荒れ模様のトランプ政権スタート


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表として名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々にお送りしています。このようなメールマガジンはご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さい。内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。お時間があれば章末のURLの元情報を読んでください。
過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/
ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。このマガジンは長いので、添付のpdfファイルを保存してタブレット等でゆっくりお読み頂くこともできます。
既に約5000人に配信していますので“小さなメディア”になりました

-----------------------------------------------------------------------------
◆時候のご挨拶◆
ほんのこの前、新年を迎えたと思えば、もう1月も末です。西高東低の厳しい冬型の天気も続きました。北日本と山陰は大雪ですね。トランプ大統領の就任で、今年は世界中がざわざわしています。何かがあるかもしれないと言う不確実性で気持ちが落ち着かない人も多いでしょう。
-----------------------------------------------------------------------------
●荒れ模様のトランプ政権スタート
●危険な賭けか英国EU離脱
●世界で深まる亀裂
●また見えてきた東京都政の闇
●俯瞰のクッキング“ロートレックのカスレ”
●2020年以降の世界4 “シェアードエコノミーサービス”
●俯瞰の書棚 「土を喰う日々」
●編集後記

-----------------------------------------------------------------------------


◆荒れ模様のトランプ政権スタート◆
トランプ大統領が就任しました。オバマ大統領の政策を次々と破壊しながら、政策の転換をしていくようです。予想通り、TPPの離脱とオバマケアの廃止です。メディアとは依然として敵対関係です。メディアは高学歴の知識人の集団ですから、野生的なトランプ大統領とは、相性がいいはずがありません。上から目線で評論するようなメディアに対して、辟易していたのでしょう。

そしてツイッターでの口撃は止まりません。前回、トランプ大統領はビジネスマンだから大統領になれば変わり、スタッフの意見を聞いて行動するでしょう、と書きましたが、これは間違いでした。ただ、任命したビジネス出身の閣僚は、議会の公聴会でトランプ大統領とは異なるまともな話をしていますから、その寛容さはあるようです。

最近の言動を見ていると、トランプ大統領の真意は、選挙公約の米国内での雇用と、貿易における米国の優位性という経済が真ん中にあるような気がします。中国に対する貿易と為替の口撃も単に中国から有利な交易条件を引き出す駆け引きかもしれません。日本には何を求めて来るのでしょうか。

新政権は「アメリカ第一主義」の追求をビジョンとして掲げています。しかしこれは、ずっとアメリカがやってきたことです。

オバマ政権も内向的で、オバマケアを中心とした“内政”を重視したと思います。ただオバマケアは理想に走り、制度設計に問題があったようです。国外での紛争に極力介入せず、結果として中近東でほとんど存在感を失い、シリア和平交渉はプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の主導で進み始めました。核なき世界を掲げてノーベル平和賞を受けましたが、理想だけでアメリカを含め、核を減らしていません。イランとの核合意が成果ですが、それもトランプ大統領は見直すと言っています。さすがこれは英国のメイ首相が押しとどめています。制御不能な国際情勢になりますから。

ブッシュ政権も、アフガン、イランとアメリカの論理で戦争をしています。遡れば、国際連盟を提案しながらアメリカの国内事情で参加しなかったウィルソン大統領、ヤルタ協定で北方領土をスターリンに献上したルーズベルト大統領、必要もないのに広島と長崎に原爆投下を指示したトルーマン大統領、ベトナム北爆を仕掛けた掛けたジョンソン大統領、ニクソン大統領のスミソニアン、金本位制の停止、そしてレーガン大統領のジャパンバッシングという貿易戦争、などを考えると、トランプ大統領もそれほど特別な大統領でもないかもしれません。政策は殆どレーガン大統領のコピーです。

最初の外交がEU離脱を決めた英国です。両国のGDP合わせれば中国を凌駕しますので、このアングロサクソンの連携は、大きな国際関係の転換を意味します。そして英国は完全にEUから離れ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとも経済連携を強化して大きなアングロサクソンの経済圏を作っていくのかもしれません。安倍首相はなかなか時間がもらえませんね。日本にあまり興味がないのか、あとからゆっくり料理しようとしているのでしょうか。

