第58回「ロボコン三昧」の巻


 9月の後ろの3連休及び翌週の週末に、愛知、石川、京都そして沖縄へ出張し、ETロボコン 2013の各地区(順に、東海、北陸、関西、沖縄)大会にお邪魔してきました。ETとは、 スピルバーグ監督の映画で有名な地球外生物ではなく、組込みシステム技術を意味する “Embedded  Technology”の略。今年で12年目となるこのETロボコンは、同一の走行ロ ボットに各チームが作成したソフトウェアを搭載して走行競技を行うもので、実際の競技 結果とソフトウェア作成の際の分析・設計モデルの内容審査の結果とを合算して、総合点 が決まるというコンテスト。世界をリードするエンジニアの育成を目指した技術教育が、 その目的とされています。今年から、決められたコースを走る部門に加え、走行ロボット を用いた自由なパフォーマンスを競う部門が新設されました。アバウトなイメージで言う と、従来から行われているのがスピードスケートで、新設されたのがフィギュアスケート という感じでしょうか。企画力・創造力のあるエンジニアを育成したいという主催者側の 強い思いから新設されたということです。


さて、私にとり最初のロボコン体験となった東海地区大会、会場となったデンソー本社の 大きな講堂のような建物に入った途端、その熱気には驚かされました。ずらりと座席が用 意されていたにも関わらず、立ち見の方が沢山いらっしゃいました。開会式で、ITパスポ ート試験及び上位レベルの情報処理技術者試験のPRを織り込んだ挨拶を申し上げた後は、 初めて見る競技をワクワクしながら観戦。規定通りのコースを走り終えた後、障害物をく ぐる部分とシーソー状の板を通過する部分とがあり、大多数のロボットは規定通りのコ ースは無事完走できていましたが、特にシーソーの通過は難しそうでした。また、せっか くそれらの障害をクリアできても、最後のガレージ内でピタリと止まることができないチ ームが幾つかあり、なかなか難しいものだなと思いました。


2つ目の北陸地区大会では競技全体を観戦し、上述の新設部門(アーキテクト部門)も見 ることができました。実際のパフォーマンスを見る前に、会場内に貼られていた企画書を 読んで、桃太郎が家来を連れて鬼退治を展開するチームの演技は特に楽しみにしていたの ですが、現実は企画通りには行かず、結局、桃太郎の役のロボットが単身鬼に対決するこ とになり、しかも、鬼の前で転倒してしまうという顛末。チームの皆さんには申し訳なか ったですが、企画と現実とのあまりの違いに大笑いしてしまいまして、観客を楽しませる パフォーマンスという意味では成功だったと思いますが、エンジニア育成に熱心に取り組 まれている実行委員の方々は渋面でした。優勝候補と言われていたチームも、パフォーマ ンスに入ろうとした瞬間に転倒してしまい、結局2つのパフォーマンスのうちの片方しか 披露できず、敗退。そのチームは、終了後の懇親会で、披露できなかった2台のロボット によるシーソーを披露してせめてものリベンジをしていましたが、残念無念という感じで した。アーキテクト部門については、運営側も手探りで実施されているという感じでした が、創設の意図は素晴らしいと思うところ、回を重ねるごとに技術的にも観客を楽しませ るという面でもレベルアップしていくことを期待しています。


伺ったどの地区でも感銘したことは、立派なエンジニアを育成したいという実行委員の方 々の意気込み。どの地区でも、競技終了後にモデルワークショップというセッションが設 けられていて、実行委員の方々が、熱心に参加チームのソフトウェアやパフォーマンスに ついて指導していらっしゃいました。皆さん、企業の技術者や大学の先生方で、ボランテ ィアで運営に携わっていらっしゃいます。ある関係者の方に伺ったところ、夏からこの各 地区大会に至るまで、結構休日を費やして準備や指導をされていたそうです。7月末のあ る会議の際の理事長の鶴の一声で、試験のPRを兼ねて各地区大会に伺うことになり、翌 日に事務局の方から送られてきた日程を見て、3連休をはじめみな休日ばかりであること に軽いショックを覚えた私でしたが、休日返上で高度なIT人材の育成に情熱を注いでおら れる全国の皆様を目の当たりにして頭が下がる思いでありました。10月の3連休の真ん中 の長岡の大会が、最後に伺う地区大会ですが、11月20日にパシフィコ横浜で行われるチ ャンピオンシップ大会にも、もちろん参加するつもり。組込みシステム技術協会が主催 するET2013というイベントの一つとして行われるこのチャンピオンシップ大会、百聞は 一見に如かずですので、ご関心を持っていただいた方は、10月7日から来場登録が始まる  http://www.jasa.or.jp/et/ のサイトをご覧になって、お越しになってみては如何でしょう か。



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