第1回 「鉄分の日」の巻


 皆様、初めまして、あるいは、お久しぶりです。かつて、近畿経済産業局に在勤中に、「もっと関西!」というタイトルで、このサイトに連載させて頂きました。経済産業省本省に、創業連携推進課長として戻った際、出口編集長からは、引き続きコラムの連載をしませんか?と言って頂いたのですが、仕事に追われる毎日で、断筆してしまいました。この8月16日に、経済産業省から出向し、東京大学産学連携本部副本部長を拝命し、本郷での勤務を始めました。編集長に、異動の御挨拶かたがた、落ち着いたらまた連載を再開させて頂こうかなと申し上げたら、すぐに、 5つくらいの新タイトル案を返信して来られました。いずれも、東大の産学連携を前面に出したタイトル案だったのですが、私としては、いずれ、現職から離れた以降にも、折りにふれ、投稿を続けさせて頂きたかったので、私の好きな言葉を引いてタイトルと致しました。宜しければ、今後、おつきあい下さい。


 さて、26年ぶりに、母校に通うようになりましたが、懐かしいと思うところと、おや、こんなものがあったのか、と驚くところがあります。本日は、後者の一つ、東京大学総合研究博物館について書こうと思います。この施設、まさに、このコラムのタイトルのように、本郷キャンパスの南西の隅っこに建っています。懐徳門という、これまた学生時代には知らなかったひっそりとした門から入ったところにあるのですが、そこで現在、「鉄 137億年の宇宙誌」という展示をやっています。宇宙から撮った青々とした地球の写真を見て、地球は"水の惑星"だと良く言われますけれど、と同時に、"鉄の惑星"でもあるんですね。重量ベース(だったかな?)で言うと、地球の3分の1は、鉄なのだそうです。確かに、地球の表層は水で覆われている部分が多いのですが、地球の中核は、鉄。特に興味深かったのは、鉄が地球の中心にあることによって、生命体が地球で存在できる環境ができており、かつ、鉄によって生命体が維持・発達していけることを解説する展示でした。


 鉄と聞くと、鉄鋼とか、それで作った構造物しか頭に浮かばないようになっていた私にとり、そういえば、酸素を運搬するヘモグロビンというものがあったなあと思ったのをはじめとして、なるほど!、そうなのか!と思わせることが多々ありました。東北大学金属材料研究所で作成された世界最高純度の鉄(銀色です)とか、現在の主要な鉄鉱石である縞状の鉄鉱鉱床とか、展示物だけでも十分おもしろいですが、ユニークなのは、展示されているテーマについて研究されている東京大学及び他大学の先生の話を、質問に対する答えという形で収録したビデオを、併せて視聴できることです。この企画には、小宮山宏前総長も参画しておられるようで、展示の最後に、インタビューの内容が、ビデオとパネルで展示されています。鉄は、今後も最重要の金属であること、そして、今世紀半ば頃までには、鉄は リサイクルによりまかなえる状況になるのではないか、というのが、インタビューの主旨と理解しました。


 この展示会、10月31日まで、月曜以外の毎日行われているようです(無料です)ので、鉄分補給にお越しになっては如何でしょうか?私は、本展示会に加え、先だっての5連休でJR東日本の企画切符を活用した鉄分補給にも行って参りました。それでは、また。




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