第8回 同じように漢字を使っても (2)同義異字


夏はやっぱり「花火大会」!中国語ではなんと言うか?

 花火大会の鑑賞地、どこでも人が一杯で暑い。何とか場所をとって座り、ビールを飲みながら夜空を見つめ続ける。5秒間で10箇所から1000発が打ちあがる開幕シーンや、夢と希望に満ち溢れた未来へと連想されるシーン、光のはしらが駆け抜けた瞬間に、どこまでも続く銀河の如く、眩い銀色の花火が夜空を埋め尽くすシーンには誰もが歓声を飛ぶ!

 日本語でいう「花火大会」は中国語では「焔火晩会」という。多くの人々が夜空を楽しむということは同じであるが、前者は「花火」という美しさの「形」に、後者「晩会」という夜の祭りの「雰囲気」に注目しているようにもみえる。近年、中国の花火大会を鑑賞する機会があまりなく、適切なコメントができないが、日本の花火大会には数度鑑賞に行ったので、まさに前述したように素晴らしい。現在、筆者が強く期待しているのは2008年8月8日夕方から始まる北京オリンピックの開幕式である。

 日本語でいう「花火大会」は中国語では「焔火晩会」というように、同じ意味でも、日本と中国では単語が全く異なるという「同義異字」の例としては、パテント(patent)のことを日本では「特許」と称するが、中国では「専利」と称しており、日本語の「意匠」に対応する中国語は「外観設計」である。また日本語の「契約」に対応する中国語は「合同」と言い、日本語の「業界」に対応する中国語は「行業」という。

 さらに日本でいう「残業」は中国語で「加班」といい、日本語でいう「足を洗う」に対応する中国語は「洗手不幹」という。なぜ日本は「足」に、中国は「手」に着目したのか、なぜか好奇心が沸いて来る。

『一杯のかけそば』と超高額の日本産米の売れ行き

 『一杯のかけそば』(栗良平著)という本は日本でひところベストセラーになったが、その「一杯」とは実際コップ、ティーカップ、ジョッキ、お椀などを指すと理解できよう。しかし、中国語の「一杯」はコップ、ティーカップ、ジョッキにしか使えず、ご飯やおそばなどを盛る食器は「碗」という。面白いことに、中国語では石偏の「碗」という字だけが使われているのに対し、日本語では木偏の「椀」等の字も使われる。さすかに日本では国土の7割を占める森林が健在しているから、と冗談でもいって良いであろうか。

 ところで、北京青年新聞の報道によると、1キロ約100元という高額でも買物客の熱が失せることはなく、北京の日本産米売り場では、売り出した3000袋のうち、すでに2000袋以上が売れ、残りはわずか400数袋であり、今週中に「完売」の見通しだという。そこでいう「完売」は日本語であるが、中国語は字の順を逆にして「売完」または「売光」という(中国語の「売」という漢字は日本で使われていないので、便宜的に「売」を使う)。

 ここで留意して頂きたいのは、同じ意味でありほぼ同じ漢字であるのに、日本と中国ではその単語の配列順序が異なるという「同義同字異順」のことである。もし日本語と中国語とを続けて読めば、CMの「山本山」のような回文となるような気がする。たとえば、(日本語、以下同)平和=和平(中国語、以下同)、言語=語言、制限=限制、補填=填補、施設=設施、蓄積=積蓄、講演=演講、買収=収買、段階=階段、などが例として挙げられる。

 確かに日本語でも「階段」という単語は存在するが、それに対応する中国語は「楼悌」という。中国では2階立て以上の建物を「楼」といって、その段になっている通路を「楼悌」という。しかし、陸橋、駅、庭、玄関などにある階段は「楼悌」と言わず「台階児」などという。やや細かいではなかろうか。

絶賛するときに中国ではどのような言葉が使われるか

  2007年8月7日午後、筆者は経済産業省北海道経済産業局が主催した「第6回大学発バイオベンチャーネットワーク交流会」において、「中国におけるバイオ産業の現状と日中ビジネスのポイント」と題する講演の機会を頂いた。北海道の大学発バイオベンチャー企業の方々はもちろん、北海道経済部商工局や札幌市経済局、産総研北海道センター、また北海道大学TLO等の方々も出席された。

 ちなみに、東京から北海道までは日本語でいう「飛行機」を乗るが、中国語では「飛機」といい、日本語でいう「空港」は中国語では「机場」という。また、北海道市内は日本語でいう「地下鉄」を乗るが中国語ではそれを「地鉄」ともいい、日本語でいう「ホテル」は中国では「飯店」、「賓舘」、「大酒店」などをいう。東京の地下鉄のよさはいうまでもないが、過日たまたま上海で乗った地下鉄も思った以上によかった。

 そうだ、韓国ドラマ「冬のソナタ」のほど人気にはなってはいないかもしれないが、毎週金曜日夜9時半から放送されている中国ドラマ「地下鉄の恋」はまたも現代的な都市風景の中から出てくる人情物語で人の涙を誘っている。

 ところで、前述した講演会の後には、賑やかな意見交換・懇親会が行われた。多彩な方々との多様な話題になかなか話が尽きないのと同時に、ベンチャー各社からご提供頂いたチーズケーキ、ハム、そして山部メロンなど、その美味しさには筆者も思わず箸を何度も伸ばしてしまうほどであった。この場合、日本語では「本当においしかった!」とか「すごくうまかった!」というが、中国語では「味道好極了!」(とても美味しい)、「真甜!」(ほんとうに甘い)、「那味道絶了!」(もういう言葉がない)などがある。

 筆者は思わずそのように絶賛したと同時に、その美味しさの背後に流れている大学発ベンチャー企業には国を問わず共通するような創業、奮闘、苦悩、成功といった起伏の激しい旋律も感じた気がする!

 あ、もう時間だ。では、次回の「日中対流」で再会しましょう。

<了>





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