倭国乱れていますね!


俯瞰工学研究所の松島克守のメルマガです。第3号を送らせていただきます。


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせていただいております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出をくださるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見をいただければ幸いです。

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この度の地震により被害を受けられた皆様には心より御見舞を申し上げます。暫くは余震などが続くと思われます。引き続き安全確保を心がけられますよう十分にご注意願います。皆様のご無事を心よりお祈りしております。
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皆様

◆季節のご挨拶◆
寒い日もありますが、木々を見ると開く日を心待ちにしているような芽が目につきます。各位も年度末の処理に頭を痛めていられると思いますが、4月からの新年度を、新年を迎えるような気持ちになって、何か新しい事を計画しましょう。


◆倭国乱れていますね!◆
「倭国乱れ、相攻伐すること歴年、すなわちともに一女子を立てて王となす。名づけて卑弥呼という」何とかしなければいけません。有力で国民が納得できるリーダーがいません。古来日本では、このような時、女帝を立て、後継が確立すると譲位したとあります。今の鬼道を掲げる卑弥呼はだれでしょうか?というところから日本史の復習を思い立ちました。思えば、1964年の大学入試は世界史、日本史で受験しましたが、その後は江上波夫先生の「騎馬民族征服説」の本を読んで以来40年以上何もアップデートされていない事に気づき、50年間の日本史の研究成果を基にした史観を頭に入れることにしました。20冊以上の古代史関係の書籍を斜め読みしました。書誌的俯瞰です。ネットで本は容易に買える時代になりました。加えて、ネット上に多くの情報が提供されています。対象は、「日本人はどこから来たか」、「日本という国家がいつ成立したか」です。これは日本人のアイデンティティーを強化するための俯瞰的認識を得るためです。詳細はブログに記述中です。

日本人はどこから来たかこの50年の学術の進歩は画期的で、遺伝子情報の分析がされています。女性の系譜はミトコンドリアに引き継がれ、男性の系譜はY染色体に引き継がれます。日本人のミトコンドリアをたどれば一人のアフリカ人女性に行き着きます。男性も同様にアフリカ人に行き着きます。10万年以上前に、アフリカを出た人類の祖先はヨーロッパとアジアを目指して移動を始めました。アフリカからアジアへの移動経路にはヒマラヤの北と南のルートがありますが、日本人の祖先はヒマラヤの南ルートのようです。遺伝子情報でいえば、中国北部、朝鮮半島、日本は殆ど同じグループです。日本列島への入り方ですが、朝鮮半島、対馬、壱岐のルートが有力です。長江河口域もしくは山東半島から直接、さらには西南諸島沿いに到達したという説も有力です。北海道には北方系の民族の流入もあり独自の縄文文化を築いたようです。また言語学的に南インドと近いといいます。特に稲作に関する語彙は共通語が多いようです。つまり日本人は遺伝子的にはアジア人の中の1民族だということですね。日本人だけアジアで特別という国粋的な主張はできません。

日本はいつ成立したのか紀元前1世紀に編纂された漢書地理志に「楽浪の海中に倭人あり、別れて百余国と為る。歳時を以て来たり、献見すと云う」とあります。倭国が歴史に登場しました。大陸から灌漑稲作技術が導入され、北九州から東北地方まで広がり、社会が変化し、弥生後期には北九州は大陸の政治と関係をもち、各地にはクニが成立し百余国にもなり、邪馬台国の時代になります。北九州か畿内かという邪馬台国の位置論争は俯瞰古代史では気にしません。クニというのは大集落か都市国家のようなものであった様です。都市は文明です。日本海側では、対馬海流を利用して山陰、丹後、能登、越とクニが広がり、青森にも稲作文化が伝播しています。逆にこの時代鉄を求めて朝鮮半島南部の「伽耶」を拠点に倭国が進出して、一時は新羅の都にも達しています。そしてこの間も、絶え間なく、朝鮮半島南西部(百済)から専門家集団や戦乱を避けた難民として流入したようです。そして、1世紀には氏族連合王国の倭国が成立しています。