アメリカがアメリカ第一主義で、アジアや中近東、アフリカから引いていけば、その空白を埋めるのは中国とロシアです。ともあれ、トランプ大統領、プーチン大統領、そして習近平主席の三角関係が、これからの国際関係を決めていくことになります。

日本は、アメリカにすがり付くように安全保障を追求していますが、その見返りにTPP以上の通商の譲歩を求められるかもしれません。すでにトヨタは、トランプ大統領の恫喝にあってアメリカ国内の投資を申し出ています。

中国に関しては、かなり強硬な対応が見えてきましたが、単に経済的な貿易戦争ではなく、南シナ海における武力衝突のリスクもあります。中国は2つの中国を絶対に許さず、なんでもするでしょうから。沖縄の駐留米軍を台湾に移すというネット情報があります。これはあくまで一個人の意見ですが、あたかもニュースのようにネット上に拡散していくと、今問題になっている偽ニュースになります。このメルマガでは極力信用できるメディアの情報をもとに議論しています。

中東でも大きなリスクがあります。トランプ政権は親イスラエルを表明しています。これを受け、イスラエルはパレスチナに入植地を増やしています。パレスチナの和平とは、逆方向です。加えて、アメリカ大使館をテリアビブからエルサレムに移転することを検討しています。エルサレムはユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の聖地で紛争の地です。もし大使館の移転を行えば制御不能な混乱を招くと言われています。さすがにこれについては、トランプ大統領もトーンダウンしていますが。

日本は自分で自分の運命を切り開いていく覚悟が必要です。しかし民進党を中心に、あまりにも政治が貧困です。この政治を国民が選んだとすれば、トランプ大統領に投票した人たちとその無責任さは変わらないのかもしれません。

ただこの勢いで行くと、ロシアに握られたというスキャンダルや国際関係で衝突、そして国内での分裂の高まりなどで、4年の短期政権で終わる可能性があります。CIAやFBIは何らかの情報をつかんでいるでしょう。ニクソン大統領の弾劾につながったウォーターゲート事件も、情報機関からのリークです。

米新政権、大幅な政策転換へ始動
http://jp.reuters.com/article/idJP2017012101001698
超大国、新時代に突入=「米国第一」基準に政策見直し
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012100212&g=use
米英首脳、27日に初会談=メキシコ大統領とは31日?トランプ外交が始動
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012200016&g=int
[FT]トランプ新政権、「3T」に中国との衝突リスク
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11878160Z10C17A1000000/
「在沖縄米軍の台湾移転を」 ジョン・ボルトン元米国連大使が提言
http://www.sankei.com/world/news/170118/wor1701180019-n1.html
トランプ政権 イスラエルくすぶる火種 米大使館移転/入植地の拡大
http://mainichi.jp/articles/20170124/ddm/007/030/124000c
イスラエルが新たな入植者向け住宅を建設
http://toyokeizai.net/articles/-/155381


◆危険な賭けか英国EU離脱◆
イギリスのメイ首相が、EUからの完全な離脱を宣言しました。彼女は、国民投票前は残留派と言われましたが、首相就任から変わったのでしょうか。いずれにしても「ルビコン川を渡る」と言う決断です。そして「グレートブリテン」と言う原点に戻る決断です。

その結果がどう出るかは、大きなリスクとされています。むろん経済成長の面では逆方向ですが、いろいろな解説を読んでみると、大きなリスクは移行期間にあります。 EUのルールで離脱が終了しないと、新しい貿易関係の交渉はできません。そして、それには時間がかかるだろうと言われていますが、貿易関係の新しい関係がない期間、英国はどうするのでしょうか。

イギリスに拠点を置いて、EUでビジネスを展開して来た金融業を始め、グローバル企業はドイツに拠点を移して行くでしょう。フランクフルト市場がロンドン市場を上回り、ベルリンがヨーロッパの首都になるのでしょうか。かつてベルリンに住んだことがありますので、ふとそんな思いが頭に浮かびました。ただメルケル首相も大量の難民移民を受けたことで、政治基盤が弱くなっているのは気になります。彼女に代わる新しいリーダーは、今のヨーロッパの中では見えません。理念と行動で、彼女のような政治家は滅多にいませんから。歴代のドイツの首相は賢人です。それに比べると歴代の日本の首相は酷いです。

