出会いやコミュニケーションを図っていました。各ビルの中には大きなキッチンがあって、ランチを暖める電子レンジや、大きな冷蔵庫には自由に飲めるソフトドリンクが入っていました。テニスコートでテニスをしている人もいました。質問すると、能力がある人は仕事が早く終わるので、その時間を自由に使えば良い、ということでした。納得です。 IBMでは決して許されないでしょう。そして日本の企業でも。

あれから30年近く経ちました。会社の規模は完全に逆転しています。自由闊達に働いていた人々の方が結果を出しています。

Googleの本部は広い土地に広がっています。高層ビルを立てませんから。中心は、以前にシリコングラフィックスがキャンバスとして建設した施設です。真ん中に大きな食堂、今となっては“ささやかな食堂”があります。そこでは、アメリカ料理は当然、イタリア料理、メキシコ料理、中華料理、そして和食の蕎麦や寿司もあります。全部無料です。この食堂で社内のオープンイノベーションが起きているのでしょう。近年、年に一度社員の友人を頼ってここで食事をします。 Googleという会社を肌で感じる場所です。

Googleはマイクロソフトの20年後の創立ですが、時価総額はマイクロソフトを抜いています。 IBMの時価総額はGoogleの3分の1以下です。同じアメリカの中で、この30年間の働き方の違いでしょうか。IBMはクラウドコンピューティングという事業でも大きく出遅れています。

ヤフーのオフィスは、西海岸では当たり前というか、西海岸の水準でした。徹底したオープンイノベーションを追求しています。外部の人が自由に使う空間が広くとってあります。その作り込みの中に“ヤフー”という会社の企業理念とブランドがあります。

床の一部はあえて床材を張らずに、コンクリートのままでした。まだまだ社業は未完成だという意識を再確認するためだとのことでした。素晴らしい考えです。

むろんフリーアドレスです。 6,000人のフリーアドレスです。 エンジニアの一部は当初は戸惑ったようですが、今は慣れたことでしょう。フリーアドレスでも、グループが近くにいると仕事がしやすいので、そういう形になります。ときどきシャッフルデーをするそうです。今回は見学グループが大人数なので食堂には行きませんでしたが、ネットで見ると、かなりのレベルです。一般の企業の社食の食事とはかなり違います。というより一般企業の社食の質が低い、もっと美味しいものを!

ヤフーは社員のコンディショニングを重視しています。心身の健康はもとより、その元となる食事に気を使っています。外部の人も、Suicaがあれば社員食堂で美味い食事を食べられるそうです。体験してみてはいかがですか。“ローストビーフ丼”いかがですか。

オープンスペースも基本的に無料で利用可能です。そのスペースを利用して仕事をしている人もいます、自分でセミナーを開催している人もいました。キッチンもその空間にありました。クッキングパーティができる感じでした。

ちなみに、市場からどのように評価されているか見てみました。最近の数字ですが、 1株当たりの利益と株価の倍率であるPERは21、時価総額と純資産の割合であるPBRは2.9です。比較的似た事業展開をしている富士通のPERは19、 PBRは1.9です。 NECのPERは28、PBRは0.9です。市場は気まぐれですが、証券アナリストが精密な分析をした結果ですから、市場からかなりの評価を受けているといえます。 NECのPBRが気になりますね。

企業で働き方改革を議論している人、社員をエンパワーメントして業績を改善したい経営者は、このオフィスを見ると何をすべきか分かるでしょう。会社を変えるのは人事部です。働き方を変えるのは、オフィスです。在宅勤務がソリューションではありません。家庭内に生産性が上がるようなオフィス空間を持てる人は、ほとんどいません。良くて近所のスタバです。

それで私も、小さな実験をしました。DMG森精機の潮見に先端技術研究センターを開設して新しいコンセプト“ずっとここにいたい!”と思わせるオフィスを作りましました。下記。

http://www.etl-dmgmori.com/ 

LODGEは、ヤフー! JAPANのオフィス内に誕生した日本最大級のコワーキングスペース
https://lodge.ヤフー.co.jp/ 
ヤフー新社食の「ローストビーフ丼」は絶品-外部の人もSuicaで利用可 (1/2)
https://internetcom.jp/201658/ヤフーfood 
会社見学についての申し込み
https://about.ヤフー.co.jp/info/tour/ 



◆第46回俯瞰サロン (9月14日開催)◆
? Decoding Life, Creating Future ?
生命情報を読み解き、生き物の新たな可能性を創造する
「ゲノム×ものづくり」で世界をリードする レリクサの仲木竜さんに聞く

