歴史の流れに逆走するのかトランプ政権


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◆時候のご挨拶◆
桜の開花です。花見です。日本人はなぜか桜の花に精神が高揚しますね。以前は入学式の時が満開だったと思います。温暖化で早くなりましたが、花冷えは依然来ます。
新しい出立の季節です。社会に出る若者8人と「最後の晩餐」をしました。何が最後か、このコミュニティが全員集まって食事するのは最後になるかもしれない、ということです。そして、私がご馳走するのもこれが最後ということで、皆で笑いました。これからキャリアを始める若者と食事をするのは、大学の教員の役得ですか。
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●歴史の流れに逆走するのかトランプ政権
●始まった英国EU離脱交渉
●「豊洲」と「森友」二つの証人喚問
●第41回俯瞰サロン“マインドフルネスの奥にあるもの”
●俯瞰のクッキング“ベランダのハーブ園”
●2020年以降の世界6 “リアル紙幣が消滅”
●俯瞰の書棚“人口と日本経済”
●編集後記

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◆歴史の流れに逆走するのか、トランプ政権◆
トランプ政権が発足して早3ヶ月ですが、依然として政権の体制が出来ていないようです。相変わらず選挙公約を実行する大統領令を連発していますが、さすがアメリカは民主主義です。ガバナンスが効いています。移民関係は司法が止めていますし、情報機関もトランプ周辺の人物の調査を進めています。健康保険も議会が承認していません。もっと厳しくせよ、という保守派が止めているのが気になりますが。減税も苦戦しています。輸入関税を上げれば小売価格が上昇しますから、小売業界は大反対です。
しかし、オバマ政権が苦労してとりまとめた環境規制からの後退は、トランプ政権の社会に対する責任感の無さと、知性の貧困の露呈です。暴挙です。地球温暖化の責任国は、米国、欧州、中国、インド、そして日本です。下にあげたURLのカルトグラムを見れば歴然です。
当初静観して、様子を見ていた人たちも発言するようになりました。パリ協定脱退には、GEのイメルト会長、エクソンモービル、その他の企業も反対の声を上げました。
ドイツのメルケル首相との会談で目線も合わせず、握手もしなかったトランプ大統領は、突然33兆円のNATO の国防費の請求書をメルケル首相に出したという、とんでもないニュースもあります。 側近を身内で固めていますが、彼を含めて政治と政策の素人ですから、周りの官僚システムが、きちっと働いていないことが暴走を許します。
自動車業界に対しては、燃費基準の緩和をする代わりに雇用拡大を要求していますが、燃費規制の緩和は結果として、アメリカの自動車業界の国際競争力を落とすことになるだけでしょう。
これ以外にも色々ありますが、ともかく何をするか分からないというトランプ大統領に、当分の間、世界は振り回されることになるでしょう。株式市場の方は、そろそろトランプ相場に対して警戒的になってきました。
トランプ大統領の支持率は、37%との就任以来最低の水準となり、不支持の割合は58%だと報道されていますが、このままいけば中間選挙で大敗します。これを挽回するために変なことしないといいですが。

グローバル経済を推進し、そして放棄するアングロサクソン
地球温暖化の責任国が一目でわかる世界地図
http://www.gizmodo.jp/2014/01/post_13822.html
トランプの「反・温暖化対策」に反対する意外な面々
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7285_1.php
トランプ大統領:自動車各社に雇用拡大要求?燃費基準緩和の方針示す
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-16/OMVXT86JTSE801
トランプ大統領、メルケル首相に3000億ドルの請求書。国防相マティス大将も仰天
https://hbol.jp/135016
地図であぶりだす未来 トランプ後の真実を読み解く
https://dot.asahi.com/aera/2017021300068.html


