第30回 「楽しき休日出勤」の巻


 秋晴れの土曜日、今日も神宮球場へ?いえ、今日は本郷キャンパスへ。おや、こんな好天の日の休日出勤、気が重いでしょう?いえいえ、かなりわくわくしています。そんなに楽しい仕事が待っているんですか?ええ、今日は、元気な東大生達と一日、時間を共にすることができるので、楽しい仕事なのです。へー、それは良いですね、何の仕事なんですか?それはね…


 東京大学産学連携本部が行っている学生起業家育成教育プログラム、通称、東京大学アントレプレナー道場の最終審査会が、本郷キャンパス内の福武ホールで開催されました。この道場、今年で6期目。半年間の課程を経て、最後まで残った8チームが、それぞれのビジネスプランをプレゼンし、審査の結果、最優秀1チームと優秀2チームが決まる日です。


 私は、審査委員長を務める影山和郎産学連携本部長、山本貴史(株)東京大学TLO代表取締役社長、郷治友孝(株)東京大学エッジキャピタル代表取締役社長とともに、審査委員として臨みました。


 プレゼンされたビジネスプランは、@屋内トレーニングを長続きさせるための支援サービス Aきめ細かな中国人訪日観光事業 Bネットワーク型農業オーナー制度の構築 C褥瘡予防システムの提供 D商品比較をやりやすくしたモバイルEC E家庭の省エネ促進サービス F服装のコーディネート検索 Gインビトロ生花の製造・販売 というもの。大きなミッションの達成を志向した事業が好みの私にとって、正直なところ、やろうとしていることは理解できても、はて、このビジネスをやることにどんな社会的意義があるのだろうと首を傾げてしまうようなプランもありましたが、それはそれ、プレゼン自体は総じて皆上手で(関西の芸人みたいな喋りの学生までいました)、質疑応答のプロセスも楽しめました。最優秀はCの男性2人組。昨年の最優秀チームは、女性がプレゼンを行った5人くらいのチームで、最優秀チームの名が告げられた瞬間、その女性のキャーという声を皮切りにしてメンバーが喜び合う姿を記憶していますが、今年は、2人の男性が静かに喜びを噛みしめている感じで、これもまた良いものでした。


 夜は、近くの中華料理店で、各チームの学生諸君や各チームのメンターをやって頂いた社会人の方々との懇親会。各チームのリーダー及びメンターから、この日に至るまでの裏話が次々と披露され、笑ったり、なるほどと頷いたりの連続でした。特に印象的だったのは、あるメンターが面倒をみたチーム(優秀賞獲得)について語られた、「このチームについて良かったと思う点は、最終審査に至る過程でメンバーが増え、また、このビジネスに参加したいというユーザー候補を複数獲得してきたこと。ビジネスをやっていく上で、そのビジネスに協力してくれる人々を増やしていくことはとても重要であり、そのことが学べただけでもこの道場に参加した意義があると思う。」とのコメントでした。私もコメントする機会を頂いたので、「君たちがこれから社会人として漕ぎ出していく21世紀の日本を取り巻く環境は、20世紀後半のそれに比べれば厳しいと思う。そういう中で、何よりも求められているのは、日本が拠って立っていくビジネスを切り拓くプレーヤーであり、是非そういうプレーヤーを目指して頑張って欲しい。」という主旨の話をしました。学生達が、「山城先生(未だにこう呼ばれるのには慣れないのですが)、必ず自分は起業します。そして、仰ったようなプレーヤーを目指します。」とか、「大企業への就職が決まっているのですが、しっかりと研鑽を積んで、いずれは自ら事業を興したいと思います。」とか言ってくれ、頼もしく思いました。彼らが大きく羽ばたいてくれることを心から願っています。



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