地球上のあらゆる生物が持つ、固有の生体設計図「ゲノム」。生物は、このゲノム情報に基づいて形作られ、その僅かな違いがそれぞれの個性を生み出していることは知られています。
ゲノムには、ゲノム、エピゲノム、メタゲノムの3つのゲノムがあるのだそうです。
生まれ持った遺伝情報そのものが「ゲノム」で、後天的なゲノムの活性・相互作用の変化が「エピゲノム」。このエピゲノムの変化は、外部環境の状態・変化と密接な関係があり、外部環境を評価する方法の1つとして、土壌や水、肌、糞便における微生物の集まりの解析が有効とされ、これらのサンプル中に存在する微生物のゲノム集団が「メタゲノム」と呼ばれているそうです。

生体制御メカニズムを解明する上で、ゲノム、エピゲノム、メタゲノムすべての情報を組合せ、統合的に解析する必要があり、近年のゲノム科学の発展により、それら3つのゲノム分野において多数かつ大規模なデータが得られるようになりました。

株式会社Rhelixa(レリクサ)は、専門研究機関においてゲノム情報(またはエピゲノム・メタゲノム情報)の大規模解析プロジェクトを主導した研究者によって設立されました。独自のゲノム解析・編集技術を用いることで、ゲノムとエピゲノムのデータを繋ぎ、更にはメタゲノムデータを加えた統合的な解析、製品開発を可能としています。
「ゲノム×ものづくり」で拓かれる世界を垣間見たいと思います。

講師 仲木 竜さんプロフィール:
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。 計算生物学者。次世代シーケンサーより得られた大規模ゲノム・エピゲノムデータの専用解析アルゴリズムの開発・応用を専門とする。
2015年2月に株式会社Rhelixaを設立。代表取締役。

日 時: 2017年9月14日(木)18:30-20:00 (18:15 受付開始)
会 場: 品川インターシティ会議室5
    東京都港区港南2丁目15?4 地下1階 (品川駅港南口徒歩5分)
参加費:講演会のみ 1,000円★
定 員: 50名程度 (定員になり次第、お申込みを締切ることがあります)
懇親会: 講演終了後に懇親会を開催します。
参加費用は、別途 3000円程度。
お申込みサイト:https://www.fukan.jp/俯瞰サロン/
※日程・内容は予告なく変更されることがありますのでご容赦ください。


◆俯瞰のクッキング “料理の構造” ◆
まず最近よく作るのが、“茄子のステーキ”です。大きい「米茄子」を3センチぐらいの厚さの輪切りにして、油で両面をゆっくり竹串がすっと通るまで焼きます。その上に市販の柚子味噌や醤油をかけて食べるのです。単なる“茄子のしぎ焼き”です。ただ厚くて大きな茄子を、ステーキを焼くようにゆっくり丁寧に焼く気分がいいのです。先日は直径10センチ厚さ3センチでした。茄子の真ん中を使いますから、前後の端は2センチ角くらいに切って、油で炒めて味噌汁の具にします。

といった感じで毎日料理を楽しんでいますが、どんな料理を作るかを自分がどのように考えているのか、これを分析してみました。これが添付の「料理の構造」です。

まず、食材ありきです。その上で、生を含めた火の入れ方、粉を叩くとか衣つけるとかいった処理、タレとかソースの選択、そして一番考えるのが美味しい辛味と美味しい塩味です。

美味しい辛味と美味しい塩味には、共通項があります。それは発酵食品です。単なる塩、胡椒でも十分美味しいですが、アンチョビのような塩味は別次元の味です。辛味にしても、豆板醤は単なる唐辛子と全く違います。この美味しい辛味、美味しい塩味には、長年こだわってきました。ですから我が家の冷蔵庫の中には、買い集めた美味しい辛味と美味しい塩味の調味料がたくさん備蓄されています。最近塩麹が流行っていますが、これも味しい塩味です。タイ料理のトムヤムペーストも最近よく使います。鶏肉などに揉み込んで焼きます。ナンプラーも出番が多いですね。

この美味しい塩味と美味しい辛味の原点は、デビットロースの料理の三角形です。その延長で、洋の東西を問わず美味しい料理は、美味しいたんぱく質と美味しい塩味と美味しい辛味の組み合わせだと、勝手に決めつけました。

まず美味しいマグロ、美味しい辛味のわさび、美味い塩味の醤油です。 美味しい肉、美味しい塩、美味しいマスタードですね。我が家では、ステーキは野沢菜と一緒によく食します。野沢菜が美味しい塩味です。これに、醤油とワサビです。ローストビーフには、美味しいホースラディッシュが欠かせません。中華料理にも美味しい塩味と美味しい辛味の食材が、たくさんあります。美味しい塩として、豆鼓はよく使います。
参照: 添付pdfファイル 図1_料理の構造



◆俯瞰の書棚 ”ベストプレゼンテーション“◆
今回の紹介は「ベストプレゼンテーション マスターすべき98のスキルとトレーニング」William R. Steele 2017年 すばる舎 です。

