第40回 EM技術による放射能被曝対策


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 東京電力福島第1原子力発電所の事故はチェルノブイリ原発事故のような最悪な状態にはならないとしても、半減期が30年の放射性セシウム137による土壌汚染が確認されている。放射性ヨウ素131の半減期は8日と短く、追加的な汚染がなければ30〜40日で消滅するといわれている。それに対しセシウム137の半減期は30年、カリ肥料と同じように作物に吸収されやすく、食物を通し人体に入り、内部被曝の原因となる。その内部被曝は、免疫力を著しく低下させるため、すなわち、「チェルノブイリエイズ」と称される免疫不全に陥ることが明らかとなっている。


 1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故が発生して、25年が経過した。外部被曝による原爆症については、広島、長崎の結果と同じであるが、被災国となったベラルーシでは、現在もなお、食物を通した内部被曝の問題は解決されず、深刻な状況が続いている。しかも、事故現場から340kmも離れ、絶対に安全といわれた首都ミンスクの市民にも、高レベルの内部被曝が広がっている。



 ベラルーシは、国土の23%(46500km2)が被災したとされるが地図に示されるように、汚染の境界は明確でなく、かなりのグレーゾーンでも農業が営まれている。事故から15年経過した2001年、ベラルーシ放射線安全研究所が行なった全国の牛乳検査の結果、セシウム137による放射能が1L当たり50ベクレル以上となった地域は、1100の農村に広がっていたことが確認されている。


 WHOによると、セシウム137の身体負荷量は、一般的な国では、0.3ベクレル/kgとなっている。現実には、ベラルーシ全体がこの数値をはるかに上まわっているため、ベラルーシの科学アカデミーは、放射能の身体負荷量を15〜20ベクレル/kg以下にすることをガイドラインとして健康指導を行なっている。この数値は、白血球の数が減少し始め、免疫力が低下し始めるレベルを指標にしており、やむを得ない措置である。


 セシウム137の身体負荷量の生物的半減期は、大人で100〜150日、子供で15〜90日で、年齢が低いほど短縮されるが、その対策は、主として非汚染地帯でのサナトリウムの活用が中心であり、その他に、海外のボランティアの支援による国外での療養も、かなりの国々で実施されている。


 我が国でも、1990年以降、数多くのボランティア団体がベラルーシの子供たちの療養を支援しており、現在もなお続けられている。1994年の秋、私に、北海道でベラルーシの子供達を受け入れている「チェルノブイリへのかけはし」の代表の野呂美加さんから、EMで放射能対策が可能か否かの問い合わせの手紙が来たのである。


 私は、「可能性あり」と返事し、数週間後に行なわれた、札幌市民大学の講師をつとめたことを機会に、野呂さんに会い、協力を約束した。その後、療養に来日した子供たちに、EM・Xを提供し、EM・Xに詳しい医療関係者も紹介したのである。EM・Xの効果は、てきめんで、腫れていたリンパや甲状腺も正常に戻り、食欲も増進し、わずか1ヶ月そこらで、すっかり元気になって帰国したが、その結果は、数値ではなく、あくまでも外見上のことであった。


 常識的に考えると、放射能被害をそんなに簡単に治すことはあり得ない話である。この常識は、私も、十分に心得ているが、過去に広島で被爆した複数の新潟県在住の方々から、EM・Xを飲んだら、「白血球の数値が正常に戻り、免疫力が高まり、カゼをひかなくなった。お陰で被爆前の元気であったころの、すがすがしい気分を、久々に味わうことができた。」という報告を受けていたからである。


 EMは、光合成細菌を中心に、乳酸菌や酵母等々の抗酸化機能を持つ微生物の複合共生体である。その主要菌である光合成細菌は、粘土と混和し、1200℃の高温でセラミックス化しても、そのセラミックスから取り出すことが可能である。想像を絶するこの耐熱性は、光合成細菌がガンマ線やX線や紫外線をエネルギー源とし得る機能性を有するからである。そのため、外部被曝はもとより、内部被曝の放射能を無害な状態に変換していると考えられたが、我が国の放射線に関する実験規制は、かなり厳しいため、将来の課題だと考えていた。


 野呂さんの話によると、「チェルノブイリへのかけはし」の活動には、ベラルーシの国立放射線生物学研究所の所長である、コノプリヤ教授も積極的に協力してくれており、近々、日本にも来ることになっているとのことであった。


 もし、コノプリヤ教授が来日したら、費用はこちらで持つので沖縄までご案内して下さい。予算を準備して、共同研究を提案したいと思いますのでと、お願いした。翌1995年に野呂さんの協力でコノプリヤ教授は沖縄まで来てくれたのである。当初は私の話を全く信じてくれなかったコノプリヤ教授も、私から出された状況証拠に半信半疑で同意し、EMおよびEM・Xを活用した放射線対策についての実験を行なったのである。この成果は、97年に沖縄でのEM医学国際会議で発表された。


 最終的に、EMやEM・Xを活用すると外部被曝はもとより、内部被曝の問題も解決できることが明らかとなった。しかしながら、それを信じる者は実験の関係者のみであった。それでも、ベラルーシの国民にEMが使えるようにと考え、法的にかなり厳しい関門を、すべてクリアーして、EMは農業用、EM・Xは健康用として登録されたのである。この登録は、今でも、旧ソ連のすべての国々で有効となっている。


