第14回 産業クラスター発展の2つの要
米国では、いまだにTsunamiそしてNuclear Power Plant Accidentは繰り返し特集報道されています。また、「あの時私も日本にいました」、そして「先日現地に行ってきました」という人まで結構多く、シリコンバレーは確かに日本、日本経済と近いとつくづく思います。同時に、その「現地に行ってきた」という人物など、被災地地元の私からみても不思議なくらいわが事の様に真剣に話し続ける。確かに、グローバルに世間をみているということか。当地企業の行動パターンの一端を象徴している面も感じます。
その東北地方は、その全域が一体になって、エレクトロニクス系のいわゆる優良ハイテク新興・中小企業振興に取り組んできました。東北大学を中核としたレベルの高い大学発ベンチャーも多い。そして、今回の大震災の結果、この企業群が提供してきた部材供給が滞り、日本そして海外において、電子機器系中心に生産が大きく影響を受けたことは報道のとおりです。以下、東北地方そして日本の他地域も念頭に、地域産業振興、その流れでシリコンバレーの最近の一面にも触れます。当面の復興対策というには中期的な内容ですが、産業クラスターの地域内・国内展開と、対外・グローバル展開とで整理します。
1. 地域内・国内でのイノベーションエコシステム形成
この件は、新興・中小企業が支え大手中堅企業が牽引するイノベーション空間として、これまで述べたとおりです。典型的には、その特定地域で、先輩格の大手・中堅企業と、後進の新興・中小企業との本格的(有機的でシームレス)な交わりがあってこそ、その地域クラスターの発展がある、という点です。その交わりには、完成品レベルでの取引、それに至る開発・作りこみ過程、さらに遡ったR&D段階もありましょう。
この両者の交わりを促すものは、一つ「新興・中小企業の底上げ」であると述べました。個々企業の質とそのような企業群の厚み(量)と。それが、売上高や業界シェア競争に走らざるを得ない大手・中堅企業の新陳代謝を促す。時代の大きなうねり、そして産業構造の変化にも対応できる、むしろ引っ張っていくようなイノベーションシーズを、外部から取り込む。そしてポイントは、その外部ベンチャー系からの話が、技術レベルのみならず、ビジネス展開に直結した内容であること。そうすると、大手・中堅企業とベンチャー・中小企業とのイノベーションレベルでのやり取りが円滑になり加速する。つまり、新興・中小企業の底上げの基本には、技術力に加えて、製品・事業企画的な提案力も必要になるという点です。
なお、いくらイノベーティブな新興・中小企業の厚みがあっても、企業経営の巧拙で大きく差が出るのも確かです。アマゾン(シアトル在)に対して不振のイーベイ(サンフランシスコ在)や、サン・マイクロシステムズ(オラクルに買収された)の例もあります。経営手法の問題で、これも大きなテーマです。また、上記のイノベーションエコシステムがシリコンバレーですでに完成しているかと言えばそれも微妙です。強烈な不況の度に、常に進化している、いや実は仕切り直ししていると言えば、現実に近いでしょうか。最近、改めてその辺を地元エンジニア系複数人と議論しました。あるエレクトロニクスハードウェア系大手企業出身者に私の方から、「新興ベンチャーが大手企業に食い込むのは実は結構大変なのではないか」と言ったら、「実はそうだ」と返ってきました。ただ、目指すべきモデル(アントレプレナーシップ)を大手もベンチャーも見据えている、共有しているという点は確かにあります。
上記のような大手企業とベンチャーの関係で特に注目したいのは、そして日本でも今後期待したいのは、大手企業からのスピンアウトベンチャーの場合です。好不況で、また、さらにいい待遇を求めて、結果的に人材流動性が高いシリコンバレーの場合、確かにこの大企業発ベンチャーも膨大にいて、そこが大手企業のキャッチボール相手になっている。そう言えば、当地某大手メーカーのCVC(企業内VC)の投資目的に、「スピンアウトベンチャー促進のための投資」というのがあります。新陳代謝を図らざるをえない現実の楽屋作業的にもみえます。つまり、受け皿つくりです。そしてここでも、日米で大手企業が抱えているものは基本的に変わらない、特殊日本的ではないということを感じます。それと確かに具体的、継続的な取り組みです。
