第4回 「失われた野菜」、復元プロジェクト


 世の中、便利になった反面、失われたものもあります。例えば、今の季節ですとホタル、天の川。かつて日本でも、水田や清流の近くでは普通にホタルが舞っていたし、夜空を見上げれば、満天の星と天の川が見上げられました。野菜でも、子供の頃食べたトマトは、もっと濃い緑の香りがしたのに・・、といった経験は多くの人が感じることでしょう。 


 ということで、今回は、産学官連携で幻の伝統野菜を復元する試みを紹介させていただきます。現場は、石川県能登半島。そうです、朝市で有名な能登半島、輪島の近く。金沢大学法学部の大友ゼミの学生さんたちの取組を、金沢大学にて、大友信秀教授、石川県庁企画振興部 俵 幸嗣次長、川畑 端恵主任から伺ってきました。



大友ゼミの学生さんと生産者の意見交換会

 かつて、農業が盛んな地域でも、過疎化、高齢化により、地域特産野菜の栽培が途絶えております。石川県輪島市の「沢野ごぼう」も、伝統野菜ですが、栽培の手間や供給の難しさから、市場から姿を消しておりました。これらの野菜を復活させ、特産品化し、地域ブランドとして売り出すため、「大学コンソーシアム石川:地域課題研究ゼミナール支援事業」の一環として、金沢大学、石川県庁、地元農家、事業共同組合や地元の建設業者の方が共同で取り組んでおられます。



イベントでごぼうを販売する学生さん

 もともと、大友ゼミは、知的財産法を専門とし、ブランディングの研究を行っておりました。机上だけではなく、実践的な取組として、ごぼうの他にも、白山市の「ヘイケカブラ」の生産復活とブランド確立にも取り組んでおられます。


 学生さんたちは、種まき、収穫作業の手伝いなど、実際に農業体験を行いながら、ごぼう祭りなどのイベントに参加し、販売の手伝いを行ったそうです。ごぼうの新しい料理法を研究するため、農家レストランを訪問し、ごぼうのデザートなど研究を行うとともに、地元住民の方と意見交換を重ねました。



ヘイケカブラの種まき

 ブランド商品には、ストーリー性が必要です。江戸時代には毎年加賀藩から将軍家に献上された、ごぼうについて歴史的な経緯を分かりやすく説明したホームページを立ち上げ、ブランディング・アイデンティティーの確立に腐心されました。
 沢野ごぼう事業協同組合HP


 味と香りは評判のよい、細屋ごぼうも、その収穫には大変な労力が必要です。しかし、その状況を憂慮した地元の建設業者「上野組」が、ゼミと連携して地域起こしを開始されました。労力がかかる収穫作業において、建設資材の型枠を利用して、高齢者でも簡単に収穫できるように効率化を図りました。



上野組による畑つくり

 初年度は300キロの収穫でしたが、来年は県内の食品加工業者から3トンの引き合いがあるそうです。ゼミの学生さんたちは、上記の事業を単なる調査研究ではなく、実際に経済行為として発展させるため、大学発ベンチャー、株式会社「きんぷる」を昨年11月に起業しました。
(財)石川県産業創出支援機構機関誌


 大友教授によると、「石川県の地場産業は商品の売込みが苦手だが、実力は極めて高い」ということです。学生による地域ブランド化の取組により、潜在力を引き出しながら、地域が人材を育て、その人材が地域を豊かにする好循環が生まれる日も近いと確信しております。



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