中央集権の天皇制の国家成立はさらに時代が下がります。大化の改新の後、百済を支援する軍を送りましたが新羅・唐の連合軍の前に660年白村江の戦いで敗れ、百済は消滅、半島から完全に倭国の勢力が消えます。その結果百済から王族を初め多く知識人が渡来しました。そして668年大津で天智天皇が即位します。公地公民制という国家体制を目指して、最初の成文法典「近江令」22巻制定、670年最初の戸籍「庚午年籍」も作ります。大津令で初めて「日本」を使っています。天皇という王号もこの時からで、この時点が日本国の成立でしょうか?これには多くの百済からの専門家が参画したと思います。その後、壬申の乱を経て、天武天皇が即位して、文武天皇、そして聖武天皇と続き、本格的な奈良時代へ入ります。

7世紀には朝鮮半島も、新羅が倭国と唐の勢力を駆逐して統一国家を成立させ、朝鮮独自の文化を作っていく時代になります。重要なことは、7世紀、同時期に日本と新羅が唐の文化をフルセットでコピーして、独自の文化を作り始めたということです。極端な説では、すべての文化が朝鮮半島から伝播となりますが、両国とも、スタートは当時世界の最先端であった唐の文化の模倣から始めたということです。奈良の平城京と新羅の慶州のアーバンプラン(都市計画)は唐の長安のコピーです。一方日本語と韓国語は文法が基本的に同じですがあまり語彙が共通していないのは、日本語、朝鮮語ともに、7世紀以降に洗練されて確立したためかもしれませんね。古代史に関する考古学的、文献的情報は、極く僅かしか、ありませんので、古代史はミステリーハンターには最高の猟場ですね。詳細は。http://www.fukan.jp/


◆2011年度(社)俯瞰工学研究所の会員募集◆
4月からの会員を募集します。ぜひ会員になって(社)俯瞰工学研究所の活動に参加しませんか。会員のための技術経営講義が月に1回計10回あります。基本的な内容は、東京大学で講義した「俯瞰経営学」の内容です。今年度は、プレゼンテーションスキルの強化を入れていきたいと思います。大学の講義はフルタイムの学生を前提にしていますが、社会人はそれだけの時間が取れませんので形式は違ってきます。昨年の結果から最初はやはり、会計とマーケティングの基礎の講義が必要だとわかりましたのでそれも取り入れます。その後はテーマを選んで、講義やワークショップをする予定です。目標の水準は「社会人大学院」です。この場は会員同士の交流の場でもあります。毎回基本的に交流会をします。その他、会員が特に興味があるテーマがあれば別途ワークショップを開いてもいいと思います。

また、会員は興味と時間があれば、(社)俯瞰工学研究所が参画している下記のようなプロジェクトに参画することも可能です。賛助会員として、会社の仲間とグループで参加も大歓迎です。できるだけ、3月中に入会をお願いします。会費は原則4月?3月の年度会費です。4月の下旬には第一回の技術経営学講義を始めます。


◆近未来都市を作る実験?◆
二子玉川の都市再開発のプロジェクトは粛々と進んでいます。コンソーシアムの拠点、カタリストフロアが、二子玉川にオープンします。4月の25-26日に大きなセミナーを予定しています。ぜひご参加して頂き、ご自分でこの「場」をどう活用できるか考えてみてはいかがでしょう。コンサート、個展も可能です。すでに、コミュニティーを形成している方がここで何かイベントをするとか・・・・・
◆詳細は以下のURLをご参照下さい。http://creative-city.jp/2011/01/2011.html(社)俯瞰工学研究所はこの活動の支援に参加しています。


◆プラチナ構想スクール◆
小宮山宏先生がイニシアティブをとる、地域活性化のプロジェクトを推進する地域のリーダー育成のプラチナ構想スクールは2月18日にスタートしました。参加自治体は28県市町でした。19日は上田清司埼玉県知事による、地域活性化の現場報告の講義があり、続くワークショップのコメンテータは元総務大臣の増田寛也さんという豪華な布陣の研修になりました。小宮山先生もフルアテンドです。参加者は各地域の次をリードする精鋭が集まりました。また経過報告をします。
◆詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://www.platinum-network.jp/
(社)俯瞰工学研究所はこの活動の支援に参加しています。


