第42回 中国各地域の1人当たりのGDPと最も近い国



 2012年1月24日、チャイナ・ビズ・フォーラムが主催される新年研究会で、「『製造力』から『技術力』へと向かう中国の最新動向」を題とするスピーチをさせて頂いた。その後、研究会主催者宛に複数の参加者からレポートが寄せられて、書かれた一例から以下のように抜粋する。


 「個人的な感想ですが、今回のフォーラムに参加して、2つの点で収穫がありました。一つは、中国に関する情報は、そこに住んで、中国の人たちと関わりを持った人でないと分からないことがある。新聞やマスメディアの情報には「?」の部分あり、ということ。張先生の『曇りのない視点』(主宰、姫田さんの言葉から)と、中国と日本をこよなく愛する氏の『足で集めて、明晰な頭脳で分析する』姿勢から発せられるメッセージに、『そうだったのか!』の連発でした。・・・」


 褒められすぎて実に恐縮であるが、あの日、参加者の間でも意見交換は活発で、中国の協力工場に出張する某経営者の方は、現地の中国人社員と本音で交流することが大事だとその感動的な体験談を披露して頂いた。筆者は今後も、「足で情報を解読する」という姿勢を貫いていきたい。


 ところで、あの日でも話が及んだ中国GDP関連であるが、2012年2月2日、中国経済ネットは、2010年に中国各省・直轄市が公表した経済データ、およびイギリスのエコノミストが中国各省・直轄市の1人当たりのGDPと世界各国を比較したデータを参考にし、中国各省・直轄市の1人当たりのGDPと最も近い国をまとめて発表した。


 同発表によれば、1人当たりのGDP順の上位5位は、上から上海、天津、北京、江蘇、浙江である。上海市の1人当たりのGDPは7万3297元、ドル換算すると10827ドルで、石油大国のサウジアラビアに相当し、天津市の1人当たりのGDPは7万402元、ドル換算すると10399ドルで、欧州のハンガリーに相当し、北京市の1人当たりのGDPは7万251元、ドル換算すると10377ドルで、欧州のスロバキアに相当する、という(人民元対ドルレートは、2010年平均中間値の6.7695とする)。


 分かりやすく俯瞰するために、その他の地域を含めて下図のように作成したので、何かのときにご参考になれれば幸いである。


図1:中国各地域の1人当たりのGDPと最も近い国



 なお、1人当たりのGDP順の下位3位は、下から貴州、雲南、甘粛であり、貴州の1人当たりのGDPは1万3221元、ドル換算すると1953ドルでインドに相当し、雲南の1人当たりのGDPは1万5707元、ドル換算すると2320ドルでバヌアツに相当し、甘粛の1人当たりのGDPは1万6031元、ドル換算すると2368ドルでイラクに相当するという。


 2010年3月3日、筆者は第33回で「中国各地域の2009年GDPとイノベーション力」を書いたが、今回は「中国各地域の1人当たりのGDPと最も近い国」ということで、もうひとつの側面が見えるのではなかろうか。


 ご存知の読者の方も居られるかと思うが、一説によれば、潜在的巨大市場の構成要素は三つある。一つ目は巨大人口、二つ目は高いGDP成長率、三つ目は低い製品普及率である。中国はいまこの三つの要素を全部備えているといってもよかろう。もちろん、各地域におけるGDPの成長率や製品の普及率はそれぞれであり、求められたら地域ごとの具体的な調査分析が不可欠であるが、マクロ的な関連情報として、概ねの方向は一定程度推測できるであろう。


 中国はいま、さまざまな課題も抱えながら、多様なイノベーションによる持続的な経済成長の維持、地域や製品によっては非常に低い製品普及率の向上に取り組み続けている。かようなデータから、今後も、市場としての中国への注目度は変わらず高いものといえそうである。



<了>



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