第5回 デザイン分野での産学連携


 産学連携は技術分野だけの専売特許ではございません。というより、世の中、いたるところに産学連携の出口はございます。


 大学教員の数は、理系よりも文系の方が多いですね。人文社会系では、法学部、経済学部、経営学部等、産業活動と極めて関連性の強いものが多いです。このため、最近では、分離融合産学連携も叫ばれております。更には、人文系には芸術学部もございます。ということで、今回は、デザイン分野での産学官連携活動について紹介させていただきます。


 6月24日は、新潟にて「新潟大学等ネットワーク協議会設立総会」が開催されました。その際、小職より、多様化する産学連携の一例として、シンシナティ大学による「LIVE WELL COLLABORATIVE」を紹介させていただきました。その後の交流会で、デザイン関係の大学の方から、参考になったとのお声をいただきました。シンシナティ大学による「LIVE WELL COLLABORATIVE」について、概要を説明させていただきます。


 米国では50歳以上の団塊世代の消費行動が、大きな経済的インパクトを与えると言われております。つまり、戦後ベビーブーム世代で、金銭的、時間的にも余裕がある人達が今後退職を迎える訳です。その世代の感覚にフィットした製品やサービスを開発することが、企業の販売戦略上重要であるとの問題意識から始まったプロジェクトです。当初は、シンシナティ大学デザイン建築学部とP&G社が取組を始めました。その後、参加企業が増え、現在は50社以上が、共同事業を実施中です。


 プロセスは、

(1) 参加企業と大学との間で、企業の有する問題意識を明確化し、
(2) それに沿った商品開発の目標を決めると、
(3) 市場調査を行うとともに、
(4) 大学中心に、具体的な商品のデザインを行います。
(5) 出来上がった商品のデザインを、企業側がデザインが気に入らない場合は、その知的財産権の所有権は大学に残ります。企業側が採用する場合には、2万ドル程度の金額で所有権が移転をいたします。

 期間は、10週間程度で、その間、企業側の担当者は、大学キャンパス内に常駐するそうです。



動き易い服のデザイン












 類似した試みは日本でも開始されております。例えば、群馬大学社会情報学部が、中央工科デザイン専門学校デジタルデザイン科とコラボで、企業の新商品のコンセプトやデザインを請け負うものです。エントリー企業は10万円の参加費を払うことが条件です。多額の資金を投下しても成功するか否か分からない新商品の開発ですので、必要最小限のコストで若者に掛けてみるのも合理的ですよね。
ぐんまブランド創出プロジェクト


 京都工芸繊維大学での、学と産、プロと学生のコラボレーションによる、公園用ベンチや幼稚園児用家具の設計などの事例は以下のサイトで動画でご覧下さい。
京都工芸繊維大学のケース

 多くの人たちの参画により、近年、産学連携活動もより広がりを感じられますね。




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