この本はプレゼンテーションの基本を解説する本ではなく、上級者向けの本です。表紙にもありますが「伝えたつもり」でも「伝わって」いなければ意味がない、メッセージと信用がしっかり「伝わる」技術と方法を学ぶ本です。

98のスキルは10章にわたって紹介されています。

第1章「計画」には、23のスキルが紹介されています。興味を引いたものは、「まずブレストしてからシナリオを考える」、「ストーリーで話す」、「データに命を吹き込む」、「強く初めて強く終わる」、「途中要約を入れる」です。

第2章「スライドの準備」には、7つのスキルが紹介されています。「メッセージが先、スライドはあと」、そして「時にはスライドを消して話す」、「指定したスライドに飛ぶ」、といったPowerPointの機能と操作に関する助言があります。

第3章「練習」には5つのスキルが紹介されています。「練習では必ず声に出す」、「導入部をしっかり練習する」が改めて参考になります。

第4章「チーム・プレゼンテーション」の4つのスキルの中では、「全員で計画する」、の重要性を再確認しました。

第5章「伝わるための戦略」にある11のスキルでは、「場の雰囲気を握る」、「聞き手のストーリーから始める」、「繰り返さなければ伝わらない」は重要です。

第6章「講演台でのスキル」にある10のスキルの中では、「声で熱意が伝わる」、「沈黙(間)の効果」は、上級者のスキルですね。

第7章「言葉の使い方」にある5つのスキル中では、「陳腐な常用句は使わない」です。

第8章「質疑応答」では、「質問は褒めない」、「聴衆全体に答える」も上級者のスキルです。 第9章「反対意見の対応」には12のスキルがあります。これは日米の違いが出ています。日本では質問そのものが少ない上に、あからさまに反対意見をぶつける人はほとんどいませんが、アメリカではディベートの文化の影響でしょうか。

第10章「バーチャル・プレゼンテーション」とは、ネット上の遠隔地からのプレゼンテーションです。最近ではテレビ会議システムを活用した会議が多くなっていますから、このスキルも重要です。なにしろ目の前に聞き手がいないのですから、「意識して聞き手を参加させる」、 「ボディ・ランゲージを『聞かせる』」 とは、目の前に聞き手がいなくても物理的に動きを持つことによって、声に抑揚つけるスキルです。「モニターでなくカメラを見る」はわかりやすいですが、「画面を静止させない」のスキルは重要なアドバイスです。すなわち1枚のスライドで長く話すことをやめ、少し多めのスライドを次々と写した方が、相手の集中力を引っ張っていけるということです。参考になりました。

最近は、プレゼンテーションは日常的なコミュニケーションの手段ですが、かなりベテランだと思っている方も、この本を読めば1ランク上の水準になり、「伝わる」技術をさらに磨けると思います。自分はプレゼンテーションはデキルと思っている人に、ご一読をお勧めします。



◆俯瞰学のすすめ3 時系列による俯瞰◆
日本経済の3フェーズ

俯瞰学の技法にはいろいろあるが、解り易くて強力な技法は時系列的な俯瞰である。長期的な時系列データは、日常的な狭い視野で失われていた大局的な事実を再発見させ、現在を正しく再認識させてくれる。

日本経済について、様々な解説がされているが、1956年から2012年までの経済成長率の時系列データを見ると、日本経済に3つのフェーズがあり、現在は第3フェーズにあることがわかる。

第1フェーズは1956年から1973年のオイルショックまで、平均約10%の高度成長期である。東京オリンピック、そして大阪万博という日本が先進国になる時期である。この時代は新幹線、高速道路、首都高速というインフラが整備され、住宅には水洗トイレが普及していった時代であった。食卓にも肉が並ぶ時代でもあった。日本は昭和22年まで平均寿命は50歳以下であった。国民全体が栄養失調の時代がやっと終わり、平均寿命はぐんぐんと延伸し、子供たちの身長もどんどん伸びていった。1967年日本の人口は1億人を超えた。未来に対する不安は誰も感じていなかった。

そしてこの時代は「作れば売れる時代」であった。なにしろモノがない時代であった。カメラが欲しい、テレビが欲しい、車が欲しい、しかし手が届かない、 2 DKの団地が高倍率の抽選で当たると夢のような生活が始まる、そんな時代であった。

石炭、鉄鋼、肥料、石油化学といった重化学工業の産業に次いで、自動車と電機、機械という生活に密着した産業が急速に成長した。ソニーやホンダが創業した時代である。カメラやトランジスタラジオが、輸出の花形であった。安くていいものを作れば、飛ぶように売れた。力強い需要が日本はもとよりアメリカやヨーロッパにもあったから、輸出によって日本の製造業は急成長していった。 なにしろ1ドル360円というとんでもない円安の時代であった。

