フードマイレージを考える


俯瞰工学研究所の松島克守のメルマガです。第5号を送らせていただきます。


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせていただいております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出をくださるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見をいただければ幸いです。


皆様

◆季節のご挨拶◆
雪が舞う被災地の映像がまだ網膜に残っていますが、気がつけば桜は満開、そして今、燃えるような青葉とツツジが満開の時になっています。高校の漢文の教科書の杜甫の詩が口につきました。「国破れて山河在り、城春にして草木深し、時に感じては花にも涙を濺ぎ、別れを恨んでは鳥にも心を驚かす、烽火 三月に連なり、・・・・・・・・」5月になっても福島は鎮まる気配はない。また、「夏草や 兵(つはもの)どもが 夢のあと」  芭蕉日本のこと、復興のこと、今後の人生、色々深く考える始点を与えてくれます。


◆今年も本郷で俯瞰経営塾◆
東大の技術経営戦略学専攻を退官して3年目ですが、今年も「俯瞰経営塾」を5月12日から本郷で開講しました。退官後も、学生有志から、単位がなくても自主ゼミで同じ講義をして欲しい、という要望があり続けています。毎週木曜日13:00-16:00、技術経営戦略学専攻の新設から現役で3年講義した内容で、自主ゼミで3年目ということになります。内容は「俯瞰経営学」目的を明確に説明してあります。「目的は、知性を磨くことで、ビジネスや経営の知識は結果として付いてくるもの」、「知性とは、課題を自分で発見する能力、それに関する情報を収集する能力、収集した情報を分析する能力、その分析結果を編集して行動の提案をする能力、そして、周囲や対象の人たちに「判った」と思わせる表現能力」。これから人生を始める、今の季節の青葉のような30名は物凄いオーラをくれます。教室は道場、教育は相互研鑽の場です。ブログで読む


◆この夏の壮大な実験◆
この夏予定されている壮大な実験が興味深いですね。この夏、最大の電力需要期を中部電力は原子力発電無しで、東京電力は17基中4基稼働で乗り切ることになりました。東京電力の配電範囲の需要はイタリア一国分に相当し、中部電力のそれはスエーデンに相当し、極めて大きく、二つ合わせるとイギリスに相当します。この規模ですから、壮大な実験になります。ヨーロパ各国の原子力発電の議論には貴重な情報と知見を与えるでしょう。もし、この夏をこの体制で乗り切ると、原子力発電所無しでもやっていける、という議論が力を得るでしょう。無論LNGにしても炭酸ガス排泄の問題があり、コストも高く、石炭火力も公害、炭酸ガスの固定化などの課題があります。実験が終わる、9月には、世界中の議論が今とは変化するのではないでしょうか。大きな事実が目の前に置かれますので。


◆フードマイレージを考える◆
フードマイレージとは、食品の輸送と環境の課題で、食品の生産地と消費地が近ければフード・マイレージは小さくなり、遠くから食料を運んでくると大きくなります。一方、無理に季節を無視して温室で作ればそのエネルギーが問題になります。従って、適地適作を踏まえた地産地消が肝要です。この連休に山梨県の八ヶ岳に行き、そこの食品スーパーマーケットに行きましたが何か腑に落ちない光景でした。以下はその時野菜売場で目に入った産地です。福岡のカリフラワ−、沖縄のカボチャ、高知のナス、宮崎のピーマン、東京のウド、佐賀の絹さや、熊本のベリーリーフ、長崎の新じゃが、青森の牛蒡、高知のミョウガ、鹿児島の空豆、栃木のクレソン、佐賀の新玉ねぎ、北海道のたまねぎ、徳島の人参、北海道のジャガイモ、津軽のフキノトウ、津軽のタラの芽。隣接県野長野、群馬、静岡は無論あります。また韓国のパプリカ、ニュージーランドの玉ねぎもありました。八ヶ岳に全国から集合です。売り込む方々のマーケッティング力もすごい!山梨の庭や山に豊富にあるタラの芽、フキノトウを津軽かから?青森県は雪下人参で有名ですが、学校給食では県外の人参を使用していたので、何故?と教育委員会の方に聞いたことがありますが、答えは安いから、でした。地域おこし、低炭素・・・何かこの辺にもアクションプラン有りそうな気がして来ました。


◆集合知で日本新生の提案書を起草◆
日本復興、再生、再興の提案は、内閣の復興構想会議を始め様々な組織から提案されていて百家争鳴状態ですが、組織を超えた国民的議論の場が有りません。ネットでバラバラに、個人的に発言しています。千人万人の意見を構造化しないと行動、実践になりません。まず、「場」を設営しませんか。「日本新生 」の提案は、「…したい。」「…しない。」と簡潔に、しかし「…べきだ。」とか、「…べきでない。」「…やめろ。」「…やれ。」のような断定的で個人の価値観を押し出す表現は避けて共創的な提案文にしませんか。ネットの課題の一つは、顔が見えない事で、乱暴な表現が出てくることです。このプロジェクトでは、実名を求めませんが乱暴な表現は最終の処理には採用されないでしょう。「日本新生」 の提案が千、万と集積されると自然言語処理や人工知能の技術でキーワード分析や、関係性の抽出が出来るので千人、万人が一つの提案書を起草する構造化が出来るでしょう。その提案の水準は個々の提案に依存しますが、大勢の人達が言う事は、少数の識者の提案よりは「正鵠(せいこく)を射る」でしょう。投稿サイトを用意したいと思います。このプロジェクトに参画して協力してくれる方歓迎です。ネット上で実行委員会を組織したいですね。


