第44回「そんなに想って頂けて」の巻


 いよいよ梅雨の始まり。この季節になると、かつて駐在したカナダの良さを色々と思い出します。夜の9時くらいまで明るいので、帰宅してからゆっくり1時間くらい、各国大使公邸等がある瀟洒な住宅街と周囲の緑や池を巡っての散歩を楽しんだり、自宅の屋外テラスでカナダのビールを味わいつつ、庭を走るリスや訪ねてくる小鳥を愛でたりしたことは、忘れがたい思い出です。一方、様々な外国の方々との出会いについても懐かしく思い出されます。最も親しくお付き合いした方の一人が、台湾の駐加経済文化代表処の陳氏でした。 陳夫人と家内とが、各国外交官夫人と現地カナダ人女性との懇親イベントで親しくなり、その後、夫婦同士でお付き合いすることになりました。カナダを離任する直前、色々な方にfarewell dinnerにお招き頂きましたが、陳夫妻からは、離任2日前の最後のfarewell dinnerにお招き頂き、「日本に帰ってからも、ずっとkeep in touchしましょう!」と仰って頂いたシーンを今でも良く覚えています。残念ながら、数年前から音信不通状態になっていたのですが、昨秋に役所の後輩から紹介してもらった台北駐日経済文化代表処の余副代表のおかげで、昨年末に音信が復活したところです。


 その時の御礼を言いに、先日、白金台のオフィスに余氏を訪ねました。彼は、3回目の日本駐在とのことで、日本語がとても流暢。すてきなイタリアンに連れて行って頂き、歓談しました。余氏のお父様は大の日本好きだそうで、今回の日本駐在に先立つ台湾での勤務時代、余氏は2回、お父様と長期の旅行をされたそうですが、1回目の際、彼が「今度の長期休暇、一緒にどこへ行きましょうか?」と尋ねると、お父様は即座に「もちろん日本。」と答えられ、東北地方を中心にドライブ旅行をされた由。2回目の際、「前回は日本に行きましたから、今度は別の国に行きましょうか?」と尋ねると、お父様は、「いや、今度も日本。」とのお答えで、北陸地方を中心にドライブ旅行をされたそうです。私の故郷の九州には、余氏自身もあまり行かれたことがないとのことだったので、それでは、3回目のお父様との旅では、是非九州一周をとお勧めしたら、「実は、父は足がだいぶ弱ってしまって。今でも、日本を旅したいという想いは強く持っていると思うのですが。」と少ししんみり話しておられました。


 「お父様は、本当に日本を好いていらっしゃるんですね。」と言ったら、「父だけでなく、多くの台湾人は日本が好きです。」と言われて教えられたのが以下の調査。2008年か9年に台湾の交流協会が、台湾の方々を対象として"一番好きな国はどこか"という調査を行ったことがあったそうです。1位は日本で38%、2位がスイスで5%、3位が米国で3%という公表結果だったそうですが、4位以下を足しても遠く100%にならないことが議論を呼んだらしいです。実は、台湾が一番好きと答えられた方が36%いたらしく、それを除外しての公表だったことがわかったそうです。そこで、翌年は、"外国の中で一番好きな国はどこか"という設問になって再び調査が行われたところ、日本と答えた方が52%!になったとのことでした。過半数の人々が最も好きな外国として我が国を挙げて頂いているところって、他にもあるのでしょうか?私、本当に感激しちゃいました。


 上記シロガネーゼランチ(男性2人でのランチの際は、シロガネーゼとは言わないかもしれませんが)の3日後の週末、オタワに住むラウさんから家内に祝誕生日の電話がありました。彼女は元々ベトナム人で、ベトナム戦争時の混乱の中、カナダに逃れてきた方です。オタワのベトナム料理店でシェフをしながら、女手一つで娘3人を育て上げたラウさんと、家内は英語学校で知り合いになり、同じ英語学校で知り合ったアルゼンチン大使夫人、スペイン大使館員夫人及びインドネシア大使館員夫人ともども仲良くしていました。私は、ラウさんの英語がほとんど分からなかったのですが、家内はきちんとコミュニケートしていました。そのラウさん、毎年家内の誕生日には電話をかけてくれるのですが、毎回、「どこに行っても、CHIZU(家内の名)が一緒にいたらと想う。」と言って下さるようで、今回もそうでした。そこまで遠い異国に住む外国の方に想って頂けて、家内は幸せ者だと思います。そう言えば、カナダ在勤時代、アフリカ諸国の大使館の方々が協力し合って「アフリカンナイト」というアフリカの食べ物・飲み物を頂きつつアフリカの文化に触れるイベントがあったのですが、日本大使館館員でお招きを受けたのは、私たち夫妻だけでした。これは、大使館館員夫人同士の交流の中で知り合ったトーゴ大使夫人と家内が親しくなったためでした。外交官としてははるかに家内の方が立派であったのだなあと思わざるを得ません。今後、陳氏との再会の企画をはじめ、少しでも挽回したいと思っています。



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