第2フェーズは、オイルショックというハードランニングで始まった。 74年からバブル崩壊の1991年の期間である。この時代、経済成長率は約5%である。

第4次中東戦争の影響により、原油価格が約5ドルから12ドルに不連続的に高騰した。これは低価格の石油によって、エネルギー革命を成し遂げていた日本経済を直撃した。 1974年には、高度成長からいきなりマイナス成長になった。オイルショックは日本経済に大混乱をもたらした。国民全体がパニック状態になり、今では考えられないトイレットペーパーの買い占めというような荒唐無稽な行動に、皆が狂奔した時代でもあった。

その後の1980年の第2次オイルショックでは、原油価格は一時は40ドルに近い水準になった。わずか数年間で、5ドルの原油価格が40ドルに迫った。ありとあらゆる知恵を絞った省エネルギーの努力がなされた。結果として日本は、産業の構造改革が進んだ。日本人はがむしゃらに働いてこの石油ショックを乗り越え、結果として80年代は日本の黄金時代となった。

鉄鋼業、造船業、半導体産業、自動車産業と製造業が世界一になり、世界第2の経済大国となった。今では考えられないが、米国から日本式経営の研究に来た。アメリカは属人的な日本式経営のノウハウを科学的なシステムとして取り入れて、その後の成長に繋げていった。例えばQCサークルはSIX SIGMAという経営管理技術として移転された。
1989年12月29日には日経平均株価3万8,900円を超えた。

1991年、経済の実態と大きく乖離した不動産バブルは日銀の金融引き締めによって終焉した。この時就職活動をしていた学生は、いきなり氷河期に突き落とされた。その人達もいまや45歳を超えた。失われた20年と今でも口にする人がいるが、 45歳以下の人たちにとって失われたものはない。

バブル崩壊というハードランニングで日本経済の第3フェーズが始まって、今日に至る。この間、経済成長率は約 1.5%である。2%近い成長率であった日本経済も、リーマンショックで再びマイナス成長に落ち込んだが、国民全体の忍耐と努力によって1%の水準に戻し、第4フェーズに転落することはなかった。

この第3フェーズではデフレ脱却ということで巨額の国債が発行されたが、何の効果も生んでいない。さらに追加の国債を発行するというが、何か判断ミスがあるとしか思えない。

中国経済の減速が世界経済変調の原因と言われているが、ニューノーマルへの移行は、日本経済の俯瞰的な認識に立てば、中国も第2フェーズに入ったと言える。公式には6%を超える成長率を発表しているが、 5%が適切な成長率であろう。

今一度全体を俯瞰してみると、第1フェーズは作れば売れる時代、第2フェーズは差別化をしないとテレビも自動車も売れない時代、第3フェーズではモノに関しては完全に充足されてモノの需要は弱い。代わって生活や精神面に関する需要は強い。生活者が抱える社会的な課題を解決する産業や事業の時代となった。国内では、医療・健康、安全・安心、再生エネルギー、環境保全に関連する事業で成長するしかない。ただ、顧客にとって差別化にならない差別化戦略で崩落していた電機産業を目の当たりにすると、第1フェーズや第2フェーズの体験を持った高齢の経営者は、まだその時代感覚で経営しているのではないかと思われるふしがある。そして第1フェーズで建設された郊外の団地や住宅地に現在の日本経済を作り上げた人たちが静かに暮らしている。
参照: 添付pdfファイル 図2_時系列で俯瞰:経済成長率
この記事は「産業新潮」に連載された記事を少し手直ししたものです。文体もメルマガとは異なります。



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◆編集後記◆
・日本の経済を冷静に認識する必要はないでしょうか。いざなぎ景気を超え、求人倍率、企業の業績、株価、・・至らない点だけフォーカスするメディアもいかがかと。前向きの評価することが日本人は苦手?
・北朝鮮のミサイル発射の前日は、何故か二度も安倍首相が永田町の公邸宿泊とは、官邸の情報収集能力もかなりのものか。
・今一度日英同盟は、このEU離脱のタイミング、対ロシア、対中国で共調対応をするために。日英双方にあまり難しい課題はないので、進むのではないでしょうか。
・重なる麻生財務大臣のナチス肯定の発言と発言取り消し。もう一度首相という野心があるという話もありますが、トランプ的資質は十分にありますね。
・大同団結で政権の受け皿ができる?リーダーはだれか。想定内に小沢一郎氏を入れるか。反米だが骨はあるか。
・情報革命、インターネットは始まったばかり、これからが勝負と考えて、すぐ行動を始めれば、まだ間に合う。動け!日本! ======================================
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◆俯瞰 MAIL 0071号(2017年9月3日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人:   松島克守
編集長:   松島克守
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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