◆IBMのCEOのパルミサーノさんに十何年ぶりに会いました◆
5月12日東大の本郷で、東大−IBM dayのシンポジュウムがあり、IBMのCEOのパルミサーノさんの講演があり、参加しました。実は彼が90年代前半、帝王教育の一環として日本IBMの専務の時、小職の上司のような関係で旧知の仲でした。講演、質疑では終始前向きで、明るく話し、質問に「なぜそんなに楽観的か?」も出たほどです。厳しい経営居境の中で、IBMの大変革を成し遂げ、史上最高益を出している自信から、「変革すれば未来は開ける!」というのがメッセージでした。リーダーシップについても、長期ビジョンが重要であると言明していました。続きをブログで読む。


◆近未来都市を作る実験X◆
二子玉川の都市再開発のコンソーシアムソーシアムの拠点、カタリストBAが、4月25日二子玉川にオープンしました。ぜひご現地に来て頂き、ご自分でこの「場」をどう活用できるか考えてみてはいかがでしょう。詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://creative-city.jp/


◆2011年度(社)俯瞰工学研究所の会員募集◆
4月からの会員を募集します。ぜひ会員になって(社)俯瞰工学研究所の活動に参加しませんか。月に一回ゼミをやります。この場は会員同士の交流の場でもあります。毎回基本的に交流会をします。その他、会員が特に興味があるテーマがあれば別途ワークショップを開いてもいいともいます。賛助会員として、会社の仲間とグループで参加も大歓迎です。会費は原則4月―3月の年度会費です。5月18日18:30からゼミのオリエンテーションをします。二子玉川駅前のライゼ8階、カタリストBAです。


◆時代と同期する情報装備2◆
4月28日にiPad2が日本でも発売されました。所用が有ったので12:00くらいに渋谷のAppleの店に行ました。歩道に行列があり、並んで15分ほどで店内に案内されて、wifiモデルの60Gを購入しました。3Gモデルは列がなくだれも買っていない!ソフトバンクの3Gではね。店内の店員の対応が素晴らしいですね。Appleのマーケッティング力を見せ付けられた感じです。連休にハンズオンしてiPad1との比較をしながら、新しいITギアを使ってみました。まずスピードとマルチタスクという基本性能が大幅にアップしています。別売りのケーブルで画面がプロジェクターにそのまま出せます。印刷はwindowsでは、HPプリンター以外は大変そうです。文書作成やプレゼンテーションの作成はちょっと難しいと思いますが、メールを見る、簡単な返事を書く、スケジュールをチック、Dropboxの文書をGoodreaderでみる、twitter、webを見る、等は極めて快適です。パソコンより使い勝手がいいですね。何より食卓で朝食を取りながらにはぴったり。続きをブログで読む。


◆書評◆
今月のご紹介は、「レトリック感覚」 佐藤信夫 講談社学術文庫 1992古代ギリシャに始まるレトリックは近代に至るまで最も重要な教育プログラムでした。近代になって無用のモノとして打棄てられていましたが、近年再評価の動きがあるとのことです。アリストテレスに始まる、古代のレトリックは科学と詩学の間に置かれ、説得する表現技術と、芸術的表現技術でした。佐藤は、「版権的認識の造形」をこれに加えています。森羅万象のうち本名を無いものの方が多い、辞書にのっている単語を辞書とうりに使っただけでは自分の気持ちを表現できない、だから自分の認識をありのままに表現するにはレトリックのぎ技術が必要、またレトリックとは言葉の「あや」、キケロ流に言えば思想に衣装を着せ飾ることとしています。本書は芸術的表現技術の方を解説していますが、夏目漱石や、森鴎外、太宰治、芥川龍之介・・から例を引いているのが勉強になります。以下キーワードを挙げると。直喩、隠喩、換喩、提喩、誇張法、列叙法、緩叙法実は、私は殆ど使っている技法でした。しかし、構造化された解説は改めて参考になります。レトリックは、「有限の手立てを無限に用いる」、「比喩とは言語をやりくりする手段」とも云われています。筆者佐藤の豊富な知識から、記述が本人が文中で言っているように饒舌で気になりますが、これを飛ばして読むのも、その饒舌を楽しむのも、ありです。文章表現に磨きを掛けたい方には参考になるでしょう。説得する技術も興味深いので次回。


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◆俯瞰 MAIL 0005号(2011年5月15日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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