2. 産業クラスターのグローバル展開=受け入れる国際化、グローバル化
もう一つが、他でもありません、国際化、グローバル展開です。この件は、実はそのまま日本全体にも当てはまりそうですが、ここではまず「地域クラスター」を想定します。
例えばシリコンバレーが今のような発展過程に本格的に入れた背景は、上記の「域内でのイノベーションエコシステム形成」と並んで、「アジアとの有機的な結合」があります。もともと、コストが安く良質な労働力を得る相手として、そして最近はより高いレベルでのやり取りにも至っている。半導体・エレクトロニクス分野では台湾と、ソフトウェアならインドが典型です。そして最近10年は製造組み立て過程一般での中国です。このアジアとの連携で、新興企業もそのアーリー段階から説得力ある事業モデルをVCに提示も出来た。しかもそれは、クラスター内外の大手企業と組んで初めて完成品に仕上げられる開発過程、そして事業化過程が中心になりますから、対外的な、それも世界的な働きかけが新興企業側の死命を決します。
因みにこの中で、日本企業の位置付けは、「クラスター内外の大手企業」の中核的存在です。つまり、完成品の大切な売り先。シリコンバレーでは、最近も「最初のお客さんは日本企業」というケースに多く出くわします。「クラウドコンピューティング」もそうです。つまり日本企業は、開発後期、事業化段階の超重要なイノベーション、そしてビジネスパートナーです。
では、カリフォルニアは、どうやってそのような関係をアジア諸国と築いてきたか。深い人的なつながりです。世界中から人を受け入れてきた米国流の世界展開過程とも言えましょうが、当州は、特にUCシステム(カリフォルニア大学)がアジアからの優秀な人材の大きな受け皿になってきました。その彼らが、しっかり米国側に根付き、母国とのインターフェイス役に育っていく。
アジアの隣にある日本に期待するのはこの点です。大震災前のアジアでの空前の日本ブームは、もともとの日本への信頼感期待感が背景、潜在的にあると思います。その流れは本物で、観光客に限らず今後も続きましょう。もちろん、今回の原発問題は大きな懸念材料として当面残りそうですが、流れは再開しましょう。日本の各地の中核大学が受け皿役を担えます。企業もさらに本格的にアジア人材を受け入れて、彼らに母国とのインターフェイスを担ってもらう。 そう、一昨年、北京に行った時も若い人たち(学生さん)は皆日本が好きでした。
そして、この人材受け入れ先はアジアに限らず、さらに世界から広く入れる。ここから先、国内はますます成熟していく中、でも考えてみればグローバル展開があります。日本経済はこの巨大な成長可能性部分を温存してきた。世界の他の先進国比で、日本の対GDP輸出そして総貿易比率が低いと指摘されていますが、そのグローバル市場です。そこへのさらなる展開に向けて、まず世界から人材を受け入れて、日本企業・経済の取引、パイ拡大、その過程で国内人材の雇用拡大へ。歴史的にも英国はじめ、さらなる拡大過程での欧州諸国がそうですね。こうみると、グローバル化は、先進国における、成熟化を見据えた共通の戦略にもみえます。、そして米国、さらに最近のシンガポールなど。最近、今度は渋谷の居酒屋で、偶然居合わせたスペインから来た学生2人と話しました。彼らは日本がほんとに好きだと言ってました。そして、「なぜ日本の若者は将来を悲観するのか分からない」とも。
以上のことは、国全体も地域も全く同じです。そして、各地の中核大学がまず人材を受け入れる点からみて、地域ぐるみ、地域クラスターとしてさらに取り組んでいくのは確かに現実感があります。いま現にあるうねり、これからますます大きくしていく。仙台も学生の街です。伊達政宗の命を受けた支倉常長(慶長遣欧使節団)の伝統で、宮城県、仙台市とも国際展開は盛んです。外からの人材受け入れもオープンで積極的です。そう、支倉が出航した港は石巻(万石浦)でした。
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