イギリスとEU双方にとっても大きな通商関係ですから、なんとかうまくやるのでしょうが、イギリス経済は縮小する可能性があります。 EUの市場の代わりをアングロサクソンの世界に求めるでしょうが、埋める事はできないでしょう。一方EUは、英国との通商関係が縮小しても他の世界でこれを埋め合わせる事は出来るかもしれません。 TPPにイギリス引き込んで米国抜きの経済圏を作りますか。

問題は、“EUの中の英国”を前提として英国に進出した日本企業です。日産、トヨタ、ホンダ、日立、ヤマザキマザックなど1000社を超えます。英国に、こんな大きなカントリーリスクがあるとは想定していなかったでしょうから、大変だと思います。

EUが縮小し、アメリカが内向きに動けば、相対的に中国が強くなります。今、これからの国際関係の中での日本の立ち位置を、国民全体が真剣に議論しないといけません。

英国のEU離脱については、下記のジェトロの資料「英国の EU離脱と?本企業への影響」 がよくできています。これを見ると、ほぼ全貌が正しく理解できると思います。またFTの記事も、冷ややかな解説で面白いです。

英EU離脱特集
http://jp.wsj.com/articles/SB10272610103318793334204581557630317167472
英首相の「ハード・ブレグジット」は危険な賭けか
http://jp.reuters.com/article/britain-eu-idJPKBN1530E0
英国が直面する「ブレグジットの崖」、転落の影響は
http://jp.reuters.com/article/column-brexit-idJPKBN1510TE?pageNumber=1
[FT]英EU完全離脱の衝撃 経済的コスト、膨大
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO11955430Q7A120C1TZN000/
英国のEU離脱と?本企業への影響
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/europe/uk/referendum/seminar_brexit3.pdf
ルビコン川を渡る
http://kotowaza-allguide.com/ru/rubicongawawowataru.html


◆世界に深まる亀裂◆
トランプ新政権で大きな亀裂が広がっています。まず国内では、反トランプの勢いが凄まじいです。全米で100万人、 500万人がデモに参加したと言われています。もともと総得票数ではクリントンを下回り、当選したといっても支持は過半数を下回っていますから、国内の亀裂は大きく深いです。メディアとの亀裂もさらに深まっています。外交を担う国務省の幹部が、次々と辞職しています。閣僚の議会承認も進んでいません。統治機構が固まらない中、トランプ大統領は次々と強硬な政策の大統領令を出し、相変わらずツイッターで口撃を繰り返し、外交までツイッターでやっています。

隣国のメキシコとの亀裂も大きいです。首脳会談をキャンセルするという通常の外交では考えられないことも起きました。あまりにもメキシコを侮辱する言動ですから、メキシコ大統領も決断せざるをえません。このため、かえってメキシコ国内は反米で国内政治が安定化しました。

ヨーロッパでは、英国とEUの間に不信感に満ちた大きな亀裂が生じています。円満な離脱というより喧嘩別れになりそうです。そのEUの中でも、ポピュリストと政権与党の間に大きな亀裂があります。

この亀裂の中で、まず3月にオランダの総選挙があります。そしてオランダでは極右政党が議席を伸ばすとみられています。政権交代が起こらないまでも、他の欧州極右政党に勢いをつけます。

4月にはフランス大統領選挙があります。現職のオランド大統領は史上最低の支持率で、立候補を辞退しました。候補者は何人かいますが、注目を浴びているのは極右政党のマリーヌ・ルペン氏で、その主張はトランプ大統領に似ています。彼女がどこまで票を伸ばすかが、注目されています。

そして9月にはドイツ連邦議会選挙があります。メルケル首相は4期目を目指して選挙に臨みますが、移民難民の大量受け入れをめぐって国内の批判が高まっており、厳しい選挙が予想されます。