◆始まった英国EU離脱交渉◆
いよいよ、英国EU離脱の交渉が始まりました。早くも多くの困難が指摘されています。離婚という言葉がよく使われていますが、長い間の澱が出てくるのでしょうか。 未払いのEUの分担金も火種ですが、約束した金を払わないという事は、先進国としてできないでしょう。
EUのほうは、今後の見せしめに基本原則は譲歩しないと、これもかなり感情のボルテージが上がっています。 EU離脱は、とりもなおさず英国第一主義ですし、 EUは英国離脱の損害を最小限にすることが基本戦略です。短い時間での交渉ですから、不完全な状態で離脱交渉が終わると、過渡的な状態が続き、英国とEU双方の経済が停滞し、世界経済にも大きな波紋を広げるのが心配です。で、どうするか、誰も答えを持っていないでしょう。
英国のEU離脱によって経済的な影響を受けそうな加盟国として、アイルランド、オランダ、ベルギーなどが上げられていますが、 EUもこれの国々を支援していかないと団結が乱れます。特に厳しいといわれているのはアイルランドで、輸出先としての英国や直接投資の拠出国としての英国、移民供給先としての英国などの観点から見ると厳しいです。
英国に住んでいるEU諸国の国民と、 EUに住んでいる英国人の処遇をどうするかは大問題です。カルトグラムで見ると、ポーランドを中心とした東欧諸国の移民と出稼ぎが英国に多数いることが判ります。アイルランドも大きいです。一方、英国人はスイスとスペインに多数移住していることがわかります。当然ですが、キプロス島にも多数いるようです。
企業のほうは、金融業は、すでに拠点をEU内に準備しつつあるようで、ロンドンのシティの不動産価格は下落しているようです。国際金融の中心はニューヨークに移るのではないかとも言われています。英国には、日本の製造業がたくさん生産拠点を展開していますから、 EUとの貿易交渉は日本も傍観できません。

英国EU離脱で最も影響を受ける国はどこか
http://toyokeizai.net/articles/-/165352
EU離脱後の英国、自由貿易擁護者の役割果たす=メイ首相
http://jp.reuters.com/article/britain-eu-may-davos-idJPKBN154087
新しい地図で見るブレグジット EU離脱に見る分断
https://dot.asahi.com/aera/2017021400056.html
英国への移民が多い国、英国からEUに移住している英国人
http://www.viewsoftheworld.net/wp-content/uploads/2017/03/UKEU_MigrantsMaps.png



