第12回 環黄海経済技術交流会議について


韓国大田での第11回会議
11月16日から第11回環黄海経済技術交流会議(以下、「環黄海会議」)が韓国大田広域市で、日本側112名を含む日中韓約400名の参加を得て、二日にわたり開催されました。環黄海WEEKとして、国際ハイテクフェア(見本市)と合同開催で、科学技術フォーラム、ビジネスフォーラム、交通物流フォーラム、産学官連携学長フォーラムが行われ、本会議で各フォーラムからの報告、各国からの提案が行われました。また、三国政府の局長会議でも全体総括、今後の運営について議論しました。また、九州と韓国の経済交流会議も同時開催されましたが、これは、18回目になります。


今回の会合は、日中韓三カ国の産業構造高度化戦略がテーマでした。
このテーマを設定したホスト国である韓国がエレクロニクス分野での自信を深め、環境エネルギー、次世代自動車、部品産業での競争力を高めようという狙いを感じます。中でも印象に残ったのは、韓国政府の部品材料産業の競争力強化策です。至極真っ当で、骨太な強化策が提示されています。口頭で、2020年に日本を追いつき追い越しという明快な目標を述べていましたが、対日本というと、韓国国内が一致団結できるテーマだからこそ、闘志を燃やすことができるのでしょうか。


面白かったのは、経済産業省がアンケート調査で、「東日本大震災で、サプライチェーンの強化のために6割の企業が海外に出る可能性がある」との結果について、国内向けに危機感を訴えたものだったのですが、韓国側は、素直にチャンスと捉えていることです。韓国は、自動車産業の輸出、生産が好調であることもあり、日本からの部品材料企業の誘致の動きが目立つようになっています。先月も福岡九州に大邱経済自由区のPRに来ていました。


現下の超円高で、日産九州は、中韓等からの非機関部品の調達を2割から3,4割に増やし、調達コストを削減する方針であると聞きます。自動車部品、半導体製造装置の中堅企業にあっても海外メーカーの部品のサプライヤーになるために海外展開を考えはじめています。中堅中小企業としても、グローバル企業としてアジアの成長とともに企業も経営者も成長していくことが重要な企業戦略のひとつとなっていると思います。行政としても、単体で海外に出ては失敗するおそれがあるので、パートナーを見つけるためのマッチング機会を作ることが重要です。部品材料産業だけではありませんが、出るにしてもどういう出方をするのか、海外との協力と競争力の維持をどう構築していくか、九州としても腰を据えて考えていかなければならない課題です。


環境エネルギー分野
前回の北九州会議では、環黄海環境経済圏の構築がテーマでした。前回のテーマがきちんと引き継がれたものになるか、少々気になりましたが、結果的には環境エネルギー産業と技術が引き続き大きなテーマとなり、前回会議の連続性を維持できていたと思います。ただし、中身はどんと高度化したという印象です。スマートグリッドや再生可能エネルギーの最先端分野(洋上風力基地、電気自動車の統一基準や実証プロジェクト等)が話題になった。当方からは、九州大学の持田先生のクリーンコールテクノロジー、三菱重工のIJCC、福岡スマートハウスコンソーシアム中村代表など九州の宝といえるような方々の話を揃えました。


本会議での九州からの提案
九州から主に提案したのは、サービス産業の生産性向上とクラスター連携です。 サービス生産性の向上というテーマは、中韓経済のサービス産業化は進んでおり、内需型産業の育成、輸出依存型からの転換にもつながるものであり、重要な課題です。また、中韓でも急速に高齢化が進むことを考えると、健康医療介護等サービスの充実も重要です。また、味千ラーメンは500店舗を超えるなど飲食サービスも伸びています。日本にとってもこれらサービス業の中韓への展開は期待されるところです。サービス分野での相互の国際展開の動きを促進させていくために規制緩和や相互交流を進めていくことが重要です。


 また、クラスター交流については、企業のサプライチェーン戦略やグローバル戦略の中で必然的に出てくるテーマです。韓国とは、機能性食品分野での交流や半導体分野で大分のLSIクラスター連携事業などが、中国とは、この環黄海会議の仕組みの中から、環境分野の商談会、事業提携という流れが既にできていますが、部品材料産業や先端的な環境エネルギー産業分野での関心も高まってきています。福岡システムLSIクラスターの大津留事業統括の発表の中で日中韓のクラスター協力について社会システム実証など幅広い観点から提唱しました。


環黄海会議の原点と現在
石炭政策の終了とともに2001年に九州局の石炭部、鉱害部の二部が廃止され、国際部を設けることになり、国際部の目玉の業務としてこの環黄海会議を仕込んだのだということです。やはり問題になったのは、中央政府機関(中国は商務部、韓国は知識経済部)と地方出先機関である九州経済産業局が相手先になることのバランスの問題でした。現在は北京の日本大使館の堂之上公使が九州局の総務課長だった頃に、北京に来て粘って協議して、結論を出るのに数日待ったという話を聞きました。先人の苦労が忍ばれます。


 しかし、今では、中国側は日中韓貿易大臣会合などでも環黄海会議の強化を取り上げていますが、よくよく聞いてみると、環黄海地方7省との経済交流発展の観点から北京政府がうまく関与し、とりまとめるいい仕組みになっていると評価しているようです。また、テーマが実践的で、外交的なレトリックが必要ないことも気に入っているのだとか。


 九州にとっては、自分の立ち位置を確認するいい機会になったと思います。これからの最重点である環境エネルギーを進化しつつ、サービス産業交流の拡大を模索し、クラスター連携などを通じて追われる立場の自動車、半導体、部品材料分野の競争と協調の構図をどう築いていくかということです。


今後の改善について、二点、記しておきたいと思います。
11年前から比べると、三国での九州の経済のウエイトは、低くなっています。環境エネルギー技術のメッカである関西や自動車と素材の強みを持つ中国地方を巻き込んで、九州との広域連携の案件を提示していくなど現在の仕組みについての魅力を高めることが重要です。


また、九州からは、行政も経済界、大学も含め、福岡県関係の参加が中心で、その他では長崎県からは、五島列島の電気自動車の実証(EV-ITS)関係の積極的なPRがあったもののその他の県からの参加はもっと多くてもよかったのではないかと思います。各県からの参加を促すためにも九州全体でどう活用するかの議論をしておくべきだったと思います。九州経済連合会に設置されている九州国際化推進機構(環黄海会議も九州局と合同事務局となっている)をオール九州の政策議論の場として環黄海会議も取り上げていければと思います。


追記
農業生産法人さかうえの坂上社長の映像がYou Tube にアップされましたので、ご覧下さい。榎田竜路氏監修による若手農業経営者シリーズとして、農業を志す若者に見てもらいたいと思います。
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&client=mv-google&v=H6zTdv-QUNc  


記事一覧へ