第10回 熱い浪花の産学連携


 現代落語に、「大阪弁はイタリア語」というのがあった、・・・ような気がする。大阪人は、せっかちで、ちょっと車が渋滞すると、後ろの車の運転手が、前の車に「どいたりーな!」。すると、前の車の運転手が、後ろの車に向って、「待ったりーな!」。肩こりのことを、イタリア語で 「モンダリーナ!」。


 ほんまかいな?と思うが、勿論、ほんまではない。しかし、なるほど!という気もする。多分、関西人とイタリア人はラテン的な気質が底流でつながっているのでは。


 たしかに、大阪人のコミュニケーション能力の高さには驚異的なものがあります。大阪の人が3人以上集まると、下手な芸人以上です。そのようなノリの良い大阪ですから、産学連携も半端ではない。ということで、今回は、大阪大学の、" Industry on Campus "を紹介させていただきます。


 これまで、産学連携共同研究と言っても、本当の共同研究でないものもありました。
例えば、
(1)かつてのように奨学寄付金が出しにくくなった →
(2)委託費で計上 →
(3)知財の所有権の関係で、企業側は委託費より共同研究を志向
といった流れで、委託研究的な共同研究もあるのではないでしょうか。
 その場合、契約の前に数回打ち合わせをするだけで、実際に、産学の研究者がお互いの研究室を訪問するのも、数えるほど。これでは、企業側が欲している成果が得られるのは難しいですよね。


 現下の厳しい経済情勢の下では、このような、お付き合い的な共同研究が淘汰されていることと思います。それでは、" Industry on Campus "とは、どのような方式なのでしょうか?実は、名の通り、キャンパスの中に産業を呼び込んでくる構想です(分かりやすい!)。


 本格的な産学連携スタイルは、やはり、一つ屋根の下と言いますか、お互いが一カ所で、膝つき合わせながら研究を行うことが考えられます。しかしながら、そのような研究スタイルを望んでいる人も多いのですが、大学側としても、そこまで教員の手が廻らないし、そもそも、企業と共同で研究を行えるようなしっかりしたスペースもない。企業側としても、研究者を貼り付けるだけの余裕がないし、企業秘密の漏洩も心配。といった懸念があります。


 しかし、それではいつまで経っても本格的な研究が出来ないと、大阪大学工学研究科長・教授の馬場章夫先生は、一大決心で本事業を平成18年度から始められたとのことでした。

http://chizai.nikkeibp.co.jp/chizai/biz_univ_tlo/20081125.html
少し古いですが、馬場先生のインタビュー記事です。


 このような活動の効果もあり、受託研究、共同研究、特許や成果有体物移転の件数は飛躍的に増加するなど、大きな成果をあげております。これはこれまでの産学連携を越えた産学一体、融合ですね。


 近々、「光エコライフイノベーション拠点」を含め、新しい共同研究棟の建設も決定し、益々、拡大を考えておられるとのこと。テーマ数も平成18年度の3件から、15件と5倍に。しかも、1件当たりの研究費は3.5千万円。3年間が平均ですので、1億円以上。この金額には、企業からの研究者派遣費用は上記の金額に含まれておりません。企業の研究者が3名程度、大学にほぼ専任で実際に従事するスタイルを15テーマも同時並行しているのは、日本の産学連携では珍しいですね。

 共同企業の中には、積極的にPRを望まれる企業がおられれば、企業名すら表に出したくない企業まで様々と聞いております。この辺が、産学連携の担当者にとっては、腕の見せ所です。


 私は第三世代の産学連携をお恥ずかしながら提唱していたのですが、産学連携学会によりますと第四世代ということです。一世代私の考え方が遅れており申し訳ございませんでした。このような本格的な産学連携の時代が到来していることを実感いたしました。





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