◆「豊洲」と「森友」二つの証人喚問◆
東京都の百条委員会の証人喚問をTVで見ましたが、都議会側の力の無さに唖然です。石原慎太郎・元知事の懐刀といわれている浜渦武生・元都副知事は、土壌汚染対策費が膨らんだ一因と指摘される東ガスとの2者間合意は、「知らない」と責任を堂々と否定しており、追求している都議会議員の方がおどおどしている感じです。
石原慎太郎・元知事は、さすがに持ち前の傲慢な態度はありませんでしたが、歩行の状態を見ると相当体力が弱った感じで、気力も落ちているのでしょう。しかし、東京ガスとの交渉は部下に任せて、上がってきた結論を決裁しただけで、詳しい事は記憶にないと発言しており、私もそう思いました。通常の意思決定のモデルで考えれば、都知事が契約書の内容を見ることはないでしょう。
また「部下に一任した」は事実でしょう。東京ガスとの交渉が進捗しないので、交渉人を腹心の浜渦氏に代えて「君にまかすから、早く纏めてくれ」と彼に一任したと思います。そして、浜渦氏は水面下でいろいろなやりとりをして、短期間に決着させたわけです。そして、その後の処理は事務方に一任したはずです。組織人間としての私から見ると、ごく標準的なプロセスです。一任するということは、細かいことに口を出さないということですから、詳細は頭に入っていないでしょう。加えて、石原、浜渦両氏は、契約書の精査専門的な能力はありませんから、興味もなかったでしょう。東京都には極めて優秀な官僚組織がありますので、任せるのは当たり前です。問題は、東京都官僚の隠蔽体質と無責任が問題の本質です。
安全と安心に関しても明快で、安全は科学が判断するので専門家から安全という判断をもらっています。そして、地下の汚染された土壌の地下水を使用しないので、土壌汚染の問題と安全は切り離して判断しています。今回の専門家会議も同じ判断です。盛土については、地下3階建くらいの駐車場作った方がいいのではと提案して笑われたと証言しています。これも合理的な意見だと思います。
そもそも、この証人喚問は何を引き出そうとしたのか、疑問に思いました。いろいろ情報を合わせて考えると、 豊洲移転は石原慎太郎氏が知事になる前から東京都の内部で検討されていたオプションで、オプションは複数あったかもしれしませんが、豊洲移転が事務方の「結論」で、それで行こうと「決心」をしたのが最高責任者の石原慎太郎だったのでしょう。このプロセスも意思決定モデルの標準形です。石原慎太郎・元知事に説明させるのではなく、東京都の事務方が豊洲に決定された事情を説明する責任があります。知っているはずですから。石原慎太郎・元都知事が責任を感じて謝罪する話ではないと思いました。
膨大な土壌汚染処理のお金について、適切かどうかの議論はあまり行われていないので、びっくりです。この金額は、いわゆる水面下の交渉で、ある種の「握り」があったと思います。これも交渉の常ですから。しかしビジネスとは違い、税金を使う話ですので、これはきちっと水面の上に出して都民に見せる必要があります。そこの質問が何もないのです。
これは、私が考えたモデルですが、豊洲の東京ガス工場の敷地は、都心に近く大規模です。 旧石川島播磨重工業の工場跡地は、ショッピングモールとオフィスビル、タワーマンションとして大規模に開発されています。これと同じような大規模な再開発の計画を東京ガスが企画・策定していたとすると、投資額と完成後30年程度の収入からなるビジネスプランを作ります。そして将来の収入は金利で割り引いて現在価値に戻します。その金額をもとに事務方と交渉が進み、事務方も納得した金額になったのではないかと思います。金額そのもが適切か判断できませんが、仮に私がこの交渉の当事者であればこのような数字の論理は必要になります。拙速もあったでしょうが、この中に政治家の思惑はあまり入っては居ないのでないかと思います。しかし、東京都と東京ガスのテクノラートは、日本人ですから、ある部分、今、流行の「忖度」は少しあったかもしれず、これは明らかにする必要があります。
安心は精神的なものですから、少し時間をかけて処理していく必要があります。小池知事も「結論」は出ていますから、できるだけ早いタイミングで「決心」する必要あります。そして、事務方がその後「フォロー」するのが、意思決定のプロセスです。大学のゼミで意思決定の論文を学生に読んでもらっています。 「意思決定はプロセスである。それは準備、決断、フォローのプロセスである」という論文です。
森友学園の籠池泰典氏の証人喚問は、多分多くの人が事前の予想とは違う印象を持ったと思います。いろいろある人のようですが、当日の証言は正々堂々として証言としては問題ないと思います。弁護士の後見人もしっかりしていたのでしょう。事前に資料も用意してあり、見事にあのファックスが出てきました。この事件ですべてを失うことを覚悟しているのでしょうか、冒頭の10分間の陳述はある意味見事でした。与党の質問は意地悪で、偽証罪で恫喝するようなものがありましたが、彼は終始一貫して正々堂々としていて、なぜか少し好感を持ちました。
それにしても100万円の問題が偽証であるとするならば、安倍夫人の証人喚問は必須です。また、夫人付の秘書の谷さんの独断というイメージの話では世間は納得しません。
この事件では「忖度」という、ほとんど使われていない日本語が多用されていますが、大阪府の小学校設立認可と財務省の払い下げは、「忖度」としては度が過ぎていますから、事情は国民の前に明らかにしなければなりません。たくさんある日本の政治の闇の事例の一つが、露呈してしまったわけです。
それにしても、これに関する安倍首相の答弁が感情的で、むしろ何かがあると感じさせるような言動です。それにしても安倍夫人と籠池夫人の濃密なメール交換も異常です。それを公開するという政権側も何を考えているのか理解できません。そのメール中では、安倍夫人は100万円を渡してないとはっきり否定をしていません。祈るだけですか。
当初籠池氏の証人喚問に反対していた自民党が急遽証人喚問に応じ、そしてメールを公開するという行動に出ていますが、この件の政権側の司令塔がぶれているのではないでしょうか。森友学園を長々と処理している間に別の醜聞も出てきています。
しかし、これだけのスキャンダルのネタがありながら、自民党は次回の総選挙で議席を減らすことがあっても、政権交代にはならないでしょう。民進党をはじめ、あまりにも野党が頼りないからです。ともかく国民は、民主党政権の失政の記憶が強烈ですから。といって自民党内の代わりの人材は今のところいません。最初に「私か妻が関係していたら、議員も大臣もやめます」という感情的な一言が重荷になっています。
予算案は通過しましたが、重要課題は満載です。そして隣の韓国がグチャグチャです。韓国はともあれ、北朝鮮問題は日本にとって、近年にない安全保障の危機です。万が一にもアメリカが軍事行動とれば、北朝鮮は日本列島の米軍基地へミサイルを撃ちこむしかありません。大被害が予想されている南海トラフ地震よりも、確率は高いかもしれません。基地周辺の住民をどう守り、どのように避難させるのか議論されているのでしょうか。
浜渦氏「都と東京ガス合意、役人が勝手に」 豊洲百条委
http://www.asahi.com/articles/ASK3M4RCJK3MUTIL00V.html


