第13回 今年の抱負(1)〜九州成長戦略APから


 年末から県知事等行政トップや経済界要人を訪問して、要点の説明と意見交換を行っています。これから3月末のアクションプラン(AP)推進会議に向けて各分野の動きを作っていこうと、ご報告と様々な協力を依頼しているという次第です。本稿では、新年でもあり、全体を俯瞰しながら、九州経済活性化に向けた抱負を述べたいと思います。


 さて、もう10年前になりますが、茨城県に出向していた頃に、ハーバード大コッター教授のリーダーシップ論の名著「企業変革力(Leading Change )」を読んで感銘を受けました。その中に大規模な変革を推進するための8段階のプロセスというものがあります。地域活性化にも大変参考になるもので、茨城時代の講演などでは、いつもこれを冒頭に述べていたのですが、丁度、小泉改革の時代的な気分にも沿ったものでした。


8段階のプロセスとは、
(1)危機意識を高める
(2)変革のための連帯チームを築く
(3)ビジョンと戦略を生み出す
(4)ビジョンを周知徹底する
(5)従業員の自発を促す
(6)短期的成果を実現する
(7)成果を活かして、さらなる変革を推進する
(8)新しい方法を企業文化に定着させる
というものです。最後の企業文化に定着させるというのは、なかなか痺れました。


 現在進めているAPの実践も変革というより改善の積み重ねのようなものではありますが、コッター教授のこの方法論が常に頭の片隅にありました。各分野での小さな実践(短期的成果)から大きな流れにしていこうという後半のダイナミズムを意識していました。そして、この方法論を単純化して、APの4つの視点、(1)実践第一、(2)連携・つながり力、(3)オール九州、(4)アジアのパワーの取り込み、として表しましたが、九州の中で、それぞれの分野毎に8つの過程に沿った流れを作っていきたいと思っています。


アジアのパワーを取り込む
 これは、九州にとっての最大の課題であり、国際化に向けた構造改革、企業経営の体質改善を意味するものです。日本経済にとってもそうだと思います。ただ、九州では、直接アジアの風に当たりながら、歴史的なDNAが目覚めつつ、海外の動きを懸命に模索しているように思います。


 中小企業庁が一昨年来、中小企業海外展開支援会議が開催され、ブロック毎に会議を開催してきましたが、九州でも新しい動きが出てきました。


 福岡県がアジアビジネスセンターを1月23日に開設しましたが、総会には300人を越える盛況ぶりでした。JETRO事務所や中小機構九州支部とも有機的に連携していくことが重要です。その際、中小企業が海外展開した際の駆け込み寺、保護のスキームを考えていくことが不可欠との指摘をいただきます。


 また、九州経済連合会が一年の検討を経て、九経連ABC(アジアビジネスセンター)を7月から設立することに決まりました。各機関との重複を避け、民間ベースでの各種ビジネスプロジェクトを推進するということを特徴にします。また、邦人企業のアジア事業統括機能や外資系企業の誘致、支援していくことも今後の検討課題です。


 九経連の中に国際化推進機構が設けられていますが、ここに九州各県政令市と経済界代表が九州全体の国際展開に向けての政策課題を議論する場(幹事会)を設けることにし、2月からスタートすることになりました。将来的には、地域戦略会議(知事会+経済界)に提案する場、さらに進んで下部機関にしていくことも検討していきたいと思います。


 九州局では、「アジアビジネス戦略研究会」を開催してきましたが、グローバル経営、人材の育成・活用、環黄海会議や地域戦略、グローバルニッチトップ企業の創出のためのAPUとの共同調査研究、各分野での提言行動計画など報告書を作成中です。


 大企業も中堅中小企業もグローバル経営に転換していくこと、そのためのビジネスモデルを作り変え、グローバル人材を活用することが必要です。大学、民間でもアジアビジネス経営人材育成の講座などがありますが、強化連携していくことが重要でしょう。また、九州大学などでも国際的に通用する人材の育成強化に真剣に取り組もう講座の見直しが検討されています。


