国際政治は変わる、日本の対応は


◆このメールマガジンは、松島克守が、東京大学教授、そして(社)俯瞰工学研究所の代表としてこれまでに名刺交換やメール交換をさせて頂いた方々に送らせて頂いております。またこのようなMLはメールボックスのご迷惑と感じられる方もあるかと思います。ご遠慮なく不要のお申し出を下さるようお願いします。また、内容等についてもご遠慮なくご意見を頂ければ幸いです。過去の俯瞰メールは俯瞰工学研究所のHPの「俯瞰メールのアーカイブ」にあります。http://www.fukan.jp/また、ご友人、ご家族に転送して頂くことは大歓迎です。



皆様

◆季節のご挨拶◆
目に青葉・・の季節になりました。花もきれいですが芽吹いて汚れていない浅緑の新緑は心を元気づけてくれます。つくばの竜巻、最近の気候は 荒っぽいですね。じわっと地球温暖化の影響来ているのでしょうか。

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◆Facebook開設のお知らせ◆
このたびFacebookのページ機能を使い、情報共有の場として、「俯瞰工学研究所」を開設しました。メルマガ等の活動を掲載してまいりま す。Facebookの検索で「俯瞰工学研究所」を探してみてください。


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・国際政治は変わる、日本の対応は
・依然不透明なグローバル経済
・日本の半導体企業が消滅
・会津でプラチナ構想ネットワークのシンポジュウム
・生活習慣の改善で一定の効果出ました
・頭のよくなるクッキング
・ディジタル書斎の構築9・書評 : 「テクノロジーとイノベーション」
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◆国際政治は変わる、日本の対応は◆

ロシアのプーチンが大統領に就任し、フランスの大統領もサルコジからオランドに代わりました。韓国の大統領も間もなく交代です。秋には中国も 習近平に代わります。このようなTOPの交代の時期は、これまでの懸案を一気に変えるチャンスでもあります。オバマ大統領は再選の暁には、対 ロシア外交を一気に変えそうです。インド、東南アジア、台湾、韓国、日本にロシアを加えた、対中国包囲網を形成するのではないでしょうか。中 国は日中韓のFTAでこの包囲網に風穴を開ける戦略でしょうか。無論南進はするでしょう。


プーチンは北方領土問題の処理を終わらせ、悲願の極東ロシアの経済成長を日本技術、資本で図ることを押してくるでしょう。


問題は日本政府にその対応戦略があるかです。以前にも書きましたが、冷戦終結時に、当時のドイツのコール首相は電撃的な外交でソ連のゴルバ チョフから東ドイツを奪還しました。この時が日本にとっても北方4島回復のチャンスだったと思いますが、当時の橋本首相は何もできませんでした。


歯舞、色丹は返却、国後、択捉は継続協議という日ソ共同宣言をどう変形して日本とロシアが受け入れるかです。3島返還で激高するようでは収まりませんね。


http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/119828.html


◆依然不透明なグローバル経済◆

経済情勢も不透明です。ギリシャの再選挙という事で年初、落ち着くかと思われた欧州危機も再燃で、円高の基調に戻ってしまいました。この情勢 はあのJPモルガンも読み誤って巨額の損失を出したと報じられています。スペイン、ポルトガルの財政危機も気になりますが、スペインとギリ シャは若者の半分以上が失業という状況は異常です。緊縮財政一本ではいかないのも当然です。一方緊縮財政推進のメルケル首相はドイツ国内の地 方選挙で大敗という事で動き方が難しいでしょう。まったく先が見えませんね。変に判ったつもりになるのが一番危険でしょうか。


一番不透明なのがアメリカ経済ではないでしょうか。オバマ再選後には現在とはまったく変わった局面が出てきそうです。製造業の復活?ともかく 1%の人間が20%の富を独占し、超高所得者が僅か20%ほどの所得税とは、これも異常で社会・経済の不安定要因だと思います。