◆第41回俯瞰サロン◆
近年、シリコンバレーやウォール・ストリートの企業が、心の安定と能力向上の目的で導入し、日本でも注目を集めている、瞑想を基本としたマインドフルネスとは?
組織開発の専門家で経営学博士の小森谷浩志さんにうかがいます。
※すでに満席(3月17日時点)で、お申込みを締切っています。
 案内をご希望の方は、webmaster@fukan.jp宛て、
「俯瞰サロン案内希望」としてメールをお送り下さい。

日 時: 2017年4月5日(水)18:30-20:00 (18:15 受付開始)
主 催: 俯瞰工学研究所
会 場: 東京都港区港南2丁目14番14号
     品川インターシティフロントビル 6階
参加費: 講演会のみ 1,000円、懇親会3,000円



◆俯瞰のクッキング “ベランダのハーブ園”◆
ベランダで鉢植えのハーブを栽培しています。いま栽培しているのはローズマリー、マジョラム、イタリアンパセリ、パセリ、セージ、バクチー (香菜)、 レモングラス、山椒、コブミカンです。春になったので、バジルも始めます。以前はローレル(月桂樹)もありましたが、水やりの失敗で枯れてしまいました。
水はタイマーをセットした自動給水です。ですから長期に家を空けていても問題ありませんが、いちど月桂樹の給水ノズルが外れているのに気がつかず枯らしてしまいました。今は乾燥のローレル(月桂樹)の葉を使用しています。
山椒はアゲハ蝶の幼虫に一日でやられてしまって、今も元気がありません。網をかけておかないと、ベランダには置けません。コブミカンは室内に置いて、アゲハ蝶の産卵被害から守っています。
無論、これらのハーブは料理用です。実はそれほど使うわけではなくて、ベランダにあるとなぜか楽しい気持ちがするからです。生き物を育てると言う事は、心を癒すと思います。
セージは、イタリア料理のサルティンボッカを作るときに使います。本来は仔牛肉ですが、日本ではあまり見かけませんから、豚のロース肉の脂を除き、叩いて薄くのばし、セージの葉を載せ、生ハムをその上に置き、ラップを置いて手で押して密着させます。小麦粉をはたいて、これを多めのバターでソテーして、生クリームを少し入れて仕上げます。生クリームがないときは、牛乳で代用します。
以前は、セージを使って生ソーセージを作りました。ソーセージは「ソー(雌豚)」と「セージ」の合成語という説もあります。肉引き器があれば市販の塩漬けの腸で簡単にできます。
マジョラムとかイタリアンパセリとか、いくつかのハーブは刻んで、パン粉とパルメザンチーズのおろしたものと混ぜあわせ、魚料理に使います。
よくやるのは、イワシかサンマの開いたものを天板にのせ、塩胡椒をして、その上からこのパン粉をたっぷり散します。そして全体にオリーブ油をかけ、グリルかオーブンで10分ぐらいでしょうか、加熱します。簡単でおいしい料理です。
ヤリイカの中を出して足を細かく刻み、このパン粉と混ぜて、さらにオリーブ油を入れて混ぜるように揉んでから胴体の中に入れて、オーブングリルで焼きます。これも美味しいですよ。
レモングラスとコブミカン、そしてバクチー(香菜)はタイ料理の材料ですが、我が家では、もっぱらトムヤムクンに使います。やはり生のハーブの香りは乾燥したハーブとは違います。トムヤムクンはベースの鶏ガラスープがポイントです。これに市販のトムヤムクンペーストを入れ、レモングラス、コブミカンなどのハーブ、そしてスライスの玉葱とトマト、そして赤唐辛子、そしてナンプラーとレモンのしぼり汁で味を整えて、エビを入れ、器に盛りつけた後、バクチー (香菜)の枝をのせます。癖になるスープで、この文章を書いていると食べたくなります。
バクチー(香菜)は、サラダを含め色々な料理に使います。カルパッチョなどに散らすとワンランクアップします。
実は、このほかにドクダミの鉢があります。若い芽をサラダや生春巻きに入れます。 ハーブを育てて料理に使う事は、ある意味ではハーブで自分を香り付けすることかもしれませんね。