現在のEUは、“歴史的なフランスとドイツの和解と連携”が核です。オランド大統領が去り、メルケル首相が弱くなれば、 EUの求心力は落ちていきます。ここでも予期せぬことが起こるかもしれません。

そして、中東におけるシーア派とスンニ派の亀裂、イスラエルとパレスチナの亀裂、そして日本と韓国の亀裂も拡大し深くなっています。

このような状況を見ると、私自身も予期せぬことが起こるのではないかと、気持ちが緊張します。予期せぬ事ですから準備ができません。

予期せぬ事といえば、太平洋プレートの南のニューギニア周辺で大きな地震が頻発しています。気になります。

反トランプデモ、女性が中心 全米で100万人超参加
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN21H3J_S7A120C1000000/
世界各地で反トランプデモ、250万人が参加表明
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170122-00000001-jij_afp-int
広まるアメリカとメキシコの溝。NAFTA決裂はアメリカの首も絞める!
https://hbol.jp/127214
EU、離脱前交渉けん制 米英接近で欧州分断を警戒
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO12190900X20C17A1FF2000/
オランダ総選挙、欧州極右に吉と出るか
http://jp.wsj.com/articles/SB11177354273695693774104582580182390783786
フランス大統領選、英米に続くサプライズは起きるか?
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/01/post-6684.php


◆また見えてきた東京都政の闇◆
豊洲市場の移転がまた伸びそうです。しかし、これまでほとんど問題はない、と言われていた水質検査結果がとんでもない数字になり、過去の数字は捏造か、ということになりました。 移転を推進してきた人々は、裏切られた気持ちでしょう。 「移転してから、この数字が出なくてよかった」という声があったようですが「だから早く移転しておけばよかった」と思っている人がいるのでしょう。豊洲に関する一連の流れを見ていると、本当に石原知事、猪瀬知事、舛添知事の時代の都政は腐りきっていた、としか思えません。選挙という民主主義は、大きな欠陥があります。本来、牽制関係にあるべき都議会も腐っていたのでしょう。

一方「小池知事で良かった」という人も多いでしょうが、最近の小池劇場を見ていると、都民目線ではなく、私恨、私怨で従前の抵抗勢力と争うのではないでしょうね、と心配になる部分もあります。

ともあれ東京は、世界最大の経済都市です。東京のGDPは韓国全体のGDPを上回り、カナダ一国に匹敵します。ロンドンの金融市場が縮小すれば、東京市場はロンドン市場を上回り、ニューヨーク市場と並ぶ世界の金融センターになるかもしれません。

東京オリンピックを成功させることによって、生活や文化、そしてインフラを含めて世界一の都市、世界の誰もが住みたい街にするような、小池知事の東京大改革はぜひ成功させて欲しいと思います。いや小池知事に頼むのではなく、我々都民は、自らそのために汗をかく必要もあるでしょう。まず世界一の東京に住んでいるのだ、という都民の自覚が重要です。

「豊洲市場の捏造したのか!」豊洲市場の地下水“異常”で不信感ピーク 発表現場に怒号が飛んだ
http://www.sankei.com/premium/news/170121/prm1701210023-n1.html
小池百合子知事とドン内田茂氏の代理戦争で全国的に注目集める東京都千代田区長選
http://www.sankei.com/premium/news/161229/prm1612290017-n1.html
Top 10 Wealthiest Cities of the World by GDP
「世界の都市別GDP・ベスト10」東京が世界一!!
https://matome.naver.jp/odai/2143188196272380201