相対的には日本は安定度が高いと思いますが、不透明は福祉・増税の政局です。民主、自民、その他が離合集散して、政策能力があり安定した政治 勢力が形成されるといいのですが。


http://www.garbagenews.net/archives /1926497.html
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=0405&f=column_0405_003.shtml
http://toshukou.at.webry.info/201204/article_14.html
http://uskeizai.com/article/266457799.html


◆日本の半導体企業が消滅◆

かつて世界を制覇した日本の半導体産業も最後に残ったエルピーダが倒産して、米国のマイクロンの傘下に入ることになりました。エルピーダは 1999年に、日立製作所とNECがDRAM事業部門を統合して発足し、2002年には三菱電機の同事業を吸収して、東芝がDRAM事業から 撤退し、エルピーダが日本で唯一のDRAMメーカーでしたが。DRAM以外の半導体は少し残っていますが、一つの産業が終焉したように認識し ます。なぜ?多く議論されていますが、明らかに戦略の誤りと、行動のスピードに問題があったはずです。これは明らかに半導体産業だけでなく、 業績不振は企業と産業に蔓延している日本文化の悪しき面の結果です。


日本企業の多くでは、高度成長以来の成功の期間にビジネスプロセスと評価基準が形成されましたが、その評価基準に基づいた事業戦略では、今の 時代は新規分野を切り開く事が出来ないのです。有能な企画スタッフ組織は、わが身と会社の利益を考え、確実に市場の需要がある事業を重視しま す。そして、自分の策定する事業戦略が上層部の承認を得やすいように、企画案をまとめます。実は経営者が関与するはるか以前に評価と意思決定 は行われているのです。これば日本式経営の最大の欠陥でしょう。TOPは?


http://jp.reuters.com/article /marketsNews/idJPTK079763820120507


◆会津でプラチナ構想ネットワークのシンポジュウム◆

会津でプラチナ構想ネットワークのシンポジュウムが開催され参加しました。会津は初めてです。若手の市長がプラチナ構想ネットワークの理念に 賛同して、この実践をしようというその行動をイニシエイトするイベントです。夜は日本フィルの演奏会です!市民が多数参加しています。こうし た地域の行動が日本を変えていくのだなと実感しました。 パネルディスカッションで地元の若手経営者と、山中温泉の名門旅館の社長の話が印象に残りました。


まず、地元の若手経営者の話ですが、一度は家業を継ぐ気がなくて東京に出たものの会津に戻り、家業を継いでいるのですが、その話の中で地元企 業の即ちファミリー企業の力と地域貢献の形を再認識させられました。それは彼の父親が雇った現在その会社の幹部たちですが、どこにも就職口が なくで、街でグレかけていた人間を雇い、厳しく教育して立派なビジネスパーソンにしてきたといいう下りです。そういう雇用の受け皿は地域に足 をつけたファミリー企業の中で、さらに地域に対する社会責任を強く認識している経営者でしかできない事です。これが会津人の神髄だと認識しま した。


山中温泉の旅館の経営者、この方はかなりシニアですが改革の精神が凄いです。家は240人宿泊の大温泉旅館を経営していましたが、家業を継ぐ ことになったとき両親を世界旅行に出してその留守にその旅館を廃業して、新たに20名限定の家族経営の旅館に変えてしまったというのです。旧 いビジネスモデルの限界を既に見通していたのです。その後父親との確執があったようですが、名旅館として地位を確立させ成功させて、或る時父 親が、「やはりお前の考えが正しかった」といったそうです。この間県会議員として街の振興に時間を使い地域の活性化を成し遂げています。


地域振興、産学官連携、ベンチャー企業という話が多いなか、こうした地域のファミリー企業の果たす役割は凄く重要だと改めて再認識しました。


帰りに、探してやっと会津にしかない「ニシン鉢」を買ってきました。これは海が遠い会津の人たちが身欠きニシンをサンショウと漬けるための鉢 ですが、質実な会津の暮らしを偲ばせる民芸品です。