◆2020年以降の世界6 “リアル紙幣が消滅”◆
このシリーズは「すでに起きている未来」を注視するものですが、今回は電子決済、電子マネーを取り上げます。
中国では、スマホを利用した電子決済が猛烈な勢いで拡大しているようです。中国インターネットサービス大手のテンセントが、スマホを使った電子決済を猛烈な勢いで拡大させ、今や中国では街の店の至る所で、スマホで会計を済ませています。昨年のスマホ決済額は、中国全体で前年比倍増の600兆円以上に達し、財布も現金も要らない生活が中国では現実のものとなっています。 600兆円というのは日本のGDP 500兆円を上回ります。
テンセントが、9億人近い微信ユーザーに昨年から本格的に展開し、自社のスマホ決済「微信支付」を主力に、すでに昨年9月末時点で8.3億人の決済ユーザーを獲得して、4億人のアリババの「アリペイ」を、あっさり抜き去ったとのことです。そしてテンセントの株式時価総額はアリババの約29兆4千億円を上回り、約30兆2千億円に達したとのことです。
インドのモディ首相は昨年11月、腐敗や偽札への対策として五百ルピー札と千ルピー札を全て廃止すると発表し、国内に衝撃を与えました。廃止された紙幣の総額は流通している通貨全体の約86%に及び、この荒療治はインド経済を混乱に陥れましたが、それは結果として一時的でした。経済成長も落ちていません。それどころか、長期的には確実にメリットをもたらす英断だったと評価されています。なぜならば紙幣が不足した結果、スマホを使った電子決済が急速に拡大しました。これは長期的にインド経済の近代化を加速させるとみられています。 むしろ今では、腐敗や偽札への対策ではなく、電子決済の推進が目的であったのではないかとさえ言われています。 スエーデンではすでに、 リアル通貨は廃止され、街中のATMも撤去されたとのことです。スエーデンで無くなった職業があります、銀行強盗です。銀行には現金がありませんので。下記のURLにある「リアル貨幣の最後」は一読を勧めします。「すでに起きている未来」を知ることができますから。
この動きには、アメリカやEU諸国、そして日本も全く付いて行っていません。特に日本は現金の決済が多く、これが経済の生産性を落としています。日本はクレジットカード決済もまだまだで、スーパーのレジで署名を求める有様です。唯一JR東日本の大英断で、改札口が電子決済になりました。交通カードの普及は驚異的です。以前、あの改札口全部に全部人が立って、ハサミで切符に切り込みを入れていたことが嘘のようです。あれでどれだけの労働生産性が向上したか想像もつきません。
AppleとJR東日本の決断でApple Payが昨年から日本に導入されました。これも画期的です。ビジネスとして巨大な未来が見えています。なにしろ日本でもクレジットカードの決済は約50兆円です。これを取り込んでいくスマホの金融ビジネスは、巨大な新市場です。ATMの手数料の総額はどのくらいでしょうか。これがスマホの世界に流れています。
私もApple Watchを購入して利用しています。Suicaが使えますから、電車、タクシーはキャッシュレスです。コンビニもキャッシュレスです。カフェもキャッシュレスです。スーパーマーケットもキャッシュレスです。小銭をほとんど使わなくなりました。カードのように取り出す必要ないので、便利です。
学生には、ガラケーの携帯電話を使っている人と付き合わないようにと、半分冗談で言っています。スマートフォンが拓いた巨大なビジネス空間を実感していないのではないかと思うからです。二台持ちで両方持っている人は、例外ですが。
トヨタ自動車の時価総額は約18兆円ですが、 GoogleやAmazonそしてAppleの時価総額は30兆から50兆円です。売り上げもAppleがトヨタ自動車を大幅に上回ります。経団連の大企業も時価総額ランキングでは下位に埋もれています。なにしろ最高のトヨタ自動車すら28位ですから。
日本が成長できない最大の要因は、かつての基幹産業の企業がまだ経済界を牛耳り、その経営トップが、ほとんど時代に付いて行っていないことです。すでに起きているイノベーションに付いて行っていません。
未来を予測する必要はありません。時代の先端を見ればそこに「すでに起きている未来」が見えます。まずそれを追っかけることです。大きく置いていかれると背中も見えなくなりますので、心安らかに旧態然としたオペレーションに安住できるかもしれませんが。この手の日本企業は多いですね。ですから世界の変化と成長についていけません。