◆俯瞰のクッキング “ロートレックのカスレ”◆
ロートレックのカスレは、以前このメールマガジンで紹介しましたが、寒さが厳しいこの季節はカスレを作りたくなります。画家のロートレック自身が書いたロートレックの料理本のレシピをまず紹介しましょう。(ロートレックの料理法 美術公論社)
・白いんげん豆を冷水に12時間つけてふやかしてから、 2?3時間ぐらい煮て完全に火を通す。 ・ソテー鍋に、羊肉と鵞鳥の切り身を数個入れキツネ色になるまで炒める。
・大きなシチュー鍋に、玉葱、エシャロット、ニンニク数かけ、みじん切りにしたベーコンを少量入れて炒め、子牛の脛肉、足、薫製ハム、生ソーセージ、塩、胡椒、月桂樹の葉を加える。さらに先に炒めておいた肉、鵞鳥の内蔵、ガラなどを加え、トマトペースト大さじ数杯とブイヨンを加える。弱火でゆっくりと2時間くらい煮込んでいく。
・次に耐熱性の大きな陶器の皿を用意し、底にインゲン豆、その上に羊肉、ソーセージの肉を詰めた鵞鳥の首、トリュフを加えた豚の足、炒めたソーセージの薄切りを載せる。シチュー鍋で作っておいたソースを注ぐ。油はすくいとっておく。
・もう一度、豆と肉を焼くために皿をオーブンに入れる。必要に応じてブイヨンか肉汁を、水分を加えるために入れる。食卓に出す15分前にパセリを混ぜたパン粉をふりかけ、こんがりと焼き色を付け、器のまま熱いうちに食卓に出す。
貴族ロートレックのレシピです。

これを現代風に、また簡単に作る事を考えました。
・まず白いんげん豆ですが、水煮の白いんげん豆が売られています。ここでは食品スーパーで売っている紙パックのイタリア産のSOLLEONEを使いました。水を切るだけです。
・肉はオーストリア産のラムの肩ロースを買いました。 116グラムで577円でした。鵞鳥の肉の代わりにタイ産の鴨ロース、 198 g 588円を使いました。太めソーセージを1本。
・これらを炒めます。まず鴨肉の皮を下にして、ノンスティックのフライパンで中火でじっくり焼きました。皮にほどよく焦げ目がつく頃にはフライパンに油が出てきます。その油で身の方にも焦げ目をつけました。それを4つに切って断面も焦げ目をつけました。それを取り出して、そのフライパンでラムの肩ロースを焼いて焦げ目をつけました。それを取り出してソーセージに焦げ目をつけます。
・弱火で2時間は長いので、圧力鍋を使います。圧力鍋で玉ねぎとニンニク、そしてベーコンの角切りを炒めます。そこに焦げ目をつけた肉類を戻します。トマトはイタリア製のモンテベロのPASSATA RUSHICAを最近愛用しています。有機トマトの粗ごしの瓶詰です。缶詰と違って使い残しをそのまま冷蔵庫で保存できます。しかも安いです。「子牛の脛肉、足、薫製ハム、生ソーセージ」のスープは大変なので、明治屋の“コンソメスープ濃縮タイプ”を入れました。水は加えません。濃厚なスープが必要ですから。味を見て塩、胡椒します。そして圧力をかけ、20分ないし 30分加熱します。加熱時間は鍋によります。
・煮あがったら、陶器の皿に入れるとありますが、グラタン皿で問題ありません。ただ我が家ではスペイン製のカスエラと言う土鍋を使います。雰囲気が出ます。代表的なスペイン料理のアヒージョにも使えます。我が家では、 14センチ、 18センチ、 24センチがありますからこの分量ですと24センチになります。品川のアトレのディーン&デルーカ(DEAN&DELUCA)では売っています。通販でも売っています。
・あとはレシピ通り、水を切った白いんげん豆を下に敷き、肉を載せ、煮汁を注ぎ、その上にパセリを混ぜたパン粉を振って、グリルまたはオーブンで焦げ目をつけます。小さな皿であれば、オーブントースターでもできるでしょう。

材料を買ってくれば1時間くらいで完成します。以上は4人前ですが、残りをレンジで温めて食べると美味しいです。特に豆が。


◆2020年以降の世界4 “シェアードエコノミーサービス”◆
前回アメリカ西海岸でUVERとAirbndがインフラとして普及していることを報告しましたが、日本でも使っていないモノを時間貸しする“シェアードサービス”が広がっています。「すでに起きている未来」です。