 EM技術による放射能汚染や被曝対策についての結論的なことは前回(第39回)でも述べた通りである。しかしながら、今回の福島の第一原子力発電所の事態は、放射性セシウムを放出しているため、農水産物を通し、濃縮された放射性元素による内部被曝の可能性は否定できない状況となっている。したがって、今回は、自己責任で実行できる内部被曝対策について述べるが、このような研究が実行できたのは、世界で唯一、本件のみである。


 なぜならば、ベラルーシ政府は、外国で療養する子供達の身体放射線負荷の測定を禁止しており、もし違反すれば、その子供達の再出国禁止と同時に、測定にかかわった関係者の入国禁止という厳しい法律を課しているからである。もしも、正式な測定を行なうとすれば、ベラルーシ政府が認める放射線等の取り扱い及び測定に関する資格を有し、かつ、ベラルーシ政府が適正であると認証した測定機器を使用すること、外国人の場合は、政府の特別な許可が必要等々の条件も付されていて、実質的に第3国人が関与できないようになっている。


 幸いにも、野呂さんたちが受け入れたベラルーシの子供達の通訳を兼ね、ボランティアで参加していたベラルーシ出身の、エドアルド・ヴェンスコビッチ君が、EM・Xに強い関心を持ってくれたので、彼を私の所属していた琉球大学農学部の研究生として受け入れ、EM全般のトレーニングを行なった。その後、大学院に進学させ、EM・Xによる内部被曝対策を修士論文のテーマとし、私とコノプリヤ教授で指導したのである。


 測定器のホールボディカウンターは、野呂さんの協力で購入することになったが、輸入関税が200%もかかるため、部品の輸入及び組み立てという手法で対処した。この方法でも50%の関税がかかり、当初の予算では、全く対応できない状況となった。私は、ヴェンスコビッチ君を機器を作っているウクライナに送り、機器の分解と組み立てのトレーニングと放射線取り扱いに関する資格を取らせ、コノプリヤ教授の協力で、ベラルーシのすべての認証をクリアして、実験を行なわせたのである。もちろん、この件にかかわる予算の不足分やヴェンスコビッチ君の学費や生活費は、すべて当方で負担し、実験を完了することが出来た。


 修士論文名は「EM・X服用による身体負荷量放射性物質セシウム137の排出に関する研究」となっている。実験に協力してもらった子供達は、地図の大きな赤い丸で示された汚染度の高いゴメリ州とモギリョフ州に住んでおり、21人が参加した。子供達は日本への出発前に現地で放射能全身計数装置(screener-3m)と携帯Y線々量計で測定し、日本へ入国した。日本での療養は7月23日〜8月31日の40日間で、すべて、野呂さんを中心とした「チェルノブイリへのかけはし」の里親の方々に協力いただいた。


 21名の子供の平均年齢は9.7才、3グループに分け、EM・Xを1日30cc飲むグループをA、1日50cc飲むグループをB、飲まないグループをCとした。飲まなかったグループには、実験終了後の12月上旬以降に、EM・Xを飲むように関係者を含め協力をお願いした。出発前のセシウム137の身体負荷量はグループAが81.61ベクレル/kg、グループBは88.65ベクレル/kg、グループCは62.99ベクレル/kgであった。


 療養が終了した8月31日後、ベラルーシへ帰国した直後に測定した結果は、グループAが26.78に減少、グループBは全員が測定不能、すなわち正常値となったのである。グループCも33.81とかなり減少したが、ベラルーシ政府の目標である15〜20ベクレル/kgに達することは困難であった。


 また、EM・Xの持続性について検討するため、10月と12月の2回にわたって測定した結果、Aグループは12月2日の時点で帰国時の26.78よりも下がり22.16、Bグループは全員、測定不能の正常値を維持し、Cグループは37.31となり、帰国後の数値が高まるという従来のパターンが確認された。


 これらのデータと、その後の測定値を参考に、コノプリヤ教授と協議した結果、EM・Xは1日当り50ccを服用すると40日でセシウム137の身体負荷量を完全に消去すると同時に、耐放射性機能が長期にわたって保持されるという従来の常識に反する結果となった。


 EM・Xは、その後、改良に改良が加えられ、日本では、EM・Xゴールドとして市販されているが、現在のEM・Xゴールドは、実験に使われたEM・Xの5.6倍、80℃以上に加熱して適当な温度で飲用すると10倍以上の効果があることも確認されている。福島第1原子力発電所の今後がどのようになるのか、予測は不可能であるが、最悪でもベラルーシのようにはならないことは確かである。


 この観点に立てば、内部被曝対策としてのEM・Xゴールドは、ラベルに書かれている一般的なレベルで十分であり、子供はその2分の1、乳幼児は3分の1〜4分の1が目安と考えるのが妥当である。当然の事ながら、EM・Xゴールドは飲み過ぎても害はない清涼飲料水であるが、もしも日常と変わったことが発生すれば量を50%以下に減らす配慮は必要である。また外部被曝に対しても量を増やせば十分な対応が可能である。


 最後に、このベラルーシでの研究情報が、今回の日本の原発事故に何らかの形で役立つことが出来るようになったことは、これまで、長期にわたってご協力いただいた「チェルノブイリへのかけはし」代表の野呂美加さんのお陰であり、改めて感謝の意を表する次第である。



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