中国でスマホ決済が猛烈に拡大
http://www.fin-itnews.com/entry/2017/03/27/075546
わが国の電子決済サービスが日本を「飲み込もうとしている」=中国報道
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170309/Searchina_20170309004.html
キャッシュレス社会で米国の先を行くインド
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO12146730W7A120C1000000/?df=2
リアル貨幣の最後
http://wired.jp/special/2016/money-money-money/?
utm_content=buffer8d0ae&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer



◆俯瞰の書棚 “人口と日本経済”◆

今回の紹介は「人口と日本経済」 吉川 洋 2016年 中公新書 です。
この本はマクロ経済学の泰斗(その道の大家)である吉川洋東大名誉教授の人口学と経済学のエッセイです。日本における人口減少の悲観的な議論に対し、マクロ的なデータや学術的な分析によって、悲観的な議論が間違いであることを正したいという吉川洋先生の強い気持ちが感じられます。
まず経済成長と人口増加はあまり関係ないことを歴史的なデータで示すとともに、そもそも先進国は人口の増加で成長するのではなく、 一人あたりの所得の増加によって成長するのであると説かれています。そしてこれは、イノベーションを通じて実現されるという主張です。
第一章では人口の歴史と、イギリスの経済学者のマルサスとケインズの人口に関する議論を紹介しています。マルサスの人口論とは「人口の増加は必然的に食料により制約される、食料が増えれば人口が増加する」です。しかし歴史的な結果は、社会が豊かになると少子化が始まります。そしてダーウィンの進化論は、このマルサスの人口論にヒントを得たとあります。
ケインズは、すでにイギリスが人口増加の時代から人口減少の時代へと大転換時代を迎え、未来が過去とは全くことなる世界になると言明していました。またスウェーデンでは、早い段階から少子化の問題を取り上げ、子育て支援策を推進しています。話がそれますが、スウェーデンは本当に先進的な先進国です。すでにリアルの貨幣を廃止し、全て電子マネーで経済を運営しています。一方、ロシアによるヨーロッパの安全保障の劣化に対し、最近徴兵制を復活しています。現実に即対応です。
「先進国の経済成長は、基本的に労働人口ではなく、イノベーションによって創出されるものである」と第一章を結んでいます。
第二章では、先進国の経済成長を決めるのは人口ではなく、イノベーションである、について議論を展開しています。高齢化と少子化は結果として、膨らむ社会福祉の財源の問題に突き当たります。現役世代は負担できません。わが国すでに社会保障の給付はGDPの四分の一に達している状態で、国債残高はGDP比率200%に達しており、このままでは破綻をまぬがれないと警鐘を鳴らしています。ともあれ労働生産性を上昇させなければならないが、最大の要因はイノベーションだとしています。
第一次オイルショックからバブル崩壊までは、私は日本経済の黄金時代だと思いますが、この間、労働人口は1.2%成長率、そして実質GDPの成長率は、 4.6%です。人口が増えなくても経済成長できるという証左です。そして人工知能やインダストリー4.0というイノベーションによる経済成長に期待とあります。この章も先進国の経済成長は人の数ではなくイノベーションでされると結んでいます。
第三章では、人口の減少と寿命について議論しています。人口も寿命も「一人当たりの所得」が要因であり、これもイノベーションが影響するとあります。一方、経済成長は望ましいのか、という「 ゼロ成長論」の研究に言及しています。また文明が繁栄すると、人口が減少し文明が滅びるという、ギリシャ都市国家とローマ帝国の衰退に関する論文も紹介しています。
人口の減少、出生率低下については、日本においては晩婚化や非婚化に加え、バブル崩壊後の若者の労働条件の劣化の影響もあるとしていますが、今まさに議論されている正規労働と非正規労働、そして労働環境の改善、子育て支援の政策が非常に重要なことがよく理解できます。
寿命に関しては世界で一、二を争う長寿国になった事は、戦後の日本が成し遂げた最大の成果であるとしています。とにかく高度成長が始まる前は、日本は先進国中で最も寿命の短い国だったのです。寿命の格差「寿命のジニ係数」について解説されています。
ソ連は1950年代末から「寿命のジニ係数」の低下の停滞が始まり、かえって上昇し平均寿命も伸びませんでした。 このことから1950年代からの社会主義体制がいかに大きな問題を抱え、行き詰まった社会であることがわかるとし、ソ連はまさに自壊したとあります。そして日本は世界の最長寿国になったことが戦後日本の最大の成果であると結んであります。
第四章は人間にとって経済とは何か、という本質論を議論する中で日本の進むべき道を論じています。一人当たりのGDPと平均寿命という図表がありますが、世界各国のデータは見事に1本の曲線の上にデータが乗っています。
「需要の飽和」という議論も面白いです。ですから成長が停滞します。そして消えていくモノ、サービスもあります。この辺と人工知能で仕事が奪われるという議論を混同している人がいますが、その人は要注意人物です。結局これもイノベーションによって新しい需要を創出していくしかありません。
この後、ケインズの未来論やトマ・ピケティーに言及し、両者に共通するものは「利子率の力」であるとしています。またその後ゼロ成長論も解説していますが、江戸時代は安定していい時代だったという議論を、発掘された骨から悲惨な生活状態だったことを示し、安易な議論を戒めています。
多くの経済学者は、日本の潜在成長率は0.5%程度しかないというのに対し、吉川洋先生は1.5%程度の成長は可能で、そのためには年率2%の労働生産性の伸びが必要であるからそれを実現するイノベーションを起こす必要があると主張しています。しかし日本の企業はイノベーションに投資するよりも手元に現金を残し、退嬰的だと言っています。そして「日本経済の将来は、日本の企業がいかに人口減少とペシュミズムを克服するかにかかっている」と結んでいます。つまり日本人、日本企業は、人口減少に対し悲観的すぎる。一人当たりの所得をイノベーションによる労働生産性の向上で実現すれば、経済成長できることを信じて前に進め、という励ましと叱責が、この本の主題であると思います。