◆ビジネスモデル学会春季大会参加の最終のお誘い◆
ビジネスモデル学会の春季大会が3月26日、慶応大学の三田キャンパスで開催されます。今回のテーマは「ビジネスモデルと企業倫理」です。企業はますます社会的な存在となってきました。その結果、求められる企業倫理もより高度になります。実は、前回秋の10周年記念大会での基調講演の「ビジネスモデル研究10年の俯瞰」で判明したのですが、ビジネスモデルの学術研究で最も大きな研究の一つが「ビジネスモデルとETHICS(倫理)」でした。今回はこれを少し深堀してご紹介したいと思います。交流会にもご参加ください。ネットワークが広がります。また5月21-25日に予定されているバングラデシュへ研修旅行の発表もあります。現地大使館の絶大なるご支援で貴重な訪問が実現しつつあります。貴重な1日の時間ですから、参加者にとって価値ある時間とするため、興味深くかつ有用なご講演を予定しています。主な公演予定は、

基調講演1:「ビジネスモデルとETHICSの俯瞰図」 松島 克守(ビジネスモデル学会会長/俯瞰工学研究所長)
基調講演2:「ビジネスモデルとETHICSの研究動向」 露木 美幸 氏(拓殖大学講師)
特別講演1:「ビジネス顕微鏡/人間情報が創るこれからの企業成長」 矢野 和男 氏(日立製作所基礎研究所主管研究長/人間・情報システムラボ長/IEEE Fellow)
特別講演2:「ビジネス・モデル・イノベーション基盤としてのユビキタス・コンピューティング」 坂村 健 氏(YRPユビキタスネットワーキング研究所長/東京大学教授)
特別講演3:「地上波テレビ・ビジネスモデルの限界と可能性」 岩崎 達也 氏(法政大学客員教授/日テレアックスオン映像事業センター長)
特別講演4: 「産学連携の現場からの提起」(仮) 鈴木 康之(JST科学技術コーディネータ)
JSTの鈴木さんは中部地区で長年産学連携を支援して、大きな成果を上げられたことで平成22年度文部科学大臣賞を受賞されています。ビジネスモデル学会ご参加頂ければ、貴重な知識を獲得し、交流会で素晴らしい人脈ネットワークを強化出来ると思います。これを機会に会員になって活動に参加しませんか。
◆詳細は以下のURLをご参照下さい。
http://www.biz-model.org/


◆書評◆
古代史の復習のために読んだ本の中で、今回は下記の4冊を紹介します。1.「農耕社会の成立」石川日出志 岩波新書 2010年2.「ヤマト王権」吉村武彦 岩波新書 2010年3.「古代中国と倭族」鳥越憲三郎 中公新書 2000年4.「倭国」岡田英弘 中公新書 1977年(2001年31版)

あくまで、古代史のバージョンアップが目的でしたので、出版が新しいものを選んでみました。1と2は最新の学術知識を編集したもので、新書ですが内容は充実していて、斜め読みすることは出来ませんでしたが、きちっとした知識を獲得できました。巻末の索引や参考文献等は、学術書の水準です。改めて、巻末の「岩波新書赤版1000点に際して」を読みましたがその理想は、さすがかって「日本の四大文化権威 朝日、東大、NHK、岩波」と称された岩波の力を感じさせます。1000点のうち100点でも若いうちに読めば教養人として人生を送れるとは言いすぎですか。

3は日本人の源流を東南アジアの歴史と民俗学まで広げた俯瞰的視野で記述されていて、「目から鱗」的な知識を獲得出来ました。長江中流に、かって繁栄した民族即ち、「倭族」を弥生人の源流であると位置付け、黄河文明に駆逐され西に、南にそして東に移動して其々の国家を設立し、あるいは少数民族として山岳地帯に生き残る「倭族」という学説を提案しています。そしてその「倭族」に対する愛情を感じさせる本です。

4は日本、中国、朝鮮という東アジアという、俯瞰的視点で「倭国」を解き明かしている点が、価値があるのでしょう。何しろ31版の重版が何よりの評価と思います。三国志の、云わば、付録のような「魏志倭人伝」や、編集時期が不確かな「古事記」「日本書紀」の記述を精読する倭国の研究より、遥かに俯瞰的理解を与えてくれます。巻末に学術的な索引や資料など有りませんが、それだけに、ノドゴシよく読める本です。巻末の「中公新書刊行の言葉」も改めて読みましたが、「真に知るに値する知識だけを選び出して提供すること、・・」を実感させる2冊です。


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◆俯瞰 MAIL 0003号(2011年3月12日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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