当日のプログラムは
http://www.platinum-handbook.jp/contents/28


◆生活習慣の改善で一定の効果出ました◆

先月紹介した栄養学の関係で、3月に栄養学の知識をアップデートしましたので、それに沿って3月の中旬から食習慣を大幅に刷新してみました。


まず肉類と乳製品という動物性蛋白と動物性油脂をやめました。動物性蛋白質は魚だけです。それも出来るだけ天然魚の丸ごとで。例えばタイとか カサゴを一尾買い、魚屋で三枚に下してもらい、アラももらいます。身は刺身、焼きにして、アラは熱湯で洗ってからネギ、生姜で40分ほどだし をとりフィッシュスープとして頂きます。


後は野菜を凄く大目に料理します。よく食べるのは、ブロッコリー、青菜のお浸し、ニラ炒め、インゲン、アボガドなどです。トッピングにジャコ とサクラエビを多用しています。炭水化物は白米、麺、パンを止めて、夕食に玄米ご飯を一膳にしました。基本的に昼食は無しで、食べるときはサ ラダ一品か、野菜炒めだけです。ウィスコンシン大学のサルほどではありませんがカロリーはかなり落としました。


酒はビール、日本酒、白ワインをやめ赤ワインだけですが、これが意外と多くて0.7-0.8本/日。運動は歩くだけで距離は伸ばしませんが、 少し大股で早足にしました。 約1月後に人間ドックの検診を受けましたが、その結果コレステロール、尿酸、肝臓・・すべての主要なすべての数値が改善され基準をクリアしま した。血糖値は下がりましたがこれは基準を下回るまでにはいきません。体重も2-3キロ減りました。現在も続けています。


◆頭のよくなるクッキング3◆


健康のために色々やっていますが特にお勧めは毎朝の野菜ジュースです。基本は人参一本と、セロリ一本、それにレモン一個のしぼり汁です。たま にはリンゴなど入れます。混ぜませんがゴーヤを絞ってそのまま飲むことも有ります。これをもう30年以上飲んでいますので、ジューサーも5台 目です。これまではパナソニックを愛用してきましたが、現在はHUROMの低足圧縮絞りジューサーです。結論、いいですね。


メーカー曰く、「従来のジューサーは、素材を搾るのではなく、高速回転で切り刻む…高速回転の刃が持つ摩擦熱により、ジュースが変質してしま います。HUROM(LSTS方式/低速回転石臼曳式)ジューサーは、素材を切り刻むのではなく、じっくり搾るので、素材の持つ天然の味と香 り、色と栄養素が自然そのままに保存されます。」


最近ヨーグルトは止め豆乳にしました。これは、毎日は作りませんが、MAZUBAの全自動の豆乳メーカーが優れものです。約30分で完成で す。凄いのは思い立ったら乾燥大豆でも問題ありません。無論前日から付けた豆でも良いのですが。ともかく、豆と水を入れてスイッチを押すだけ で30分後に完成します。濾してそのまま飲んでも良いし、にがりを入れて寄せ豆腐でも、オカラは副産物です。


どんなツールを使っているかという質問が有りますので本月はこの紹介で。
http://www.karen-hurom.co.jp /reason/index.html
http://www.kandamusen.co.jp/products/tounyu/howto.html


◆ディジタル書斎の構築9◆

ディジタル書斎のコーナーで、純アナログの話です。マニアではありませんが、エンジニアの側面もありますのでオーディオも多少たしなんでいま すが、自宅のオーディオシステムは、純ディジタルです。なぜなら、現在の音源はCDを始め全てディジタルですので、それをわざわざアナログに 変換して歪を増やし、位相をずらして聞くよりも、ディジタルのまま処理して、最後のスピーカーは仕方ないのでアナログの通常システムでという 事で純ディジタルシステムです。


