第38回 高成長を続ける中国の技術取引市場



 10月25日夕方、中国技術取引所(略称:中技所)からは同所「第1回特許オークションの実施企画に関する記者発表会は予定通りに行う」という連絡が入った。コラム第34回「水幕映画、日中提携、BMA10周年記念大会」で触れたように、JCTBFは中国技術取引所と包括的な提携関係を有しており、このようなイベントにも非常に高い関心を持っている。これはJCTBFが公認窓口として日本関係者への案内役と指定されているからである。


 話は第一報が入った9月上旬に遡る。
「中国技術取引所は年内、初の大型特許オークションを開催する」と提携先。
「え、ほんとう?大型ってどの程度の案件数なの?」と筆者。
 「300件余りの知能情報、無線通信、集積回路、セキュリティ、高性能計算などを内容とするコンピューター関連の特許技術」と提携先。
 「最低価格の設定はあるのかなぁ」と筆者。
 「あるものもあればないものもあると考えている」と提携先。
 「どのような形で実施されるだろうか」と筆者。
 「詳細はまだ詰めるところだが、再度御連絡する」と。


 その後、中旬になってから、ある機会にもう一度電話が繋がった。
 「え〜と、例の件は順調かなぁ?」と筆者。
 「あの件、順調よ、ちょうどご連絡したいところだったんだ」と提携先。
 「実施の流れはだいぶ決まっただろうか」と筆者。
 「大きなステップといえば、想定購買対象者への周知→記者発表会の実施→ 案件説明会の開催→参加者関連手続や各自評価→オークションの実施」と提携先は落ち着いた口調でゆっくりと説明。
 「なるほど、今後、日本から参加したい場合は?」と筆者。
 「JCTBFにまとめて頂きたいので、ぜひ具体的に相談したい」と提携先。
 以下、会話続く。


 特許オークションということ自体にはとくに新しさがあるわけでもなく、米国では成功しているケースも従来から聞いている。中国において、研究開発機関から一度のオークションで大量に取引されるという企画は、中国における技術取引イノベーションの一環であり、研究開発機関の成果が企業や市場で活用されるまでの距離を一気に短縮するアプローチの一つともいえよう。


 実は近年、中国における技術移転の推進に関しては、「国家技術移転促進行動実施方案」の策定や展開、中国各地域に認定された130余りの「国家技術移転モデル機構」の活気、そして国内の技術取引契約の登記に関する奨励制度の実施など、さまざまな技術市場の発展を加速する方策が講じられてきた。その結果、技術取引市場は年々拡大し続けており、2009年の技術契約の取引成立総量は金融危機の真っ只中であったにもかかわらず史上最高値を示し、技術取引契約の成約総額は3039億元で、前年度比14.02%増(2008年は19.7%)となった。



 2009年度の状況は、@技術取引契約件数は若干減少したものの、取引成立金額は引き続き増加している、A技術取引関連契約の中で技術開発契約と技術サービス契約が技術取引の主要形態へ変化している、B電子情報技術の取引は依然としてトップにあり、製造技術や新エネ技術等が台頭してきている、C特許技術取引が若干増加し、実用新案の取引は確実に増加中、D企業の技術イノベーションにおける主役的な地位として安定し、技術取引への参加が活発になっている、E技術輸出入契約は持続的に増加し、成立した金額も上昇している、などである。


 ちなみに、中国における技術取引とは何を指すのか、技術取引と技術移転とはどのような関係に捉えられているのか、技術取引市場とはどういうようなものか、技術取引関連契約と技術輸出入契約とは何が違うのか、日本では一時テクノマートがあったがそれとは何が違うのか、活発な技術取引は中国のどこで行われているのか、近年はどのような変貌を見せているのか、これらの点についてもう少しお知りになりたい方は、ぜひ一度「中国技術取引市場入門」(http://www.jctbf.org/jp/CHBW/link.0.02.2.1.htm)にアクセスしてみてください。日本初の情報も色々と含まれている。


 10月13日から14日、「2010年国際技術移転大会 in 中国上海」が開催された。筆者は別件の関係で招待に応じられなかったが、中国科学技術省ハイテク産業開発センター、上海市科学技術委員会、国連アジア技術移転センター等が主催し、JCTBFの戦略的な提携先である上海技術取引所などが大会全般を運営したが、全国59の技術移転機構、26の大学、13の研究機関、44の地方政府、50の企業、及び国連、アメリカ、ドイツ、イギリスなど海外からの関係者も含めて、合計250名の方々が参加した。



 上海技術取引所からはそのような状況を知らせてくれたと同時に、「DND編集長の出口氏にもよろしくお伝え下さい」と依頼された(出口さん、ぜひまた行きましょうか)。同大会では、応用技術の研究開発、成功モデル、イノベーション、サービスネットワーク、科学技術の産業化などといったキーワードがたびたび登場し、産学連携の深化や国際的な連携の推進などが再度提唱された。


 この大会は成功裏に閉会となったが、みなさん、冒頭で述べた大型特許オークションについては12月に実施予定となっている。思えば「2009年中国上海特許週間」で行われた上海特許オークションでは、省エネや環境保護、バイオ製薬関連の特許がもっとも注目され、細胞生長基因の特許はある新薬開発機関に2900万元という最高価格で買われたことが話題となり、いまだに記憶に残っている。今度の大型特許オークションはどのようなドラマを見せられるのか。一緒に、まずは目で確かめにいかないだろうか。ご関心を持たれる方は気軽にJCTBFにお問い合わせください。


http://www.jctbf.org/Cgi-bin/formmail_JCTBF2006/formmail_JCTBF2006.htm



<了>



記事一覧へ