 留学生の活用は、各県の懇談会で最も関心の高いテーマです。11月にグローバル産業人材協議会が発足しました。留学生や海外ビジネス志向の高い学生のインターンシップと就職支援のプログラムを2年間にわたり策定、実証してきました。福岡、立命館太平洋大学のある大分がほとんどを占めるのですが、それ以外の県でも、この動きを作っていくことが望まれています。その際、普段から大学で優秀な経営者が経営の語る場を作り、その中で、経営者の鞄持ち(シャドーイング)も含め、インターンシップを進め、採用に直結させていきたいと思います。


 日本総研の寺島実郎氏は、ある座談会で、「優秀な学生は、みな米国に行くといわれるが、なぜか? それは、米企業がフェアに中国からの留学生を雇って鍛えて、中国に展開する時にビジネスモデルの先頭に立たせて母国に送り出すからだ。日本企業も企業戦略の中で留学生を育て活かしきるという努力をすることが不可欠」と言われていて、感心しました。


環境・エネルギー
 現在、国を挙げて、将来のベストミックスどうあるべきか、エネルギー政策の抜本改革が検討されているわけですが、国の新しい政策を踏まえた地域での協力や取組みが加速化していくでしょう。また、地域の成長産業としても注目されています。九州の地域政策という観点からは、産業クラスター政策的取り組みとアジア展開、地域に合った分散型システムの導入促進と地域間の連携を重点にしていきたいと思います。


 九州局で進めている「グリーン九州プログラム」は、環境・エネルギーの地域成長モデルです。政策情報や施策を産学官できちんと吸収、活用していく政策とビジネスのプラトフォーム機能を強化していきます。


 K-RIPは、環境クラスターから省エネや再生可能エネルギーの企業も加えた環境エネルギークラスターとして位置づけました。ソーラクラスター(SONEQ)や地熱の研究会も立ち上がっています。再生可能エネルギーの固定価格買取制度が今年7月から開始されますが、大きな弾みとなります。この機会を最大限活用していきたい。


 省エネルギー推進プログラムでは、ビル(不動産業界等との連携)、中小企業(省エネを利益率向上ととらえる経営戦略に)、家庭(スマートメーターの普及のためにどうするか)、を重点に進めています。


 スマートコミュニティー連絡会などを通じて、政策・ビジネスのプラットフォームの活性度、特にIT融合や不動産、運輸、医療福祉など異業種連携を活性化していきたいと思います。環境関連の先端技術は、関西主導だと言われていますが、関西企業との連携を深めることも課題です。


 最近の一番の話題は、グリーンアジア国際戦略総合特区が昨年末指定を受けたことで、内容的には、最高の評価だったとか。福岡県、福岡市、北九州市が一体的に連携し、結束力を示したことが高く評価されたものと思います。これから推進体制を作り込んでいくことになります。これを核にして九州まで視野を広げて連携、集約化していくことが重要かと思います。先月、山東省環境ミッションを九州局とK-RIPの参加企業を中心に派遣しましたが、本特区の活動の中にも落とし込んでいきたいと思います。


 さて、もうひとつの話題。福岡スマートハウスコンソーシアムがオープンイノベーションの成功例として注目されています。各社手弁当で連携を組ながら、様々な機器やシステムの開発を行っていますが、数ヶ月毎に福岡のアイランドシティのレンガハウスに各社が機材を持ち込んで、実証実験やセミナーを行っています。横浜コンソーシアムも発足し、併せて約70社の広域的な民主導のプロジェクトになっています。横浜のように国プロジェクトとの補完関係を全国で作るよう応援したいと思っておりますが、まずは北九州のスマートコミュニティとの連携です。1月26日現在、展示会とセミナーが開催されておりますが、これはあらためて取り上げたいと思っています。 


 オール九州の政策にしていくためには、地域戦略会議(県知事+経済界)の中で現在取り組んでいる低炭素社会アクションプランにきちんと反映していくことが重要です。 



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