まずカーシェアリングは急成長しています。すでに全国で2万台近くの自動車がカーシェアリングされています。カーステーションも1万ヵ所以上あります。利用者はすでに70万人と言われあと、少しで100万人です。という事は、100万人の会員数になれば、100万台の自動車の販売が、数万台の販売に圧縮されることになります。日本の自動車市場はおよそ年間500万台ですから、 20%売り上げが減少することになります。自動車産業は縮小していくことになります。加えてEVのインパクトです。自動車部品産業は縮小します。

自転車のシェアリングはパリで何年も前から広く普及していますが、それを見て世界各国で広まっています。日本でも、都心を中心にカーシェアリングが広がっています。カーシェアリングもそうですが、スマートフォンの普及が、これを推進しています。 GPSと言う位置情報が管理運営を容易にしています。環境に優しく渋滞の緩和にもつながり、健康にも良いとなると、もっと普及していくでしょう。電動自転車と言うテクノロジーもこれを応援しています。東京も結構坂道がありますから。

私が支援しているGMSというベンチャー企業は、すでにフィリピンで3輪タクシーのシェアサービスにGPSを使った運用管理システムを提供しています。日本でも、カーシェアリング企業にこのシステムを提供しています。スマートフォンが起こしているイノベーションは、これから起こる未来を教えてくれます。まだスマートフォンを使っていない!?すぐに使いましょう。

調べてみると、いろいろなシェアードエコノミーサービスが広がっています。“軒先.com”は、空きスペースを時間帯貸しで、貸したい人と借りたい人とをマッチングするサービスです。使っていない自宅の駐車場や駐輪場を貸し出すサービスもあります。

女性向けには、月額6,800円でプロスタイリストが選んだ服が何着でもレンタルできる“airCloset”もあります。直近の目標は、会員数17万人とのこと。レディースのみならず、メンズ、キッズ、シニアなどにもサービスを拡充する予定で、海外展開も視野に入れているようです。さらに 月々6,800円で、1,000個以上ものブランドバッグを無制限で使えるファッション・シェアリングサービスがあります。既存のサービスは偽物とすり替えられるなどの問題点がありましたが、“ラクサス”の提供する商品にはそれぞれのバッグに同社独自のRFIDタグが仕込まれており、懸念要素を払拭しています。

さらに子育てのシェアリングサービスもあります。顔見知り同士で子どもの送迎や託児を頼り合う仕組みです。「信頼できる人たち同士が安心して子どもの送迎や託児を共助できる社会インフラを創り、子育て世帯からの料金徴収は行わない」といったサービスです。

下記の国内シェアリングサービスのまとめのサイトにたくさん紹介されています。

このシェアリングサービスが本格的に普及してくると、モノを売るというビジネスはインパクトを受けるでしょう。社会的にはリサイクル以上に環境負荷が軽減できますから好ましいことですし、生活者にとっては、ローコストで質の高い生活ができます。ですから、どんどん拡大していくでしょう。これは小売業から見ると、破壊的なイノベーションです。しかしこれは「すでに起きている未来」ですから、 2020年以後の世界を見据えて、頭を切り替えて、新しいビジネスを考えていくしかありません。

新宿区が遂に自転車シェアリングへ!都内5区の連携で広域のポートマップを実現
http://sharing-economy-lab.jp/share-bicycle
カーシェアリングの国内市場規模・動向まとめ
http://sharing-economy-lab.jp/share-car-economy
国内シェアリングサービス
https://boxil.jp/others/a126
GMSの最先端技術が可能にしたFintech × IoT × モビリティの融合
http://www.global-mobility-service.com/



◆俯瞰の書棚 “土を喰う日々”◆

今回の紹介は「土を喰う日々」 水上勉 1982年 新潮文庫 です。
恵比寿駅に新しいアトレが開業しました。中に無印良品の店があります。子育ての時代には、安くてデザインの良い無印良品の商品をよく買いましたので、懐かしさもあって覗いてみました。デザインやアイデアが優れた商品がたくさんありました。もう買うモノはないなと言う気持でしたが、ベッドやインテリア用品を見ている若い人を見ると、終活中の私には、これから人生を拓いていく人々が羨ましくなりました。

