第66回 福島におけるEMによる放射能汚染対策に関するフォーラム(5)



国立放射線生物学研究所 所長 アレキサンダーナウモフ博士
:国立放射線生物学研究所 所長 アレキサンダーナウモフ博士

 前回の65回においては、チェルノブイリ原発事故の被災国となったベラルーシの国立放射線生物学研究所のニキティン博士による「EM技術はセシウムで汚染された土壌で安全な農産物を栽培するための、有効で安全で環境にやさしい技術になりえる」という研究成果を紹介した。


 今回は、外部被曝に対するEMの生体保護の可能性を検討した結果である。タイトル中の電離放射線とはγ線のことで、1997年にも類似の成果が得られており、既に公開されています。発表者は所長のアレキサンダーナウモフ博士である。



:図1


:図2


 我々の研究所では、被曝して健康被害を受けた人たちの健康を回復させるための研究を進めています。例えば、キノコの抽出物とか、カルシウムを含むパン製品、ヨードを添加した乳製品の開発の研究を行ってきました。その流れから、今回はEM1とEMX GOLDの放射線に対する保護効果を知るために研究を進めています。


 効果を評価するために、血液や酸化ストレス、生殖システム、甲状腺などを調べています。



:図3


 実験方法について説明します。図3に示されるように、生後10ヶ月たったラットを15匹ずつ5つのグループに分けました。グループ1は、対照区として放射線を照射せず、EMも与えないグループです。グループ2は、2Gyの放射線を当てました。2Gyの放射線はラットを殺すことは出来ませんが、血液や代謝や遺伝子に強い影響を与えます。グループ3は、2Gyの放射線を当てる14日前からEM1を体重1kgあたり1.5gを飲み水に入れて毎日与えました。グループ4は、こちらはEMX GOLDを14日前から1.5g飲み水に入れて毎日与えました。最後のグループ5は、EM1とEMX GOLDを1.5gずつ毎日飲み水に入れて与えました。そして放射線を当てた後、3日目、10日目、30日目の体の変化を調べました。


 測定項目として、酸化ストレス、生殖、内分泌、そして血液をつくるシステムを調べています。現在も分析中ですが、これまでに得られた興味深い結果を発表します。



:図4


 図4は、血液中の酸化ストレスの測定結果です。なぜ、酸化ストレスを調べるかというと、体に放射線があたると活性酸素が発生して酸化ストレスを与えるからです。したがって、酸化ストレスを測定すれば、放射線の影響がわかります。


 その酸化ストレスを測定するために、血液中のマロンジアルデヒド(MDA)を測定しました。MDAは酸化を調べるためのマーカーです。そして、この図は、各グループのラットの血液中のMDAの量を示しています。対照区のグループ1を100とすると、グループ2の放射線を当てたが、EM1もEMX GOLDも飲ませていないラットの血液では、図に示すように酸化が進みました。グループ3のEM1を与えたラットでは、3日目には、少しMDAが下がりましたが、10日目、30日目には対照区と同じで酸化が進みませんでした。グループ4のEMX GOLDを与えたラットでは、MDAの値が明らかに下がりました。そして、グループ5のEM1とEMXゴールドを与えたラットでも、同様にMDAの値が下がりました。この結果を見ると、EM1やEMX GOLDを与えたラットでは、放射線による血液の酸化が抑制されました。


 MDAの数値は下がりすぎてもよくないという研究者もいるので、今後さらに詳しい研究を続けます。



:図5


 図5に毒性指数を示しました。放射線が当たると血液中に毒性物質が増えます。通常、血液中に毒性物質が増えるとアルブミンというタンパク質が毒性物質と結合し、排出しようとします。毒性物質とアルブミンが結合した割合を毒性指数といいますが、30日目にそれを調べました。グループ1の放射線を当てない対照区の毒性指数は、このグラフのように低くなっています。グループ2の放射線を当てたラットの血液の毒性指数は、図に示すように、とても高くなりました。グループ3から5までのEM1やEMX GOLDを与えたグループでは、コントロールと同様に放射線を当てたにもかかわらず低い値のままでした。一番効果があったと思われるEM1とEMX GOLDを両方与えたグループの毒性指数は、何も与えていなかったグループ2に比べて15分の1でした。



:図6


 図6は、まとめです。EM1とEMX GOLDを飲み水に入れて与えたラットでは、酸化ストレスを和らげ、そして、体内で発生する毒性物質の排出能力を高めることにより、放射線被曝による損傷を軽減しました。しかしながら、そのメカニズムは未解明なので、今後の研究課題です。


 本研究に使用されたγ線の2Gyは2シーベルトと同等と考えてよく、その線量は致死と重大な障害を発生する極めて強いレベルのものである。図4と図5の酸化ストレスと毒性指標は表裏一体のものである。したがってそれらの結果はEM1号であれEMX GOLDであれ、飲用すれば、それなりに顕著な効果があり、単独ではEMX GOLDが勝っているが両者は併用するほうがいいということになる。


 この結果の重要な事は、EM1やEMX GOLDは放射線による酸化ストレスを著しく軽減すると同時に、放射線または日常的なストレスによる体内で発生する毒物に対し、極めて強い消却排除作用を持っているということであり、放射線被曝対策の根本的な解決策になり得るものである。



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