第6回 巡礼と言えば!


 この連載のタイトルは巡礼です。巡礼と言えば、我が国では「四国お遍路さん八十八ヶ所巡り」です。断定することもないとは思いますが、とりあえず、そうしましょう。ということで、今回は、四国八十八ヶ所でも第一番札所のある徳島県です。


 実は、徳島県は産学連携先進地域です。6月26日に、徳島大学主催の「第一回イノベーションクラブ講演会」が開催されるとのことで、役者不足ですが講演と意見交換をさせていただきました。徳島大学の地域共同研究センターの佐竹弘教授は、産学連携学会の前会長で、この世界では最も経験の豊富な方のお一人です。徳島大学では、まだ産学連携という概念が薄かった時代から、大学の教員の方が、地元の中小企業を訪問しておられました。なぜ、徳島がそのように産学連携に熱心であるのか?実は、長い歴史があるようです。


 オロナミンC、ボンカレー、ポカリスウェット、カロリーメイト、ファイブミニ。皆様も、馴染みの深い製品だと思います。これらの製品を製造している会社をご存知ですか?


 答えは、大塚製薬です。実は大塚製薬は産学連携で一躍ヒット商品を産み出した会社でもあります。1953年に発売された「オロナイン軟膏」は、徳島大学の先生に開発依頼し、第四基アンモニウム塩のたんぱく質凝固作用を利用した、殺菌効果を実証されました。



昭和高度経済成長期を感じる宣伝看板。当時のトップスターを起用したCMは時代の流れにフィット。ちなみに、浪花千栄子氏の本名は、南口キクノ(なんこう きくの)という出来すぎた話。参考:オロナインヒストリー




 設立当時は10名程度の小企業が、産学連携の新商品と、類まれなPR戦略で、今や、全世界の従業員数は2.3万人と、グーグルの1.9万人を凌ぐ企業となっております。特に徳島県の人口は80万人弱ですが、県内の同社従業員数は8千人。100人に一人が従業員ということになります。地元で育った企業が地元を支える構図は素晴らしいですね。


今回は、点滴等に使用される輸液製造工場を見学させていただきましたが、病院等の現場で行うと誤操作の可能性もある輸液の混合を、異なる輸液を一つのパッケージ内にまとめ、使用直前に簡単に混合出来る技術など、使用者の立場に立った製品開発を実施されていました。


 徳島には、発光ダイオードで有名な日亜化学工業株式会社や、今回訪問させていただいた、(株)アスカ、株式会社ヨコタコーポレーションなど、世界的な技術を持ち、産学連携に理解の深い企業が多数あります。ヨコタコーポレーションでは、主力のベアリングに加え、自動検尿機などの医療用機器の開発にも着手されています。アスカでは、炭素繊維材料の機械加工に取り組んでおられ、将来展開を見据えた技術開発を推進されていました。


 今後とも、産学連携も活用して、世界に羽ばたく企業が産まれるよう、関係者一同、頑張らねばと思う次第でした。




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