書斎の整理で、旧い懐かしいLPレコードを片付けていながら、これもとってあったアナログ機器のレコードプレイヤー、パナソニックが大昔 Technicsのブランドで発売していたリニアトラッキング式プレーヤーもありました。この貴重な純アナログの音源を活かした、純アナログ 再生システムを組み上げることにしました。幸い使っていないアナログベースの5チャンネルのパイオニアのアンプもありましたので。あとはス ピーカーですがこれは古いのはだめですから新品を買う事にしました。久しく買ってなかったのですが、雑誌やネットで見ているとなぜかイギリス のPMCというモニタースピーカー系のモノが気になりだして結局これを買いました。今年発売ですので最先端の技術に触れたいという気持ちが あったのでしょう。驚くことに20年保証付きです。通常は、スピーカーはコーン紙やフリンジが劣化するのでこんなに長寿命かと驚きました。こ れを、バイアンピング、即ち高音部と中低音部を別のアンプで駆動、左右計4チャンネルのアナログアンプで駆動することにしました。取り敢え ず、手持ちの2本のスピーカーケーブルで、2チャンネルで、今は駆動していますが。


結果?まだチューニングが出来ていないので結論は出せませんが、いい音ですがSACDやDVDオーディオのハイレゾ音源の純ディジタル再生に 比べると透明感がなくフワッとしていますね。ただLPレコードのジャケットの写真やデザインが懐かしくてそれから盤を大事に取り出して再生す る気持ちは、当時を思い出して楽しくなります。タイムスリップです。


◆書評◆

今月のご紹介は、「テクノロジーとイノベーション」W.ブライアン・アンサー(みすず書房 2011)です。


久しぶりにみすず書房の本を読みました。ハイレベルの学術・教養書の出版社で残っていてよかったという感じです。従って骨があり、読み解くに はちょっと根気がいるかもしれませんが、イノベーションを口にしている人は読んでおくべきでしょう。工学的な哲学書です。クリスチャンセンの 「イノベーションのジレンマ」も良い本ですが本書の方が知的で、学とは何かを改めて認識させられます。


本書は、テクノロジーの本質は何か、そしてどう進化するのかを追求した書です。その要点は、1.テクノロジーはすべて要素である。2.要素そ れ自体がテクノロジーである。3.テクノロジーは何らかの現象を利用している、即ちテクノロジーとは自然界をプログラミングしたものだ、とあ ります。


さらに、個々のテクノロジーは、次世代のテクノロジーの構成要素となり、自己創出しているともあります。テクノロジーの進化、(イノベーショ ン)は適合する部品や機能を頭の中で、あるいは実際に組合せて解決策を導出する作業である、ともあります。テクノロジーの進化の駆動力はニー ズ即ち新たな手段への需要であり、ニーズそのものは人間の欲望から、テクノロジーが直面している限界や問題から引き出される、とあります。


本書の最後では、経済はテクノロジーの表現であり、テクノロジーが経済を支配していくとまで言い切っているところは独創でしょう。


では科学とは、「科学とは手法である。理解や調査、説明の方法論なのだ。一つの手法は下位の多くの手法から構成されている。構造をとれば科学 はテクノロジーの一形態なのだ」と言い切ってもいます。


さらに、「テクノロジーは科学によって明らかにされた現象を利用して作られ、科学はテクノロジーによって形成され、即ち科学とテクノロジーは 共生して共進化する。科学は深く埋もれた現象を見つけ出し、理解するために必要で、テクノロジーは科学を進歩させるのに必要だ。」というテク ノロジーと科学の関係を述べています。


関連するテクノロジーのクラスターを「ドメイン」と定義してドメインとは実践法と知識の収集、組み合わせのルール、関連した思考様式、装置や 手法を形づくるために抽出されたものであるとしています。そしてテクノロジーはこのドメインの階層構造を持っていますと。


この後に続く設計論も興味深いし、そしてテクノロジーの進化論も面白いです。発明とは何か、「発明とは対象となる目標にとって新しい原理を基 にしたものである。原理の変更という点が通常の基本的に最適な組み合わせを追求するエンジニアリングとちがうとあります。本当に興味深い考察 が続きますが、あとはお読みください。




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◆俯瞰 MAIL 0017号(2012年5月19日)
発行元: 一般社団法人 俯瞰工学研究所
発行責任者:松島克守
URL: http://fukan.jp
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※本記事は松島克守氏の許諾を得て、再録したものです。


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