◆編集後記◆
●トランプ政権は官僚組織が不完全で、組織的な意思決定と行動ができないので何をするか判らない半面、司法や情報機関、議会が警戒を強めていて、がんじがらめで何もできないかもしれません。
●ドイツのメルケル首相は相当嫌いのようですが、33兆円の請求書とは。イギリスを除くヨーロッパとの分断は決定的です。フランスの核とドイツの技術力で核兵器の増強をすることはないと思いますが。
●トランプ大統領は人の好き嫌いが激しい人ようですが、安倍首相には好感を持ったようです。追加でハーフラウンドやるのですから。
●英国のEU離脱で英国も国内が分断され、経済も悪くなるでしょう。シティの金融機能はニューヨークのウォール街が吸収するでしょうか。
●小池知事も、豊洲移転を長引かせると世論が離れていくでしょう。自民党もここを攻撃の的にしています。
●「結論」と「決心」の差異は若い時、元陸将で元防衛大学教授の三木秀雄先生に学びました。この差異を理解しているかいないかは重要です。
●安倍スキャンダルが広がると、国政が停滞して経済改革が遅れるのが痛いのですが、うやむやにもできません。
●北朝鮮対応は気になります。肝心の当事国の韓国が国家の体をなしていないので、さらにリスクが高いです。第二次朝鮮戦争も想定内にしなくては。
●自民党と公明党は国政レベルでも隙間が出てきたようです。安保法制は付き合いましたが、テロ共謀罪には腰を引いています。スキャンダルとテロ共謀罪に付き合っていると、選挙に支障が出るという判断しょう。本来公明党はリベラルで、また婦人部は生活改善に注力していいます。そして小池与党です。
●2020年以降の世界は、「すでに起きた未来」を注視していけば見えてきます。ネットとスマホが創る、変えている世界が特に重要な観察対象です。中国とインドは重要な観察地域です。そして北欧です。
●1.5%成長はできると思います。条件は経済界の世代交代です。楽天の三木谷さんが経団連を見捨てたのは正しいが、その後の活動が見えません。


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◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更 下記まで
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◆俯瞰 MAIL 0067号(2016年3月31日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人:   松島克守
編集長:   松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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