食に関するコーナーには、食に関する書籍もありました。ふと「土を喰う日々 」という本が目について手に取ってみると、水上勉という著者に気を引かれました。何十年か前、直木賞を受賞した「雁の寺」を雑誌の文芸春秋で読んだことを思い出しました。内容はほとんど覚えていませんが、妖艶な小説で、何を受け止めていいか分からなかった、ことを思い出しました。

著書の水上勉は9歳で禅寺の小僧に出され、そこで住職の身の回りの世話をすることによって、精進料理を身に付けました。

言葉には不思議な力があります。 「献立」は人に献上する心を表しているとあります。 「馳走」は走り回って食材を集めるとあります。今まで考えてもみませんでした。本書は当時、軽井沢に居をかまえていた著者の1年間の料理の記録です。

1月の章は、畑には何もないので地下の食料庫に蓄えてあるネギや根菜類を一つずつ、撫ぜ る様に取り出し、感謝するとあります。
2月の章は、 山椒味噌とほうれん草の根です。著者の祖母は山椒の実と葉を煮て、その汁 を3食のご飯に垂らして食べていたとのことです。そして83歳まで生きたとのことです。 白味噌とすり鉢でおろした山椒を混ぜた山椒味噌をよく使ったようです。田楽などに使えば美味しそうですね。この後も、すりこぎとすり鉢がよくでてきます。

ある時ほうれん草の赤い根っこを捨てたところ、老師がそれを拾い集め「お浸しに入れておけ 一番うまいところを捨てるな」と諭されたとあります。赤面する思いだったということです。土を丁寧に洗い落とすという手間を惜しむなということです。私も子供のとき母から「ほうれん草の赤い根は鉄分が多いから食べなさい」と言われました。ほうれん草のお浸しを作るとき、いつもそれを思い出します。両親は墓の中ではなく、私の心の中で生きています。

このように4月は山菜、 5月は筍と、12月まで続きます。和尚と客人のために酒の肴を用 意したことが、しばしば出てきます。禅宗の老師はみんな、酒好きのようです。

直木賞受賞の「雁の寺」とそれに続く「雁の村」、「雁の森」、「雁の死」の四部作をもう一 度読んでみました。妖艶なサスペンスのような小説です。雁とは寺の小僧で、和尚を完全 犯罪で殺した主人公です。小僧のあまりにも悲しい出自を聞かされた和尚の妾が、思わず小僧を抱きしめ、なりゆきで小僧を和姦してしまいますが、どうもこのことが殺人の動機になっているような筋書きです。「雁の寺」だけで、小僧の背景が見えないミステリアスな闇の世界を想像する方が、小説としてはいいと思いました。本人も「雁の村」、「雁の森」、「雁の死」は読み返してみると出来が悪いので書き直し、当初の本は絶版にした、とあとがきにあります。
ご興味ある方はご一読をお勧めします。



◆編集後記◆
●どうなるのかわからない今後のトランプ政権ですが、日本には難問をつきつけてくると思います。現状を殆ど認識していない感じですから。
●ヨーロッパが不安定になりつつあります。今年の3つの選挙が、ヨーロッパの今後を決めます。
●英国の決断は視点を、変えれば理解できます。縮小しても、誇り高い大英帝国の国に戻りたいというのですから。
●格差も亀裂ですが、亀裂は感情的な行動につながることがありますから、心配です。
●北朝鮮の暴走の脅威の中、韓国が国家の統治機能を喪失しています。政治は当然ですが、メディアと司法に責任があると思います。知的水準が高い人たちの組織ですが、あまりにも国際感覚がなさすぎます。
●“すでに起きている未来”、これに注目して、その方向に舵を切らないと、残念な結果になります。


======================================
◆内容・記事に関するご意見・お問い合わせ/配信解除・メールアドレス変更 下記まで
webmaster@fukan.jp
……………………………………………………………………………………………………
◆俯瞰 MAIL 0065号(2016年1月28日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行人:   松島克守
編集長:   松島克守
URL: http://fukan.jp
======================================

※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


BACK